60 / 119
君は人間かい?
しおりを挟む
◆◆◆◆◆
「ふむ、それは良かった。さて、私は密かに皆を観察していたが、実に面白かった。特に、アルフレートは迫真の演技だった。しかし、アルフレートには不審な言動も見られた。彼はルチアにきつく当たりながらも、義弟を自室に籠らせようと誘導していた。アルフレートは、かなり必死だった。不審に思った私は、ルチアが部屋に籠る前に接触を図る事に決めた」
「っ!」
「計画の段階では、今日はルチアと接触をするつもりはなかった。あくまでも、心眼による見極めが目的だったからね。後日、王城にルチアを招き、茶会を催すつもりだった。アンリから手紙は受け取ったね、ルチア?」
「はい。アンリから受けとりました。あの手紙は茶会への招待状だったのですね」
「君が招待状をぐしゃりと握りつぶし、ポケットに捩じ込んだ瞬間を目撃した。ルチアはマナーを学ばないといけない。君は侯爵家の令息なのだからね?」
「も、申し訳ございません」
うおー、見られていた。ゴミ箱に捨てるつもりだったから、雑に扱ってしまった。
「さて・・アルフレートが必死になった理由は、この甘い薫りだね?アルフレートはこの薫りを香水だと、何度も口にしていた。だが、私にその嘘は通用しない。立場上、流行に敏感な貴婦人と会う機会が多くてね。彼らは人とは異なった香水を作らせ身につける。さまざまな香水を毎日嗅がされて、私は調香師のように数多くある香料素材の香りを記憶した。だが、ルチアの纏う香りの構成は、今ある香料素材では作り出せぬものだ。違うかい、ルチア?」
「・・・」
調香師では腐男子臭を作り出せないだろう。何故なら、腐の沼を理解していないからだ。腐男子臭を真に理解してくれるのは、おそらくラケールだけだ。
「沈黙を返事とするつもりかい?」
「・・・」
棒と後孔の妄想で薫りが発せられるなんて、そんな事は言えない!アルフレート兄上にだけは、絶対に知られたくない!とにかく、言い訳を即座に考えねば。
「・・香水ではない。だが、フェロモンでもない。人とは思えぬ不思議な薫りを、ルチアは身に纏っている。さて、君は人間かい?それとも、人を惑わす妖精かな?」
「っ!」
陛下の問いに、僕は身構え慎重になった。陛下は本当に意地悪だ。陛下の後ろに控える臣下の中には、教会関係者がいる。妖精の存在を教会は認めていない。
◆◆◆◆◆
「ふむ、それは良かった。さて、私は密かに皆を観察していたが、実に面白かった。特に、アルフレートは迫真の演技だった。しかし、アルフレートには不審な言動も見られた。彼はルチアにきつく当たりながらも、義弟を自室に籠らせようと誘導していた。アルフレートは、かなり必死だった。不審に思った私は、ルチアが部屋に籠る前に接触を図る事に決めた」
「っ!」
「計画の段階では、今日はルチアと接触をするつもりはなかった。あくまでも、心眼による見極めが目的だったからね。後日、王城にルチアを招き、茶会を催すつもりだった。アンリから手紙は受け取ったね、ルチア?」
「はい。アンリから受けとりました。あの手紙は茶会への招待状だったのですね」
「君が招待状をぐしゃりと握りつぶし、ポケットに捩じ込んだ瞬間を目撃した。ルチアはマナーを学ばないといけない。君は侯爵家の令息なのだからね?」
「も、申し訳ございません」
うおー、見られていた。ゴミ箱に捨てるつもりだったから、雑に扱ってしまった。
「さて・・アルフレートが必死になった理由は、この甘い薫りだね?アルフレートはこの薫りを香水だと、何度も口にしていた。だが、私にその嘘は通用しない。立場上、流行に敏感な貴婦人と会う機会が多くてね。彼らは人とは異なった香水を作らせ身につける。さまざまな香水を毎日嗅がされて、私は調香師のように数多くある香料素材の香りを記憶した。だが、ルチアの纏う香りの構成は、今ある香料素材では作り出せぬものだ。違うかい、ルチア?」
「・・・」
調香師では腐男子臭を作り出せないだろう。何故なら、腐の沼を理解していないからだ。腐男子臭を真に理解してくれるのは、おそらくラケールだけだ。
「沈黙を返事とするつもりかい?」
「・・・」
棒と後孔の妄想で薫りが発せられるなんて、そんな事は言えない!アルフレート兄上にだけは、絶対に知られたくない!とにかく、言い訳を即座に考えねば。
「・・香水ではない。だが、フェロモンでもない。人とは思えぬ不思議な薫りを、ルチアは身に纏っている。さて、君は人間かい?それとも、人を惑わす妖精かな?」
「っ!」
陛下の問いに、僕は身構え慎重になった。陛下は本当に意地悪だ。陛下の後ろに控える臣下の中には、教会関係者がいる。妖精の存在を教会は認めていない。
◆◆◆◆◆
44
お気に入りに追加
2,359
あなたにおすすめの小説
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる