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馬車での秘密話 5
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◆◆◆◆◆
僕は・・ルチアは・・
アルフレート兄上に憎まれていた。
それが、現実。
◇◇◇
「俺は抗えなかった。終わったと思いました。ルチアが俺に襲われたと騒げば、貴方が黙ってはいない。俺は家を追い出される事を覚悟しました」
「私が二人の関係を知ったのは、ルチアが自殺を図った後だった。全てが終わった後だ。私はルチアにもっと気を配るべきだった。だが、私は領地に引きこもり、亡くなった妻に想いを寄せていた。そんな私に、ルチアが本心を打ち明ける訳がなかった」
「・・俺から性被害を受けたと、ルチアはすぐに貴方に訴えるだろうと思っていた。だが、ルチアは一向に貴方に被害を訴える様子がない。それどころか、またヒートを起こして俺に襲わせようとした。俺には、ルチアの行動が理解できなかった。次第に恐怖さえ感じて、俺は完全にルチアを拒絶した」
「そして、私のルチアは自殺した」
「全てが終わり・・全てが始まりました」
「目覚めたルチアを見て、私の息子はアルカディーの元に逝ったのだと分かった。だが、目覚めた子は必死にルチアを演じようとしていて・・私は受け入れるしかなかった。ルチアがその身に受け入れた子なら、私も同じように受け入れようと思った。私は、さみしがり屋の引きこもりだ。一人では・・生きていくことは出来ない」
「俺は貴方ほど、はっきりと何かを感じた訳ではありません。ただ、違和感はあった。それが何かがわからないまま、俺たちの関係は再開した。でも、ルチアは俺に抱かれながら、俺との関係を終わらせようとしていた。何故関係を続けながら、別れを望むのか・・ルチアに問いたかった。いや、ルチアではない何者かに尋ねたかった。答えを知りたかった」
「『全てが終わり・・全てが始まりました』アルフレートはそう表現したな。ルチアが自殺を図った後、お前のルチアに対する気持ちはどう変わっていった?」
「愛しいと」
「はっ、ずいぶんと身勝手だな!」
「俺も戸惑いました。ルチアが俺から離れようとしている。そう思うと、焦りが募りました。義兄としての仮面が次々と剥がれていき、ルチアを繋ぎ止めるために必死になった。嘘も付いた。一目惚れだったと、以前から好きだったと嘘までついて・・俺はルチアを、必死に繋ぎ止めようとした」
「お前は卑怯者だ、アルフレート。お前にルチアを渡すつもりはない。義兄の仮面を顔に張り付けて・・二度とルチアの前で外すな。一生涯、兄のままでいろ。それが、ルチアを殺したお前への罰だ」
「・・俺もそのつもりです」
「ならば、良い。さて、ようやく王城に着いた。私はルチアが目覚めるまで、馬車の中で過ごす。お前は先に行きなさい、アルフレート」
「承知しました、父上」
◆◆◆◆
僕は・・ルチアは・・
アルフレート兄上に憎まれていた。
それが、現実。
◇◇◇
「俺は抗えなかった。終わったと思いました。ルチアが俺に襲われたと騒げば、貴方が黙ってはいない。俺は家を追い出される事を覚悟しました」
「私が二人の関係を知ったのは、ルチアが自殺を図った後だった。全てが終わった後だ。私はルチアにもっと気を配るべきだった。だが、私は領地に引きこもり、亡くなった妻に想いを寄せていた。そんな私に、ルチアが本心を打ち明ける訳がなかった」
「・・俺から性被害を受けたと、ルチアはすぐに貴方に訴えるだろうと思っていた。だが、ルチアは一向に貴方に被害を訴える様子がない。それどころか、またヒートを起こして俺に襲わせようとした。俺には、ルチアの行動が理解できなかった。次第に恐怖さえ感じて、俺は完全にルチアを拒絶した」
「そして、私のルチアは自殺した」
「全てが終わり・・全てが始まりました」
「目覚めたルチアを見て、私の息子はアルカディーの元に逝ったのだと分かった。だが、目覚めた子は必死にルチアを演じようとしていて・・私は受け入れるしかなかった。ルチアがその身に受け入れた子なら、私も同じように受け入れようと思った。私は、さみしがり屋の引きこもりだ。一人では・・生きていくことは出来ない」
「俺は貴方ほど、はっきりと何かを感じた訳ではありません。ただ、違和感はあった。それが何かがわからないまま、俺たちの関係は再開した。でも、ルチアは俺に抱かれながら、俺との関係を終わらせようとしていた。何故関係を続けながら、別れを望むのか・・ルチアに問いたかった。いや、ルチアではない何者かに尋ねたかった。答えを知りたかった」
「『全てが終わり・・全てが始まりました』アルフレートはそう表現したな。ルチアが自殺を図った後、お前のルチアに対する気持ちはどう変わっていった?」
「愛しいと」
「はっ、ずいぶんと身勝手だな!」
「俺も戸惑いました。ルチアが俺から離れようとしている。そう思うと、焦りが募りました。義兄としての仮面が次々と剥がれていき、ルチアを繋ぎ止めるために必死になった。嘘も付いた。一目惚れだったと、以前から好きだったと嘘までついて・・俺はルチアを、必死に繋ぎ止めようとした」
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「・・俺もそのつもりです」
「ならば、良い。さて、ようやく王城に着いた。私はルチアが目覚めるまで、馬車の中で過ごす。お前は先に行きなさい、アルフレート」
「承知しました、父上」
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