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第43話 『ライカ菌』が泣く日
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◆◆◆◆◆◆
勉学の件でウォーレン・ヒルに相談事に乗ってもらいたくて、僕は彼を探していた。ウォーレンは図書館にいた。彼に近づき声を掛けると、酷く厳しい表情で彼が僕を見てきた。
「ウォーレン、相談に乗って欲しい事があるんだ。今から、時間を僕にくれる?」
「ついに、私に触手を伸ばしてきたか。構わないよ、ライカ菌・・何の相談かな?」
僕は、聞き間違えをしただけだと思った。だけど気になって、僕はウォーレンに聞き直した。だって、その言葉は過去の僕の傷を抉るから。
「・・今、ウォーレンは僕の事を『ライカ菌』と呼んだ?」
「そうだね、私は君の事をそう呼んだかもしれないね」
「僕を『ライカ菌』と呼んだことを認めるんだ、ウォーレン・ヒルは・・」
「私が君をどう呼ぼうと、君には関係のない事だ。それより、相談とは何かな?まあ、君の事だ。相談内容は、性的関係の事だろうから図書館で会話するのは不味いね。場所を変えよう。『噴水庭園』などはどうだい?」
「・・・・・」
僕はウォーレン・ヒルのあまりの態度に言葉が無かった。気が付くと涙で滲んできた。僕の目からボロボロと涙が零れ落ちると、ウォーレンは戸惑いの表情を浮かべた。僕は、何とか声を絞り出してウォーレンに話しかけた。
「もう・・相談事はないよ、ウォーレン。もういい・・寮に帰る」
「ライカ、何故泣いている!?」
図書館でウォーレンが大きな声を出したので、周りの人達がざわついている。僕は彼に背を向けて、立ち去ろうとした。だが、ウォーレンに腕を掴まれてしまった。その腕を振り切って、僕は図書館を後にした。そのまま、学生寮に向かうつもりだったが、気分が晴れず学生寮の途中にある噴水の庭園に立ち寄った。
芸術系の生徒達が卒業制作として、噴水を設計図から製作する事がある。卒業後の作品は、全てこの場所に展示される。何時しか、噴水庭園と呼ばれるようになった。僕は、バラの形の造形物から美しく水が流れ落ちるのをただぼんやりと見つめていた。その時、声を掛けられ僕はゆっくりと振り返った。
「ライカ=ベラドンナ!!」
ウォーレン・ヒルは大きく肩を上下させ呼吸している。僕を探して走り回ったのかもしれない。ウォーレンは俺を見つめたまま距離を詰める事は無かった。ただ困惑の表情で僕を見つめていた。そして、突然頭を下げて僕に謝りだした。
「すまない、ライカ。言い訳になってしまうのだが、この前の『エロ動画射精会』から私は・・奇妙な思い込みに囚われてしまっていた。それが、君を傷つけた。君がこれほど繊細な人物だとは思わなかった。だが、何を言われても平気な人などいるはずもないのに。ライカの涙を見て、自分の愚かさに気が付いた。本当にすまなかった、ライカ」
僕は少し肩を竦めて、噴水前のベンチに一緒に座るよに誘った。ウォーレンは頷くとベンチに近づき、僕の横に座った。彼は俯いたままだ。僕は、少し息を吐き出し冷静さを取り出してから、ウォーレンに話しかけていた。
「急に泣き出してごめんね、ウォーレン。多分、ウォーレンは僕の過去を何処かで耳にしたんだよね。でも、ハッシュが過去の事を話すはずもないし、誰から聞いたの?」
「過去の事?」
「そうだよ。僕は子供の頃、『ゲーム攻略』だとか『攻略対象者』だとか『前世の記憶』の事とか・・色々と口にする電波系の子供だったんだ。まあ、今でもあまり変わってないかもしれないけどね」
「ライカ・・」
「そんな電波系の子供は苛められるんだ。『ライカは気狂い』だって言われた。『ライカ菌』って呼ばれたこともあった。僕の『気狂い』が感染するから『ライカ菌』なんだって。皆僕に触れるのを嫌がった。あの時、傍にいてくれるのは、ハッシュ・アルカロイドだけだった。結局、僕は子供たちの苛めに耐えられなくて、家に閉じこもってしまった時期があった。ねえ、『ライカ菌』の事を誰かに聞いたんでしょ?それで・・変わり者の僕にはこれ以上関わりたくなかったんだよね。その気持ちわかるよ。僕は面倒事ばかり起こす人間だから」
ウォーレンは目を見開き僕を見つめていた。そして、突然僕を抱きしめてきた。
「!?」
「ライカ、すまなかった!!私は今まで誰からも、君の過去の事は耳にはしていない。だが、最低な事に、私は幼い子供と同じ発想で、君の事を『ライカ菌』と呼んだしまった!ライカには奇妙な魅力がある。君の傍にいると、皆が君に心を奪われて・・『脳がエロく』なっていくんだ!!私でさえ、ベラドンナ草花で射精してしまった。それは、私には衝撃だった。受粉動画で射精してしまうなど、ありえない事だからだ!ベラドンナ草で射精した私は、自身の脳が『ライカ菌』に冒され『脳がエロく』なったのだと思い込みたかった。だが、間違っていた。ただ、ライカの魅力で私の脳みそがエロくなっていただけだと、ようやく理解した。今は君の事を『ライカ菌』などと思い込み、実際にそう呼んでしまった自分を大いに恥じている。私はライカの魅力に囚われたただの、隠れエロにすぎなかった!」
「ウォーレン・ヒルは・・脳がエロくなっちゃったの??」
「そうだ、エロくなってしまった。あの『エロ動画射精会』以来、花の受粉シーンが気になって仕方ないんだ。それと同時に・・ライカの事も頭から離れなくなってしまった。君は滅ぼすべき存在だと思い込んでいた。だが、私は・・恋に落ちる事を恐れていただけなのかもしれない。もしかすると、私は君に惚れているのかもしれない」
ウォーレン・ヒルが狂ってしまったらしい。しかも、どうやら、第一回『エロ動画射精会』を切っ掛けに花の受粉を意識してしまうなど、彼は重症だ。なんてことだ、ここにも可哀そうな犠牲者がいたなんて。しかも、攻略対象者がアイリスではなく、モブを抱きしめて愛を告白するなど、ゲームバグまで発生しているようだ。
「ウォーレン、落ち着いて。大丈夫だよ。ちょっと、前回の『エロ動画射精会』は受粉動画が超エロ過ぎて真面目なウォーレンには刺激が大きかったんだよ。大丈夫、ウォーレンはエロくなっていないからね。よしよし。落ち着いて。でも、数日入院した方がいいかもしれないね・・入院してくれる?」
「承知した・・ライカがそう望むならば」
ウォーレン・ヒルは、3日間入院が必要と判断された。そして、今日入院した。
第一回『エロ動画射精会』は、多数の犠牲者を出してしまった。二回目はもう少し、ソフトにシフトしよう。哺乳類の生殖活動動画にしようかな?クジラの生殖活動はエロいし皆射精できるに違いない。
「ああ、しまった!!勉学の事を相談する相手が入院してしまった!」
僕は頭を抱えるしかなかった。
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勉学の件でウォーレン・ヒルに相談事に乗ってもらいたくて、僕は彼を探していた。ウォーレンは図書館にいた。彼に近づき声を掛けると、酷く厳しい表情で彼が僕を見てきた。
「ウォーレン、相談に乗って欲しい事があるんだ。今から、時間を僕にくれる?」
「ついに、私に触手を伸ばしてきたか。構わないよ、ライカ菌・・何の相談かな?」
僕は、聞き間違えをしただけだと思った。だけど気になって、僕はウォーレンに聞き直した。だって、その言葉は過去の僕の傷を抉るから。
「・・今、ウォーレンは僕の事を『ライカ菌』と呼んだ?」
「そうだね、私は君の事をそう呼んだかもしれないね」
「僕を『ライカ菌』と呼んだことを認めるんだ、ウォーレン・ヒルは・・」
「私が君をどう呼ぼうと、君には関係のない事だ。それより、相談とは何かな?まあ、君の事だ。相談内容は、性的関係の事だろうから図書館で会話するのは不味いね。場所を変えよう。『噴水庭園』などはどうだい?」
「・・・・・」
僕はウォーレン・ヒルのあまりの態度に言葉が無かった。気が付くと涙で滲んできた。僕の目からボロボロと涙が零れ落ちると、ウォーレンは戸惑いの表情を浮かべた。僕は、何とか声を絞り出してウォーレンに話しかけた。
「もう・・相談事はないよ、ウォーレン。もういい・・寮に帰る」
「ライカ、何故泣いている!?」
図書館でウォーレンが大きな声を出したので、周りの人達がざわついている。僕は彼に背を向けて、立ち去ろうとした。だが、ウォーレンに腕を掴まれてしまった。その腕を振り切って、僕は図書館を後にした。そのまま、学生寮に向かうつもりだったが、気分が晴れず学生寮の途中にある噴水の庭園に立ち寄った。
芸術系の生徒達が卒業制作として、噴水を設計図から製作する事がある。卒業後の作品は、全てこの場所に展示される。何時しか、噴水庭園と呼ばれるようになった。僕は、バラの形の造形物から美しく水が流れ落ちるのをただぼんやりと見つめていた。その時、声を掛けられ僕はゆっくりと振り返った。
「ライカ=ベラドンナ!!」
ウォーレン・ヒルは大きく肩を上下させ呼吸している。僕を探して走り回ったのかもしれない。ウォーレンは俺を見つめたまま距離を詰める事は無かった。ただ困惑の表情で僕を見つめていた。そして、突然頭を下げて僕に謝りだした。
「すまない、ライカ。言い訳になってしまうのだが、この前の『エロ動画射精会』から私は・・奇妙な思い込みに囚われてしまっていた。それが、君を傷つけた。君がこれほど繊細な人物だとは思わなかった。だが、何を言われても平気な人などいるはずもないのに。ライカの涙を見て、自分の愚かさに気が付いた。本当にすまなかった、ライカ」
僕は少し肩を竦めて、噴水前のベンチに一緒に座るよに誘った。ウォーレンは頷くとベンチに近づき、僕の横に座った。彼は俯いたままだ。僕は、少し息を吐き出し冷静さを取り出してから、ウォーレンに話しかけていた。
「急に泣き出してごめんね、ウォーレン。多分、ウォーレンは僕の過去を何処かで耳にしたんだよね。でも、ハッシュが過去の事を話すはずもないし、誰から聞いたの?」
「過去の事?」
「そうだよ。僕は子供の頃、『ゲーム攻略』だとか『攻略対象者』だとか『前世の記憶』の事とか・・色々と口にする電波系の子供だったんだ。まあ、今でもあまり変わってないかもしれないけどね」
「ライカ・・」
「そんな電波系の子供は苛められるんだ。『ライカは気狂い』だって言われた。『ライカ菌』って呼ばれたこともあった。僕の『気狂い』が感染するから『ライカ菌』なんだって。皆僕に触れるのを嫌がった。あの時、傍にいてくれるのは、ハッシュ・アルカロイドだけだった。結局、僕は子供たちの苛めに耐えられなくて、家に閉じこもってしまった時期があった。ねえ、『ライカ菌』の事を誰かに聞いたんでしょ?それで・・変わり者の僕にはこれ以上関わりたくなかったんだよね。その気持ちわかるよ。僕は面倒事ばかり起こす人間だから」
ウォーレンは目を見開き僕を見つめていた。そして、突然僕を抱きしめてきた。
「!?」
「ライカ、すまなかった!!私は今まで誰からも、君の過去の事は耳にはしていない。だが、最低な事に、私は幼い子供と同じ発想で、君の事を『ライカ菌』と呼んだしまった!ライカには奇妙な魅力がある。君の傍にいると、皆が君に心を奪われて・・『脳がエロく』なっていくんだ!!私でさえ、ベラドンナ草花で射精してしまった。それは、私には衝撃だった。受粉動画で射精してしまうなど、ありえない事だからだ!ベラドンナ草で射精した私は、自身の脳が『ライカ菌』に冒され『脳がエロく』なったのだと思い込みたかった。だが、間違っていた。ただ、ライカの魅力で私の脳みそがエロくなっていただけだと、ようやく理解した。今は君の事を『ライカ菌』などと思い込み、実際にそう呼んでしまった自分を大いに恥じている。私はライカの魅力に囚われたただの、隠れエロにすぎなかった!」
「ウォーレン・ヒルは・・脳がエロくなっちゃったの??」
「そうだ、エロくなってしまった。あの『エロ動画射精会』以来、花の受粉シーンが気になって仕方ないんだ。それと同時に・・ライカの事も頭から離れなくなってしまった。君は滅ぼすべき存在だと思い込んでいた。だが、私は・・恋に落ちる事を恐れていただけなのかもしれない。もしかすると、私は君に惚れているのかもしれない」
ウォーレン・ヒルが狂ってしまったらしい。しかも、どうやら、第一回『エロ動画射精会』を切っ掛けに花の受粉を意識してしまうなど、彼は重症だ。なんてことだ、ここにも可哀そうな犠牲者がいたなんて。しかも、攻略対象者がアイリスではなく、モブを抱きしめて愛を告白するなど、ゲームバグまで発生しているようだ。
「ウォーレン、落ち着いて。大丈夫だよ。ちょっと、前回の『エロ動画射精会』は受粉動画が超エロ過ぎて真面目なウォーレンには刺激が大きかったんだよ。大丈夫、ウォーレンはエロくなっていないからね。よしよし。落ち着いて。でも、数日入院した方がいいかもしれないね・・入院してくれる?」
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