義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

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父上と秘密のはなし3

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アルフレート兄上に非はない。だって、兄上を襲ったのは僕の方だから。でも、元をただせば父上にも問題があったはずだ。

「兄上には非はありません!悪いのは全て僕です。いえ、父上の責任も大きいです!」

「私に責任があるのかい?」

「僕の母上は亡くなる直前まで、後継ぎとなるアルファを生めなかった事を気にしていました。父上に申し訳ないと、病床で何度も言っていました。父上も覚えているでしょ?」

「そうだね、ルチア。気にすることはないと、何度もアルカディーには伝えた。だが、彼女は真面目で責任感が強い人だった。それが仇となり、死期を早めたのかと思うと・・辛いよ」

父上が小さな声で呟く。きっと本心だろう。父上と母上は互いに想い合っていたから。

「父上には、母上に後継ぎの心配はないと伝えて欲しかった。だって、上位オメガの僕にも、ガーディナー家の後継ぎとなる資格があったのだから。法律により、上位オメガは後継ぎとなる資格を有すると、定められているのだから」

「法律上は確かにそうだね」

「僕が後継ぎとなるから心配ないと、父上の口から母上に説明して欲しかった。でも、父上は僕を後継ぎとは認めてくれなかった。だから、僕は自分で母上に伝えたよ。僕がガーディナー家の後継ぎになるって。そうしたら、母上は穏やかに笑って『頑張りなさい』と言ってくれました。母上は僕の髪を撫でながら、応援してくれたのです、父上」

「・・ルチア」

「母上が亡くなった後も、僕は次期当主に相応しい人物になろうと、頑張ってきたつもりです。なのに、父上はオメガである僕の努力など、少しも認めてはくれなかった。父上が後継ぎに選んだのは、後妻の子のアルフレート兄上だった。上位アルファのアルフレート兄上を、父上は次期当主に指名した」

「私はルチアの努力は認めている。確かに、上位オメガが当主となることは、法律で認められている。だが、当主のオメガが婚姻した時点で、当主の座は別の者に移る。この法律は、一家の幼いアルファが当主となるまでの間、オメガが繋ぎとして当主になる事を認めているに過ぎない。その事は、ルチア自身も分かっていたはずだよ?法律書を繰り返し読んでいた、ルチアならね」

「勿論、分かっています!父上がアルフレート兄上を次期当主に指名した以上、僕にはすでに勝ち目はなかった。でも、僕は悪知恵を働かせた。もしも、アルフレート兄上が不祥事を起こしたなら?もしも、僕と兄上が性的関係を持ったらどうなる?それを父上が知ったなら?僕はアルフレート兄上をガーディナー家から追い出すために必死だった。兄上を追い出せば、僕が次期当主になれるから」

「それほど次期当主になりたかったのかい?」

「・・もしも僕がオメガ女子なら、親の定めたアルファに嫁いで正妻として生きたと思います。でも、僕は男です。オメガ男子が、正妻に求められる事は稀です。侯爵子息だから、多分貴族の側室にはなれると思う。でも、誰かの一番にはなれない。それは絶対に嫌だった」

我が儘な自分が恥ずかしくて堪らない。オメガの男に生まれた時点で、僕が伴侶の愛を独り占めに出来ない事は分かっていたのに・・

それでも、僕は自分の気持ちを偽ることは出来なかった。


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