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第三章
3-17 アルミンの心配
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◆◆◆◆◆◆
側近の仕事ってなんだっけ‥‥?
逞しい肉体を衣服で覆い隠し、殿下の側近となった男達が懸命に大量の書類と格闘する。
そんな姿を想像していた。
或いは、逞しい男達が会議室で互いの意見を激しく交わし合う。時には殴り合いに発展しながらも、最後には一致団結して業務に取り組む。
そんな姿も想像していた。
◇◇◇◇
男達の肉体がぶつかり合う度に、キングサイズのベッドはギシギシと軋む。俺がその姿を呆然と見つめていると、ヴォルフラムから声を掛けられた。
「マテウス卿、庭園を散策しましょう!ファビアン殿下もお庭に行きましょうね!」
「ち、ちち、うー、いっ、い?」
ファビアン殿下の言葉に、ヴェルンハルト殿下が男と絡んだまま応じる。
「ファビアン、父はこれから側近と大事な用を済ませなくてはならない。マテウスとヴォルフラムと一緒に、庭園を散策してきなさい。」
「ちちぅ、ちち、うえ、も」
「ファビアンの言葉が戻るように、マテウスとヴォルフラムは全力を尽くせ。俺も全力を尽くすつもりだ」
待って!何に全力を尽くすの?頑張り処が違うのでは!?
「ちち、うー」
「ヴェルンハルト殿下の命に従いファビアン殿下をお連れして庭園を散策しています。失礼します、殿下」
ヴォルフラムがヴェルンハルト殿下に声を掛けると、殿下は軽く手を振って応じた。
「早くファビアンを連れて部屋を出ていけ、ヴォルフラム。ふふ、相変わらず素晴らしい筋肉だ。布越しにも乳首の尖りがわかるぞ‥‥舐めさせろ!」
「いきなり乳首はやめて下さい!んっ、んん、ふっ、ふ、んっ、あぁ、素敵ですっ‥‥殿下ぁっ!」
俺は逞しい男達がベッドで抱き合う姿を見て思わず呟く。
「‥‥何これ?」
「マテウス卿、見てはいけません!」
ファビアン殿下を預けられたヴォルフラムは、殿下を抱いたまま俺を抱き寄せる。そして、俺を引きずるようにして側近の部屋を出た。
「ち、ちち、うー!」
扉の前でファビアン殿下が大きな声をあげたが、部屋の中からはあやしげな声が聞こえてきた。ヴォルフラムは殿下を抱いたまま、俺を促して王城の庭園に向う。
◇◇◇◇◇
『王太子殿下は昼間からセックスかよ?羨ましい限りだ。まあ、俺と殿下の好みはかけ離れているがな。やはり俺は柔肌の‥‥。』
王城の庭園に出ると、いきなりアルミンから声が聞こえてきた。
「アルミン?」
ヴェルンハルト殿下の行動を知っているという事は、アルミンは王城内に潜んでいたのかな?いったい何処にいたのだろう?
『マテウス様、俺も一緒に行動しても構わないでしょうか?』
「そうだね。ヴェルンハルト殿下に見られる心配は当分ないよね?構わないですか、ヴォルフラム様?」
「えっ、いや‥‥はい、マテウス卿」
ヴォルフラムにしては歯切れの悪い返事だが、それも仕方ない。ヴォルフラムが許可する前に、アルミンが茂みから出て来てしまったからだ。
「出てくるの早すぎ、アルミン!」
「悪いな、マテウス」
アルミンはそう応じると、ヴォルフラムが抱くファビアン殿下を見て首を傾げた。
「ファビアン殿下に挨拶を」
俺がアルミンにそう声を掛けると、彼は目を見開いてファビアン殿下を見た。
「え、ファビアン殿下?」
「ヴェルンハルト殿下と側室とのお子です。さあ、早く挨拶を」
「マテウス、ファビアン殿下の髪色は金髪だ。なぜ赤茶色の髪色に染めている?まるでカールの‥‥。」
アルミンは表情を硬くして『カール』の名を口にすると、そのまま黙り込んでしまった。
「‥‥事情があるの、アルミン。」
詳しい事情を伝えることを躊躇いそう応じると、アルミンは勘違いして語気を荒くした。
「ヴェルンハルト殿下が髪を赤茶色に染めたのか?くそ 、執務室には近づけなかったから事情がよくわからない。マテウス、執務室で何があったか説明してくれ!」
「事情は後で説明するよ」
「マテウス、俺は今すぐに事情を知りたい。息は乱れていないか?苦しくはないか?」
「え、大丈夫だけど?」
「顔色が悪い上にふらついている。マテウス、休んだ方がいい。ヘクトール様の執務室で休ませて貰おう。行こう、マテウス」
アルミンが俺に手を差し出す。俺はその手を見つめながら、首を左右にふった。
「アルミン、心配してくれて有り難う。でも、今はファビアン殿下の御前です」
「俺の主はマテウスだ」
「では、私が命じます。ファビアン殿下がお待ちです。アルミン、殿下に挨拶しなさい。」
「‥‥‥‥。」
アルミンをため息を付くと、彼は地面に片膝をついてファビアン殿下に挨拶した。
「ファビアン殿下、失礼しました。お初にお目に掛かります。アルミン・シュナーベルと申します。どうぞ、アルミンとお呼び下さい」
「アル、ン、アルミ、ミー、」
「アルミンです」
「ア、ルミン!」
「お上手です、ファビアン殿下。なるほど、マテウス様の子供の頃と同じ症状ですね。言葉が出ているので、マテウス様より回復は早いかもしれません。」
俺はアルミンの言葉に頷いた。そして、ファビアン殿下に視線を移すと微笑み掛けて口を開く。
「ファビアン殿下は既に言葉を取り戻しつつあります。焦ることなく私達と過ごしながら、言葉を取り戻しましょう。マテウスはファビアン殿下と同じ時を過ごせる事が、何よりも嬉しく感じています。」
「マテウ、ス、うれ、うれ、り!」
「ファビアン殿下。」
庭園には気持ちの良い風が吹き、殿下の赤茶色の髪が風に靡く。不意にファビアン殿下の姿にカールの幻を見て、俺はゆっくりと目を閉じた。
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側近の仕事ってなんだっけ‥‥?
逞しい肉体を衣服で覆い隠し、殿下の側近となった男達が懸命に大量の書類と格闘する。
そんな姿を想像していた。
或いは、逞しい男達が会議室で互いの意見を激しく交わし合う。時には殴り合いに発展しながらも、最後には一致団結して業務に取り組む。
そんな姿も想像していた。
◇◇◇◇
男達の肉体がぶつかり合う度に、キングサイズのベッドはギシギシと軋む。俺がその姿を呆然と見つめていると、ヴォルフラムから声を掛けられた。
「マテウス卿、庭園を散策しましょう!ファビアン殿下もお庭に行きましょうね!」
「ち、ちち、うー、いっ、い?」
ファビアン殿下の言葉に、ヴェルンハルト殿下が男と絡んだまま応じる。
「ファビアン、父はこれから側近と大事な用を済ませなくてはならない。マテウスとヴォルフラムと一緒に、庭園を散策してきなさい。」
「ちちぅ、ちち、うえ、も」
「ファビアンの言葉が戻るように、マテウスとヴォルフラムは全力を尽くせ。俺も全力を尽くすつもりだ」
待って!何に全力を尽くすの?頑張り処が違うのでは!?
「ちち、うー」
「ヴェルンハルト殿下の命に従いファビアン殿下をお連れして庭園を散策しています。失礼します、殿下」
ヴォルフラムがヴェルンハルト殿下に声を掛けると、殿下は軽く手を振って応じた。
「早くファビアンを連れて部屋を出ていけ、ヴォルフラム。ふふ、相変わらず素晴らしい筋肉だ。布越しにも乳首の尖りがわかるぞ‥‥舐めさせろ!」
「いきなり乳首はやめて下さい!んっ、んん、ふっ、ふ、んっ、あぁ、素敵ですっ‥‥殿下ぁっ!」
俺は逞しい男達がベッドで抱き合う姿を見て思わず呟く。
「‥‥何これ?」
「マテウス卿、見てはいけません!」
ファビアン殿下を預けられたヴォルフラムは、殿下を抱いたまま俺を抱き寄せる。そして、俺を引きずるようにして側近の部屋を出た。
「ち、ちち、うー!」
扉の前でファビアン殿下が大きな声をあげたが、部屋の中からはあやしげな声が聞こえてきた。ヴォルフラムは殿下を抱いたまま、俺を促して王城の庭園に向う。
◇◇◇◇◇
『王太子殿下は昼間からセックスかよ?羨ましい限りだ。まあ、俺と殿下の好みはかけ離れているがな。やはり俺は柔肌の‥‥。』
王城の庭園に出ると、いきなりアルミンから声が聞こえてきた。
「アルミン?」
ヴェルンハルト殿下の行動を知っているという事は、アルミンは王城内に潜んでいたのかな?いったい何処にいたのだろう?
『マテウス様、俺も一緒に行動しても構わないでしょうか?』
「そうだね。ヴェルンハルト殿下に見られる心配は当分ないよね?構わないですか、ヴォルフラム様?」
「えっ、いや‥‥はい、マテウス卿」
ヴォルフラムにしては歯切れの悪い返事だが、それも仕方ない。ヴォルフラムが許可する前に、アルミンが茂みから出て来てしまったからだ。
「出てくるの早すぎ、アルミン!」
「悪いな、マテウス」
アルミンはそう応じると、ヴォルフラムが抱くファビアン殿下を見て首を傾げた。
「ファビアン殿下に挨拶を」
俺がアルミンにそう声を掛けると、彼は目を見開いてファビアン殿下を見た。
「え、ファビアン殿下?」
「ヴェルンハルト殿下と側室とのお子です。さあ、早く挨拶を」
「マテウス、ファビアン殿下の髪色は金髪だ。なぜ赤茶色の髪色に染めている?まるでカールの‥‥。」
アルミンは表情を硬くして『カール』の名を口にすると、そのまま黙り込んでしまった。
「‥‥事情があるの、アルミン。」
詳しい事情を伝えることを躊躇いそう応じると、アルミンは勘違いして語気を荒くした。
「ヴェルンハルト殿下が髪を赤茶色に染めたのか?くそ 、執務室には近づけなかったから事情がよくわからない。マテウス、執務室で何があったか説明してくれ!」
「事情は後で説明するよ」
「マテウス、俺は今すぐに事情を知りたい。息は乱れていないか?苦しくはないか?」
「え、大丈夫だけど?」
「顔色が悪い上にふらついている。マテウス、休んだ方がいい。ヘクトール様の執務室で休ませて貰おう。行こう、マテウス」
アルミンが俺に手を差し出す。俺はその手を見つめながら、首を左右にふった。
「アルミン、心配してくれて有り難う。でも、今はファビアン殿下の御前です」
「俺の主はマテウスだ」
「では、私が命じます。ファビアン殿下がお待ちです。アルミン、殿下に挨拶しなさい。」
「‥‥‥‥。」
アルミンをため息を付くと、彼は地面に片膝をついてファビアン殿下に挨拶した。
「ファビアン殿下、失礼しました。お初にお目に掛かります。アルミン・シュナーベルと申します。どうぞ、アルミンとお呼び下さい」
「アル、ン、アルミ、ミー、」
「アルミンです」
「ア、ルミン!」
「お上手です、ファビアン殿下。なるほど、マテウス様の子供の頃と同じ症状ですね。言葉が出ているので、マテウス様より回復は早いかもしれません。」
俺はアルミンの言葉に頷いた。そして、ファビアン殿下に視線を移すと微笑み掛けて口を開く。
「ファビアン殿下は既に言葉を取り戻しつつあります。焦ることなく私達と過ごしながら、言葉を取り戻しましょう。マテウスはファビアン殿下と同じ時を過ごせる事が、何よりも嬉しく感じています。」
「マテウ、ス、うれ、うれ、り!」
「ファビアン殿下。」
庭園には気持ちの良い風が吹き、殿下の赤茶色の髪が風に靡く。不意にファビアン殿下の姿にカールの幻を見て、俺はゆっくりと目を閉じた。
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