嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

文字の大きさ
上 下
48 / 239
第三章

3-22 その質問は‥‥ヴェルンハルト殿下の死因に繋がるものじゃないの?

しおりを挟む
◆◆◆◆◆


「ヴェルンハルト殿下の様に側室の子が王太子になられる例は滅多にないですよね?私は‥‥ヴェルンハルト殿下の性格の歪みは、その複雑な立場から生まれていると思うのです。」

「確かにそうかもしれません。」

「私はヴェルンハルト殿下の『親友』として、殿下には立派な国王になって欲しいと思っています。でも、このまま殿下が国王になる事に‥‥私は不安を抱いています。」

「マテウス卿、それは‥‥。」

「ヴォルフラム様、私はただ殿下の批判をしたい訳ではないのです。この不安を解消するために、もっと殿下のことが知りたい。カールと心を通わせたヴェルンハルト殿下と、もっと言葉を交わしたい‥‥そう思っています。」

「ヴェルンハルト殿下と心を通わせる事は難しいと思います。」

「確かにそうかもしれません。でも、ヴォルフラム様だって諦めずに殿下と正面から向き合っていますよね?進言を退けられてもヴェルンハルト殿下に尽くしていらっしゃるのは、殿下に立派な国王になってもらいたいからでしょ?」

「‥‥‥‥‥。」

俺の問いかけにヴォルフラムが黙り込み、俺に真剣な眼差しを向ける。俺は驚いてヴォルフラムを見返して名を呼んだ。

「ヴォルフラム様?」

ヴォルフラムはファビアン殿下を胸に抱いたまま、不意に不穏な言葉を口にした。

「ヴェルンハルト殿下は、王位を継承するに相応しい人物だとお考えですか、マテウス卿?」

ちょっと待って!

その質問は‥‥ヴェルンハルト殿下の死因に繋がるものじゃないの?

「ヴォルフラム様の意図が何処に有るのかは存じ上げません。ですが、その質問に応じるつもりはありません」

「慎重ですね、マテウス卿。しかし、貴方の考えは表情に全て現れていますよ?」

「えっ!?」

俺は思わず体を固くする。しばらく黙ってヴォルフラムを見つめた後、俺は呼吸を整えて言葉を放った。

「ヴェルンハルト殿下は、王位を継承するに相応しい人物だとお考えですか、ヴォルフラム様?」

俺はヴォルフラムと同じ言葉で、彼に質問を返した。

ヴォルフラムはファビアン殿下を抱いたまま僅かに微笑む。ヴォルフラムの微笑みに俺は思わず見とれてしまう。

「マテウス卿の意図が何処に有るのかは存じ上げません。ですが、その質問には応じるつもりはありません。」

ヴォルフラムが俺の言葉を引用して応じた。彼の表情からは何も読み取れない。

真面目なヴォルフラムが、俺と言葉遊びをしたくなったようだ。しかも、危うい内容での言葉遊びをヴォルフラムが仕掛けてくる。

まあ、そんな時間の使い方も悪くない。特に相手がヴォルフラムならば‥‥。

「ヴォルフラム様‥‥貴方は学園時代に私を危機から救って下さいました。恐怖に震え泣きじゃくる私にとって、貴方はまるで物語の中の騎士のような存在でした。」

「物語の中の騎士とは‥‥。」

ヴォルフラムが俺の大袈裟な表現に戸惑いを示す。

ふふ、ヴォルフラム様。

容姿は冴えない俺ですが、話し手としては面白いとヴェルンハルト殿下よりお墨付きを得ているのですよ?

言葉遊びでは負けません!

「ヴォルフラム様は私の初恋の相手であり、今でも私にとって特別な存在です。」

「え?」

「ディートリッヒ家とシュナーベル家の関係は王家の策略で歪められ‥‥今は敵同士の間柄です。ディートリッヒ家のヴォルフラム様に恋心を抱いた私は、シェイクスピアの戯曲の登場人物のように切ない想いを抱いています。」

「‥‥マテウス卿。」

「私の初恋は残念ながら実りませんでした。尤も、私の様な容姿では、ヴォルフラム様の心を奪う事など、端から無理だったと諦めもつきます。ですが、今でもヴォルフラム様は私の特別です。共に働けることを嬉しく思っています。」

「私もです、マテウス卿」

「それは良かったです、ヴォルフラム様!では、共に手を取り合ってヴェルンハルト殿下を支えていきましょう。では、殿下に改善して頂きたい点を今から挙げていきますね!」

「‥‥‥‥‥。」

沈黙での切り返しですか、ヴォルフラム様?なかなか手強いですね‥‥ふふ。

「まず、ヴェルンハルト殿下が側近を愛人で固められた事には問題を感じております。世間の評判も気になりますし、妃候補との性生活に支障をきたすことも心配です。ですので、ヴェルンハルト殿下には愛人とのセックスの回数を制限してもらいましょう。」

「‥‥‥‥。」

「ヴェルンハルト殿下が昼に愛人とねっとりセックスをすると、夜の妃候補との閨はあっさりと済まされる可能性が高い。それでは、妃候補の体内に注がれる精液の質は落ちてしまいます。」

「‥‥‥‥‥。」

「精液の中の精子の数が減った上に元気を失った精子では、孕み子の子宮まで到達する事が非常に困難です。ヴェルンハルト殿下に愛人との禁欲を進言して頂きたく‥‥‥ん?」

ヴォルフラムが俺の顔をまじまじと見つめている。ヴォルフラムにこんな進言を頼んだのは不味かったかな?

「初恋?」
「はい?」

「私が貴方の『初恋の相手』との言葉は真実ですか、マテウス卿?」


◆◆◆◆◆◆
しおりを挟む
感想 252

あなたにおすすめの小説

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

嵌められた悪役令息の行く末は、

珈琲きの子
BL
【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】 公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。 一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。 「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。 帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。 【タンザナイト王国編】完結 【アレクサンドライト帝国編】完結 【精霊使い編】連載中 ※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎
BL
北の辺境騎士団で田舎暮らしをしていた公爵家次男のジェイデン・ロンデナートは15歳になったある日、王都にいる父親から帰還命令を受ける。 8歳で王都から追い出された薄幸の美少年が、ハイスペイケメンになって出戻って来る話です。 序盤はBL要素薄め。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

悪役令息を引き継いだら、愛が重めの婚約者が付いてきました

ぽんちゃん
BL
 双子が忌み嫌われる国で生まれたアデル・グランデは、辺鄙な田舎でひっそりと暮らしていた。  そして、双子の兄――アダムは、格上の公爵子息と婚約中。  この婚約が白紙になれば、公爵家と共同事業を始めたグランデ侯爵家はおしまいである。  だが、アダムは自身のメイドと愛を育んでいた。  そこでアダムから、人生を入れ替えないかと持ちかけられることに。  両親にも会いたいアデルは、アダム・グランデとして生きていくことを決めた。  しかし、約束の日に会ったアダムは、体はバキバキに鍛えており、肌はこんがりと日に焼けていた。  幼少期は瓜二つだったが、ベッドで生活していた色白で病弱なアデルとは、あまり似ていなかったのだ。  そのため、化粧でなんとか誤魔化したアデルは、アダムになりきり、両親のために王都へ向かった。  アダムとして平和に暮らしたいアデルだが、婚約者のヴィンセントは塩対応。  初めてのデート(アデルにとって)では、いきなり店前に置き去りにされてしまい――!?  同性婚が可能な世界です。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。  ※ 感想欄はネタバレを含みますので、お気をつけください‼︎(><)

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。