義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
28 / 119

腐男子は倫理観に欠ける

しおりを挟む
◆◆◆◆◆


アルファ同士の闘争で肋骨にヒビ。その上、レスキュー隊からスタンガン銃を食らったラケールだが、今日ようやく退院の運びとなった。

「いやぁ、アルフレート兄上と腹違いの兄弟かもしれないって知った時は、流石に参ったよ。でも、『愛』さえあれば全てが許される。それが『腐の沼』だと思うんだよね、僕は。ねえ、ラケールもそう思うでしょ?」

オメガ専用病棟に入院していた僕だが、一週間の療養を終えてラケールより先に退院した。なので、僕はまだ傷が完全に癒えぬ、偽『運命の番』の為に退院準備を手伝いに来ていた。

僕って何気に健気だ。

「『フノヌマ』?いや、ルチアの事だから『腐の沼』だな!やはり俺たちは、運命の番だ。『腐の沼』が理解できるこの不思議!」

「さすが、偽物の『運命の番』!」

「そこは、真実の『運命の番』だろうが!つうか、腹違いの兄弟疑惑が浮上して、なに平然としている!?ルチア、正気に戻れ。お前の考え方は、完全に世間から逸脱しているから!くそ、お前を退院させた医者は、やぶ医者に違いない。もう少し入院して静養すべきだ。至高の病室を俺が用意する。勿論、入院費は俺が全て持つ!何故なら、運命の番だから!」

「何言ってるの、ラケール?僕は見ての通り正気だよ?でも、上位オメガの僕は完全にヒートをなめていたな。一週間も続くヒートを初体験して、下位オメガの苦しみを少しだけ理解できた。上位オメガの僕でも社会進出が難しいのに、下位オメガが苦労するわけだ。ぼくはオメガ支援団体に、多額の寄付をするつもり。ラケールも寄付に協力してよ」

僕が上目遣いでラケールを見つめると、何故か彼は憐れみの表情を浮かべていた。その表情は止めてくれ!

「常識的な発言をしても、ルチアの『腐の沼』発言が全てを台無しにしているぞ。その事に何故気がつかない、ルチア?オメガ支援団体への寄付には異存はない。だが、その代わりに、ルチアは再入院してくれ。性的倫理観が以前から欠如しているとは思っていたが、これ程とは思わなかった。認知行動療法による改善を望む。『運命の番』として、ルチアが心配過ぎる!」

「もう!せっかく退院の手伝いに来たのに、感謝の言葉さえないとは。ラケールこそ、世間の常識から外れてるよ。兄上とのこれからの関係について、相談に乗ってもらうつもりだったのに・・ラケールの意地悪。う、ううっ」

うそ泣きをしてみた。

「幼馴染にうそ泣きが通じると思っているのか、ルチア。しかし、頭ごなしにルチアを否定したことは謝る。そうか、ルチアは『運命の番』の俺を頼りにしているわけだな!アルフレートとは別れるべきだとは思うが、ルチアの相談には乗る。で、アルフレートの反応はどうなっている?」

流石、幼馴染!僕のうそ泣きを見破るとは。だけど、アルフレート兄上の事を話そうとすると胸が痛くなって、本当に泣きようになる。

「学生寮では・・あんなにも荒々しく甘く抱いて、僕に『愛している』と何度も言ってくれたのに。今はすごくよそよそしくて。アルフレート兄上の気持ちがどこにあるのか、僕には分からないんだ。すごく辛い。慰めて、ラケール」

「すげー、慰めたくない!なにその甘いお話。俺の心がズタズタになる。慰めたりするかよ。ん?えっ、まて!泣くことないだろ。しかも、本気で泣くとかありかよ。あー、もう!」

ラケールが泣き出した僕を抱き締めてくれた。僕もラケールに抱きつく。

「そんな優柔不断な奴とは別れろ、ルチア」
「簡単に言わないで、ラケール」
「とにかく、その・・相談にはのる」
「ありがとう、ラケール」

僕だって、一応は世間一般の倫理観は持ってる。だけど、感情がそれを凌駕するのだから困っているんだ。


◆◆◆◆◆

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

処理中です...