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第三章
3-22 その質問は‥‥ヴェルンハルト殿下の死因に繋がるものじゃないの?
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◆◆◆◆◆
「ヴェルンハルト殿下の様に側室の子が王太子になられる例は滅多にないですよね?私は‥‥ヴェルンハルト殿下の性格の歪みは、その複雑な立場から生まれていると思うのです。」
「確かにそうかもしれません。」
「私はヴェルンハルト殿下の『親友』として、殿下には立派な国王になって欲しいと思っています。でも、このまま殿下が国王になる事に‥‥私は不安を抱いています。」
「マテウス卿、それは‥‥。」
「ヴォルフラム様、私はただ殿下の批判をしたい訳ではないのです。この不安を解消するために、もっと殿下のことが知りたい。カールと心を通わせたヴェルンハルト殿下と、もっと言葉を交わしたい‥‥そう思っています。」
「ヴェルンハルト殿下と心を通わせる事は難しいと思います。」
「確かにそうかもしれません。でも、ヴォルフラム様だって諦めずに殿下と正面から向き合っていますよね?進言を退けられてもヴェルンハルト殿下に尽くしていらっしゃるのは、殿下に立派な国王になってもらいたいからでしょ?」
「‥‥‥‥‥。」
俺の問いかけにヴォルフラムが黙り込み、俺に真剣な眼差しを向ける。俺は驚いてヴォルフラムを見返して名を呼んだ。
「ヴォルフラム様?」
ヴォルフラムはファビアン殿下を胸に抱いたまま、不意に不穏な言葉を口にした。
「ヴェルンハルト殿下は、王位を継承するに相応しい人物だとお考えですか、マテウス卿?」
ちょっと待って!
その質問は‥‥ヴェルンハルト殿下の死因に繋がるものじゃないの?
「ヴォルフラム様の意図が何処に有るのかは存じ上げません。ですが、その質問に応じるつもりはありません」
「慎重ですね、マテウス卿。しかし、貴方の考えは表情に全て現れていますよ?」
「えっ!?」
俺は思わず体を固くする。しばらく黙ってヴォルフラムを見つめた後、俺は呼吸を整えて言葉を放った。
「ヴェルンハルト殿下は、王位を継承するに相応しい人物だとお考えですか、ヴォルフラム様?」
俺はヴォルフラムと同じ言葉で、彼に質問を返した。
ヴォルフラムはファビアン殿下を抱いたまま僅かに微笑む。ヴォルフラムの微笑みに俺は思わず見とれてしまう。
「マテウス卿の意図が何処に有るのかは存じ上げません。ですが、その質問には応じるつもりはありません。」
ヴォルフラムが俺の言葉を引用して応じた。彼の表情からは何も読み取れない。
真面目なヴォルフラムが、俺と言葉遊びをしたくなったようだ。しかも、危うい内容での言葉遊びをヴォルフラムが仕掛けてくる。
まあ、そんな時間の使い方も悪くない。特に相手がヴォルフラムならば‥‥。
「ヴォルフラム様‥‥貴方は学園時代に私を危機から救って下さいました。恐怖に震え泣きじゃくる私にとって、貴方はまるで物語の中の騎士のような存在でした。」
「物語の中の騎士とは‥‥。」
ヴォルフラムが俺の大袈裟な表現に戸惑いを示す。
ふふ、ヴォルフラム様。
容姿は冴えない俺ですが、話し手としては面白いとヴェルンハルト殿下よりお墨付きを得ているのですよ?
言葉遊びでは負けません!
「ヴォルフラム様は私の初恋の相手であり、今でも私にとって特別な存在です。」
「え?」
「ディートリッヒ家とシュナーベル家の関係は王家の策略で歪められ‥‥今は敵同士の間柄です。ディートリッヒ家のヴォルフラム様に恋心を抱いた私は、シェイクスピアの戯曲の登場人物のように切ない想いを抱いています。」
「‥‥マテウス卿。」
「私の初恋は残念ながら実りませんでした。尤も、私の様な容姿では、ヴォルフラム様の心を奪う事など、端から無理だったと諦めもつきます。ですが、今でもヴォルフラム様は私の特別です。共に働けることを嬉しく思っています。」
「私もです、マテウス卿」
「それは良かったです、ヴォルフラム様!では、共に手を取り合ってヴェルンハルト殿下を支えていきましょう。では、殿下に改善して頂きたい点を今から挙げていきますね!」
「‥‥‥‥‥。」
沈黙での切り返しですか、ヴォルフラム様?なかなか手強いですね‥‥ふふ。
「まず、ヴェルンハルト殿下が側近を愛人で固められた事には問題を感じております。世間の評判も気になりますし、妃候補との性生活に支障をきたすことも心配です。ですので、ヴェルンハルト殿下には愛人とのセックスの回数を制限してもらいましょう。」
「‥‥‥‥。」
「ヴェルンハルト殿下が昼に愛人とねっとりセックスをすると、夜の妃候補との閨はあっさりと済まされる可能性が高い。それでは、妃候補の体内に注がれる精液の質は落ちてしまいます。」
「‥‥‥‥‥。」
「精液の中の精子の数が減った上に元気を失った精子では、孕み子の子宮まで到達する事が非常に困難です。ヴェルンハルト殿下に愛人との禁欲を進言して頂きたく‥‥‥ん?」
ヴォルフラムが俺の顔をまじまじと見つめている。ヴォルフラムにこんな進言を頼んだのは不味かったかな?
「初恋?」
「はい?」
「私が貴方の『初恋の相手』との言葉は真実ですか、マテウス卿?」
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「ヴェルンハルト殿下の様に側室の子が王太子になられる例は滅多にないですよね?私は‥‥ヴェルンハルト殿下の性格の歪みは、その複雑な立場から生まれていると思うのです。」
「確かにそうかもしれません。」
「私はヴェルンハルト殿下の『親友』として、殿下には立派な国王になって欲しいと思っています。でも、このまま殿下が国王になる事に‥‥私は不安を抱いています。」
「マテウス卿、それは‥‥。」
「ヴォルフラム様、私はただ殿下の批判をしたい訳ではないのです。この不安を解消するために、もっと殿下のことが知りたい。カールと心を通わせたヴェルンハルト殿下と、もっと言葉を交わしたい‥‥そう思っています。」
「ヴェルンハルト殿下と心を通わせる事は難しいと思います。」
「確かにそうかもしれません。でも、ヴォルフラム様だって諦めずに殿下と正面から向き合っていますよね?進言を退けられてもヴェルンハルト殿下に尽くしていらっしゃるのは、殿下に立派な国王になってもらいたいからでしょ?」
「‥‥‥‥‥。」
俺の問いかけにヴォルフラムが黙り込み、俺に真剣な眼差しを向ける。俺は驚いてヴォルフラムを見返して名を呼んだ。
「ヴォルフラム様?」
ヴォルフラムはファビアン殿下を胸に抱いたまま、不意に不穏な言葉を口にした。
「ヴェルンハルト殿下は、王位を継承するに相応しい人物だとお考えですか、マテウス卿?」
ちょっと待って!
その質問は‥‥ヴェルンハルト殿下の死因に繋がるものじゃないの?
「ヴォルフラム様の意図が何処に有るのかは存じ上げません。ですが、その質問に応じるつもりはありません」
「慎重ですね、マテウス卿。しかし、貴方の考えは表情に全て現れていますよ?」
「えっ!?」
俺は思わず体を固くする。しばらく黙ってヴォルフラムを見つめた後、俺は呼吸を整えて言葉を放った。
「ヴェルンハルト殿下は、王位を継承するに相応しい人物だとお考えですか、ヴォルフラム様?」
俺はヴォルフラムと同じ言葉で、彼に質問を返した。
ヴォルフラムはファビアン殿下を抱いたまま僅かに微笑む。ヴォルフラムの微笑みに俺は思わず見とれてしまう。
「マテウス卿の意図が何処に有るのかは存じ上げません。ですが、その質問には応じるつもりはありません。」
ヴォルフラムが俺の言葉を引用して応じた。彼の表情からは何も読み取れない。
真面目なヴォルフラムが、俺と言葉遊びをしたくなったようだ。しかも、危うい内容での言葉遊びをヴォルフラムが仕掛けてくる。
まあ、そんな時間の使い方も悪くない。特に相手がヴォルフラムならば‥‥。
「ヴォルフラム様‥‥貴方は学園時代に私を危機から救って下さいました。恐怖に震え泣きじゃくる私にとって、貴方はまるで物語の中の騎士のような存在でした。」
「物語の中の騎士とは‥‥。」
ヴォルフラムが俺の大袈裟な表現に戸惑いを示す。
ふふ、ヴォルフラム様。
容姿は冴えない俺ですが、話し手としては面白いとヴェルンハルト殿下よりお墨付きを得ているのですよ?
言葉遊びでは負けません!
「ヴォルフラム様は私の初恋の相手であり、今でも私にとって特別な存在です。」
「え?」
「ディートリッヒ家とシュナーベル家の関係は王家の策略で歪められ‥‥今は敵同士の間柄です。ディートリッヒ家のヴォルフラム様に恋心を抱いた私は、シェイクスピアの戯曲の登場人物のように切ない想いを抱いています。」
「‥‥マテウス卿。」
「私の初恋は残念ながら実りませんでした。尤も、私の様な容姿では、ヴォルフラム様の心を奪う事など、端から無理だったと諦めもつきます。ですが、今でもヴォルフラム様は私の特別です。共に働けることを嬉しく思っています。」
「私もです、マテウス卿」
「それは良かったです、ヴォルフラム様!では、共に手を取り合ってヴェルンハルト殿下を支えていきましょう。では、殿下に改善して頂きたい点を今から挙げていきますね!」
「‥‥‥‥‥。」
沈黙での切り返しですか、ヴォルフラム様?なかなか手強いですね‥‥ふふ。
「まず、ヴェルンハルト殿下が側近を愛人で固められた事には問題を感じております。世間の評判も気になりますし、妃候補との性生活に支障をきたすことも心配です。ですので、ヴェルンハルト殿下には愛人とのセックスの回数を制限してもらいましょう。」
「‥‥‥‥。」
「ヴェルンハルト殿下が昼に愛人とねっとりセックスをすると、夜の妃候補との閨はあっさりと済まされる可能性が高い。それでは、妃候補の体内に注がれる精液の質は落ちてしまいます。」
「‥‥‥‥‥。」
「精液の中の精子の数が減った上に元気を失った精子では、孕み子の子宮まで到達する事が非常に困難です。ヴェルンハルト殿下に愛人との禁欲を進言して頂きたく‥‥‥ん?」
ヴォルフラムが俺の顔をまじまじと見つめている。ヴォルフラムにこんな進言を頼んだのは不味かったかな?
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