BLモブが主人公凌辱イベントに巻き込まれました

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
25 / 59

第25話 フィスト・ファックさん

しおりを挟む
◆◆◆◆◆◆


「おい、ちょっと待て」
「ん?」

放課後、第一教室を出て風紀委員の部室に向かおうとした時に声を掛けられた。声を掛けた人物は第一教室のクラスメイトだが、話したこともなく名前すら知らない。僕は首を傾げると彼が話し掛けてきた。

「あー、俺の名前はフィスト・ファックだ。あんたは、ライカ=ベラドンナだよな?」
「フィスト・・ファック・・」
「ん、どうかしたか?」

聞き間違えじゃないよな?こいつは名前を名乗っただけで、セクハラ発言じゃないよな。第一、モブにセクハラ発言しても意味ないよな。それにしてもフィストファックなんて恥ずかしい名前を堂々と名乗れるものだな。肛門に手や拳を突っ込むハードSMプレイだぞ。コックさんの名前より恥ずかしいだろ・・ん?

「ぁあ、あんた凌辱モブか!?」
「殴るぞ」

顔を殴られて、僕は床に転んだ。殴られた僕より、殴った相手が転んだ僕を見て驚いている。フィストは僕が拳をよけるものと思っていたに違いない。だが、あまい。僕は只のモブだ。動体視力も底辺なのに、いきなり拳が顔に迫ってきて、避けられるとでも思っているのか?お前は馬鹿なのか?

「お前、避けろよ!」
「殴っておいて何て言い草だ。とにかく、保健室に連れて行ってくれ。殴られた痕が腫れあがって、不細工がさらに不細工になったら・・お前に人生の責任を取って貰うからな」
「・・どんな責任だよ?」
「伴侶契約を結んで、お前の人生を貪ってやる!」
「今すぐ保健室に運ぶ!!」

フィストは僕をひめ抱っこして保健室に向かった。放課後の廊下は結構人がいて、僕を抱いて走るヒィストは目立っていた。せめてひめ抱っこしている相手が不細工だと悟られない様に、フィストの胸に顔を埋めた。

これで、フィストの人権は守られたはずだ。ようやく保健室に辿り着き中を覗いたが、学園の看護師さんは不在だった。もしかすると、学園に併設されている病院の方に行っているのかもしれない。

「誰もいねーな。治療はどうすればいいんだ」
「フィストさん。僕の頬は腫れてきていますか?」
「全然腫れていない。大丈夫だ。お前は美しい!だから、伴侶契約を迫るのはやめてくれ!」
「腫れていないなら、迫りませんよ」

僕は保健室に誰もいない事を確認した後に、保健室のベッドに座って話を切り出した。

「で、僕に声を掛けた理由は何ですか?」
「いや・・もういい」
「えー、殴っておいてそれは無いでしょ?」
「ちょっと聞きたいことがあっただけだ・・それより、殴ってすまなかった」
「避けると思ったんでしょうけど、僕は運動神経が鈍いので無理ですよ。で、悪いと思っているのなら声を掛けた理由を教えてもらえますか。黙られると気持ちが悪いです」

フィストは迷った末に、ベッドに座る僕の横に腰を下ろした。しばらく逡巡した後に彼は話を切り出した。

「お前は、アイリス=スノードロップと知り合いだよな?」
「あー、アイリス絡みですか。確かに知り合いではありますが、紹介はできませんよ」
「まだ紹介しろなんて言ってないだろ!」
「でも、紹介して欲しかったんでしょ?」
「ああ、確かに紹介して欲しい。俺はアイリスに恋をしているんだ。アイリスに近づくだけで、胸が高鳴り、息が荒くなるし、その肌に触れたくなる。そして、意識が飛びそうになる。まさに、恋心だ!」

「くそ、やっぱり『凌辱モブ』じゃないか!!」

僕は思わず悪態をついてしまった。それに反応したのは、フィストだった。

「何だよその言い方は!俺はアイリスに恋をしているだけで、凌辱野郎と一緒にするな!!」
「フィスト・ファック、諦めた方がいい。アイリスはお前に見向きもしないだろうし、お前はアイリスに近づくと、あいつを襲いたくなるはずだ」

「ふざけんな!」

僕はフィストにベッドに押し倒された。奴は僕に馬乗りになると、僕の制服を掴み乱しはじめた。何をしているんだ、こいつは?

「フィストさん、何してるの?」

「お前は自分の顔がアイリスの足元にも及ばないから嫉妬してるんだろ?まあ、お前なんて誰も相手にしないだろうからな。仕方ないから俺が相手になってやる。俺を何度も凌辱野郎って呼んでたよな?それって、俺の事を煽りながら実際は誘っていたんだろ?そんなに凌辱されたいのか、お前?不細工はやる事がコスイよな。アイリスに近づけば俺が襲いたくなるだと?お前みたいな欲求不満と一緒にするな。俺のアイリスに対する純愛を馬鹿にするな!」

「わかったよ、フィストさん。僕の言い方が悪かった。とにかく、ちょっと落ちついて」

「うごぁあーーーーーー!!」

僕に馬乗りになっていたはずの男が、突然雄叫びをあげて吹っ飛んでいった。そして、目の前に現れたのは風紀委員のウォーレン・ヒルだった。

「やあ、ウォーレン・・こんにちは」

「お前が殴られて連れ去られるのを目撃して後を追ってきた。顔が赤く腫れているな。制服も乱れている。襲われたのは明白だ。これは、風紀委員の案件になる。承知してくれるね、ライカ=ベラドンナ」
「殴られたのは確かですが、襲われた事は否定します。彼は僕に嫌がらせをしたに過ぎない。そもそも、彼を煽った僕に問題があった」
「ライカ=ベラドンナ。犯罪者を庇う事も罪になると言ったはずだ。もしここであいつを逃したら、次の犯行を行う可能性がある。お前以外の誰かが凌辱されてもいいのか?」

ウォーレンにそう言われて黙り込んでしまった。確かに、彼はこのまま放っておくと、アイリス=スノードロップを襲う可能性が高い。僕はベッドから起き上がり、床で倒れているフィスト・ファックを見てため息を付いた。彼が、凌辱モブなら、風紀委員に確保してもらった方が良いかもしれない。

「彼はどうなりますか?」
「それは風紀委員が決める。またお前から、聴取する事になりそうだな」
「・・宜しくお願い致します」



◆◆◆◆◆◆
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...