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円卓の広間 4
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◆◆◆◆◆
「円卓の広間で!しかも、白騎士の座った席で美味しい紅茶が頂けるなんて、感動です!陛下のお気遣いに感謝します」
僕が嬉しくなって陛下にお礼を述べると、陛下は笑みを浮かべた。
「『レスキリアン創世記』を、ルチアは愛読しているそうだね?私も幼い頃に『レスキリアン創世記』を読んだ。歴代の騎士たちを我が友として、架空の戦場を舞台に闘いを繰り広げたものだよ」
おお!陛下には妄想癖があるのか!そんな事を考えていると、父上が何気なく発言する。
「幼い頃ではなく、王立学園時代の間違いではないですか?陛下は私を騎士の名で呼び、剣を交えることを好んでいた記憶があります。私の記憶違いでしょうか?」
「黙れ、ケルスティン」
「失礼しました、陛下」
父上は陛下の黒歴史を、あっさりと明かした。父上は陛下をディスったつもりだろう。だが、陛下への好感度は上がった。陛下は妄想癖のオタク体質らしい。僕と同じ匂いを感じるねぇ~。
「ケルスティンの席は、私の左隣だ。十三番目の席だ。さっさと座れ!」
「ちっ。十三番目の席は、本来なら空席にすべき席だ。そこに座らせるとは常識の無いことだな、クリストフェル」
父上が陛下に舌打ちしたぁー!しかも、呼び捨てした~。
「十三番目の席は、裏切り者の騎士が座る席だ。私からアルカディーを卑怯な手段で奪ったお前には、相応しい座席だ。その席が気に入らぬなら、円卓の広間から去れ」
父上は再び小さく舌打ちをした後に、十三番目の席に着席した。僕は陛下にエスコートされて、白騎士の席に着席する。僕が席につくと、給仕が紅茶を淹れてくれた。
僕は紅茶を飲みながら、小さな焼き菓子を一つ手に取った。そして、口に含む。ホロリと崩れる焼き菓子を味わいながら、円卓に着席する学友の様子を伺う。
まずは、アルフレート兄上。
アルフレート兄上と目が合うと、互いに心の内を探るように見つめ合い視線を絡め合わせた。数秒が酷く長く感じて、辛くなり僕が視線を逸らした。すると、兄上はゆっくりと瞼を閉じた。苦い想いが僕の胸に広がった。
気を取り直して、僕はラケールに視線を移した。
ラケールは僕を視界に収めたまま、焼き菓子を口に運ぶ。そして、大きく目を見開いた。『なんだ、この菓子のホロホロな食感は!?うますぎるだろ!』と、でも思ったのだろう。更に菓子を口に頬張りモグモグしている。うむ、リスみたい。
次は、ジャクソン。
ジャクソンは円卓の広間の豪華さに圧倒されたのか、顔色が蒼白だった。高価な食器に囲まれ触れるのが怖いのか、彼は微動だにせず騎士の席に座っている。うむ、可哀想。
次は、アンリ。
アンリはジャクソンとは違い、平然とスコーンを口に運んでいた。アンリの手はブルブルと震えていたが、多分緊張感からではなく禁断症状からだろう。うむ、大物だ!さすが主人公!
さて、この茶会はどうなるのだろうか?
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「円卓の広間で!しかも、白騎士の座った席で美味しい紅茶が頂けるなんて、感動です!陛下のお気遣いに感謝します」
僕が嬉しくなって陛下にお礼を述べると、陛下は笑みを浮かべた。
「『レスキリアン創世記』を、ルチアは愛読しているそうだね?私も幼い頃に『レスキリアン創世記』を読んだ。歴代の騎士たちを我が友として、架空の戦場を舞台に闘いを繰り広げたものだよ」
おお!陛下には妄想癖があるのか!そんな事を考えていると、父上が何気なく発言する。
「幼い頃ではなく、王立学園時代の間違いではないですか?陛下は私を騎士の名で呼び、剣を交えることを好んでいた記憶があります。私の記憶違いでしょうか?」
「黙れ、ケルスティン」
「失礼しました、陛下」
父上は陛下の黒歴史を、あっさりと明かした。父上は陛下をディスったつもりだろう。だが、陛下への好感度は上がった。陛下は妄想癖のオタク体質らしい。僕と同じ匂いを感じるねぇ~。
「ケルスティンの席は、私の左隣だ。十三番目の席だ。さっさと座れ!」
「ちっ。十三番目の席は、本来なら空席にすべき席だ。そこに座らせるとは常識の無いことだな、クリストフェル」
父上が陛下に舌打ちしたぁー!しかも、呼び捨てした~。
「十三番目の席は、裏切り者の騎士が座る席だ。私からアルカディーを卑怯な手段で奪ったお前には、相応しい座席だ。その席が気に入らぬなら、円卓の広間から去れ」
父上は再び小さく舌打ちをした後に、十三番目の席に着席した。僕は陛下にエスコートされて、白騎士の席に着席する。僕が席につくと、給仕が紅茶を淹れてくれた。
僕は紅茶を飲みながら、小さな焼き菓子を一つ手に取った。そして、口に含む。ホロリと崩れる焼き菓子を味わいながら、円卓に着席する学友の様子を伺う。
まずは、アルフレート兄上。
アルフレート兄上と目が合うと、互いに心の内を探るように見つめ合い視線を絡め合わせた。数秒が酷く長く感じて、辛くなり僕が視線を逸らした。すると、兄上はゆっくりと瞼を閉じた。苦い想いが僕の胸に広がった。
気を取り直して、僕はラケールに視線を移した。
ラケールは僕を視界に収めたまま、焼き菓子を口に運ぶ。そして、大きく目を見開いた。『なんだ、この菓子のホロホロな食感は!?うますぎるだろ!』と、でも思ったのだろう。更に菓子を口に頬張りモグモグしている。うむ、リスみたい。
次は、ジャクソン。
ジャクソンは円卓の広間の豪華さに圧倒されたのか、顔色が蒼白だった。高価な食器に囲まれ触れるのが怖いのか、彼は微動だにせず騎士の席に座っている。うむ、可哀想。
次は、アンリ。
アンリはジャクソンとは違い、平然とスコーンを口に運んでいた。アンリの手はブルブルと震えていたが、多分緊張感からではなく禁断症状からだろう。うむ、大物だ!さすが主人公!
さて、この茶会はどうなるのだろうか?
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