義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

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ラケールの館内放送

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◆◆◆◆◆

兄上は難しい顔をしながら、言葉を紡ぐ。

「理解はしたが、納得はしていない。ラケールは、明らかにルチアを囲いに掛かっている。だが、俺の調べでは、ラケールは今のところベータしか抱いていない。あの年齢でオメガを抱かないなど、通常はあり得ない。もはや、性癖と捉えるしかない。ルチアは『運命の番』として正妻に迎えられるかもしれない。だが、侯爵婦人の役目のみを背負わされて、ラケールから愛されることはない。そんな不幸な人生を、この兄が認められると思うか?」

「兄上・・」

僕とアルフレート兄上との会話は、平行線を辿っていた。互いに行き詰まりを感じていた。それでも、何かしらの結論を出すべく、再び会話を再開しようとした時に、それは起こった。

突然、学生寮内に館内放送が流れた。しかも、ラケールの声だった。僕は唖然としながら館内放送に耳を傾ける。

『緊急時のため、寮長の許可を得てこの放送を流しています。俺の名はラケール = トゥリエル。侯爵位トゥリエル家の次期当主です。現在、学生寮でアクシデントが発生中です。オメガ性をヒートさせる化学物質が、館内に蔓延しつつあります。オメガ性の皆様は、速やかに自室に戻り内鍵を掛けてください。現在、救助要請をしております。レスキュー隊が部屋を訪れるまでは、ヒートが起きても勝手に廊下にでないでください。アルファ性に襲われる危険があります。では、寮長、一言お願いします』

ザーザー

『寮長のホプキン = ブラウンだ。学園側が各方面に救助要請をしている。必ず助けはくる。オメガ性は身を守る為に、絶対に部屋から出ない様に。以上だ』

「何があったのかな?」
「ルチア、体に異変はないか?」
「今のところは」
「俺は部屋を出るべきかもしれないな」
「まだ話の途中です、兄上!」
「しかし・・」

ザーザー 

『ここからは、私信だ。ルチア聞いてるか?匿名希望Aが非常にまずいことになっている。俺は匿名希望Aを、俺の部屋に連れ込み保護した。だが、そこでヒートが発生。匿名希望Aから、フェロモンが発せられた。だが、それが、物凄く臭かった!いや、匿名希望Aを貶すつもりはない!おそらく、抑制剤と違法薬物の服用により、体内で化学変化を起こしたフェロモンが作り出されたと思われる。ただし、臭いだけなら問題はなかった。匿名希望Aが発するフェロモンには、オメガ性のヒートを誘発させる物質が含まれている可能性が高い。実際に放送室に駆け込むまでに、ヒートしたオメガを数人目撃した。原因物質の特定は専門家に任せる。匿名希望Aを、緊急入院させる手配を整えている。ルチアは上位オメガだが、影響があるかもしれない。もしも、誰かと一緒に部屋にいるなら、そいつに即座に出ていくように要請しろ。いいな!わかったな、ルチア!』

ラケールは、何を言っているんだ?匿名希望Aとは、ゲーム主人公のアンリの事だよな?アンリのフェロモンが、臭いわけないだろ!彼のフェロモンは爽やかなフローラルな香りだと、ゲーム内では表記されていたもの。

もしや、ラケールはオメガ性のフェロモンを臭く感じる特殊体質の為に「ベータ専」になっちゃったのかな?え~、ラケール可哀想ww

んん、ぐふっ!?
部屋に異臭が漂ってきたが・・まさか?

「この臭いは・・暴力的だな」
「う、くさっ」
「とにかく、俺は部屋をでる!」
「待って下さい、あにうえ~」

僕は部屋から逃げ出そうとする兄上の腰に、しがみついていた。何故なら、兄上の腰が好きだから~!ぶら下がるペニスが欲しいからぁ~!

「うう、対処がぁ~遅れましたぁ!ヒートきちゃっいましたぁ~あ。兄上、部屋から出ていかないでぇ~。兄上のペニスを中にくらさい。孕みたい。孕みたい。あ、あん、あん、だめえ。出ちゃう、いやぁ、ん!ああっあー!」

アルフレート兄上のベッドの上で、射精してしまった。ひー、すみません!

「ルチアの全身からフェロモンが香る!!くっ。すまない。我慢できない。花香る美しいルチア。俺のルチア!」

「兄上~、いやぁ~ん!花香るルチアは、ただいま満開ですぅ~!!」

アルフレート兄上が僕をベッドに押し倒した。


◆◆◆◆◆
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