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第三章
3-29 『フォルカー病』の初期症状
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◆◆◆◆◆
俺が慌てるアルミンに微笑むと、幼馴染は急に顔を赤らめた。俺はアルミンの衣服越しに、軽く彼の肌に指を添わせてから手を離す。
「‥‥っ!落ち着けー、俺!よし、話の続きだが‥‥フォルカー教国が奴隷貿易の拠点港を密かに封鎖したと、シュナーベル家の密偵が報告してきた。おそらく今回も感染源はそこだろうな。」
俺は首を傾げて尋ねる。
「港を閉鎖したって事は、相当の感染者が出てるのかな?伝染病がフォルカー教国中に広がらないと良いけど‥‥。」
「‥‥流行り病は厄介だからな」
「でも、フォルカー教国とフォーゲル王国は国境を接していないよね?フォルカー教国内でもまだ病が蔓延しているわけじゃない。もしかして、王都で発症者が見つかったの?」
「いや、見つかってない」
「その状況で私が『フォルカー病』に罹患するとは思えない。なのに、アルミンや兄上は急に『フォルカー病』を警戒しだした。港の閉鎖以外に警戒を強めた理由があるのなら教えて、アルミン」
俺がそう尋ねると、アルミンは返事に躊躇いを見せた。
「詳しくはヘクトール様に聞いてくれ、マテウス」
「アルミン~!アルミン~!」
俺はアルミンの服の裾を掴んで名を連呼した。アルミンは困って口を開く。
「マテウス、うるさい。」
「情報下さい、アルミン」
「あ~、くそ。」
「アルミン」
「分かったから‥‥裾を引っ張るな」
俺が素直に裾から手を離すと、アルミンは一つ息を付いて話し出す。
「‥‥数日前から、フォルカー教国の枢機卿が王都の教会を訪れて滞在中だ。枢機卿は教会に籠りきりだが、教会の関係者は王城と王都の教会を頻繁に行き来している。」
「え、枢機卿が来てるの?」
「ああ、そうだ。だから、王城や王都の医療関係者はピリピリしているわけ。感染症を持ち込まれてはたまらないからな。」
「フォルカー教国の枢機卿‥‥」
「ヘクトール様の心配が分かるだろ?王城に出仕しているお前の身を案じておられる。もちろん、俺もお前の事が心配で」
「黙って、アルミン!」
「えっ?いや、だから心配で‥‥」
「今はそれどころじゃないの!枢機卿の名前を教えて!誰なの、アルミン!」
「え、いや‥‥‥聞いたが忘れた」
俺は思わず頭を抱える。
「忘れたって‥‥馬鹿なの、アルミン!私の鼻血の危機と殿下の尻の危機が身近に迫っているのに!」
「‥‥マテウス、熱のせいで発言がおかしくなっているぞ?殿下の尻って何の話だよ?」
しまった。
また余計な発言を‥‥。
「あ~、ごめんなさい。熱のせいで、はしたない発言をしちゃった。でも、私は『フォルカー病』では無いと思うよ?症状も微熱だけだし」
「『フォルカー病』の初期症状は、微熱と疲労感だ。警戒するに越したことはない。医者からは微熱が治まるまでは休養するように言われるはずだ。その間は王城出仕も取りやめだな、マテウス」
「えぇっ!?」
前世の社畜人生では、微熱と疲労感など常の事だった。高熱でも出社して残業していたのは、クビになるのも給料が減るのも嫌だかから。
毎日ふらふらになりながら働いていた前世社畜の俺には、微熱で王城を休む事は気が引ける!
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俺が慌てるアルミンに微笑むと、幼馴染は急に顔を赤らめた。俺はアルミンの衣服越しに、軽く彼の肌に指を添わせてから手を離す。
「‥‥っ!落ち着けー、俺!よし、話の続きだが‥‥フォルカー教国が奴隷貿易の拠点港を密かに封鎖したと、シュナーベル家の密偵が報告してきた。おそらく今回も感染源はそこだろうな。」
俺は首を傾げて尋ねる。
「港を閉鎖したって事は、相当の感染者が出てるのかな?伝染病がフォルカー教国中に広がらないと良いけど‥‥。」
「‥‥流行り病は厄介だからな」
「でも、フォルカー教国とフォーゲル王国は国境を接していないよね?フォルカー教国内でもまだ病が蔓延しているわけじゃない。もしかして、王都で発症者が見つかったの?」
「いや、見つかってない」
「その状況で私が『フォルカー病』に罹患するとは思えない。なのに、アルミンや兄上は急に『フォルカー病』を警戒しだした。港の閉鎖以外に警戒を強めた理由があるのなら教えて、アルミン」
俺がそう尋ねると、アルミンは返事に躊躇いを見せた。
「詳しくはヘクトール様に聞いてくれ、マテウス」
「アルミン~!アルミン~!」
俺はアルミンの服の裾を掴んで名を連呼した。アルミンは困って口を開く。
「マテウス、うるさい。」
「情報下さい、アルミン」
「あ~、くそ。」
「アルミン」
「分かったから‥‥裾を引っ張るな」
俺が素直に裾から手を離すと、アルミンは一つ息を付いて話し出す。
「‥‥数日前から、フォルカー教国の枢機卿が王都の教会を訪れて滞在中だ。枢機卿は教会に籠りきりだが、教会の関係者は王城と王都の教会を頻繁に行き来している。」
「え、枢機卿が来てるの?」
「ああ、そうだ。だから、王城や王都の医療関係者はピリピリしているわけ。感染症を持ち込まれてはたまらないからな。」
「フォルカー教国の枢機卿‥‥」
「ヘクトール様の心配が分かるだろ?王城に出仕しているお前の身を案じておられる。もちろん、俺もお前の事が心配で」
「黙って、アルミン!」
「えっ?いや、だから心配で‥‥」
「今はそれどころじゃないの!枢機卿の名前を教えて!誰なの、アルミン!」
「え、いや‥‥‥聞いたが忘れた」
俺は思わず頭を抱える。
「忘れたって‥‥馬鹿なの、アルミン!私の鼻血の危機と殿下の尻の危機が身近に迫っているのに!」
「‥‥マテウス、熱のせいで発言がおかしくなっているぞ?殿下の尻って何の話だよ?」
しまった。
また余計な発言を‥‥。
「あ~、ごめんなさい。熱のせいで、はしたない発言をしちゃった。でも、私は『フォルカー病』では無いと思うよ?症状も微熱だけだし」
「『フォルカー病』の初期症状は、微熱と疲労感だ。警戒するに越したことはない。医者からは微熱が治まるまでは休養するように言われるはずだ。その間は王城出仕も取りやめだな、マテウス」
「えぇっ!?」
前世の社畜人生では、微熱と疲労感など常の事だった。高熱でも出社して残業していたのは、クビになるのも給料が減るのも嫌だかから。
毎日ふらふらになりながら働いていた前世社畜の俺には、微熱で王城を休む事は気が引ける!
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