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王の書庫6
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◆◆◆◆◆
「レスキリアン王国が建国されたのは、約千年前ですよね?僕は初めての異世界人ではなく、千年前には既に異世界人がこの世界に存在していた。すごく、衝撃です」
「・・衝撃ねえ?ライは本当に何も知らなかったのかな?それを素直に信じて良いものかどうか迷うね。君は異世界人だ。王としては、異世界人にどう接する事が正解なのかな?ライはどう思う?」
「僕は嘘は付いてはいません、陛下!僕は、本当に何も知らなくて・・」
陛下が僕を疑っている。信じて欲しいのに、何を言っても信じて貰えない様に思えた。僕の声は次第に小さくなっていく。
代わりに、父上が発言をした。その語気は決して強くはなかったけれど、鋭く尖っている。
「クリストフェル陛下。もしも、ライをこの場に連れてきた目的が歴史からの抹消ならば・・私はライが殺される前に、貴方を殺害します」
父上の全身からアルファ性の匂いが香る。今にも威圧を放ちそうな父上の様子に、僕はびびって動けなくなってしまった。陛下は目を細めて父上を睨み付ける。
「ケルスティン = ガーディナー。臣下が王の殺害を口にする事は・・大罪だ」
「承知しております。ですが、譲れぬものもございます。ライもルチアも共に私の息子です。罪なき我が子を黙って陛下に差し出す訳には参りません。反逆罪で追われる身となっても、私は我が子を守りきります」
「父上!」
ピリピリとした空気で『王の書庫』が張り詰める。息を飲み二人の様子を伺う。
このままでは、まずい。
大好きな父上を犯罪者にするわけにはいかない。僕がヒートを起こして、『王の書庫』をもふもふでエロチックな空間に変えるしかない!!
ヒート発動だ!
「「やめなさい!」」
「ひゃい!?」
陛下と父上に同時に肩を掴まれた。まだヒートを発動していないのに、何故ばれた?しかも、叱られた・・涙が出そう。
「閉鎖空間で上位オメガにヒートを起こされたら、父でも襲いかねない。頼むから止めてくれ、ルチア」
「私は確実に襲う自信がある!だが、君は大切なアルカディーの忘れ形見だ。無理矢理襲うなどしたくない。自分の身を大切に扱って欲しい」
僕はおろおろしながらも、父上と陛下に訴えた。
「で、では・・喧嘩は止めてくれますか?陛下も父上も、仲良くしてください。そうじゃないと、泣きます」
陛下と父上が顔をあわせて、深いため息をついた。そして、父上がそっと僕の髪を撫でてくれた。
「すでに泣いている子に『泣きます』と言われると、対処に困る。妻のアルカディーは、こんな時には・・どう接していたのだろうか?」
「アルカディー母上は、僕をぎゅっと抱きしめてくれました」
「そうか」
「成る程」
何故か、父上と陛下にぎゅっと抱きしめられていた。陛下と父上は足元で蹴りあっていたが、先程の刺々しい雰囲気はない。
僕は陛下にそっと呟いていた。
「陛下は僕を・・歴史から抹殺するおつもりですか?」
僕の言葉に陛下がゆっくりと身を離した。父上は僕の肩を抱いて、陛下の返答を待つ。
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「レスキリアン王国が建国されたのは、約千年前ですよね?僕は初めての異世界人ではなく、千年前には既に異世界人がこの世界に存在していた。すごく、衝撃です」
「・・衝撃ねえ?ライは本当に何も知らなかったのかな?それを素直に信じて良いものかどうか迷うね。君は異世界人だ。王としては、異世界人にどう接する事が正解なのかな?ライはどう思う?」
「僕は嘘は付いてはいません、陛下!僕は、本当に何も知らなくて・・」
陛下が僕を疑っている。信じて欲しいのに、何を言っても信じて貰えない様に思えた。僕の声は次第に小さくなっていく。
代わりに、父上が発言をした。その語気は決して強くはなかったけれど、鋭く尖っている。
「クリストフェル陛下。もしも、ライをこの場に連れてきた目的が歴史からの抹消ならば・・私はライが殺される前に、貴方を殺害します」
父上の全身からアルファ性の匂いが香る。今にも威圧を放ちそうな父上の様子に、僕はびびって動けなくなってしまった。陛下は目を細めて父上を睨み付ける。
「ケルスティン = ガーディナー。臣下が王の殺害を口にする事は・・大罪だ」
「承知しております。ですが、譲れぬものもございます。ライもルチアも共に私の息子です。罪なき我が子を黙って陛下に差し出す訳には参りません。反逆罪で追われる身となっても、私は我が子を守りきります」
「父上!」
ピリピリとした空気で『王の書庫』が張り詰める。息を飲み二人の様子を伺う。
このままでは、まずい。
大好きな父上を犯罪者にするわけにはいかない。僕がヒートを起こして、『王の書庫』をもふもふでエロチックな空間に変えるしかない!!
ヒート発動だ!
「「やめなさい!」」
「ひゃい!?」
陛下と父上に同時に肩を掴まれた。まだヒートを発動していないのに、何故ばれた?しかも、叱られた・・涙が出そう。
「閉鎖空間で上位オメガにヒートを起こされたら、父でも襲いかねない。頼むから止めてくれ、ルチア」
「私は確実に襲う自信がある!だが、君は大切なアルカディーの忘れ形見だ。無理矢理襲うなどしたくない。自分の身を大切に扱って欲しい」
僕はおろおろしながらも、父上と陛下に訴えた。
「で、では・・喧嘩は止めてくれますか?陛下も父上も、仲良くしてください。そうじゃないと、泣きます」
陛下と父上が顔をあわせて、深いため息をついた。そして、父上がそっと僕の髪を撫でてくれた。
「すでに泣いている子に『泣きます』と言われると、対処に困る。妻のアルカディーは、こんな時には・・どう接していたのだろうか?」
「アルカディー母上は、僕をぎゅっと抱きしめてくれました」
「そうか」
「成る程」
何故か、父上と陛下にぎゅっと抱きしめられていた。陛下と父上は足元で蹴りあっていたが、先程の刺々しい雰囲気はない。
僕は陛下にそっと呟いていた。
「陛下は僕を・・歴史から抹殺するおつもりですか?」
僕の言葉に陛下がゆっくりと身を離した。父上は僕の肩を抱いて、陛下の返答を待つ。
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