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俺の為に争わないで!

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アルファの山崎とベータの三日月が睨み合っている。一触即発状態だ。俺の婚活なのに、なんで二人で盛り上がってるんだよ。

ん、待てよ?
二人に冷静になってもらうには、あの台詞を口にするしかないかも!あの憧れの台詞を紡ぐチャンス到来。

俺は二人の中に割って入ると、憧れの台詞を口にした。

「二人ともやめて!俺の為に争わないで」

俺の発言に反応して、アルファとベータが表情を消す。そして、ゆっくりと俺を見た。ヤバい!失敗したかもしれない!凡人オメガには、荷が重い台詞だった。

二人に馬鹿にされると思い俯くと、不意に腕を掴まれ引き寄せられる。

「申し訳ない、暁月さん。配慮に欠ける真似をしました。どうか不安な顔をなさらないで下さい。愛らしい表情を隠さないで欲しい」

顔をあげるとアルファのどアップだった。

眼鏡をかけていても、その整った造形は隠せない。俺は眼鏡好きだが、山崎の眼鏡を外したい衝動にかられる。

「あぅ、山崎さん❥❥❥」
「はい、暁月さん」

山崎が微笑むので、思わずデレかける。でも、表情を改めて山崎に話しかけた。

「山崎さん‥‥やはり喧嘩は駄目です」

「‥‥貴方がそう仰るなら。しかし、恋路を邪魔する者は蹴り殺して構わないと私は教わり育ちました。できればこの場でベータを処分したいのですが、駄目ですか?」

何いってんのこのアルファ??

おかしい。発言がおかしいよ、山崎さん。やっぱり、結婚相談所で婚活するアルファは、問題ありの男ばかりなのか!?

「傲慢なアルファ性むき出しですね、山崎さま?しかし、現法ではアルファであろうと、ベータに手を出せば罰せられます。それと、何時までも暁月さまの腕を掴まない。セクハラで訴えますよ!」

三日月が言葉と同時に山崎の腕を掴む。アルファに歯向かうベータを初めてみた。なんか、三日月がカッコよく見える。

「三日月さん❥❥」

「暁月さま、誤解しないで下さいね。私はNo.Ω-1050669のアドバイザーとして、アルファの山崎さまと対峙しているだけです。暁月さまを巡って争っているわけではありません」

「‥‥‥No.Ω-1050669」

数字で呼ばれたー。三日月にとっては、俺はNo.Ω-1050669に過ぎないってことか。なんか、バカらしくなってきた。

「あ~、婚活やめたいかも‥‥」

俺がそう呟くと、アルファとベータは突然距離を取った。そして、顔をちらりと合わせたあとに同時に言葉を発する。

「ベータと仲良くなりました」
「アルファは私の友です」

彼らの目的が合致したようだ。俺はそれを見定めて、言葉を紡ぐ。

「では、三人で婚活デートを始めます!」

俺は三日月が貶した山崎の軽自動車に向かい歩き出した。

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