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ケルスティン = ガーディナー
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◆◆◆◆◆
ガーディナー侯爵家の現当主。ケルスティン = ガーディナーが、何故か目の前に立っていた。
「はうっ、父上!?」
「うぉ、ケルスティン卿!?」
僕とラケールは父上を見て、ほぼ同時に呻き声をあげていた。すると、僕たちの反応を楽しむように、父上はちょっと意地悪な笑みを浮かべた。
僕の父上はどんな笑みを浮かべようとも、品位を失わない特殊体質だ。さらに述べるなら、父上が笑みを浮かべると、アルファの色気が品よく漂い、オメガの僕はメロメロになってしまう。
つまり、僕は重度のファザコンである。
「引きこもり体質の父上が、領地から王都にいらっしゃるとは・・一体、何があったのですか?しかも、病院でお会いするなんて!もしや、父上は大病を患っておられるのですか?ルチアは心配で今にも泣きそうです!」
「私は確かに引きこもり体質だが、大病などはしていないから安心しなさい、ルチア」
「それを聞き安心しました、父上」
「だが、引きこもりの私にとり、王都で過ごす日々は非常にハードだった。私はルチアが入院したと聞き、すぐに王都に駆けつけたんだよ?だが、病院で見舞いを断られた。理由を問えば、医者は淡々と説明した。『ヒートを起こしているオメガには父親でも会えません』とね。だが、その医者の態度があまりに腹立たしくて、ちょっと威嚇したら軟弱にも彼は気絶してしまった」
「ええ!?」
「その後、病院に兵士がやって来て、私は王城に連行されてしまった。だが、今日ようやく解放されてね。こうして、ルチアの行方を探していたところだ。そして、ここにたどり着いた。とにかく、ルチアが元気そうで私は満足だよ。領地から出てきた甲斐があった」
「ち、父上・・」
悪びれる事なく、父上が王都で過ごした日々を語った。ラケールも僕も、顔がひきつりそうになったが・・何とか耐えた。
「王城ではどのように過ごされていたのですか?まさか、牢獄に・・」
僕の言葉に父上はからりと笑う。
「侯爵家現当主を牢獄に入れるには、色々と根回しが必要だろうね?病院に兵士を向かわせたのは、陛下だったよ。領地から久しぶりに出てきた学友に、相談事がしたかったらしい。そのために、一週間も王城に留め置かれた。甚だ迷惑な話だよ。そう思うだろ、ルチア?」
「父上、不敬にあたります。お話は邸で伺いますので、とにかく帰りましょう」
父上と出会った以上、アンリの見舞い兼監視は次の機会にしよう。
「そうだね、ルチア。ラケール、ルチアは私が貰っていくが構わないね?」
「も、もちろんです。どうぞ、お連れ下さい」
「病室を出たとき、私のルチアと君が手を繋いでいたように見えたのだが、気のせいかな?」
「気のせいです!」
「ルチアを『運命の番』と呼んでいるとの噂を耳にしたのだが・・それは、真実かい?」
ラケールが、めっちゃ震えだした。だが、震えながらもはっきりと宣言した。
「ルチアは、俺の『運命の番』です!」
「・・そうか」
次の瞬間、父上からとんでもない威嚇が放たれた。そして、ラケールは昏倒した。床に倒れた拍子に、ラケールは指の骨を折った。そして、再入院となってしまった。
おうぅ~、ごめんよ、ラケール!
◆◆◆◆◆
ガーディナー侯爵家の現当主。ケルスティン = ガーディナーが、何故か目の前に立っていた。
「はうっ、父上!?」
「うぉ、ケルスティン卿!?」
僕とラケールは父上を見て、ほぼ同時に呻き声をあげていた。すると、僕たちの反応を楽しむように、父上はちょっと意地悪な笑みを浮かべた。
僕の父上はどんな笑みを浮かべようとも、品位を失わない特殊体質だ。さらに述べるなら、父上が笑みを浮かべると、アルファの色気が品よく漂い、オメガの僕はメロメロになってしまう。
つまり、僕は重度のファザコンである。
「引きこもり体質の父上が、領地から王都にいらっしゃるとは・・一体、何があったのですか?しかも、病院でお会いするなんて!もしや、父上は大病を患っておられるのですか?ルチアは心配で今にも泣きそうです!」
「私は確かに引きこもり体質だが、大病などはしていないから安心しなさい、ルチア」
「それを聞き安心しました、父上」
「だが、引きこもりの私にとり、王都で過ごす日々は非常にハードだった。私はルチアが入院したと聞き、すぐに王都に駆けつけたんだよ?だが、病院で見舞いを断られた。理由を問えば、医者は淡々と説明した。『ヒートを起こしているオメガには父親でも会えません』とね。だが、その医者の態度があまりに腹立たしくて、ちょっと威嚇したら軟弱にも彼は気絶してしまった」
「ええ!?」
「その後、病院に兵士がやって来て、私は王城に連行されてしまった。だが、今日ようやく解放されてね。こうして、ルチアの行方を探していたところだ。そして、ここにたどり着いた。とにかく、ルチアが元気そうで私は満足だよ。領地から出てきた甲斐があった」
「ち、父上・・」
悪びれる事なく、父上が王都で過ごした日々を語った。ラケールも僕も、顔がひきつりそうになったが・・何とか耐えた。
「王城ではどのように過ごされていたのですか?まさか、牢獄に・・」
僕の言葉に父上はからりと笑う。
「侯爵家現当主を牢獄に入れるには、色々と根回しが必要だろうね?病院に兵士を向かわせたのは、陛下だったよ。領地から久しぶりに出てきた学友に、相談事がしたかったらしい。そのために、一週間も王城に留め置かれた。甚だ迷惑な話だよ。そう思うだろ、ルチア?」
「父上、不敬にあたります。お話は邸で伺いますので、とにかく帰りましょう」
父上と出会った以上、アンリの見舞い兼監視は次の機会にしよう。
「そうだね、ルチア。ラケール、ルチアは私が貰っていくが構わないね?」
「も、もちろんです。どうぞ、お連れ下さい」
「病室を出たとき、私のルチアと君が手を繋いでいたように見えたのだが、気のせいかな?」
「気のせいです!」
「ルチアを『運命の番』と呼んでいるとの噂を耳にしたのだが・・それは、真実かい?」
ラケールが、めっちゃ震えだした。だが、震えながらもはっきりと宣言した。
「ルチアは、俺の『運命の番』です!」
「・・そうか」
次の瞬間、父上からとんでもない威嚇が放たれた。そして、ラケールは昏倒した。床に倒れた拍子に、ラケールは指の骨を折った。そして、再入院となってしまった。
おうぅ~、ごめんよ、ラケール!
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