義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
36 / 119

父上と秘密のはなし5

しおりを挟む
◆◆◆◆◆◆


「兄上が父上に報告しなかったのは、自分の立場を守る為ではなかったと思います。まして、僕を自殺に追いやる為だなんて・・あり得ません。普通の精神の持ち主なら、言えませんよ。『貴方の息子は淫乱で性悪なオメガです』なんて。まして、実の父親かも知れない人に・・兄弟でこんな関係になっているなんて、話せる筈がないじゃないですか・・」

「ルチアはアルフレートを好きだと言ったね?腹違いの兄弟だと知っても・・その気持ちは変わらないのかい?」

「変わりません。それに、学生寮での情交で、アルフレート兄上は僕に愛していると言ってくれました。一目惚れだったと、僕に告白してくれたのです。僕たちは両想いだったのです。なのに、僕は自分の嫉妬心から、兄上を貶めてしまった。今は反省し後悔しています。アルフレート兄上は、ガーディナー家の次期当主に相応しい人物です・・でも」

「でも?」

「でも・・だからこそ、アルフレート兄上と別れるべきではないかと、考える時もあります。義理の兄弟で婚姻する事も、まして腹違いの兄弟で婚姻など、世間も教会も忌避すべき事と捉える筈です。その二人の間に子供が出来たなら、その子が世間からどのような扱いを受けるか・・考えるだけで怖いです」

「ルチアに迷いがあるならば、もうアルフレートとの事は忘れてしまいなさい」

「父上は反対の立場なのですね?」

「当然、反対の立場だ。ルチアが自殺未遂を図った事で、私は王都での二人の関係を調べ初めた。そして、王都の邸でルチアがアルフレートに襲われた事が判明した。その事実を知った時、私はアルフレートを殺すつもりだった。だが、さらに詳しく調べると・・ルチアは襲われたのではなく、自らヒートを起こしてアルフレートと肉体関係を持った事がわかった。その事を知り私は静観する事にした。私が介入すれば、再びルチアを自殺に追いやる可能性もあった。だから、私はこう思う事にした。『ルチアが自ら生きる道を探っているのならば、親は手出しをせず見守るべきだ』自分にそう言い聞かせて・・私は耐えた」

「父上・・」

「だが、それは間違いだった。アルフレートにより、ルチアはひどく心を傷つけられた。それにも関わらず、ルチアはアルフレートを愛していると言う。今のルチアは、心の自由を失い身動きの出来ぬ状態になっている」

「切っ掛けを作ったのも、兄上を傷付けたのも僕です。自殺を図ったのも、僕の心が弱かったからで・・兄上に非はありません」

「いや、それは違う!ルチアを死に追いやったのは、明らかにアルフレートだ。私は間違いを犯した。アルフレートの父親を殺した時に、アルフレート自身も殺すべきだった」

「なっ!?」

青紫色バイオレットの瞳を鋭く光らせて、言葉を続けた。

「彼の両親と私との間に起こった過去の出来事について、アルフレートには詳しく話してはいない。何故なら、私はアルフレートを我が子だとは思ってはいないし、信用もしていないからだ」

「そんな!兄上の瞳が我々と同じ青紫色バイオレット だと仰ったのは、父上ですよ?それなのに我が子と認めず、信用もしていないだなんておかしいです!」

僕は父上が何を考えているのか、分からなくなってしまった。アルフレート兄上を我が子と思い、ガーディナー家に引き取った訳ではないのか?

「アルフレートの母親は、ガーディナー家の遠縁に当たる。先祖が同じなら、アルフレートが青紫色バイオレットの瞳を持っていてもおかしくはない。だが、彼がガーディナー家の直系ならば、我々のように一目で青紫色バイオレットだと分かる瞳をもって生まれたはずだ」

「では、私と兄上は腹違いの兄弟ではない?」

「残念だが、断言はできない。だが、私が我が子だと思い愛しているのは、ルチアだけだ。だからこそ、お前にだけは真実を伝えたい。私の過去の話を聞いてくれるかい、ルチア?」


◆◆◆◆◆◆
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

処理中です...