義兄に愛人契約を強要する悪役オメガですが、主人公が現れたら潔く身を引きます!

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
15 / 119

ラケールとアルフレート

しおりを挟む
◆◆◆◆◆

ベータ性はベータ性で愛し合う事が当たり前のゲーム世界で、上位アルファ性のラケールがベータに恋する変わり者だったとは!

 ラケールの恋は、やりチンのみで全て破局に至ったに違いない。可哀想~。

「ラケール、兄上の仰った内容は本当?」
「ルチア、待て!これは、誤解なんだ!」
「誤解?」

「そうだ!俺たちがはっきりと『運命の番』だと確認しあったのは、今朝だ!そうだよな、ルチア?俺がベータとヤッてたのは、それ以前の話だ。ルチアがあまりに身近にいて、お前が『運命の番』だと気がつくまで、あまりに時間が掛かってしまった。今は、ルチアだけだ!」

ふむ。ラケールはこの状況に至っても、「運命の番」の演技を続けるつもりのようだ。まあ、過激派の父親に嘘だとばれた瞬間に、腕をへし折られそうだものね。さて、 僕はどうすべきかな。

「ルチア」
「はい、兄上」

「ラケールの言葉に騙されては駄目だ、ルチア。アルファ性の男が発情する相手は、オメガ性に対してだけだ。ベータを相手に発情することはごく稀なことだ。ラケールは自分の性癖を隠す為に、ルチアを『運命の番』として正妻にするつもりだ。だが、正妻となっても、オメガ性のルチアはラケールから愛される事はない。そんな不幸な人生を送るな、ルチア」

俺は悪役オメガとして、兄上が掴んでいた腕を振り払った。ちょっと胸が苦しくなるが、アルフレート兄上を睨み付けて口を開いた。 

「だったら、アルフレート兄上が僕を幸せにしてくれるの?できはしないよね?僕から次期当主の座を奪って平気な顔をしている兄上に、僕の気持ちが分かるはずがないよ。さっき兄上が読んでいた書物『領地運営の全て』は、僕も読んだよ。将来役に立つと思ってね。でも、全てが無駄になった。なら、ラケールの正妻となるのも悪くないよね?ラケールの家は侯爵位だしね。それとも・・ラケールの代わりに、兄上が僕を正妻に迎えてくれるの?」

「っ!」

僕の言葉に、アルフレート兄上が言葉を詰まらせた。辛そうな兄上の表情に、胸が痛くなる。アルフレート兄上を次期当主に選んだのは、父上だ。そして、母上を大切に思う兄上が、父上からの命令に反することはできない。当然だよね。

「ルチア、おいで」
「ラケール・・」

僕は兄上に背を向けて、ラケールの手を取った。そして、呆気にとられてこちらを見ていた先生とアンリに、声を掛けた。

「ジョーバー先生。トゥリエル家現当主の父上より、『運命の番』であるルチアと共に、アンリ = プラデスの学園生活のサポートをするように、命じられています。何か手伝えることはありますか?」

ラケールが尋ねると、先生が頷き口を開いた。

「ああ、その話なら理事から聞いている。ならば、まずは問題を解決してくれ。アンリ = プラデスは、Aクラスになった事が不満らしい。双子の弟がいるBクラスに移動したいらしい」

先生の言葉に応じるように、アンリがヒステリックな声で叫んだ。ただし野太いヒステリック声だったので、たいして耳障りではない。むしろ、心地よい?さすがは、主人公だ!

「僕と双子の弟のジャクソンは『運命の番』だと、何度も言っているではないですか!なのに、AクラスとBクラスに引き裂くなんて、なんて悲劇的な事をするのですか!オメガ性の僕は、『運命の番』と引き裂かれすでに体に不調をきたしています!ああ、どうか、Bクラスに僕をクラス替えしてください。ジョーバー先生、お願いします!」

アンリ = プラデスが、拗らせてた!

いや、ゲームでは違ったはずだ。もっと、まともな人物だったはず。双子の弟が「運命の番」とか何があった、アンリよ!?



◆◆◆◆◆

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

処理中です...