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父上と秘密のはなし2
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◆◆◆◆◆
「この国では殆んど、この瞳の色は見かけない。もしかすると、ガーディナー家の先祖は、大昔に別の大陸からこの地にやって来たのかもしれないね」
「・・壮大ですね」
「そうだね」
父上が僕の瞳を見つめたまま、ゆっくりと語りかけてきた。
「学生寮で起こった出来事を、アルフレートは全て私に告白した。その上で、ルチアを正妻として迎えたいと言ってきた。責任を感じての事かと問えば、愛しているからだとアルフレートは答えた。その時点では、私は結論を先送りにした。ルチアと話をする必要を感じたからね。デリケートな話だが、ルチアの気持ちを隠さず父に教えてくれるかな?」
「はうっ、分かりました・・父上」
アルフレート兄上~!
僕に相談なしで父上に直撃するとか、それはなしでしょ!?
学生寮での出来事以降、兄上は僕によそよそしい態度を取っていた。てっきり、僕に別れを切り出すタイミングを、兄上が計っているのだと思っていたのに・・。
まさか、父上に僕との婚姻を申し出ていたなんて!父上に特攻を仕掛けるなら、僕に一言相談してください、アルフレート兄上!
「・・父上。学生寮で起こった出来事を、僕からも説明させてください。あの日、僕はたまたま兄上の部屋にいて、突然のヒートに襲われました。アルフレート兄上は、すぐに部屋を出ようとしました。ですが、僕は情欲を抑えられず兄上に抱きついて、部屋に引き止めてしまったのです」
「なるほど。話の続きを、ルチア」
「はい、父上。その際に、アルフレート兄上から、僕たちが腹違いの兄弟である可能性があると、知らされました。僕はとても驚いて動揺しました。それでも、僕は兄上に抱きつき引き止め続けました。そして、室内に僕のフェロモンが充満。やがて、フェロモンに屈した兄上は発情しました。こうして、僕と兄上は性的関係を持ちました」
「・・腹違いの兄弟かもしれないと、ルチアはこの時に初めて知った訳だね?だが、アルフレートはそれ以前から疑いを抱いていた。それにも関わらず、アルフレートはルチアを抱いた」
父上の鋭い指摘に、僕は泣きそうになった。僕は俯いて表情を隠しながら、何とか言葉を紡ぎだす。
「父上もアルファ性ならば、兄上がオメガのフェロモンに抗えない事は本能的に分かるでしょ?アルフレート兄上に落ち度はありません。全て不可抗力だったのです、父上!」
父上が深いため息を付いた。それだけで、僕は体を震わせていた。父上は少し沈黙した後に、言葉を発した。
「二人は学生寮で初めて、情交を交わしたわけではないはずだ。王都の邸でも情交を交わしていた。だが、アルフレートはその事を伏せて、ルチアとの婚姻を申し出てきた。それは不誠実な態度だとは思わないかい、ルチア?」
はっとして、僕は父上を見る。視線が合ったが、僕が先に目を反らした。
「父上はご存知だったのですね」
「私はガーディナー家の現当主だよ?王都の邸での出来事といえども耳には入る。私が領地の屋敷に引きこもっていてもね。もっとも、私が二人の関係を知ったのは、ルチアの自殺未遂の後の事だったが・・」
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「この国では殆んど、この瞳の色は見かけない。もしかすると、ガーディナー家の先祖は、大昔に別の大陸からこの地にやって来たのかもしれないね」
「・・壮大ですね」
「そうだね」
父上が僕の瞳を見つめたまま、ゆっくりと語りかけてきた。
「学生寮で起こった出来事を、アルフレートは全て私に告白した。その上で、ルチアを正妻として迎えたいと言ってきた。責任を感じての事かと問えば、愛しているからだとアルフレートは答えた。その時点では、私は結論を先送りにした。ルチアと話をする必要を感じたからね。デリケートな話だが、ルチアの気持ちを隠さず父に教えてくれるかな?」
「はうっ、分かりました・・父上」
アルフレート兄上~!
僕に相談なしで父上に直撃するとか、それはなしでしょ!?
学生寮での出来事以降、兄上は僕によそよそしい態度を取っていた。てっきり、僕に別れを切り出すタイミングを、兄上が計っているのだと思っていたのに・・。
まさか、父上に僕との婚姻を申し出ていたなんて!父上に特攻を仕掛けるなら、僕に一言相談してください、アルフレート兄上!
「・・父上。学生寮で起こった出来事を、僕からも説明させてください。あの日、僕はたまたま兄上の部屋にいて、突然のヒートに襲われました。アルフレート兄上は、すぐに部屋を出ようとしました。ですが、僕は情欲を抑えられず兄上に抱きついて、部屋に引き止めてしまったのです」
「なるほど。話の続きを、ルチア」
「はい、父上。その際に、アルフレート兄上から、僕たちが腹違いの兄弟である可能性があると、知らされました。僕はとても驚いて動揺しました。それでも、僕は兄上に抱きつき引き止め続けました。そして、室内に僕のフェロモンが充満。やがて、フェロモンに屈した兄上は発情しました。こうして、僕と兄上は性的関係を持ちました」
「・・腹違いの兄弟かもしれないと、ルチアはこの時に初めて知った訳だね?だが、アルフレートはそれ以前から疑いを抱いていた。それにも関わらず、アルフレートはルチアを抱いた」
父上の鋭い指摘に、僕は泣きそうになった。僕は俯いて表情を隠しながら、何とか言葉を紡ぎだす。
「父上もアルファ性ならば、兄上がオメガのフェロモンに抗えない事は本能的に分かるでしょ?アルフレート兄上に落ち度はありません。全て不可抗力だったのです、父上!」
父上が深いため息を付いた。それだけで、僕は体を震わせていた。父上は少し沈黙した後に、言葉を発した。
「二人は学生寮で初めて、情交を交わしたわけではないはずだ。王都の邸でも情交を交わしていた。だが、アルフレートはその事を伏せて、ルチアとの婚姻を申し出てきた。それは不誠実な態度だとは思わないかい、ルチア?」
はっとして、僕は父上を見る。視線が合ったが、僕が先に目を反らした。
「父上はご存知だったのですね」
「私はガーディナー家の現当主だよ?王都の邸での出来事といえども耳には入る。私が領地の屋敷に引きこもっていてもね。もっとも、私が二人の関係を知ったのは、ルチアの自殺未遂の後の事だったが・・」
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