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尿意
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◆◆◆◆◆
「んっ、あ‥‥どこだここ?」
目覚めたのはベッドの中だった。見慣れぬ部屋には俺以外に誰もいない。その事に安堵と不安を覚えつつ、俺は上半身を起こした。
窓の外には朝焼けに染まる森が広がっている。
「誘拐されて別荘に連れ込まれたのが夕方で‥‥睡眠薬を飲んで一晩寝たってわけか。ん‥‥‥‥。」
トイレに行きたい。
誘拐されてから一度も排尿していない。尿意で目覚めたのか。とにかく早くトイレにいかないと漏らす。
「誘拐先で漏らすとかありえないぞ。とにかくトイレを探さないと」
周囲を観察すると、ベッド脇のサイドテーブルに室内用の杖が立てかけられていた。それを手にして慎重にベッドから立ち上がる。
「トイレはどこだ?」
俺が左足を引きずりながら部屋をウロウロしていると、扉が突然開いた。そして、誘拐犯が部屋に入ってくる。
「大塚先生、おはようございます」
山崎の言葉を無視して、男の開けた扉の向こうを観察した。どうやらリビングに繋がる扉らしい。で、トイレはどこだ?
「‥‥顔色が悪いですね、先生」
「それ以上近づかないでくれ」
「今更警戒ですか?」
「悪いか」
顔色も悪くなる。
尿意がピークだ。
「もしかして、トイレをお探しですか‥‥‥大塚先生?」
図星を突かれて俺は不機嫌になりながらも頷いた。腹は立つが山崎に案内してもらうしかない。
「昨日からトイレに行ってなかったから当然ですね。気が付かづすみません。ここは先生の寝室ですから自由に使って下さい。お風呂とトイレも付いています。」
「俺の寝室‥‥‥」
「そうです。これからここが大塚先生の寝室です。それでトイレですが、こちらの扉の中に水回り設備が全て揃っています。」
男が部屋の端の扉を開き中に入る。俺が続いて部屋に入ると、山崎は指さしながら内部を説明する。
「奥がお風呂になっています。窓から森がよく見えて気持ちいいですよ。そして、洗面所と、その前の引き戸を開くとトイレがあります。」
「なるほど」
確かにトイレがあった。手すりもあり使いやすそうだ。とにかく、これで漏らさずに済む。
「わかった。トイレを借りる」
「介助をしましょうか?」
「必要ない」
「では、その間に私はお風呂の準備をしておきますね。」
「風呂は必要ない」
「それは駄目です。昨日からお風呂に入っていません。」
「いつもはデイケア先で週3回風呂を利用しているが、一週間ぐらい入らなくても大丈夫だ。」
俺の言葉を聞いた山﨑がトイレへ繋がる扉を閉じた。俺が抗議の声を上げようとすると制される。
「ここで漏らしてもらっても構いませんよ、先生。濡れた先生を浴室に連れ込み、私が体中をきれいに洗いますので」
殴りたい。だが、尿意には勝てない。俺はため息を付いて応じる。
「‥‥わかった。トイレに行かせろ」
尿意が限界の上に、誘拐犯に体を洗われるのも嫌だ。人間は折れるしかない時がある。
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「んっ、あ‥‥どこだここ?」
目覚めたのはベッドの中だった。見慣れぬ部屋には俺以外に誰もいない。その事に安堵と不安を覚えつつ、俺は上半身を起こした。
窓の外には朝焼けに染まる森が広がっている。
「誘拐されて別荘に連れ込まれたのが夕方で‥‥睡眠薬を飲んで一晩寝たってわけか。ん‥‥‥‥。」
トイレに行きたい。
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「誘拐先で漏らすとかありえないぞ。とにかくトイレを探さないと」
周囲を観察すると、ベッド脇のサイドテーブルに室内用の杖が立てかけられていた。それを手にして慎重にベッドから立ち上がる。
「トイレはどこだ?」
俺が左足を引きずりながら部屋をウロウロしていると、扉が突然開いた。そして、誘拐犯が部屋に入ってくる。
「大塚先生、おはようございます」
山崎の言葉を無視して、男の開けた扉の向こうを観察した。どうやらリビングに繋がる扉らしい。で、トイレはどこだ?
「‥‥顔色が悪いですね、先生」
「それ以上近づかないでくれ」
「今更警戒ですか?」
「悪いか」
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尿意がピークだ。
「もしかして、トイレをお探しですか‥‥‥大塚先生?」
図星を突かれて俺は不機嫌になりながらも頷いた。腹は立つが山崎に案内してもらうしかない。
「昨日からトイレに行ってなかったから当然ですね。気が付かづすみません。ここは先生の寝室ですから自由に使って下さい。お風呂とトイレも付いています。」
「俺の寝室‥‥‥」
「そうです。これからここが大塚先生の寝室です。それでトイレですが、こちらの扉の中に水回り設備が全て揃っています。」
男が部屋の端の扉を開き中に入る。俺が続いて部屋に入ると、山崎は指さしながら内部を説明する。
「奥がお風呂になっています。窓から森がよく見えて気持ちいいですよ。そして、洗面所と、その前の引き戸を開くとトイレがあります。」
「なるほど」
確かにトイレがあった。手すりもあり使いやすそうだ。とにかく、これで漏らさずに済む。
「わかった。トイレを借りる」
「介助をしましょうか?」
「必要ない」
「では、その間に私はお風呂の準備をしておきますね。」
「風呂は必要ない」
「それは駄目です。昨日からお風呂に入っていません。」
「いつもはデイケア先で週3回風呂を利用しているが、一週間ぐらい入らなくても大丈夫だ。」
俺の言葉を聞いた山﨑がトイレへ繋がる扉を閉じた。俺が抗議の声を上げようとすると制される。
「ここで漏らしてもらっても構いませんよ、先生。濡れた先生を浴室に連れ込み、私が体中をきれいに洗いますので」
殴りたい。だが、尿意には勝てない。俺はため息を付いて応じる。
「‥‥わかった。トイレに行かせろ」
尿意が限界の上に、誘拐犯に体を洗われるのも嫌だ。人間は折れるしかない時がある。
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