義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

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『運命の番』を映す水鏡2

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◆◆◆◆◆


僕があまりに話題に食い付いたのが不味かった。父上は目を丸くして、僕を見つめている。

「ルチアも本心では『運命の番』の存在を、信じているんだね?アルカディーも『運命の番』など信じないと言っていたのに、陛下が『運命の番』を映し出す水鏡をお持ちだと話したら、随分と興味を示していた。その姿はとても可愛らしく愛しかった」

「父上~。母上との甘いお話は、またの機会にお聞かせ下さい」

父上は優しく笑った後に、話を元に戻す。

「陛下自身が教会を訪ねる事はなかった。だが、臣下に命じて修道士の行方を調べさせた。その結果、修道士は双子の子供を出産した際に、亡くなくなっていた事がわかった。同時に、親を亡くした双子は、教会の孤児院に預けられている事も判明。アルファとオメガの兄弟として、孤児院で生活していた」

そうだった!アンリとジャクソンを生んだ修道士は、出産でなくなっていたんだった。そして、二人は孤児院に預けられそこで育った。

「修道士は禁欲的な生活を送るものですよね?陛下が初めての相手ならば、その双子は陛下の落胤の可能性が高いのでは?」

「ルチアはこの話題に随分と食いつくね。最近の教会は性的に乱れているらしいが、件の修道士は違ったらしい。修道誓願を立て禁欲的な信仰生活を送っていたそうだ。出産で命を落とした時期などを鑑みると、陛下が最初で最後の相手だったのだろうね」

「父上は随分と事情に通じていらっしゃいますね?陛下から直接お聞きになったのですか?」

「ん?ああ、説明を省いてしまったね。修道士の行方を調べるよう陛下から命じられた臣下とは、私のことだ」

「・・息子に嘘は付かないで下さい、父上。引きこもりの父上に、その役どころは無理です。僕は父上が引きこもりでも大好きですよ?自信をもって、父上は領地に引きこもって下さい」

僕の言葉に父上が非常にショックを受けた表情を浮かべた。そして、情けない声で口を開く。

「・・ルチア、嘘ではない」
「まだ言いますか。では、話の続きをどうぞ」

「私もね、領地に引きこもっていたかったよ?だが、陛下の命令は流石に無視は出来ないからね。それをよいことに、陛下はその後も次々と私に面倒な命令を下した。『双子を養子にしても親族から文句の出ない、孤独で裕福な貴族を見つけ出せ』と命じられ必死に探した。そして、陛下に男爵位プラデス家を紹介した。すると、『男爵家などあり得ない』と陛下にお叱りを受けた。私はあまりに腹立たしくて、領地に引きこもった。すると、陛下から『双子を件の男爵家の養子にしたので、これからもよろしく頼む』と手紙が来た。まあ、手紙は即座に破って捨てたがね」

「へ、陛下の手紙を破って捨てたのですか?父上が大胆すぎて格好いい!でも、手紙を破った事は私以外に話ては駄目ですよ?」

「そこは心得ているさ。さて、ルチア。陛下の落胤の正体はもう分かったかな?」

僕は頷き名前を口にした。

「Aクラスのアンリ = プラデスと、Bクラスのジャクソン = プラデスですね?」

「そうだ。随分と長い説明になったが、ここからが本題だ。私はその後は双子に関わることなく、領地で穏やかな引きこもり生活を楽しんでいた。だが、ある日突然、陛下から王城に出仕するように命じられた。私は渋々王城に出仕すると、私を含めて四人の陛下の学友が呼び出されていた」

「父上を含めて四人の学友?陛下に呼び出された理由はなんだったのですか?」

「三人は伯爵位以上の貴族で、同年代のアルファの息子がいた。陛下は三人の学友の息子の内の誰かに、アンリ = プラデスを正妻として迎えさせるつもりだと仰った」

「えっ!?」

「私が呼び出された理由も同様だ。陛下はルチアを、ジャクソン = プラデスの正妻にしろと命じてきた」

「はぁー!?そんな無茶な!いくら陛下でもあまりに身勝手です!自身のお子の行く末を心配する親心は理解できます。でも、陛下のやり方は婚姻をネタに臣下にゲームを仕掛けているようで、不快です!」

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