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『サイゼリヤの幽霊』
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◆◆◆◆◆
『運命の番』の話は早々に切り上げろと、俺の本能が囁く。俺は本能に従い山崎を牽制すべく話しかける。
「‥‥あの、栄一さん」
「はい、優斗さん!」
爽やかに返事されても、さっきの会話聞いた後じゃ怖いから!しかし、婚活とはお互いの価値観の違いを認め合い、ゴールに向かうもの。耐えろ、俺!
「その、突然なのですが‥‥すごくお腹が空いてきて。たまらなく何かを食べたいです」
「それは大変だ!ご安心下さい、優斗さん。実は以前から憧れているイタリアンレストランがあります。優斗さんとのデートでその店を利用したいと思うのですが、いかがでしょうか?」
「パスタ大好きです❥❥❥」
「それは良かった。予約をしていないので、少し待つことになるかもしれません。申し訳ない、優斗さん」
よし、話題が『運命の番』から食事デートに逸れた。このまま順調に進めよう。
「初回の食事デートがイタリアンですか。まずまずの選択ですね。しかし、予約を取っていないのは失態です、山崎さま」
黙れ~~、三日月!婚活相手をディスるな。確かに、レストランで待つのは嫌だなとは思ったけどさぁ。代弁はありがた迷惑!
「確かに三日月さんの指摘は正しい。『サイゼリヤ』に予約制度があるのかどうかを、リサーチすべきだった。」
「え?」
「え?」
俺と三日月アドバイザーは同時に声を発していた。いや、たぶん聞き違いだよな?アルファである山崎が、ベータの聖地である『サイゼリヤ』で食事をするはずがない。
同名のイタリアンレストランがあるのだろう。だが、一応探りを入れよう。
「俺はチェーン店の『サイゼリヤ』しか知らないので、高級イタリアン店の『サイゼリヤ』に行くのが楽しみです!」
俺の言葉に山崎が困った表情を浮かべながら口を開く。
「今向かっている『サイゼリヤ』はチェーン店です。ミートドリアとサラダが美味しいと評判の店です。もしや、お気に召しませんでしたか、優斗さん」
「‥‥‥‥」
「優斗さん?」
「名前呼びはやめましょう。山崎さんは婚活相手独自査定により、名字呼びに降格しました。これからは、暁月とお呼びください」
「そんな!?」
山崎アルファの声を無視して、三日月ベータに視線をむけた。そして呼びかける。
「三日月さん。『サイゼリヤ』は名字呼び降格査定にふさわしいチョイスですよね?」
三日月が助手席からグッチョブサインを示しながら、滔々と語りだした。
「その通りです、暁月さま。『サイゼリヤ』はベータの聖地です。アルファに土足で踏み込まれては困る。第一、婚活デートを安くすませる気が伝わり不快ですね。彼はオメガには400円のミラノ風ドリアを食べさせれば十分と考えているに違いありません!」
「やっぱりそうですよね~」
「間違いありません!」
俺と三日月アドバイザーが団結していると、ケチ助アルファが慌てて口を開く。
「誤解です、優斗さん!」
「暁月です」
「くっ、暁月さん。きっと貴方なら理解して下さるはず。私が『お友達から始める婚活コース』を選んだのは、耽美小説を愛読するオメガ性の方と巡り合い語り合うためです。」
「んっ、耽美小説!?」
「暁月さま、耽美小説につられてはいけません。彼は貴方を言い包める気だ!」
「確かに」
「それは違う!」
俺は山崎アルファに腕を掴まれていた。彼は真剣な表情で俺を口説く。
「‥‥私は同じ趣味の方と、耽美小説の舞台となった『サイゼリヤ』で食事をとり聖地巡礼をしたかったのです」
ま、まさか!?
「もしや、その耽美小説とは、月歌男根先生の『サイゼリヤの幽霊』ですか!」
「そうです、優斗さん!」
「おお我が友よ、栄一さん!」
俺と山崎はひしっと抱き合っていた。
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『運命の番』の話は早々に切り上げろと、俺の本能が囁く。俺は本能に従い山崎を牽制すべく話しかける。
「‥‥あの、栄一さん」
「はい、優斗さん!」
爽やかに返事されても、さっきの会話聞いた後じゃ怖いから!しかし、婚活とはお互いの価値観の違いを認め合い、ゴールに向かうもの。耐えろ、俺!
「その、突然なのですが‥‥すごくお腹が空いてきて。たまらなく何かを食べたいです」
「それは大変だ!ご安心下さい、優斗さん。実は以前から憧れているイタリアンレストランがあります。優斗さんとのデートでその店を利用したいと思うのですが、いかがでしょうか?」
「パスタ大好きです❥❥❥」
「それは良かった。予約をしていないので、少し待つことになるかもしれません。申し訳ない、優斗さん」
よし、話題が『運命の番』から食事デートに逸れた。このまま順調に進めよう。
「初回の食事デートがイタリアンですか。まずまずの選択ですね。しかし、予約を取っていないのは失態です、山崎さま」
黙れ~~、三日月!婚活相手をディスるな。確かに、レストランで待つのは嫌だなとは思ったけどさぁ。代弁はありがた迷惑!
「確かに三日月さんの指摘は正しい。『サイゼリヤ』に予約制度があるのかどうかを、リサーチすべきだった。」
「え?」
「え?」
俺と三日月アドバイザーは同時に声を発していた。いや、たぶん聞き違いだよな?アルファである山崎が、ベータの聖地である『サイゼリヤ』で食事をするはずがない。
同名のイタリアンレストランがあるのだろう。だが、一応探りを入れよう。
「俺はチェーン店の『サイゼリヤ』しか知らないので、高級イタリアン店の『サイゼリヤ』に行くのが楽しみです!」
俺の言葉に山崎が困った表情を浮かべながら口を開く。
「今向かっている『サイゼリヤ』はチェーン店です。ミートドリアとサラダが美味しいと評判の店です。もしや、お気に召しませんでしたか、優斗さん」
「‥‥‥‥」
「優斗さん?」
「名前呼びはやめましょう。山崎さんは婚活相手独自査定により、名字呼びに降格しました。これからは、暁月とお呼びください」
「そんな!?」
山崎アルファの声を無視して、三日月ベータに視線をむけた。そして呼びかける。
「三日月さん。『サイゼリヤ』は名字呼び降格査定にふさわしいチョイスですよね?」
三日月が助手席からグッチョブサインを示しながら、滔々と語りだした。
「その通りです、暁月さま。『サイゼリヤ』はベータの聖地です。アルファに土足で踏み込まれては困る。第一、婚活デートを安くすませる気が伝わり不快ですね。彼はオメガには400円のミラノ風ドリアを食べさせれば十分と考えているに違いありません!」
「やっぱりそうですよね~」
「間違いありません!」
俺と三日月アドバイザーが団結していると、ケチ助アルファが慌てて口を開く。
「誤解です、優斗さん!」
「暁月です」
「くっ、暁月さん。きっと貴方なら理解して下さるはず。私が『お友達から始める婚活コース』を選んだのは、耽美小説を愛読するオメガ性の方と巡り合い語り合うためです。」
「んっ、耽美小説!?」
「暁月さま、耽美小説につられてはいけません。彼は貴方を言い包める気だ!」
「確かに」
「それは違う!」
俺は山崎アルファに腕を掴まれていた。彼は真剣な表情で俺を口説く。
「‥‥私は同じ趣味の方と、耽美小説の舞台となった『サイゼリヤ』で食事をとり聖地巡礼をしたかったのです」
ま、まさか!?
「もしや、その耽美小説とは、月歌男根先生の『サイゼリヤの幽霊』ですか!」
「そうです、優斗さん!」
「おお我が友よ、栄一さん!」
俺と山崎はひしっと抱き合っていた。
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