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我慢の限界だった
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◆◆◆◆◆
大人になっても父親は俺に付きまとう。会社帰りに金をせびりに何度も来る。
何年も耐えてきた。
そう、子供の頃から。
親父は俺に性虐待をしていた。俺の母親が死んで金づるが無くなると、親父は俺に売春を強要した。男とも女とも関係を持たされた。特に男に抱かれるのは最悪で、辛くていつも泣いてた。
だけど、逃げ出さなかった。
なぜ逃げ出さなかったのか‥‥大人になった今でも分からない。何かが歯止めになり家を出られなかった。それが父親への愛情でなかったのは確か。
ただ怖かったのかもしれない。親父さえもこれなのに、他人なんて信じられなかった。それに、逃げ出して殴られるのも怖くて。
雁字搦めの人生。
転機が来たのは高校の卒業。俺は就職と同時に家を出た。職場の寮で生活を始めてようやく自由を手に入れた。仕事は辛いこともあったが、親父から離れられただけでも幸せだった。
なのに、給料日になると親父は現れるようになる。酒の飲みすぎで肝臓をやられたのか、随分と痩せていた。体の衰えから妙に下手にでるようになる。体が痛いだの病院代がないとか泣き落としに掛かる。
親父が生活保護を貰っている事は知っていた。市役所から親父を養えと連絡が来たが「無理だ」とはねつけた。
生活保護が貰えるのだから、肝臓が相当悪いのは確かだろう。なのに酒と煙草はやめず保護費をパチンコに使い果たして生活できないと泣きつく。
親ガチャハズレとはこのことだ。早く死んでほしいと何度も願う。なのに給料日には毎回現れる。金を渡すまではしつこく付きまとい嫌がらせをされた。
今日もそうだ。
給料日だと知って会社帰りを待ち伏せする親父。しかも、社員寮の前で堂々と。俺は親父の存在が恥ずかしい。だから、親父の手を引いて近くの公園に向う。そこで金の受け渡しをして、お互いに別の居場所に帰る。
親父に金を渡すと嬉しそうに笑い「また今度」と言って俺に背を向けた。いつもの別れの言葉。なのに今日は違った。
公園にブロック片が落ちていて、危ないなと思った。それを何気なく拾う。拾ったら、もう止まらなかった。
親父の後頭部をブロックの塊で殴っていた。倒れたあとも何度も親父を殴る。
我慢の限界だった。
◆◆◆◆◆
大人になっても父親は俺に付きまとう。会社帰りに金をせびりに何度も来る。
何年も耐えてきた。
そう、子供の頃から。
親父は俺に性虐待をしていた。俺の母親が死んで金づるが無くなると、親父は俺に売春を強要した。男とも女とも関係を持たされた。特に男に抱かれるのは最悪で、辛くていつも泣いてた。
だけど、逃げ出さなかった。
なぜ逃げ出さなかったのか‥‥大人になった今でも分からない。何かが歯止めになり家を出られなかった。それが父親への愛情でなかったのは確か。
ただ怖かったのかもしれない。親父さえもこれなのに、他人なんて信じられなかった。それに、逃げ出して殴られるのも怖くて。
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なのに、給料日になると親父は現れるようになる。酒の飲みすぎで肝臓をやられたのか、随分と痩せていた。体の衰えから妙に下手にでるようになる。体が痛いだの病院代がないとか泣き落としに掛かる。
親父が生活保護を貰っている事は知っていた。市役所から親父を養えと連絡が来たが「無理だ」とはねつけた。
生活保護が貰えるのだから、肝臓が相当悪いのは確かだろう。なのに酒と煙草はやめず保護費をパチンコに使い果たして生活できないと泣きつく。
親ガチャハズレとはこのことだ。早く死んでほしいと何度も願う。なのに給料日には毎回現れる。金を渡すまではしつこく付きまとい嫌がらせをされた。
今日もそうだ。
給料日だと知って会社帰りを待ち伏せする親父。しかも、社員寮の前で堂々と。俺は親父の存在が恥ずかしい。だから、親父の手を引いて近くの公園に向う。そこで金の受け渡しをして、お互いに別の居場所に帰る。
親父に金を渡すと嬉しそうに笑い「また今度」と言って俺に背を向けた。いつもの別れの言葉。なのに今日は違った。
公園にブロック片が落ちていて、危ないなと思った。それを何気なく拾う。拾ったら、もう止まらなかった。
親父の後頭部をブロックの塊で殴っていた。倒れたあとも何度も親父を殴る。
我慢の限界だった。
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