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円卓の広間 1
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◆◆◆◆◆
父上と共に馬車を降りると、仮面の高貴な御方が立っていた。僕は驚いて最敬礼を取ろうとして、父上に止められた。
「ルチア、敬礼は必要ないよ。彼は陛下の替え玉だからね」
「えっ?」
僕は無遠慮にしげしげと、仮面の高貴な御方の姿を見た。陛下にそっくりだが、確かに肌が若々しい。
「ケルスティン卿、ルチア様、陛下の命によりお迎えに参りました。陛下は円卓の広間でお待ちです。私が御案内いたします」
「円卓の広間か・・久しぶりだな」
「円卓の広間!もしや、レスキリアン王国初代王が使用した円卓ですか?」
僕が円卓について尋ねると、陛下の替え玉がにこりと微笑んだ。口元しか見えないけれど、陛下よりも邪気を感じない笑みだ。
「陛下はルチア様の為に、円卓の広間をご用意されました。きっと、ルチア様が興味を持たれるに違いないと、仰っておられました」
僕はおもわずニコニコしてしまった。
「陛下のご配慮に感謝いたします。歴代の騎士が座った円卓の椅子に座れるなんて、感動です!陛下も円卓の騎士の物語が好きなのでしょうか?僕はとても好きです」
替え玉の陛下が、僕をエスコートする為に手を差し出した。僕は円卓の話をもっと聞きたくて、彼の手を取ろうとした。だが、父上によって遮られた。
「父上?」
「まったく、親子揃ってルチアを狙うとは図々しい!ルチアは私がエスコートする」
「え、親子揃ってって・・えっ?」
替え玉の陛下はにこりと微笑んだ。慌てて敬礼しようとした僕を、替え玉の陛下が言葉で制した。
「陛下は私の父です。ですが、私は庶子ですから王位継承権はありません。ケルスティン卿の仰った通り、私に敬礼をする必要ありません、ルチア様」
「そうですか・・分かりました」
庶子ということは、愛人の子供ということかな?アンリやジャクソンと同じ立場ということか。
「ルチア」
「はい、父上」
「円卓の広間なら、私が知っている。お前のエスコートは私がしよう」
「はい」
父上にエスコートされて、僕は王城内の円卓の広間に向かった。替え玉の陛下は僕たちと少し距離を保ち、あとに続く。陛下に出迎えを命じられた以上、途中で仕事は投げなせないよね。父が頑固でご免なさい。それにしても・・。
「陛下は艶福家のようですね」
僕が父上に小声で話しかけると、少し不機嫌そうな声で返事が帰って来た。
「ルチアの口から、艶福家などという言葉を聞くことになるとは・・衝撃だ」
「僕は幼子ではなく恋するオメガです」
「確かにそうだな」
父上は苦笑いを漏らした。
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父上と共に馬車を降りると、仮面の高貴な御方が立っていた。僕は驚いて最敬礼を取ろうとして、父上に止められた。
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「陛下のご配慮に感謝いたします。歴代の騎士が座った円卓の椅子に座れるなんて、感動です!陛下も円卓の騎士の物語が好きなのでしょうか?僕はとても好きです」
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「父上?」
「まったく、親子揃ってルチアを狙うとは図々しい!ルチアは私がエスコートする」
「え、親子揃ってって・・えっ?」
替え玉の陛下はにこりと微笑んだ。慌てて敬礼しようとした僕を、替え玉の陛下が言葉で制した。
「陛下は私の父です。ですが、私は庶子ですから王位継承権はありません。ケルスティン卿の仰った通り、私に敬礼をする必要ありません、ルチア様」
「そうですか・・分かりました」
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「ルチア」
「はい、父上」
「円卓の広間なら、私が知っている。お前のエスコートは私がしよう」
「はい」
父上にエスコートされて、僕は王城内の円卓の広間に向かった。替え玉の陛下は僕たちと少し距離を保ち、あとに続く。陛下に出迎えを命じられた以上、途中で仕事は投げなせないよね。父が頑固でご免なさい。それにしても・・。
「陛下は艶福家のようですね」
僕が父上に小声で話しかけると、少し不機嫌そうな声で返事が帰って来た。
「ルチアの口から、艶福家などという言葉を聞くことになるとは・・衝撃だ」
「僕は幼子ではなく恋するオメガです」
「確かにそうだな」
父上は苦笑いを漏らした。
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