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第26話 ウォーレンに相談する
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◆◆◆◆◆◆
学園に併設された病院で殴られた頬の治療を済ませると、僕はウォーレン・ヒルに促されて風紀委員の部室に向かった。ウォーレンは僕を保護しつつ、拘束したフィスト・ファックを肩に担いで平然と歩いていた。四人の風紀委員の中ではウォーレンは小柄ではあるが、攻略対象者間に力量の差は無いのかもしれない。
「ライカ=ベラドンナ。『監視係』の件で少しいいか?」
「はい、ウォーレンさん。どうしましたか?」
風紀委員の部室に歩きながら、ウォーレンが僕に話しかけてきた。僕が軽く応じると彼は難しい顔をしたまま口を開いた。
「実は四人の風紀委員の連名で、学園に対して『監視係』はライカ=ベラドンナの人権を著しく害するものであると抗議文を送った。だが、学園側より『監視係』の任は人権侵害には当たらないと返答が返ってきた」
「ええ、学園に抗議文なんて送ったんですか!?」
「君に黙って抗議文を送ったことは申し訳ないと思っている。だが、風紀委員で話し合った結果、学園の生徒である君に私達の性処理をさせる事は、倫理的に問題があると判断しての結果だ」
風紀委員を舐めてた。風紀委員は真面目さんの集まりかよ。学園に抗議文なんて送ったら『監視係』が真面目に任をこなしているか、定期的にチェックが入る可能性があるじゃないか。なんて勝手な事をするんだ。
「うーん。学園に抗議文を送るなら、僕に一言相談が欲しかったですね」
「すまない、ライカ。だが、君はコック・リングに襲われるまで、男性経験が皆無だった。多くの生徒は、学園に入るまでに同性や異性との性交渉を経験済みだ。だが、君は性的に未熟だ。その君にこの係は余りにも酷だと我々は考えた・・ライカ、君は『監視係』を任じられて正直困っているのではないのか?」
風紀委員とは、本当に真面目だなぁ。こんな聞き方をされては「僕は適当に『監視係』を勤めるつもりでした」とは、言いづらくなってしまったではないか。僕は少し俯き、真面目な表情を必死に作ってウォーレンに応じた。
「ウォーレンの指摘は正しいです。僕は性的経験が豊富とは言えません。先日、皆様には問診票に難があれば『性感マッサージ男』として戸別訪問を行うと言いましたが・・ハッシュ・アルカロイドを実験体に性感マッサージを施したところ射精には至りませんでした」
「えっ!?」
突然、ウォーレンが肩に担いでいたフィスト・ファックを床に落としてしまった。床に落ちた拍子に気絶していた彼が痛みに呻きながら目を覚ました。そして、自分が拘束されている事に気が付き愕然としている。僕は彼に駆け寄り声を掛けた。
「フィストさん、大丈夫ですか?」
「貴様、これはどういう事だ!?」
「申し訳ないですが・・貴方は、風紀委員に捕まりました」
「はぁあ、風紀委員に捕まっただと!?俺の容疑はなんだ??」
「え、覚えてないの?一応、僕を強姦しようとした罪に問われているのだけれど・・記憶にないの?」
「馬鹿言うな!お前の様な不細工を襲う訳がないだろ!!」
「でもベッドに押し倒して、僕の服を脱がそうとしただろ?」
「そんな記憶はない。お前が俺の事を凌辱野郎・・いや、『凌辱モブ』とか訳の分からん呼び名で呼んだ事は覚えている。その後は、意識がモヤモヤして?ん、その後の記憶がはっきりしない。まさか、俺はこんな不細工を襲ったのか?いやいや、ありえないだろ?」
不細工の連発だなと思っていると、いきなりウォーレンに腕を掴まれフィストから引き離された。ウォーレンを見ると彼は不愉快そうに床に這う男を見下ろしていた、そして、いきなりフィスト・ファックの腹を蹴った。フィストは一撃だけでゲロを吐いて、また気を失ってしまった。
「ああ!!」
「ライカ、お前が襲われているところは、風紀委員の私が目撃している。卑劣にもこの男は記憶が無いなどと否定しようとしたが、罪には問えるので問題は無い。それよりも、さっきの話なのだが・・」
「さっきの話?」
ウォーレンは躊躇いがちに口を開いた。
「その・・ハッシュ・アルカロイドに対して『性感マッサージ』を施したのか?」
「ええ、幼馴染の彼に協力してもらいましたが・・不発に終わりました」
「不発・・」
「ですので、代替え案を持ってまいりました。風紀委員の部室の休憩室をお借りして、定期的に『エロ動画射精会』をおこないたいと考えております。それならば、風俗委員・・いえ、風紀委員の皆様も楽しく射精できると思います。ハッシュより、穏やかな射精促進剤の提供も取り付けております。この方法ならば、性的に未熟な僕でも皆様の性欲管理をこなせると考えたのですが・・ウォーレンさんの意見はどうでしょうか?」
「部室の仮眠室で、その様な卑猥な行為をしてよいものかどうか・・」
僕はウォーレン・ヒルにしがみ付くようにしてお願いした。
「これは、僕にとって切実な問題なのです。風紀委員の皆様が僕を心配して、学園に抗議文を出していただいたことは重々承知しております。ですが、その行為により学園側の注目が僕に集まった可能性があります。」
「それについては申し訳ないと思っている」
「ならば、どうか僕に協力して下さい。もし、学園法に裁かれれば、僕は望む教育を受けられなくなる可能性があります。僕の実家は薬局で将来はそこを継ぐつもりです。その為にも、薬学を学ばなくてはならないのです。僕はこのような容姿と性格ですので、生涯独身の可能性があります。ですが、昨今は孤独死を防ぐとの名目で、独身者には独身税が重くのし掛かり、伴侶契約を結ぶように国は働きかけています。でも、伴侶契約を結べない者もいるでしょ?とにかく、税金を払うためにも、僕には手に職を付ける事は重要なのです。ですから、僕が確実に『監視係』を勤められるようにご協力を願えますか、ウォーレン・ヒル?」
ウォーレンはしがみ付くモブな僕に、困り顔を見せている。覚悟してください。貴方から協力を取り付けるまでは、このモブキャラは貴方を離しませんから。
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学園に併設された病院で殴られた頬の治療を済ませると、僕はウォーレン・ヒルに促されて風紀委員の部室に向かった。ウォーレンは僕を保護しつつ、拘束したフィスト・ファックを肩に担いで平然と歩いていた。四人の風紀委員の中ではウォーレンは小柄ではあるが、攻略対象者間に力量の差は無いのかもしれない。
「ライカ=ベラドンナ。『監視係』の件で少しいいか?」
「はい、ウォーレンさん。どうしましたか?」
風紀委員の部室に歩きながら、ウォーレンが僕に話しかけてきた。僕が軽く応じると彼は難しい顔をしたまま口を開いた。
「実は四人の風紀委員の連名で、学園に対して『監視係』はライカ=ベラドンナの人権を著しく害するものであると抗議文を送った。だが、学園側より『監視係』の任は人権侵害には当たらないと返答が返ってきた」
「ええ、学園に抗議文なんて送ったんですか!?」
「君に黙って抗議文を送ったことは申し訳ないと思っている。だが、風紀委員で話し合った結果、学園の生徒である君に私達の性処理をさせる事は、倫理的に問題があると判断しての結果だ」
風紀委員を舐めてた。風紀委員は真面目さんの集まりかよ。学園に抗議文なんて送ったら『監視係』が真面目に任をこなしているか、定期的にチェックが入る可能性があるじゃないか。なんて勝手な事をするんだ。
「うーん。学園に抗議文を送るなら、僕に一言相談が欲しかったですね」
「すまない、ライカ。だが、君はコック・リングに襲われるまで、男性経験が皆無だった。多くの生徒は、学園に入るまでに同性や異性との性交渉を経験済みだ。だが、君は性的に未熟だ。その君にこの係は余りにも酷だと我々は考えた・・ライカ、君は『監視係』を任じられて正直困っているのではないのか?」
風紀委員とは、本当に真面目だなぁ。こんな聞き方をされては「僕は適当に『監視係』を勤めるつもりでした」とは、言いづらくなってしまったではないか。僕は少し俯き、真面目な表情を必死に作ってウォーレンに応じた。
「ウォーレンの指摘は正しいです。僕は性的経験が豊富とは言えません。先日、皆様には問診票に難があれば『性感マッサージ男』として戸別訪問を行うと言いましたが・・ハッシュ・アルカロイドを実験体に性感マッサージを施したところ射精には至りませんでした」
「えっ!?」
突然、ウォーレンが肩に担いでいたフィスト・ファックを床に落としてしまった。床に落ちた拍子に気絶していた彼が痛みに呻きながら目を覚ました。そして、自分が拘束されている事に気が付き愕然としている。僕は彼に駆け寄り声を掛けた。
「フィストさん、大丈夫ですか?」
「貴様、これはどういう事だ!?」
「申し訳ないですが・・貴方は、風紀委員に捕まりました」
「はぁあ、風紀委員に捕まっただと!?俺の容疑はなんだ??」
「え、覚えてないの?一応、僕を強姦しようとした罪に問われているのだけれど・・記憶にないの?」
「馬鹿言うな!お前の様な不細工を襲う訳がないだろ!!」
「でもベッドに押し倒して、僕の服を脱がそうとしただろ?」
「そんな記憶はない。お前が俺の事を凌辱野郎・・いや、『凌辱モブ』とか訳の分からん呼び名で呼んだ事は覚えている。その後は、意識がモヤモヤして?ん、その後の記憶がはっきりしない。まさか、俺はこんな不細工を襲ったのか?いやいや、ありえないだろ?」
不細工の連発だなと思っていると、いきなりウォーレンに腕を掴まれフィストから引き離された。ウォーレンを見ると彼は不愉快そうに床に這う男を見下ろしていた、そして、いきなりフィスト・ファックの腹を蹴った。フィストは一撃だけでゲロを吐いて、また気を失ってしまった。
「ああ!!」
「ライカ、お前が襲われているところは、風紀委員の私が目撃している。卑劣にもこの男は記憶が無いなどと否定しようとしたが、罪には問えるので問題は無い。それよりも、さっきの話なのだが・・」
「さっきの話?」
ウォーレンは躊躇いがちに口を開いた。
「その・・ハッシュ・アルカロイドに対して『性感マッサージ』を施したのか?」
「ええ、幼馴染の彼に協力してもらいましたが・・不発に終わりました」
「不発・・」
「ですので、代替え案を持ってまいりました。風紀委員の部室の休憩室をお借りして、定期的に『エロ動画射精会』をおこないたいと考えております。それならば、風俗委員・・いえ、風紀委員の皆様も楽しく射精できると思います。ハッシュより、穏やかな射精促進剤の提供も取り付けております。この方法ならば、性的に未熟な僕でも皆様の性欲管理をこなせると考えたのですが・・ウォーレンさんの意見はどうでしょうか?」
「部室の仮眠室で、その様な卑猥な行為をしてよいものかどうか・・」
僕はウォーレン・ヒルにしがみ付くようにしてお願いした。
「これは、僕にとって切実な問題なのです。風紀委員の皆様が僕を心配して、学園に抗議文を出していただいたことは重々承知しております。ですが、その行為により学園側の注目が僕に集まった可能性があります。」
「それについては申し訳ないと思っている」
「ならば、どうか僕に協力して下さい。もし、学園法に裁かれれば、僕は望む教育を受けられなくなる可能性があります。僕の実家は薬局で将来はそこを継ぐつもりです。その為にも、薬学を学ばなくてはならないのです。僕はこのような容姿と性格ですので、生涯独身の可能性があります。ですが、昨今は孤独死を防ぐとの名目で、独身者には独身税が重くのし掛かり、伴侶契約を結ぶように国は働きかけています。でも、伴侶契約を結べない者もいるでしょ?とにかく、税金を払うためにも、僕には手に職を付ける事は重要なのです。ですから、僕が確実に『監視係』を勤められるようにご協力を願えますか、ウォーレン・ヒル?」
ウォーレンはしがみ付くモブな僕に、困り顔を見せている。覚悟してください。貴方から協力を取り付けるまでは、このモブキャラは貴方を離しませんから。
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