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お茶会4
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◆◆◆◆◆
アルフレート兄上とラケールがほぼ同時に、円卓の座席から立ち上がった。そして、二人は円卓に沿って駆け出す。
アルフレート兄上とラケールは、左右からシドニーを挟み撃ちにする形になった。
「威圧を放つ!ルチア、耐えろ!」
「威圧!全開だあぁ!!」
「ひぎゃーーー!」
僕は悲鳴を上げながら、直立不動でその瞬間を待つ。シドニーのナイフより、二人の威圧の方が怖いんだけど~!
アルフレート兄上とラケールは威圧を放ちながら、シドニーに飛びかかった。シドニーの短剣が僅かに僕の皮膚に触れた。
「っ!」
アルフレート兄上とラケールは、シドニーを左右から掴むと背後に引き倒した。床に抑え込まれたシドニーは、なお抵抗を見せた。だが、二人分の威圧に圧迫されて呻き声をあげる。
「ぐっ!」
「そのまま離すな、ラケール。ルチアに傷がないか確認する」
「ずるいぞ、アルフレート!!」
ラケールの言葉を無視して、アルフレートは立ち上がる。そして、僕の首に触れようとした。
「あっ!」
僕は声を漏らして後退りしていた。その指先で触れられるのが怖かった。感情が溢れだすのが怖かった。
「大した傷ではありません、兄上」
「義兄として心配なんだ。肌に触れられることも嫌かい、ルチア?」
アルフレート兄上が苦しそうに尋ねる。その表情に僕まで苦しくなる。
「兄上・・僕は・・」
「馬車内での会話を、ルチアは・・ライは、全て聞いていたね?」
「っ!ごめんなさい、兄上」
「謝る必要はないよ、ライ。父上がライに話を聞かせる為に、あえて俺を煽っているのだと・・途中で気がついた。でも、お陰で俺は仮面を外して、本来の自分をさらけ出すことができた」
「・・兄上」
「あんな話を聞けば、俺を拒絶したいと思うのは自然なことだ」
「僕は兄上を拒絶したりしません」
「そうだと嬉しい。ライ・・俺は不器用で、簡単には性格は変えられそうにない。仮面をつけて正体を隠さないと、不安で仕方がないんだ。今はルチアの義兄の仮面をつけさせてくれないかい?ルチアが怪我をしていないか、確認させて欲しい」
「承知しました、兄上」
アルフレート兄上の指先が、僕の首に僅かに触れた。そして、兄上の指先がそっと離れていく。
「肌は傷ついていない・・綺麗だ」
「っ!」
「す、済まない。表現がおかしかった。とにかく、怪我がなく良かった」
アルフレート兄上が視線をさ迷わせて、言い訳をした。僕はおもわず兄上に向かって微笑んでいた。
「兄上が助けて下さったお陰です。オメガにとっては、小さな傷でも・・婚姻の妨げになりますので。兄上が綺麗だと仰ってくれて、僕は嬉しいですよ?」
「そ、そうなのか?オメガは大変だな。だが、少しの傷で婚姻を躊躇うアルファは、ルチアの相手としては相応しくないと思う。義兄としての意見だが・・」
僕は胸に痛みを感じながら、アルフレート兄上に尋ねていた。
「アルフレート兄上は、義兄の仮面をもう僕の前で外す気はないのですね?」
アルフレート兄上は僕の言葉に、しばらく沈黙した。やがて、僕の瞳を真っ直ぐに見つめながら、言葉を紡いだ。
「互いの幸せの為に、義兄の仮面は一生外さない。そう心に決めた」
「身勝手な兄上」
「ルチア、すまない」
「抱きしめて、アルフレート兄上」
僕はアルフレート兄上の胸に、静かに身を預けた。兄上が優しく抱き寄せてくれた。
◆◆◆◆◆
アルフレート兄上とラケールがほぼ同時に、円卓の座席から立ち上がった。そして、二人は円卓に沿って駆け出す。
アルフレート兄上とラケールは、左右からシドニーを挟み撃ちにする形になった。
「威圧を放つ!ルチア、耐えろ!」
「威圧!全開だあぁ!!」
「ひぎゃーーー!」
僕は悲鳴を上げながら、直立不動でその瞬間を待つ。シドニーのナイフより、二人の威圧の方が怖いんだけど~!
アルフレート兄上とラケールは威圧を放ちながら、シドニーに飛びかかった。シドニーの短剣が僅かに僕の皮膚に触れた。
「っ!」
アルフレート兄上とラケールは、シドニーを左右から掴むと背後に引き倒した。床に抑え込まれたシドニーは、なお抵抗を見せた。だが、二人分の威圧に圧迫されて呻き声をあげる。
「ぐっ!」
「そのまま離すな、ラケール。ルチアに傷がないか確認する」
「ずるいぞ、アルフレート!!」
ラケールの言葉を無視して、アルフレートは立ち上がる。そして、僕の首に触れようとした。
「あっ!」
僕は声を漏らして後退りしていた。その指先で触れられるのが怖かった。感情が溢れだすのが怖かった。
「大した傷ではありません、兄上」
「義兄として心配なんだ。肌に触れられることも嫌かい、ルチア?」
アルフレート兄上が苦しそうに尋ねる。その表情に僕まで苦しくなる。
「兄上・・僕は・・」
「馬車内での会話を、ルチアは・・ライは、全て聞いていたね?」
「っ!ごめんなさい、兄上」
「謝る必要はないよ、ライ。父上がライに話を聞かせる為に、あえて俺を煽っているのだと・・途中で気がついた。でも、お陰で俺は仮面を外して、本来の自分をさらけ出すことができた」
「・・兄上」
「あんな話を聞けば、俺を拒絶したいと思うのは自然なことだ」
「僕は兄上を拒絶したりしません」
「そうだと嬉しい。ライ・・俺は不器用で、簡単には性格は変えられそうにない。仮面をつけて正体を隠さないと、不安で仕方がないんだ。今はルチアの義兄の仮面をつけさせてくれないかい?ルチアが怪我をしていないか、確認させて欲しい」
「承知しました、兄上」
アルフレート兄上の指先が、僕の首に僅かに触れた。そして、兄上の指先がそっと離れていく。
「肌は傷ついていない・・綺麗だ」
「っ!」
「す、済まない。表現がおかしかった。とにかく、怪我がなく良かった」
アルフレート兄上が視線をさ迷わせて、言い訳をした。僕はおもわず兄上に向かって微笑んでいた。
「兄上が助けて下さったお陰です。オメガにとっては、小さな傷でも・・婚姻の妨げになりますので。兄上が綺麗だと仰ってくれて、僕は嬉しいですよ?」
「そ、そうなのか?オメガは大変だな。だが、少しの傷で婚姻を躊躇うアルファは、ルチアの相手としては相応しくないと思う。義兄としての意見だが・・」
僕は胸に痛みを感じながら、アルフレート兄上に尋ねていた。
「アルフレート兄上は、義兄の仮面をもう僕の前で外す気はないのですね?」
アルフレート兄上は僕の言葉に、しばらく沈黙した。やがて、僕の瞳を真っ直ぐに見つめながら、言葉を紡いだ。
「互いの幸せの為に、義兄の仮面は一生外さない。そう心に決めた」
「身勝手な兄上」
「ルチア、すまない」
「抱きしめて、アルフレート兄上」
僕はアルフレート兄上の胸に、静かに身を預けた。兄上が優しく抱き寄せてくれた。
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