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第三章
3-1 王城出仕二日目の朝
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◆◆◆◆◆◆
遂に王城出仕二日目の朝がやってきた。
初めての王城出仕から、既に一ヶ月以上が経過している。俺は朝から緊張感が高まり、そわそわしていた。
早めに自室を出て玄関ホールに向かうと、ヘクトール兄上が先に待っていた。
「兄上、遅れてごめんなさい!」
「いや、俺が早く来てしまっただけだ。気にするな、マテウス。では、王城に向かおう」
「はい、兄上」
俺より数日早く王城出仕を再開していたヘクトール兄上。普段はもっと早い時間に王城に向かう。
でも、今日だけは俺と一緒に王城に出仕してくれる事となった。兄上が傍にいるだけで、緊張が少し解れた気がする。
シュナーベル邸の玄関扉から外に出ると、既に馬車が用意されていた。
「わぁ、すごく綺麗な馬車!!」
「マテウスが気に入ったなら良かった」
兄上が婚約の記念に新調した馬車に、ようやく二人で乗る機会が巡ってきた。
馬車は美しく磨かれている。華美ではないが、気品ある馬車に仕上がっていた。贅沢な素材と丁寧な造りから、前世が社畜だっただけに値段が気になるところ。
「美しく気品に満ちた馬車。値段がとても気になります、兄上」
「マテウスは相変わらず、思ったことを何でも口にするね。さあ、私の手をとりなさい。マテウスが馬車から転がり落ちる姿しか想像出来ないから‥‥これは強制だからね」
「ヘクトール兄上は私の運動能力を侮っています。ですが、手はお借りします」
ヘクトール兄上にエスコートされて馬車に乗り込む。兄上とは一度だけ情を交えた。それ以降は、元の婚約者の関係に戻っている。
以前と変わらず、兄上は俺を優しくエスコートしてくれる。
「んっ、」
「どうした、マテウス?」
「いえ、何も‥‥‥。」
重ね合わせた指先が仄かに熱を帯びるのを感じた。その感覚は一日中抱き合ったあの日を思い起こさせる。
以前と変わらぬ婚約関係ではあったが、どこか淫靡でもあった。
◇◇◇◇◇
馬車に乗り込み王城に向かいながら、俺は以前から気になっていた事を口にしていた。
「ヘクトール兄上、アルミンとは王城で待ち合わせているのですか?彼を私の護衛に戻してくれるのでしょ」
「そのつもりだが、少々問題が生じて困っているところだ」
「問題?」
兄上が困り顔で話し始めるので、俺は心配になってきた。アルミンの身に何かあったのだろうか?
「アルミンは、一ヶ月以上王城で寝泊まりして、俺の部下より処刑案件の処理方法を叩き込まれた。だが、部下の報告によると、アルミンは事務仕事が相当に苦手らしく、度々虫のごとき素早さで職場から消え失せ、行方不明となるらしい」
「アルミンらしい行動ですね。彼は学園を首席で卒業した優秀な人物です。ですが、向き不向きは誰にでもあります。やはり、アルミンには私の護衛について貰いたいのです。駄目ですか、兄上?」
「いや、構わないよ。但し、アルミンをマテウスの護衛に付けるとしても、影から護衛する形になると思う。実は、王太子殿下がアルミンを嫌っていて、顔も見たくないそうでね」
「どうして、殿下がアルミンを嫌うのですか?アルミンに酷いことをしたのは、殿下の方なのにおかしいです!」
「う~ん。どうも、殿下の話ではアルミンとのセックスが最悪だったらしい。二度と会いたくないそうだ」
「ですが、アルミンは毒を盛られた状態で、ベッドに縛られて殿下に貫かれたそうですよ?アルミンのお尻を犠牲にしながら、殿下がセックスの良し悪しに文句を付ける立場にはない筈です。抗議しましょう、ヘクトール兄さま!」
ヘクトール兄上は、今までに見たことも無いような不快な表情を浮かべた。俺は兄上の表情にびびりつつ話の続きを待った。
「‥‥‥婚約記念に新調した馬車の中で、愛しいマテウスとアルミンの尻の話をする事になるとは。腹立たしい」
「ですが、アルミンの尻には罪はありませんよ?アルミンのお尻は完全に犠牲者です」
「いや、原因はアルミンの尻の中にあったらしいぞ‥‥マテウス」
「え?」
「あー、あれだ。精子を弱らせる為に直腸内が酸性に傾くよう、王城の医師がアルミンの尻に柑橘類を詰めたらしい。だが、その医師は殿下が柑橘類の果汁により、皮膚が酷く腫れてただれる体質だと知らなかったようだ」
「ん?つまり殿下は、がつがつとぺニ‥‥男性器をアルミンの尻に突き込み、あれが酷いことになってしまった訳ですか?」
「ちょうど、陛下の妃候補のお産の為に、多くの医師が集められていた。それに呼ばれなかった出来の良くない医師が、アルミンの処置をしたらしい。アルミンの話では、殿下の体質も把握しておらず、更に致死量の毒を渡されたそうだ。」
「致死量!しかし、アルミンからの手紙には、殿下とのセックスの後遺症は切れ痔だけだと書いてありました!毒の後遺症はないと書いてあったのに‥‥」
「アルミンは殿下が二度と孕み子に毒を盛って抱かないように、自分で毒の量を調節して飲んだらしい。後遺症を残さないぎりぎりの量をね。実際、殿下は嘔吐と下痢と痙攣を繰り返すアルミンを見て、相当に衝撃を受けたらしい」
「ああ、アルミン!彼は体を張ってくれたのですね。しっかりとお礼をしないと。そうだ、切れ痔の薬を手配して、アルミンのお尻に薬を塗ってあげないといけない!」
突然、ヘクトール兄上に抱きしめられて唇を奪われた。絡み合う舌が体を熱くする。だだ一度の交わりが鮮やかに思い出されて、自然と兄上の背に手を回していた。
「んっ、んん‥‥っはぁ、やぁら、ヘクトール兄上は何時も突然です」
「移り気なマテウス」
「何ですかそれは?」
「誰にでも靡くマテウス」
「ヘクトール兄上?」
「だが、最後には俺の元に戻ると信じる事にする。さあ、王城に着いたよ。心の準備はいいかい、マテウス?」
「はい、ヘクトール兄上!!」
馬車は王城の門を通り抜ける。馬車の窓から王城を見て、俺は深呼吸をした。
王城出仕の再開だ。
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遂に王城出仕二日目の朝がやってきた。
初めての王城出仕から、既に一ヶ月以上が経過している。俺は朝から緊張感が高まり、そわそわしていた。
早めに自室を出て玄関ホールに向かうと、ヘクトール兄上が先に待っていた。
「兄上、遅れてごめんなさい!」
「いや、俺が早く来てしまっただけだ。気にするな、マテウス。では、王城に向かおう」
「はい、兄上」
俺より数日早く王城出仕を再開していたヘクトール兄上。普段はもっと早い時間に王城に向かう。
でも、今日だけは俺と一緒に王城に出仕してくれる事となった。兄上が傍にいるだけで、緊張が少し解れた気がする。
シュナーベル邸の玄関扉から外に出ると、既に馬車が用意されていた。
「わぁ、すごく綺麗な馬車!!」
「マテウスが気に入ったなら良かった」
兄上が婚約の記念に新調した馬車に、ようやく二人で乗る機会が巡ってきた。
馬車は美しく磨かれている。華美ではないが、気品ある馬車に仕上がっていた。贅沢な素材と丁寧な造りから、前世が社畜だっただけに値段が気になるところ。
「美しく気品に満ちた馬車。値段がとても気になります、兄上」
「マテウスは相変わらず、思ったことを何でも口にするね。さあ、私の手をとりなさい。マテウスが馬車から転がり落ちる姿しか想像出来ないから‥‥これは強制だからね」
「ヘクトール兄上は私の運動能力を侮っています。ですが、手はお借りします」
ヘクトール兄上にエスコートされて馬車に乗り込む。兄上とは一度だけ情を交えた。それ以降は、元の婚約者の関係に戻っている。
以前と変わらず、兄上は俺を優しくエスコートしてくれる。
「んっ、」
「どうした、マテウス?」
「いえ、何も‥‥‥。」
重ね合わせた指先が仄かに熱を帯びるのを感じた。その感覚は一日中抱き合ったあの日を思い起こさせる。
以前と変わらぬ婚約関係ではあったが、どこか淫靡でもあった。
◇◇◇◇◇
馬車に乗り込み王城に向かいながら、俺は以前から気になっていた事を口にしていた。
「ヘクトール兄上、アルミンとは王城で待ち合わせているのですか?彼を私の護衛に戻してくれるのでしょ」
「そのつもりだが、少々問題が生じて困っているところだ」
「問題?」
兄上が困り顔で話し始めるので、俺は心配になってきた。アルミンの身に何かあったのだろうか?
「アルミンは、一ヶ月以上王城で寝泊まりして、俺の部下より処刑案件の処理方法を叩き込まれた。だが、部下の報告によると、アルミンは事務仕事が相当に苦手らしく、度々虫のごとき素早さで職場から消え失せ、行方不明となるらしい」
「アルミンらしい行動ですね。彼は学園を首席で卒業した優秀な人物です。ですが、向き不向きは誰にでもあります。やはり、アルミンには私の護衛について貰いたいのです。駄目ですか、兄上?」
「いや、構わないよ。但し、アルミンをマテウスの護衛に付けるとしても、影から護衛する形になると思う。実は、王太子殿下がアルミンを嫌っていて、顔も見たくないそうでね」
「どうして、殿下がアルミンを嫌うのですか?アルミンに酷いことをしたのは、殿下の方なのにおかしいです!」
「う~ん。どうも、殿下の話ではアルミンとのセックスが最悪だったらしい。二度と会いたくないそうだ」
「ですが、アルミンは毒を盛られた状態で、ベッドに縛られて殿下に貫かれたそうですよ?アルミンのお尻を犠牲にしながら、殿下がセックスの良し悪しに文句を付ける立場にはない筈です。抗議しましょう、ヘクトール兄さま!」
ヘクトール兄上は、今までに見たことも無いような不快な表情を浮かべた。俺は兄上の表情にびびりつつ話の続きを待った。
「‥‥‥婚約記念に新調した馬車の中で、愛しいマテウスとアルミンの尻の話をする事になるとは。腹立たしい」
「ですが、アルミンの尻には罪はありませんよ?アルミンのお尻は完全に犠牲者です」
「いや、原因はアルミンの尻の中にあったらしいぞ‥‥マテウス」
「え?」
「あー、あれだ。精子を弱らせる為に直腸内が酸性に傾くよう、王城の医師がアルミンの尻に柑橘類を詰めたらしい。だが、その医師は殿下が柑橘類の果汁により、皮膚が酷く腫れてただれる体質だと知らなかったようだ」
「ん?つまり殿下は、がつがつとぺニ‥‥男性器をアルミンの尻に突き込み、あれが酷いことになってしまった訳ですか?」
「ちょうど、陛下の妃候補のお産の為に、多くの医師が集められていた。それに呼ばれなかった出来の良くない医師が、アルミンの処置をしたらしい。アルミンの話では、殿下の体質も把握しておらず、更に致死量の毒を渡されたそうだ。」
「致死量!しかし、アルミンからの手紙には、殿下とのセックスの後遺症は切れ痔だけだと書いてありました!毒の後遺症はないと書いてあったのに‥‥」
「アルミンは殿下が二度と孕み子に毒を盛って抱かないように、自分で毒の量を調節して飲んだらしい。後遺症を残さないぎりぎりの量をね。実際、殿下は嘔吐と下痢と痙攣を繰り返すアルミンを見て、相当に衝撃を受けたらしい」
「ああ、アルミン!彼は体を張ってくれたのですね。しっかりとお礼をしないと。そうだ、切れ痔の薬を手配して、アルミンのお尻に薬を塗ってあげないといけない!」
突然、ヘクトール兄上に抱きしめられて唇を奪われた。絡み合う舌が体を熱くする。だだ一度の交わりが鮮やかに思い出されて、自然と兄上の背に手を回していた。
「んっ、んん‥‥っはぁ、やぁら、ヘクトール兄上は何時も突然です」
「移り気なマテウス」
「何ですかそれは?」
「誰にでも靡くマテウス」
「ヘクトール兄上?」
「だが、最後には俺の元に戻ると信じる事にする。さあ、王城に着いたよ。心の準備はいいかい、マテウス?」
「はい、ヘクトール兄上!!」
馬車は王城の門を通り抜ける。馬車の窓から王城を見て、俺は深呼吸をした。
王城出仕の再開だ。
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