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売れ残りアルファの現状

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◆◆◆◆

三日月アドバイザーが俺を見つめながら、低い声で語りだす。怖い‥‥。

「まずはご理解いただきたい点がございます、暁月さま」
「うっ、はい」

俺は身構えてアドバイザーの言葉を待つ。

「いいですか、暁月さま?優良物件アルファは結婚相談所『寿屋』を利用しません。結婚相談所に登録される皆様は、優良物件になりそこねた方々なのです!」

「はっ?」

思いっきり差別発言を吐く三日月アドバイザー。いや、言いすぎだろ?えー?

「優良物件アルファは十代で才覚を表します。その優良物件を狙いオメガが群がります。その競争に勝ち残った優良物件オメガがめでたく成婚を果たすのです。そして、その競争に負けたオメガやアルファが結婚相談所の主な利用者となります」

「た、確かに‥‥」

元婚約者は俺の幼馴染だが、確かに十代から学生の傍ら投資で儲けて一財産作っていた。二十歳で結婚を申し込まれたけど、俺は中々踏ん切りがつかずに25歳まで婚約状態を続けた。

その結果、幼馴染は運命の人と出逢い番ってしまう。ううっ、俺が覚悟を決めてあいつの申込みを受けていたら、今頃は「優良物件アルファ‰∆€」を手に入れられたのに!失敗した感が半端ない。

「いえ、暁月さまは『優良物件アルファ‰∆€』と番わなくて正解でした。婚姻後にアルファに運命の番が現れた場合、オメガは悲惨な末路を辿ることが多いので‥‥」

「‥‥また独り言を言ってましたか?」

「言ってました‥‥改善が必要ですね。運命の番が現れ婚約破棄や離婚に至るケースでは、その後の追跡調査が義務付けられています。その調査結果によると、番った後の離婚が最もオメガに深いダメージを与えます」

「つまり、障害年金一級の方ですね?」

「そうです。アルファに番われたオメガがその相手を喪ったとき、様々な反応を見せます。人間不信が深まり家族すら信じられず、痩せ細り強制入院になる方もいます。反対に、性に奔放になり身を崩す方もいますね」

俺は思わずネックチョーカーに触れる。なんだか、アルファと番になることが怖くなってきた。そんな俺の様子を見つめながら三日月が言葉を紡ぐ。

「私はベータの為、『番う』事を本質的に理解はできません。ただ、アルファ性とオメガ性が番う事を羨ましく感じています。本能から互いに求め合うことは素晴らしいことです。暁月さまが元婚約者と『番う』選択をしなかったのは、本能で『この相手は違う』と感じ取ったのかもしれません。」

「俺はただためらっただけです。オメガは元々自由な生き方は出来ないけど‥‥番ったらもっと自由を喪う気がして‥‥」

俺はいつの間にか涙ぐんでいた。今でも、幼馴染と番った未来を考える事がある。もし、20歳で婚姻していたら‥‥あいつは運命の人と巡り合わず俺と一生を共にしたのではないのか?

それとも、やっぱり運命の番は現れて‥‥あいつは俺の前から去っていったのかな?


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