義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
68 / 119

馬車での秘密話 5

しおりを挟む
◆◆◆◆◆

僕は・・ルチアは・・
アルフレート兄上に憎まれていた。
それが、現実。

◇◇◇


「俺は抗えなかった。終わったと思いました。ルチアが俺に襲われたと騒げば、貴方が黙ってはいない。俺は家を追い出される事を覚悟しました」

「私が二人の関係を知ったのは、ルチアが自殺を図った後だった。全てが終わった後だ。私はルチアにもっと気を配るべきだった。だが、私は領地に引きこもり、亡くなった妻に想いを寄せていた。そんな私に、ルチアが本心を打ち明ける訳がなかった」

「・・俺から性被害を受けたと、ルチアはすぐに貴方に訴えるだろうと思っていた。だが、ルチアは一向に貴方に被害を訴える様子がない。それどころか、またヒートを起こして俺に襲わせようとした。俺には、ルチアの行動が理解できなかった。次第に恐怖さえ感じて、俺は完全にルチアを拒絶した」

「そして、私のルチアは自殺した」
「全てが終わり・・全てが始まりました」

「目覚めたルチアを見て、私の息子はアルカディーの元に逝ったのだと分かった。だが、目覚めた子は必死にルチアを演じようとしていて・・私は受け入れるしかなかった。ルチアがその身に受け入れた子なら、私も同じように受け入れようと思った。私は、さみしがり屋の引きこもりだ。一人では・・生きていくことは出来ない」

「俺は貴方ほど、はっきりと何かを感じた訳ではありません。ただ、違和感はあった。それが何かがわからないまま、俺たちの関係は再開した。でも、ルチアは俺に抱かれながら、俺との関係を終わらせようとしていた。何故関係を続けながら、別れを望むのか・・ルチアに問いたかった。いや、ルチアではない何者かに尋ねたかった。答えを知りたかった」

「『全てが終わり・・全てが始まりました』アルフレートはそう表現したな。ルチアが自殺を図った後、お前のルチアに対する気持ちはどう変わっていった?」

「愛しいと」
「はっ、ずいぶんと身勝手だな!」

「俺も戸惑いました。ルチアが俺から離れようとしている。そう思うと、焦りが募りました。義兄としての仮面が次々と剥がれていき、ルチアを繋ぎ止めるために必死になった。嘘も付いた。一目惚れだったと、以前から好きだったと嘘までついて・・俺はルチアを、必死に繋ぎ止めようとした」

「お前は卑怯者だ、アルフレート。お前にルチアを渡すつもりはない。義兄の仮面を顔に張り付けて・・二度とルチアの前で外すな。一生涯、兄のままでいろ。それが、ルチアを殺したお前への罰だ」

「・・俺もそのつもりです」

「ならば、良い。さて、ようやく王城に着いた。私はルチアが目覚めるまで、馬車の中で過ごす。お前は先に行きなさい、アルフレート」

「承知しました、父上」


◆◆◆◆
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...