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浦島太郎とウミガメ
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◆◆◆◆◆
亀をいじめるいたずらっ子を懲らしめた浦島太郎は、そのまま立ち去ろうとした。すると、不意に低い声で話しかけられる。
「このまま立ち去るつもりとは、あまりに無責任というもの。そうは思いませんか、浦島太郎殿」
浦島太郎に話し掛けたのはウミガメだった。最初は幻聴かと疑った浦島太郎だが、その場にしゃがみ込みウミガメをしげしげと見つめる。そして、亀に声を掛けた。
「無責任とは酷い言い掛かりだ。子供たちのイジメからお前を救ったのは俺だよ?」
「その通りです。だからこそ無責任だと言っています。今貴方が立ち去れば子供たちはまた戻ってきて、私にひどい仕打ちをするでしょう。なのに、貴方は立ち去るという‥‥無責任でしょう?」
浦島太郎は少しムッとして答える。
「子供たちは俺に叱られ反省していた。」
「それは表向きの姿です」
「人はそこまで愚かではないぞ」
「では、どちらの意見が正しいか試してみましょうか?浦島殿は松林に身を潜めて、子供等の様子を観察して下さい。もしも、彼等が私を再びイジメに来たなら、今度は彼等が二度とこないように方策して下さい」
「よく話す亀だな。では、再び子供等がお前をイジメに来たなら、彼らの住まいを焼き払うとしよう。住む家がなくなれば親族を頼りそれぞれ他の地に散らばるだろうからね。どうだ、ウミガメよ?」
「え、そこまでするのですか💦」
ウミガメが不意に慌てだすので面白くなった浦島太郎は胸を叩いて請け負った。
「では、俺は松林に身を隠そう」
浦島太郎は喜々として松林に身を隠す。しばらくすると、ガキどもが戻ってきた。そして、ウミガメを再びいじめだす。いじめの度合いはひどくなり、甲羅に松明の火を押し付ける者もいた。
◇◇◇
ウミガメをいじめていた子供の一人が声を上げた。
「村から煙があがっている!火事だ!」
「早く村に戻ろう!」
子供たちは慌てて村に向う。折しも激しい海風が吹き、炎が村全体を丸呑みにした。しばらくすると、煤だらけの浦島太郎が帰ってきた。彼は悪びれる様子もなく声高に言う。
「まずいことになったぞ、ウミガメ」
「どしたというのですか?」
「火を放つところを村人に見つかった。捕まれば処刑される。このような事になったのもお前の責任だ‥‥なんとかしろ」
「貴方は常識知らずですね。だが仕方がない。私が貴方を煽った事も真実。私の背に乗って下さい、浦島太郎殿。このまま、海の底に参りましょう」
「海の底では息ができぬ。お前は俺の死を望むのか?」
「まさか。海の底には竜宮城がございます。尊き安徳天皇の御所もございます。どうです?海の底にまいりましょう」
浦島太郎はしばらく黙ってウミガメを見つめたあとに、黙ってその背に乗りしがみついた。
「どこへなりと連れて行け。陸より海の底で死ぬのも悪くない」
「では参りましょう」
ウミガメは浦島太郎を乗せて、海の底に泳ぎだした。
フィクションです☺
◆◆◆◆◆
亀をいじめるいたずらっ子を懲らしめた浦島太郎は、そのまま立ち去ろうとした。すると、不意に低い声で話しかけられる。
「このまま立ち去るつもりとは、あまりに無責任というもの。そうは思いませんか、浦島太郎殿」
浦島太郎に話し掛けたのはウミガメだった。最初は幻聴かと疑った浦島太郎だが、その場にしゃがみ込みウミガメをしげしげと見つめる。そして、亀に声を掛けた。
「無責任とは酷い言い掛かりだ。子供たちのイジメからお前を救ったのは俺だよ?」
「その通りです。だからこそ無責任だと言っています。今貴方が立ち去れば子供たちはまた戻ってきて、私にひどい仕打ちをするでしょう。なのに、貴方は立ち去るという‥‥無責任でしょう?」
浦島太郎は少しムッとして答える。
「子供たちは俺に叱られ反省していた。」
「それは表向きの姿です」
「人はそこまで愚かではないぞ」
「では、どちらの意見が正しいか試してみましょうか?浦島殿は松林に身を潜めて、子供等の様子を観察して下さい。もしも、彼等が私を再びイジメに来たなら、今度は彼等が二度とこないように方策して下さい」
「よく話す亀だな。では、再び子供等がお前をイジメに来たなら、彼らの住まいを焼き払うとしよう。住む家がなくなれば親族を頼りそれぞれ他の地に散らばるだろうからね。どうだ、ウミガメよ?」
「え、そこまでするのですか💦」
ウミガメが不意に慌てだすので面白くなった浦島太郎は胸を叩いて請け負った。
「では、俺は松林に身を隠そう」
浦島太郎は喜々として松林に身を隠す。しばらくすると、ガキどもが戻ってきた。そして、ウミガメを再びいじめだす。いじめの度合いはひどくなり、甲羅に松明の火を押し付ける者もいた。
◇◇◇
ウミガメをいじめていた子供の一人が声を上げた。
「村から煙があがっている!火事だ!」
「早く村に戻ろう!」
子供たちは慌てて村に向う。折しも激しい海風が吹き、炎が村全体を丸呑みにした。しばらくすると、煤だらけの浦島太郎が帰ってきた。彼は悪びれる様子もなく声高に言う。
「まずいことになったぞ、ウミガメ」
「どしたというのですか?」
「火を放つところを村人に見つかった。捕まれば処刑される。このような事になったのもお前の責任だ‥‥なんとかしろ」
「貴方は常識知らずですね。だが仕方がない。私が貴方を煽った事も真実。私の背に乗って下さい、浦島太郎殿。このまま、海の底に参りましょう」
「海の底では息ができぬ。お前は俺の死を望むのか?」
「まさか。海の底には竜宮城がございます。尊き安徳天皇の御所もございます。どうです?海の底にまいりましょう」
浦島太郎はしばらく黙ってウミガメを見つめたあとに、黙ってその背に乗りしがみついた。
「どこへなりと連れて行け。陸より海の底で死ぬのも悪くない」
「では参りましょう」
ウミガメは浦島太郎を乗せて、海の底に泳ぎだした。
フィクションです☺
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