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なぜこうなった
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◆◆◆◆◆
僕を見て!振り向いて、兄上!
「アルフレート兄上、僕に用があるのでしょ?僕も兄上に重要な話があります。弟をアルファの『支配下』に置いたまま、兄上は去るつもりですか?それでも、兄上はアルファ性ですか!情けない限りです。侯爵家次期当主として、兄上は闘争心が足りない。アルファ性ならば、僕を支配下に置く二人を『威嚇』して、追い払うくらいの事をしてみてはどうです、アルフレート兄上?」
僕は言葉で兄上を煽った。アルフレート兄上が煽りに乗るとは思えないが、振り返って欲しかった。僕をもっと求めて欲しかった。
そして、それは起こった。アルフレート兄上が、二人に「威嚇」を放ったのだ。
アンリが突然床に座り込み、僕の腕から手を離した。でも、アンリは気を失った訳ではない。兄上は手加減をして、威嚇を放ってくれたみたい。だって、上位アルファが本気で「威嚇」したら、オメガ性は気絶するからね。
でも、手加減した「威嚇」では、上位アルファのラケールには通じない。ラケールは、僕の腕を掴んだままだ。
「はっ、ルチアに煽られて『威嚇』を放つとは、アルフレートらしくない行動だな?ルチアが俺の『運命の番』になった途端に、焦りが出たようだな?ようやく、ルチアはお前との縁を切るつもりでいるのに、今頃になってルチアに対して支配欲を見せるな、アルフレート!」
「黙れ、ラケール!」
ラケールとアルフレートの本気の「威嚇」がぶつかり合った。僕はラケールの腕から逃れて、しゃがみこんだ。目の前にはアンリがいて、彼を引き寄せさらに床に伏せる。
「まずい、まずい!」
アルファ同士の威嚇のぶつかり合いが、クラスメイト全体を刺激した。Aクラスの上位アルファが、支配欲を露にして、周囲を威嚇し出した。止めに入るべき先生まで、目をギラギラさせている。
「・・アルファに支配されたい」
突然、アンリがぼそっと呟いた。僕は驚いてアンリに、視線を送った。アンリの頬が火照っている。薬を飲んでいても、ヒートを起こすかもしれない。そうなったら悲惨だ。教室でアンリが輪姦される。
「まじ、やばい!」
しかも、僕の体にも異変が起こりつつあった。オメガの本能を刺激されたのか、上位オメガなら操れるはずのヒートがうまく抑え込めない。
「ラケール!ラケール!」
「ん、ん??」
「正気にもどった?」
「ちょい、興奮中だ!おお、クラスメイトが威嚇し合ってる。すげー!イェーイ!」
「正気に戻れ、忠犬ラケール!そしてよく聞いて!アンリを安全な場所に移動させて!このままじゃ、アンリがヒートを起こすかもしれない。そうなったら、クラスメイトに喰われ放題だ。唯一、死んだ魚の目ができるラケールに、アンリを託す。託したからには、アンリを襲ったら絶縁だからな。まじだから、これは!」
「ルチアも一緒に回収する」
「二人はムリだよ。アンリは、ぽっちゃり系だしな。僕はアルフレート兄上に、回収してもらう。じゃあ、よろしくね」
「ルチア!」
ラケールの言葉を無視して、僕は立ち上がった。そして、アルフレート兄上に向かい、両手を伸ばす。
兄上は即座に僕を抱き上げてくれた。そして、何故か肩に担がれた。いや、違う!ここは、お姫様抱っこ希望します、兄上ー!
「教室を出るぞ、ルチア」
「兄上、何かが違うーーー!」
◆◆◆◆◆
僕を見て!振り向いて、兄上!
「アルフレート兄上、僕に用があるのでしょ?僕も兄上に重要な話があります。弟をアルファの『支配下』に置いたまま、兄上は去るつもりですか?それでも、兄上はアルファ性ですか!情けない限りです。侯爵家次期当主として、兄上は闘争心が足りない。アルファ性ならば、僕を支配下に置く二人を『威嚇』して、追い払うくらいの事をしてみてはどうです、アルフレート兄上?」
僕は言葉で兄上を煽った。アルフレート兄上が煽りに乗るとは思えないが、振り返って欲しかった。僕をもっと求めて欲しかった。
そして、それは起こった。アルフレート兄上が、二人に「威嚇」を放ったのだ。
アンリが突然床に座り込み、僕の腕から手を離した。でも、アンリは気を失った訳ではない。兄上は手加減をして、威嚇を放ってくれたみたい。だって、上位アルファが本気で「威嚇」したら、オメガ性は気絶するからね。
でも、手加減した「威嚇」では、上位アルファのラケールには通じない。ラケールは、僕の腕を掴んだままだ。
「はっ、ルチアに煽られて『威嚇』を放つとは、アルフレートらしくない行動だな?ルチアが俺の『運命の番』になった途端に、焦りが出たようだな?ようやく、ルチアはお前との縁を切るつもりでいるのに、今頃になってルチアに対して支配欲を見せるな、アルフレート!」
「黙れ、ラケール!」
ラケールとアルフレートの本気の「威嚇」がぶつかり合った。僕はラケールの腕から逃れて、しゃがみこんだ。目の前にはアンリがいて、彼を引き寄せさらに床に伏せる。
「まずい、まずい!」
アルファ同士の威嚇のぶつかり合いが、クラスメイト全体を刺激した。Aクラスの上位アルファが、支配欲を露にして、周囲を威嚇し出した。止めに入るべき先生まで、目をギラギラさせている。
「・・アルファに支配されたい」
突然、アンリがぼそっと呟いた。僕は驚いてアンリに、視線を送った。アンリの頬が火照っている。薬を飲んでいても、ヒートを起こすかもしれない。そうなったら悲惨だ。教室でアンリが輪姦される。
「まじ、やばい!」
しかも、僕の体にも異変が起こりつつあった。オメガの本能を刺激されたのか、上位オメガなら操れるはずのヒートがうまく抑え込めない。
「ラケール!ラケール!」
「ん、ん??」
「正気にもどった?」
「ちょい、興奮中だ!おお、クラスメイトが威嚇し合ってる。すげー!イェーイ!」
「正気に戻れ、忠犬ラケール!そしてよく聞いて!アンリを安全な場所に移動させて!このままじゃ、アンリがヒートを起こすかもしれない。そうなったら、クラスメイトに喰われ放題だ。唯一、死んだ魚の目ができるラケールに、アンリを託す。託したからには、アンリを襲ったら絶縁だからな。まじだから、これは!」
「ルチアも一緒に回収する」
「二人はムリだよ。アンリは、ぽっちゃり系だしな。僕はアルフレート兄上に、回収してもらう。じゃあ、よろしくね」
「ルチア!」
ラケールの言葉を無視して、僕は立ち上がった。そして、アルフレート兄上に向かい、両手を伸ばす。
兄上は即座に僕を抱き上げてくれた。そして、何故か肩に担がれた。いや、違う!ここは、お姫様抱っこ希望します、兄上ー!
「教室を出るぞ、ルチア」
「兄上、何かが違うーーー!」
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