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第二章
2-7 前世と今世を繋ぐもの①
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◆◆◆◆◆
ヴェルンハルト殿下との情交に馴染む体に苛立ちを覚えた。殿下から愛は得られないのに、孕み子の体が男を受け入れ喜んでいる。
女が極端に減少したこの世界では、孕める男である孕み子は大切に扱われる。少なくとも生家のシュナーベル家で俺は大切に育てられた。
ヴェルンハルト殿下の妃候補になっても、愛されない事は分かっていた。殿下が愛したのは弟のカールだから。
孕み子でないカールがなぜ殿下の妃の座を望んだのかはよくわからない。でも、それはシュナーベル家を破滅に追いやる行為だ。
そんな事を許せる筈がない。
だから、処刑した。
そして、俺は計画通りカールの身代わりとしてここにいる。ヴェルンハルト殿下と情を重ねて、子を欲しているように振る舞って‥‥。
でも、もう嫌だ。
愛されないのは辛い。
シュナーベルの血脈を皆が嫌うこの王城で、気の休まる場所はない。早く帰りたい。領地の風に触れて穏やかな心を取り戻したい。
ヘクトール兄上に逢いたい。
ここは息苦しくて辛い。
ヴェルンハルト殿下の子種が俺の体内に流れ込むと、殿下はあっさりと腰を引き俺に背を向ける。
愛のない行為で子をつくって、俺は生まれるその子を愛せるだろうか?少なくとも殿下は俺も子も愛してくれないだろう。
殿下が望んだのは美しいカール。
そのカールの死を利用して妃候補に成り上がった俺を、周りの人間は醜い孕み子と指差し嘲笑う。
皆の視線が怖い。
蔑む眼差しが嫌だ。
ここから逃げだしたい。
怖い。怖くて辛い。
はやく自由になりたい。
シュナーベルの領地に帰らないと、俺はまた他人を恨み憎んでしまう。
ヘクトール兄上から自立するために、もっとしっかりとしないと駄目なのに。
どうして‥‥こんなに心が乱れるの?
「あっ‥‥。」
処置する小姓が手順を間違え、殿下の子種が体内から流れ出てしまう。腹に含んだ精液がダラダラと太ももに流れでた。
どうして俺をイライラさせる。感情のコントロールが上手くできないのに。俺を怒らさせるな。
叫びたくないのに!
「お前は殿下より頂いた大切な子種を不注意により流した!その罪は身をもって償え。誰か、この小姓に鞭を打って罰せよ。私が許すまで鞭を打ち続けよ!」
違う!
こんな罵声を浴びせたいわけじゃない。蔑んだ目で皆が見てくる。
やめて。
そんな目で見ないで!
「お前の亡き弟、カール=シュナーベルならば、小姓を罵倒したりはしなかったはずだ。まして、鞭で打つよう命じる事は無かっただろう。マテウス、お前は目障りだ。早々に下がれ」
ヴェルンハルト殿下の叱責。
殿下がまたカールの名を出す。
苦しい‥‥。
こんな俺は本当の『俺』じゃない。俺はもっと優しくて心が広くて皆に愛される存在で‥‥‥。
本当に?
カールを殺したのに?
同腹の弟を殺したのに?
目眩がする。
ひどい目眩。こんなのは初めてだ。早く殿下の寝室から去らないと。ここで倒れちゃ駄目だ。
視界が狭まる。体がうまく動かせない。世界が暗くなる。
怖い。
怖い。
生きるのが怖い。
『死んだりしない。』
『死なない。』
怖い!
怖い!
『生きる。』
『生きるんだ。』
怖い!怖い!こわい!
生きるのが怖いよ!
『大丈夫、怖くない。』
『怖くなんかない!』
◇◇◇◇
指先が震えてうまくキーボードを打てない。仕事がいっぱいあるのに、ちゃんと動け。
「っ、うごっ、あっ?」
おかしい‥‥舌がピリピリしてうまく話せない。どうなっているんだ?体もおかしい。思うように動かない。
胸も痛いし頭も痛い。
背中まで痛くなってきた。
疲労かな?
それはそうだ。この時期はいつも忙しい。残業続きで家にも帰ってない。でも、皆そうだから仕方ない。
俺達は社畜だからと皮肉って嗤いあったのは何時だったかな?
「んっ‥‥はぁ‥‥」
でも、やっぱり無理をしすぎたかな?少しだけ休憩しよう。少しだけ休んですぐに仕事に戻ればいい。
なんだか吐き気がする。
早く休憩室にいかないと駄目だ。こんな所で吐いたら、皆に迷惑をかける。誰にも迷惑をかけちゃ駄目だ。
「あっ‥‥あぁ‥‥きゅぅけぃ‥‥っ」
コーヒーを買って少しだけゆっくりしよう。ジャケットの隠しには『愛の為に』がある。これを読めばすぐに疲れも和らぐ筈だ。
俺の愛読書、『愛の為に』。
ヴェルンハルト殿下の愛の世界に何時ものように浸ろう。微睡むように『愛の為に』の世界に入り込んだらいい。
きっと息を楽に吸える。
仕事をサボるわけじゃない。愛読書を読んで心を落ち着けるだけ。『愛の為に』が俺の心の支えになったのは何時からだっけ?
さあ、立ち上がって休憩室に。
「っ、あぁっ!?」
え?
俺、倒れてる?
天井が上に見える。
「先輩!」
うわっ。
後輩の顔面が近い。あぁ、まずい。俺は床に倒れたらしい。頭が痛い。背中も痛い。体が動かせない。
「っ‥‥あっ、な‥っ、でっ‥‥」
「先輩、喋れないんですか!?脳卒中か心筋梗塞?誰か救急車を呼んでくれ!今すぐに!誰か電話かけろ」
大丈夫だから大袈裟にしないでくれ。大丈夫。俺は大丈夫だ。
大丈夫?
本当に?
胸が苦しい。
息が苦しい。
「しぬ‥‥の‥‥か‥‥っ?」
死ぬのか?ここで?
部下に抱きしめられて?
「死にません!先輩は死にませんから、そんな事言わないで下さい!」
視界が狭まる。体がうまく動かせない。世界が暗くなる。
嘘だろ?
両親を遺したまま死ぬのか?
そんな親不孝はできない。
真面目に生きてきた。
真面目に生きてきたのに、こんな死に方をするのか?
嫌だ!
生きたい。
生きたい。
落ち着け。
大丈夫、死んだりしない。
そうだ。
ただの過労だ。
きっと目覚めたら病院のベッドの上にいて、二日ほど入院して退院する。そして、また仕事をする。
「にゅう、いんっ‥‥す」
「先輩、救急車が今こっちに来てますから!頑張って下さい!」
そうだな‥‥入院中は『愛の為に』を最初から読み返そう。そして、元気になって退院して‥‥‥手土産を持って会社に戻ろう。
死んだりしない。
死なない。
『怖い!』
『怖い!』
『生きるのが怖い。』
生きる。
生きるんだ。
『怖い!』
『怖い!』
死なない。
死んだりしない。
『怖い!怖い!こわい!』
『生きるのが怖いよ!』
大丈夫、怖くない。
怖くなんかない!
◆◆◆◆◆
ヴェルンハルト殿下との情交に馴染む体に苛立ちを覚えた。殿下から愛は得られないのに、孕み子の体が男を受け入れ喜んでいる。
女が極端に減少したこの世界では、孕める男である孕み子は大切に扱われる。少なくとも生家のシュナーベル家で俺は大切に育てられた。
ヴェルンハルト殿下の妃候補になっても、愛されない事は分かっていた。殿下が愛したのは弟のカールだから。
孕み子でないカールがなぜ殿下の妃の座を望んだのかはよくわからない。でも、それはシュナーベル家を破滅に追いやる行為だ。
そんな事を許せる筈がない。
だから、処刑した。
そして、俺は計画通りカールの身代わりとしてここにいる。ヴェルンハルト殿下と情を重ねて、子を欲しているように振る舞って‥‥。
でも、もう嫌だ。
愛されないのは辛い。
シュナーベルの血脈を皆が嫌うこの王城で、気の休まる場所はない。早く帰りたい。領地の風に触れて穏やかな心を取り戻したい。
ヘクトール兄上に逢いたい。
ここは息苦しくて辛い。
ヴェルンハルト殿下の子種が俺の体内に流れ込むと、殿下はあっさりと腰を引き俺に背を向ける。
愛のない行為で子をつくって、俺は生まれるその子を愛せるだろうか?少なくとも殿下は俺も子も愛してくれないだろう。
殿下が望んだのは美しいカール。
そのカールの死を利用して妃候補に成り上がった俺を、周りの人間は醜い孕み子と指差し嘲笑う。
皆の視線が怖い。
蔑む眼差しが嫌だ。
ここから逃げだしたい。
怖い。怖くて辛い。
はやく自由になりたい。
シュナーベルの領地に帰らないと、俺はまた他人を恨み憎んでしまう。
ヘクトール兄上から自立するために、もっとしっかりとしないと駄目なのに。
どうして‥‥こんなに心が乱れるの?
「あっ‥‥。」
処置する小姓が手順を間違え、殿下の子種が体内から流れ出てしまう。腹に含んだ精液がダラダラと太ももに流れでた。
どうして俺をイライラさせる。感情のコントロールが上手くできないのに。俺を怒らさせるな。
叫びたくないのに!
「お前は殿下より頂いた大切な子種を不注意により流した!その罪は身をもって償え。誰か、この小姓に鞭を打って罰せよ。私が許すまで鞭を打ち続けよ!」
違う!
こんな罵声を浴びせたいわけじゃない。蔑んだ目で皆が見てくる。
やめて。
そんな目で見ないで!
「お前の亡き弟、カール=シュナーベルならば、小姓を罵倒したりはしなかったはずだ。まして、鞭で打つよう命じる事は無かっただろう。マテウス、お前は目障りだ。早々に下がれ」
ヴェルンハルト殿下の叱責。
殿下がまたカールの名を出す。
苦しい‥‥。
こんな俺は本当の『俺』じゃない。俺はもっと優しくて心が広くて皆に愛される存在で‥‥‥。
本当に?
カールを殺したのに?
同腹の弟を殺したのに?
目眩がする。
ひどい目眩。こんなのは初めてだ。早く殿下の寝室から去らないと。ここで倒れちゃ駄目だ。
視界が狭まる。体がうまく動かせない。世界が暗くなる。
怖い。
怖い。
生きるのが怖い。
『死んだりしない。』
『死なない。』
怖い!
怖い!
『生きる。』
『生きるんだ。』
怖い!怖い!こわい!
生きるのが怖いよ!
『大丈夫、怖くない。』
『怖くなんかない!』
◇◇◇◇
指先が震えてうまくキーボードを打てない。仕事がいっぱいあるのに、ちゃんと動け。
「っ、うごっ、あっ?」
おかしい‥‥舌がピリピリしてうまく話せない。どうなっているんだ?体もおかしい。思うように動かない。
胸も痛いし頭も痛い。
背中まで痛くなってきた。
疲労かな?
それはそうだ。この時期はいつも忙しい。残業続きで家にも帰ってない。でも、皆そうだから仕方ない。
俺達は社畜だからと皮肉って嗤いあったのは何時だったかな?
「んっ‥‥はぁ‥‥」
でも、やっぱり無理をしすぎたかな?少しだけ休憩しよう。少しだけ休んですぐに仕事に戻ればいい。
なんだか吐き気がする。
早く休憩室にいかないと駄目だ。こんな所で吐いたら、皆に迷惑をかける。誰にも迷惑をかけちゃ駄目だ。
「あっ‥‥あぁ‥‥きゅぅけぃ‥‥っ」
コーヒーを買って少しだけゆっくりしよう。ジャケットの隠しには『愛の為に』がある。これを読めばすぐに疲れも和らぐ筈だ。
俺の愛読書、『愛の為に』。
ヴェルンハルト殿下の愛の世界に何時ものように浸ろう。微睡むように『愛の為に』の世界に入り込んだらいい。
きっと息を楽に吸える。
仕事をサボるわけじゃない。愛読書を読んで心を落ち着けるだけ。『愛の為に』が俺の心の支えになったのは何時からだっけ?
さあ、立ち上がって休憩室に。
「っ、あぁっ!?」
え?
俺、倒れてる?
天井が上に見える。
「先輩!」
うわっ。
後輩の顔面が近い。あぁ、まずい。俺は床に倒れたらしい。頭が痛い。背中も痛い。体が動かせない。
「っ‥‥あっ、な‥っ、でっ‥‥」
「先輩、喋れないんですか!?脳卒中か心筋梗塞?誰か救急車を呼んでくれ!今すぐに!誰か電話かけろ」
大丈夫だから大袈裟にしないでくれ。大丈夫。俺は大丈夫だ。
大丈夫?
本当に?
胸が苦しい。
息が苦しい。
「しぬ‥‥の‥‥か‥‥っ?」
死ぬのか?ここで?
部下に抱きしめられて?
「死にません!先輩は死にませんから、そんな事言わないで下さい!」
視界が狭まる。体がうまく動かせない。世界が暗くなる。
嘘だろ?
両親を遺したまま死ぬのか?
そんな親不孝はできない。
真面目に生きてきた。
真面目に生きてきたのに、こんな死に方をするのか?
嫌だ!
生きたい。
生きたい。
落ち着け。
大丈夫、死んだりしない。
そうだ。
ただの過労だ。
きっと目覚めたら病院のベッドの上にいて、二日ほど入院して退院する。そして、また仕事をする。
「にゅう、いんっ‥‥す」
「先輩、救急車が今こっちに来てますから!頑張って下さい!」
そうだな‥‥入院中は『愛の為に』を最初から読み返そう。そして、元気になって退院して‥‥‥手土産を持って会社に戻ろう。
死んだりしない。
死なない。
『怖い!』
『怖い!』
『生きるのが怖い。』
生きる。
生きるんだ。
『怖い!』
『怖い!』
死なない。
死んだりしない。
『怖い!怖い!こわい!』
『生きるのが怖いよ!』
大丈夫、怖くない。
怖くなんかない!
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