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第20話 風紀委員の性欲の溜まり具合を監視する係です
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◆◆◆◆◆◆
救世主は突然現れた。
攻略対象者のウォーレン・ヒルが、風紀委員の部室の扉を開き入室して来たのだ。ウォーレンは部室に入ると直ぐに部室の空気がよどんでいる事に気が付き、その原因を突き止めると顔を顰めた。
「・・まだ聴取を始めてもいないようだな?私は貴重な時間を割いて、暴漢犯の聴取を終えたというのに遅すぎるぞ。まあ、その男がいては話も進まないか。ハッシュ・アルカロイド、奴に注射を打て」
「風紀委員の許可を得ての行為です。俺を裁くなよ?」
ハッシュは、アイリス=スノードロップに近づくと、にっこり微笑みながらアイリスの肩口に注射針を打ち込んだ。アイリスは、瞬時に意識を失いハッシュによって受け止められた。主人公がお助けキャラに注射針を打たれた!
「うおおお、ハッシュ。何やってるの!!」
ハッシュは意識を失ったアイリスを観察しながら僕に返事をした。
「ライカ、単なる鎮静剤を打っただけだから安心して。でも、さすがは「初物」。こうも容易に昏倒するとは他愛もない。ライカなら意地でも意識を保っているはずだ。さて、ウォーレン、これからどうします?注射を打てと指示したのは貴方ですよ?」
「そうだな。お前以上に薬剤の知識に長けているものは、この場にはいないだろう。この学園に病院が併設されている事は知っているな、ハッシュ?」
「勿論、医師とも面識があります」
「ならば、話は早い。アイリス=スノードロップを連れて病院に行き看病して来い」
「はぁーー??」
「『サポート係』は風紀委員の命令に従え。俺は、ライカ=ベラドンナへの聴取を早急に済ませたいだけだ。だが、お前が傍にいると、ライカが発言に困れば即座に横やりを入れるだろ?この場に居てもらっては邪魔だ、ハッシュ」
「その命令には応じられません。俺は、聴取の際にはライカの傍にいると約束しました。その約束を反故にはできない。ウォーレン・ヒル、貴方の命令を拒否します」
ハッシュははっきりと宣言した。ウォーレンは僅かに苛立ちを見せ言葉を続ける。
「命令を拒否するならば、風紀委員の『サポート係』は降りてもらう。お前は、学園より『サポート係』に任じられた。そして、自ら風紀委員の『サポート係』を申し出た。その任を全うできない者に対しては、学園法により裁かれる事になる。それでも良いのか、ハッシュ・アルカロイド?」
「その様な脅しには屈しません。確かに学園法に反する行為ではありますが、ライカとの約束を反故にする理由とはなりません」
そうだった。学園から任命された『係』を途中で放棄する事は、学園法で裁かれるゲーム設定だったのを忘れていた。それは風紀委員も例外ではない。彼らが凌辱犯を取り締まる面倒な役割を担ってるのも、学園から選ばれてしまったからだった。その任を勝手に辞めれば、学園法により裁かれる。なんて封建的制度を採用しているんだ、このゲームは。
「ハッシュ、まずいよ。学園法で裁かれると、自分の学びたい学問を選択できなくなる可能性があるよ!ハッシュだって知ってるだろ?学園に入る時に誓約書を書かされたんだから。ハッシュは薬学を学びに来たんだろ?その機会をふいにするつもりなの?」
「俺はその制度自体に反対なんだ、ライカ。学園法の規定に背いただけで、望む学問を学べないなんておかしいじゃないか!いくら不足している分野の人材を増やす為でも、学園法に背いた人間に無理矢理その学問をさせるのはおかしいだろ?」
「それは、そうだけど・・」
ハッシュはアイリスを胸に抱いたまま、制服にピン止めした校章とエンブレムに触れた。
学校の校章はフルール・ド・リス。アイリスの花をデザインした紋章だ。そして、校章の下のエンブレムに刺繍された紋章がその人物の『係』を示す。全ての学園の生徒には役目が与えられており、エンブレムを見れば『何係』か分かる仕組みとなっている。
風紀委員のエンブレムには薔薇の上にクロスした二本の剣の紋章
『サポート係』のエンブレムには薔薇の上に一本のナイフの紋章
『癒し係』のエンブレムには薔薇の上にハートマークの紋章
その時、僕は不意にアルフレッド・ノーマンに指摘された。
「ライカ=ベラドンナ。風紀委員として、一つ注意をしてもいいか?」
「はい、何でしょうか?」
「学園法により、制服には常に校章を付ける事になっている。それは知っているね?ライカは校章を付けていないが、寮に忘れてきたのか?」
「あー、いえ。その、今・・持っています」
「そうか。では今付ける事で罰則を下さない事にしよう」
急に皆の注目を集めてしまって、僕は思わず赤面してしまった。いずれは見せなくてはいけないとは思っていたが、この場で披露する事になるとは思わなかった。僕は仕方なくジャケットのポケットから校章を取り出した。そして胸に付けようとして、緊張から床に落としてしまった。それを拾ってくれたのは、パウルだった。
「ライカちゃん、緊張しすぎやねぇ。しゃあないなぁ、俺がつけたるわ。で、ぶさ・・ライカちゃんは、『何係』なのかな?ん、バラの刺繍の上に瞳と雫の紋章か・・結構複雑やね?うーん、これって『何係』やったっけかな。ライカちゃん、これって『何係』?」
「『監視係』です」
「へー、そんな係あるんや。で、何を監視するのん?」
「・・・・」
「え、そこで沈黙?何々、なんかヤバいもん監視するのかな、ライカちゃんは?」
「・・・・」
僕が黙っていると、ちょっとパウルは眉を上げて不機嫌な表情を浮かべ校章を制服に付けた。そして、校章を付けるふりをして、ピンを僕の肌に刺した。いや、ちょっこっとだけだよ。服を着てるからね、グサッとはこなかったよ。でも、絶対刺したよね、パウル・ミュラー。チクってきたから。優しいパウルからの、鬼畜パウルですか。えー、全然萌えない。
「風紀委員の性欲の溜まり具合を監視して、必要があれば性欲処理をする『係』だな。未だにこんな係があったのか。学園創立時には確かに存在したが・・・」
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救世主は突然現れた。
攻略対象者のウォーレン・ヒルが、風紀委員の部室の扉を開き入室して来たのだ。ウォーレンは部室に入ると直ぐに部室の空気がよどんでいる事に気が付き、その原因を突き止めると顔を顰めた。
「・・まだ聴取を始めてもいないようだな?私は貴重な時間を割いて、暴漢犯の聴取を終えたというのに遅すぎるぞ。まあ、その男がいては話も進まないか。ハッシュ・アルカロイド、奴に注射を打て」
「風紀委員の許可を得ての行為です。俺を裁くなよ?」
ハッシュは、アイリス=スノードロップに近づくと、にっこり微笑みながらアイリスの肩口に注射針を打ち込んだ。アイリスは、瞬時に意識を失いハッシュによって受け止められた。主人公がお助けキャラに注射針を打たれた!
「うおおお、ハッシュ。何やってるの!!」
ハッシュは意識を失ったアイリスを観察しながら僕に返事をした。
「ライカ、単なる鎮静剤を打っただけだから安心して。でも、さすがは「初物」。こうも容易に昏倒するとは他愛もない。ライカなら意地でも意識を保っているはずだ。さて、ウォーレン、これからどうします?注射を打てと指示したのは貴方ですよ?」
「そうだな。お前以上に薬剤の知識に長けているものは、この場にはいないだろう。この学園に病院が併設されている事は知っているな、ハッシュ?」
「勿論、医師とも面識があります」
「ならば、話は早い。アイリス=スノードロップを連れて病院に行き看病して来い」
「はぁーー??」
「『サポート係』は風紀委員の命令に従え。俺は、ライカ=ベラドンナへの聴取を早急に済ませたいだけだ。だが、お前が傍にいると、ライカが発言に困れば即座に横やりを入れるだろ?この場に居てもらっては邪魔だ、ハッシュ」
「その命令には応じられません。俺は、聴取の際にはライカの傍にいると約束しました。その約束を反故にはできない。ウォーレン・ヒル、貴方の命令を拒否します」
ハッシュははっきりと宣言した。ウォーレンは僅かに苛立ちを見せ言葉を続ける。
「命令を拒否するならば、風紀委員の『サポート係』は降りてもらう。お前は、学園より『サポート係』に任じられた。そして、自ら風紀委員の『サポート係』を申し出た。その任を全うできない者に対しては、学園法により裁かれる事になる。それでも良いのか、ハッシュ・アルカロイド?」
「その様な脅しには屈しません。確かに学園法に反する行為ではありますが、ライカとの約束を反故にする理由とはなりません」
そうだった。学園から任命された『係』を途中で放棄する事は、学園法で裁かれるゲーム設定だったのを忘れていた。それは風紀委員も例外ではない。彼らが凌辱犯を取り締まる面倒な役割を担ってるのも、学園から選ばれてしまったからだった。その任を勝手に辞めれば、学園法により裁かれる。なんて封建的制度を採用しているんだ、このゲームは。
「ハッシュ、まずいよ。学園法で裁かれると、自分の学びたい学問を選択できなくなる可能性があるよ!ハッシュだって知ってるだろ?学園に入る時に誓約書を書かされたんだから。ハッシュは薬学を学びに来たんだろ?その機会をふいにするつもりなの?」
「俺はその制度自体に反対なんだ、ライカ。学園法の規定に背いただけで、望む学問を学べないなんておかしいじゃないか!いくら不足している分野の人材を増やす為でも、学園法に背いた人間に無理矢理その学問をさせるのはおかしいだろ?」
「それは、そうだけど・・」
ハッシュはアイリスを胸に抱いたまま、制服にピン止めした校章とエンブレムに触れた。
学校の校章はフルール・ド・リス。アイリスの花をデザインした紋章だ。そして、校章の下のエンブレムに刺繍された紋章がその人物の『係』を示す。全ての学園の生徒には役目が与えられており、エンブレムを見れば『何係』か分かる仕組みとなっている。
風紀委員のエンブレムには薔薇の上にクロスした二本の剣の紋章
『サポート係』のエンブレムには薔薇の上に一本のナイフの紋章
『癒し係』のエンブレムには薔薇の上にハートマークの紋章
その時、僕は不意にアルフレッド・ノーマンに指摘された。
「ライカ=ベラドンナ。風紀委員として、一つ注意をしてもいいか?」
「はい、何でしょうか?」
「学園法により、制服には常に校章を付ける事になっている。それは知っているね?ライカは校章を付けていないが、寮に忘れてきたのか?」
「あー、いえ。その、今・・持っています」
「そうか。では今付ける事で罰則を下さない事にしよう」
急に皆の注目を集めてしまって、僕は思わず赤面してしまった。いずれは見せなくてはいけないとは思っていたが、この場で披露する事になるとは思わなかった。僕は仕方なくジャケットのポケットから校章を取り出した。そして胸に付けようとして、緊張から床に落としてしまった。それを拾ってくれたのは、パウルだった。
「ライカちゃん、緊張しすぎやねぇ。しゃあないなぁ、俺がつけたるわ。で、ぶさ・・ライカちゃんは、『何係』なのかな?ん、バラの刺繍の上に瞳と雫の紋章か・・結構複雑やね?うーん、これって『何係』やったっけかな。ライカちゃん、これって『何係』?」
「『監視係』です」
「へー、そんな係あるんや。で、何を監視するのん?」
「・・・・」
「え、そこで沈黙?何々、なんかヤバいもん監視するのかな、ライカちゃんは?」
「・・・・」
僕が黙っていると、ちょっとパウルは眉を上げて不機嫌な表情を浮かべ校章を制服に付けた。そして、校章を付けるふりをして、ピンを僕の肌に刺した。いや、ちょっこっとだけだよ。服を着てるからね、グサッとはこなかったよ。でも、絶対刺したよね、パウル・ミュラー。チクってきたから。優しいパウルからの、鬼畜パウルですか。えー、全然萌えない。
「風紀委員の性欲の溜まり具合を監視して、必要があれば性欲処理をする『係』だな。未だにこんな係があったのか。学園創立時には確かに存在したが・・・」
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