誘拐/監禁

月歌(ツキウタ)

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監禁②

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◆◆◆◆◆

ログハウスの前の階段を軽快な足取りで男が登っていく。抱き上げられている俺としてはもっと慎重に階段を登って欲しい。

男二人で階段を転がり落ちる姿を想像してげんなりした。

「先生?」
「‥‥‥‥。」
「どうされましたか?」

「雨はやんだが階段は濡れている。もっと慎重に階段を登るべきだろ」

「‥‥もしかして怖かったですか?」

俺が黙っていると山崎はゆっくりと階段を登り始める。そして、柔らかい声で囁いた。

「死ぬべきですよね」
「え?」

俺が驚いて山崎の顔を見ると視線が絡んだ。男は感情の読めぬ表情でなおも呟く。

「先生を車で引いた男は懲役3年の判決で服役中ですよね。糖尿病性の低血糖で意識を失っての事故だとしても‥‥あまりに刑が軽すぎます」

「‥‥‥詳しいな」

「大塚先生が小説を書けなったのは奴が原因でしょ?憎いですよね。」

『憎い』その言葉を口には出さなかったが、俺の顔にははっきりとその気持ちが現れていたに違いない。山崎は俺の顔を覗き込むと満足そうに頷いた。

「奴は報いを受けますよ」
「は?」
「刑期を終えたら事故に遭います」
「何を‥‥‥言っている?」

「言葉のままですよ。さあ、階段はここで終わり。あとはフラットな道ですが地面が濡れていますので、このままリビングまで運びますね」

階段を登り終えた男は、そのまま別荘の中に入っていった。木の香りがするログハウスの室内はすでに暖かかった。山崎は暖炉の前のソファーに俺を座らせる。

「先生、室内は土足厳禁なので靴を脱がせますね。」

「自分で脱ぐ」
「お世話をさせて下さい」

山崎は俺の言葉を遮って靴を脱がせると、靴下まで脱がせた。

「おい!」

「靴下が濡れたままでは凍えてしまいます。靴下と室内シューズを用意してますので、安心して下さい」

全然安心できない。
俺は自然と眉を歪めていた。

山崎は俺の素足を丁寧にタオルで拭うと、靴下を履かせた。そして、介護用の室内履きを取りだす。

「わざわざ介護用のシューズを用意したのか?」

「勿論です。先生には快適な状態で執筆をしてもらいたいですから。もしも履き心地が悪ければ、気楽に言ってくださいね」

俺はため息交じりに呟いていた。

「‥‥執筆はできない」
「駄目です」

山崎は俺に反論を許さぬ様に言い切った。そして、黙々と室内履きを履かせる。足にしっくりと馴染む感覚に不気味さを感じて問う。

「俺の足のサイズを調べたのか?」
「勿論です、大塚先生」

男は立ち上がって俺を見下ろすと、にこやかに返事した。



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