BLモブが主人公凌辱イベントに巻き込まれました

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
56 / 59

第56話 アルフレッドの正体

しおりを挟む
◆◆◆◆◆◆


まだ入院中だ。やはり、誰かがソフト監禁をおこなっているとしか思えない。まあ、退院は出来ないが、見舞い客がひっきりなしに来るので、暇はしていないが。

今日は、アルフレッド・ノーマンがやって来た。沢山の高級なお菓子を持って、見舞いに来てくれた。僕はお菓子を食べながら、兼ねてからの疑問を口にしていた。

「アルフレッド・ノーマン、君が何者なのかそろそろ教えてくれる?」

アルフレッド・ノーマンは、相変わらずニコニコと微笑みながら答える。

「突然どうしたんだい、ライカ=ベラドンナ?俺が何者かと問われると、君の恋人だと思うのだか・・違うのかい?ところで、こちらのお菓子も美味しいよ、ライカ」

「お菓子は頂きます。はむっ、はむっ、」

アルフレッド・ノーマンが持ってきてくれるお菓子は、何時も最高に旨い。何故なら、高級品だから!高級な菓子はやはり美味しい。すっかり餌付けされているが、その自覚があるから問題はない。

「僕は君の声の主から、『俺を攻略してみろ』と言われて、BLゲームを手渡された。クソゲーだったが、君の声の主に惚れていた僕はゲームに熱中した。そして、気がつくとBLゲームの世界に来ていた」

「ふむ、なるほど・・続けて、ライカ」

「この世界の攻略対象者は、皆がスペシャルだった。モブの僕には眩しすぎた。中でも、アルフレッド・ノーマンは、特別にスペシャル。年齢不詳で、学園の創立から存在して、理事長さえ突破できない魔方陣を作る。全くもって、正体不明で、全てが規格外な存在だよね?」

アルフレッド・ノーマンは、黙って僕を見つめていた。僕はアルフレッドを見つめ返して、口を開いた。

「アルフレッド・ノーマン、君は何者?」

「そうだねぇ・・この世界では、最も力を持った存在だとは思うよ?魔界と人間界を行き来して、気に入った人間を魔界に連れ帰ったり。まあ、退屈しのぎだね。そして、その過程で、アイリス=スノードロップに出逢い・・俺は恋に落ちた」

「アルフレッドは、本当は僕ではなく・・アイリスが好きなんだね?」

アルフレッド・ノーマンは少し嗤った。

「最初だけね。俺は、人間のアイリスに本気で恋をしたと思い心を踊らせた。たが、俺はすぐに、違和感に気がつく。俺の口から発せられる『愛の言葉』は、アイリスではなく、別の人物に向けられたものだったからだ」

「・・・?」

アルフレッドは、俺の髪に優しく触れる。

「理解できないか?とにかく、自分の発する言葉に、違和感を感じるのは不快なものだよ、ライカ。だから、原因を探ることにした。この世界では、俺は万能だからね。俺の言葉に宿った想いを辿っていくと・・別世界の存在にぶつかった。俺は持てる力を最大に使い、別世界を覗き見した。すると、部屋で寝ころがって、惰眠を貪る君がいた」

「僕に辿り着いたの?」

「そうだ。俺が発する『愛の言葉』は、全て君に向けられたものだった。その事に気がついた俺は、君を俺の元に呼び寄せずにはいられなかった。体ごとは無理だったが、魂をこの世界に取り込むことには成功した」

「魂をこの世界に取り込んだ!?凄いなー。なんて、チートなアルフレッド!チープインパクトな話には、チート能力は欠かせないよね!」

「ふむ。君の反応は何時も面白いね・・そして、理解不能だ。さて、時を操り過去に戻った俺は、君の魂を赤ん坊のアイリスの魂と入れ替えるつもりだった。だが、思いの外、アイリスの魂は強かった。二つの魂はぶつかり合った結果、君はアイリスの体から追い出された」

「無茶するなぁ。相手はアイリスだよ?この世界の主人公だよ?最強にモブをぶつけるとか、無茶だ、無茶過ぎる!!」

「アイリスの体に君の魂が宿れば、俺は違和感を感じることなく、アイリスに『愛』を囁けると思ったのだけれどね。まあ、失敗したなら諦めるしかない。それより、体を失った魂はすぐに壊れる。俺は、急いで魂を入れる器を探し出さなければならなかった」

「それが、ライカ=ベラドンナ?」

「ハッシュ・アルカロイドの幼馴染みで、風紀委員にも関わりを持つ人物。都合が良かった。何時ものライカは、つまらない人物だ。だが、君の魂が入ったライカは、実に楽しい人物となった。久しぶりに、楽しくて時を忘れ人のように過ごす事ができた。予想外だったのは、君の魂が入ったライカに、ハッシュが異常に執着したこと位かな。何時もは、幼馴染みの枠を越えようとはしないのに・・不思議だね」

「ライカの体を勝手に奪って申し訳ないな」

「気にするの事はない。この世界は、幾度も繰り返す。今回だけ、君の魂をライカの体に入れたとして、どれ程の不都合がある?それに、世界が終わる直前に、君の魂は元の世界に戻れるように手配済みだ。だから、何も心配は要らないよ、ライカ?」

「チートが、チート過ぎる!アルフレッドは、この世界が繰り返している事を知っていたんだね?世界が終わる瞬間を、何度も経験したの?世界の終わりはどんな感じ?僕も、経験したいな」

「何度も経験した。だか、お前はやめておけ。ところで、君は俺と共に魔界に来てくれるのだろうね、ライカ=ベラドンナ?」

僕はアルフレッド・ノーマンの顔を真っ直ぐに見つめた。そして、首を振った。

「僕は・・アルフレッド・ノーマンの声に『僕への愛』を込めてくれた親友に、思いきって告白するつもり。体の関係から始まったけど、やっぱり恋人になりたいから」

「なるほど。だが、それは・・この世界が終わった後でも出来る事だ。元の世界に戻った後に、俺の声の主に告白をすればいい。この世界に居る間は、俺と付き合って欲しい。世界の終わりを、すこしは見せてあげられるかもしれないよ、ライカ?」

「もしかして、寂しいの・・アルフレッド?」

「そうだな。どういうわけか、俺だけが繰り返しこの世界の終わりを見て、また始まりを見る。代わり映えのしない世界は、実につまらないよ。でも、ライカが・・お前が現れて、とても楽しかった。一緒に行こう、ライカ」

アルフレッド・ノーマンが手を差し出したが、その手に自身の手は重ねなかった。

「僕の記憶が、アルフレッドには残ってしまう。それでは、付き合えないよ。次の始まりの世界のライカは僕ではないから。気持ちを切り替えられる?それに、僕はゲームエンドを迎えるまでは、別の人と付き合いたい」

「そうか・・では、世界が終わる直前に、ライカを迎えにいく。それまでは、大切な人と過ごせ、ライカ=ベラドンナ」

「ありがとう、アルフレッド・ノーマン。ところで、元の世界の僕は寝ているのかな?」

「ああ、病院で寝ている。魂がないから、死にかけの状態だ」

「アルフレッド・ノーマン!!」

僕は抗議の声をあげたが、その唇にアルフレッドの唇が重なった。濃厚なキスに目がトロリとした頃に、唇を噛まれてキスは終わった。

「迎えにくる」
「うん、アルフレッド」

僕は笑って、アルフレッド・ノーマンを病室から送り出した。


◆◆◆◆◆◆

しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話

ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。 βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。 そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。 イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。 3部構成のうち、1部まで公開予定です。 イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。 最新はTwitterに掲載しています。

処理中です...