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第19話 主人公アイリスの性格が攻略に向かない
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◆◆◆◆◆◆
僕がパウル・ミュラーにひめ抱っこされたまま部室に入ると、室内にBLゲームの主人公アイリス=スノードロップがいた。まさかの出逢いに興奮して、僕は彼の名を呼んでしまった。
「アイリス=スノードロップ!!」
僕に名を呼ばれたアイリスは、高級菓子を上品に摘まんでいるところだった。ただし、美しい所作に見えて、どこか庶民臭を漂わせるアイリスがまた可愛い。ただし、その可愛いアイリスから、塩対応が来ることが予想できるだけに、少し身構えてしまった。
「誰ですか、あなた?君の様な不細工な人間から名前を呼ばれるのは不愉快です。アルフレッドさん、この男は僕を凌辱しようとした学園生徒の仲間ですか?すぐに、僕の目の前から消し去ってください」
◇◇◇◇
うお、思った以上に塩対応だった!!
どうやら、この世界のアイリス・スノードロップも、前世のBLゲームの主人公と変わらぬ性格らしい。前世で、BLゲームの攻略を最も困難にしていたのが、実は主人公のアイリスの存在だったりする。
アイリスは『素直』な主人公なのだが、余りにも『己に素直』過ぎたのだ。思ったことをオブラートに包まず、何でも口にしてしまう主人公。アイリスが攻略対象者と会話をする度に、何故かラブメーターが駄々下がりする現象に散々悩まされた。僕は急落するラブメーターを確認する度に「クソゲームが!」と罵っていた。それでも、ゲームに勤しんでいた自分がちょっと可哀そう。前世の親友と恋人関係になりたい一心でゲーム攻略に励んでいたんだね。まあ、可能性はほぼゼロに近かったと思うよ・・前世の僕よ。
◇◇◇◇
パウル・ミュラーが、そっと僕をソファーに降ろしてくれた。でも、パウルのアイリスを見る目にも軽蔑の色があった。アイリスの発言に応じたのは、アルフレッド・ノーマンだった。彼は厳しい表情を浮かべて、アイリスを見つめていた。その瞳には侮蔑の色が滲んでいる。
え、ちょっと待って。主人公への好感度が既にマイナスに振れてるんだけど!?
「アイリス=スノードロップ。彼の名はライカ=ベラドンナだ。昨日、ライカは音楽教室で暴漢に襲われている君を身を挺して救った。その彼に対して侮辱する言葉は許さない。ライカに謝れ、アイリス!」
「このような不細工には、謝りません!!僕はこの美しい容姿に生まれついた瞬間に世の理を理解しました。僕をあらゆる災難から救う人物は、常に美形でなくてはなりません。もし、世の理を曲げて不細工が僕を救ったとしたならば、その男は沈黙すべきなのです。それを、自慢話として語る者はもはや処罰の対象とすべきです。風紀委員の皆様、今から彼を処罰してください!」
アイリスが言い切った。流石、我が愛する主人公、アイリス=スノードロップ。清々しいほどに己に素直だ。でも、思ったことをそのまま口にしちゃうから、パウル・ミュラーまで不快そうに語りだすじゃん。
「随分と酷い事いうねぇ、アイリスちゃん?まあ、今朝も男に襲われた君やから、気が立っての発言やと思うけど・・さっきの言い草は無いんと違う?俺も、アルフレッドに賛成や。ライカに謝れ、アイリス」
アイリスは思い通りに事が進まないと、頬っぺたを膨らませる癖がある。そして、見た!!アイリスが頬っぺたを膨らませた。眼福だ。幸せだ。アイリス、可愛い!だが、駄目だ。これ以上、主人公と攻略対象者たちのラブメーターが落ちるとゲーム攻略に支障が出る。それに、パウルがおかしな事を言ってなかったか?
「アルフレッドもパウルも、ちょっと待って。アイリスが、今朝も襲われたって本当なの?」
僕の質問に答えたのはアルフレッドだった。ちらりとパウルを見た後に、アルフレッドはゆっくりと僕に話し掛けてきた。まるで、ハッシュみたいな話し方だ。僕の事を子ども扱いしている。そう感じて少し苛ついた。
アルフレッドは・・僕の前世の親友は、こんな話し方はしなかった。
「パウルから、まだ事情を聴いていなかったようだね、ライカ?今朝、アイリスが学園の『バラ園』を散策中に四人の男と出くわして、アイリス=スノードロップは彼らに襲われた」
「そんな・・アイリスが!?」
しまった!!
『バラ園』凌辱エンドの事をすっかり忘れていた!あのスチルを見逃すとは無念!!
「大丈夫だ、ライカ。アイリスは凌辱されていない。アイリスは、四人組に地面に押し倒されただけだ。男たちも全員捕らえた」
「アイリスを救ったのは、アルフレッド?」
「ハッシュの情報がアイリスを救ったんだ」
「ハッシュ?」
「事前にハッシュから、『バラ園』に怪しい四人組がたむろしているとの情報を得ていたお陰だ。その確認の為に、俺とハッシュはバラ園を見張っていた。まさか、『バラ園』に来ない様に忠告したアイリスが来てしまったことは予想外だったけどな」
なるほど。お助けキャラのハッシュが、関わっていたのか。アイリスの凌辱が防げたのなら、バッドエンドの線は消えたな。それは良かったけど、被害者のアイリスに対して、皆さん冷たすぎない?
「ライカ、大丈夫か?」
「僕の心配はいらないよ。それより、ハッシュはアイリスが襲われたことを知っていたのに、僕には黙っていたの!?」
「お前が怖がると思ったから。黙っていて悪かった、ライカ」
「怖い思いをしたのは、アイリスだよ?もっと、彼を労らないと駄目だよ!」
僕の言葉に応じて、不意にアイリスが口を開いた。
「不愉快だな。不細工なライカに労られても、デメリットしかないよ。この学園に入れば、男達に狙われる事くらい分かっていた。僕は君と違い、美しいからね。それでも、僕がこの学園に入学したのは、僕に相応しい男を探す為なんだよ。この学園の男を手にいれたら、庶民の僕も『勝ち組』の仲間入りだからね!!」
「勝ち組・・」
「でも、美しくない男を手に入れて『勝ち組』になっても僕は満足できない。僕は学園から『癒し係』に任命されるほどの美人なんだよ!この僕に相応しい男なんて、めったにいない。でも、この学園には風紀委員がいる。彼等こそ、僕を真の勝ち組に導く男達なんだ!彼等に守護され縁を結ぶ為なら何だってする。「バラ園」に行き我が身を危険に晒す事に、何の躊躇いもなかったね。全ては、『勝ち組』になるための布石に過ぎないのだから!!」
◇◇◇◇◇
アイリス、まずい。攻略対象者のラブメーターが駄々下がりしているよ!!
君の気持ちはわかるよ!『勝ち組』になりたいよね。モブの僕でさえ『勝ち組』になりたいのだから。超絶美人に生まれたアイリスが、庶民でおわるなんて間違っているよね。世の理に反しているよね。攻略対象者に救ってもらうために危険を犯して『バラ園』に向かうなんてなんたる 勇気だ、アイリス!!
だけど、君の発言が攻略対象者に不快感を与えている事に気がついて、アイリス!君の独自の世の理設定がゲーム攻略を難しくしているんだ。攻略対象者とトゥルーエンドを迎える為にも発言には注意してくれ!
誰か、この風紀委員の部室のギスギスした雰囲気を一新してくれ!!
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「アイリス=スノードロップ!!」
僕に名を呼ばれたアイリスは、高級菓子を上品に摘まんでいるところだった。ただし、美しい所作に見えて、どこか庶民臭を漂わせるアイリスがまた可愛い。ただし、その可愛いアイリスから、塩対応が来ることが予想できるだけに、少し身構えてしまった。
「誰ですか、あなた?君の様な不細工な人間から名前を呼ばれるのは不愉快です。アルフレッドさん、この男は僕を凌辱しようとした学園生徒の仲間ですか?すぐに、僕の目の前から消し去ってください」
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うお、思った以上に塩対応だった!!
どうやら、この世界のアイリス・スノードロップも、前世のBLゲームの主人公と変わらぬ性格らしい。前世で、BLゲームの攻略を最も困難にしていたのが、実は主人公のアイリスの存在だったりする。
アイリスは『素直』な主人公なのだが、余りにも『己に素直』過ぎたのだ。思ったことをオブラートに包まず、何でも口にしてしまう主人公。アイリスが攻略対象者と会話をする度に、何故かラブメーターが駄々下がりする現象に散々悩まされた。僕は急落するラブメーターを確認する度に「クソゲームが!」と罵っていた。それでも、ゲームに勤しんでいた自分がちょっと可哀そう。前世の親友と恋人関係になりたい一心でゲーム攻略に励んでいたんだね。まあ、可能性はほぼゼロに近かったと思うよ・・前世の僕よ。
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パウル・ミュラーが、そっと僕をソファーに降ろしてくれた。でも、パウルのアイリスを見る目にも軽蔑の色があった。アイリスの発言に応じたのは、アルフレッド・ノーマンだった。彼は厳しい表情を浮かべて、アイリスを見つめていた。その瞳には侮蔑の色が滲んでいる。
え、ちょっと待って。主人公への好感度が既にマイナスに振れてるんだけど!?
「アイリス=スノードロップ。彼の名はライカ=ベラドンナだ。昨日、ライカは音楽教室で暴漢に襲われている君を身を挺して救った。その彼に対して侮辱する言葉は許さない。ライカに謝れ、アイリス!」
「このような不細工には、謝りません!!僕はこの美しい容姿に生まれついた瞬間に世の理を理解しました。僕をあらゆる災難から救う人物は、常に美形でなくてはなりません。もし、世の理を曲げて不細工が僕を救ったとしたならば、その男は沈黙すべきなのです。それを、自慢話として語る者はもはや処罰の対象とすべきです。風紀委員の皆様、今から彼を処罰してください!」
アイリスが言い切った。流石、我が愛する主人公、アイリス=スノードロップ。清々しいほどに己に素直だ。でも、思ったことをそのまま口にしちゃうから、パウル・ミュラーまで不快そうに語りだすじゃん。
「随分と酷い事いうねぇ、アイリスちゃん?まあ、今朝も男に襲われた君やから、気が立っての発言やと思うけど・・さっきの言い草は無いんと違う?俺も、アルフレッドに賛成や。ライカに謝れ、アイリス」
アイリスは思い通りに事が進まないと、頬っぺたを膨らませる癖がある。そして、見た!!アイリスが頬っぺたを膨らませた。眼福だ。幸せだ。アイリス、可愛い!だが、駄目だ。これ以上、主人公と攻略対象者たちのラブメーターが落ちるとゲーム攻略に支障が出る。それに、パウルがおかしな事を言ってなかったか?
「アルフレッドもパウルも、ちょっと待って。アイリスが、今朝も襲われたって本当なの?」
僕の質問に答えたのはアルフレッドだった。ちらりとパウルを見た後に、アルフレッドはゆっくりと僕に話し掛けてきた。まるで、ハッシュみたいな話し方だ。僕の事を子ども扱いしている。そう感じて少し苛ついた。
アルフレッドは・・僕の前世の親友は、こんな話し方はしなかった。
「パウルから、まだ事情を聴いていなかったようだね、ライカ?今朝、アイリスが学園の『バラ園』を散策中に四人の男と出くわして、アイリス=スノードロップは彼らに襲われた」
「そんな・・アイリスが!?」
しまった!!
『バラ園』凌辱エンドの事をすっかり忘れていた!あのスチルを見逃すとは無念!!
「大丈夫だ、ライカ。アイリスは凌辱されていない。アイリスは、四人組に地面に押し倒されただけだ。男たちも全員捕らえた」
「アイリスを救ったのは、アルフレッド?」
「ハッシュの情報がアイリスを救ったんだ」
「ハッシュ?」
「事前にハッシュから、『バラ園』に怪しい四人組がたむろしているとの情報を得ていたお陰だ。その確認の為に、俺とハッシュはバラ園を見張っていた。まさか、『バラ園』に来ない様に忠告したアイリスが来てしまったことは予想外だったけどな」
なるほど。お助けキャラのハッシュが、関わっていたのか。アイリスの凌辱が防げたのなら、バッドエンドの線は消えたな。それは良かったけど、被害者のアイリスに対して、皆さん冷たすぎない?
「ライカ、大丈夫か?」
「僕の心配はいらないよ。それより、ハッシュはアイリスが襲われたことを知っていたのに、僕には黙っていたの!?」
「お前が怖がると思ったから。黙っていて悪かった、ライカ」
「怖い思いをしたのは、アイリスだよ?もっと、彼を労らないと駄目だよ!」
僕の言葉に応じて、不意にアイリスが口を開いた。
「不愉快だな。不細工なライカに労られても、デメリットしかないよ。この学園に入れば、男達に狙われる事くらい分かっていた。僕は君と違い、美しいからね。それでも、僕がこの学園に入学したのは、僕に相応しい男を探す為なんだよ。この学園の男を手にいれたら、庶民の僕も『勝ち組』の仲間入りだからね!!」
「勝ち組・・」
「でも、美しくない男を手に入れて『勝ち組』になっても僕は満足できない。僕は学園から『癒し係』に任命されるほどの美人なんだよ!この僕に相応しい男なんて、めったにいない。でも、この学園には風紀委員がいる。彼等こそ、僕を真の勝ち組に導く男達なんだ!彼等に守護され縁を結ぶ為なら何だってする。「バラ園」に行き我が身を危険に晒す事に、何の躊躇いもなかったね。全ては、『勝ち組』になるための布石に過ぎないのだから!!」
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君の気持ちはわかるよ!『勝ち組』になりたいよね。モブの僕でさえ『勝ち組』になりたいのだから。超絶美人に生まれたアイリスが、庶民でおわるなんて間違っているよね。世の理に反しているよね。攻略対象者に救ってもらうために危険を犯して『バラ園』に向かうなんてなんたる 勇気だ、アイリス!!
だけど、君の発言が攻略対象者に不快感を与えている事に気がついて、アイリス!君の独自の世の理設定がゲーム攻略を難しくしているんだ。攻略対象者とトゥルーエンドを迎える為にも発言には注意してくれ!
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