嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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1巻

1-3

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「『栄誉ある好ましい血脈』であるディートリッヒ家の妃候補を迎えられるのは何よりも喜ばしいことです。どうぞ、新しくお迎えになる妃候補を大切になさってください。『不名誉なけがれた血脈』の妃候補であるマテウスが、王太子殿下にお喜びを申し上げます」

 俺の皮肉に反応した王太子殿下は、目を細めて薄い笑みを浮かべた。感情の読めない笑みに俺は戸惑とまどう。
 小説内の殿下ならば、このような笑みは浮かべないはずだ。やはり、小説内と今世こんせの殿下は別物と考えたほうが良さそうだ。
 ヴェルンハルト殿下が俺を見つめたまま、ゆっくりと口を開く。

「『栄誉ある好ましい血脈』と『不名誉なけがれた血脈』か。マテウスは皮肉屋だな? だが、お前が皮肉を言いたくなるのも無理はない。今回、ディートリッヒ家は、妃候補を王家に差し出すにあたって条件を付けてきた。その条件とは、マテウス・シュナーベルを妃候補から外すことだ。そして、王侯貴族はそれを喜んで承認した。お前を外す機会を以前からうかがっていたからな。シュナーベル家から金をもらってお前を妃候補に推薦した者さえ、前向きな姿勢を見せたと聞く」
「では……私はやはり、ヴェルンハルト殿下の妃候補ではなくなったのですね?」
「ああ、そうだ。マテウス・シュナーベルは、俺の妃候補ではなくなった」

 王家に『不名誉なけがれた血脈』を入れないようにディートリッヒ家が画策した結果、俺は妃候補から外されたということか。そして、誉れあるディートリッヒ家の後ろ盾を得るために、ヴェルンハルト殿下もこの取引に応じたわけだ。
 まあ、ただ単純に殿下に嫌われて、妃候補を外されるよりはましかな?
 それにしても、『栄誉ある好ましい血脈』と『不名誉なけがれた血脈』とは嫌な響きだ。
 さて、そろそろ皮肉屋はて、大人しく王城を去りゆく妃候補を演じよう。俺は少し微笑ほほえみながら、ヴェルンハルト殿下の胸に顔を沈めてそっとささやいた。

「ヴェルンハルト殿下。私は殿下に抱かれて、初めて男性に抱かれる喜びを知りました。できれば殿下のお子を産みたかった。ですが、私よりも相応ふさわしい妃候補が現れたのだとすれば、それは喜ばしいことです。王太子殿下、これまでの数々のご無礼をお許しください」
「……マテウス」
「私はシュナーベルの領地より、王太子殿下の幸せをお祈りいたします」

 挨拶あいさつが済み、俺は殿下から身を離そうとする。
 だが、逆に抱きしめられた。互いに裸のままで、自然に顔が熱を持つ。
 今夜は激しく抱かれたのでまだ体が火照ほてっている。それをヴェルンハルト殿下に知られるのが恥ずかしかった。

「王太子殿下、自室に戻るお許しをいただけますでしょうか?」
「駄目だ、マテウス」
「ヴェルンハルト殿下」
「話がまだ残っている」

 ヴェルンハルト殿下にそう言われては、自室に戻るのは諦めるしかない。だが、このまま裸で抱き合って会話をするのだろうか? 恥ずかしいから……薄衣うすぎぬだけでも羽織はおりたい。

「マテウス、聞け。俺は……ディートリッヒ家がカール殺害に関与していると思っている」

 まずい、反応が遅れた。完全に油断していた。これ以上この会話を聞かされると、殿下の思惑おもわくに巻き込まれる。
 耳をふさごうとした俺の両腕を、殿下が掴み離さない。俺は殿下から顔をそむけて、拒否の意思を示した。だが、ヴェルンハルト殿下が許してはくれない。

「殿下、おめください。そのお話は聞きたくありません!」
「マテウス、俺はお前を親友として王都に留めおく。俺の相談相手として王城に出仕してくれ。そして、『王太子殿下はカール殺害犯を今も探している』と王城で噂を流せ。もしも、ディートリッヒ家がカール殺害に関与しているなら、必ずお前に接触してくるはずだ。お前が怪しいと感じた人間は、身分に関係なく全て調べ上げる。報告は……寝所で聞く。人払いはできないが、ねやならむつごととして扱われる。俺に協力してほしい、マテウス」
「殿下!」

 やられた! 王太子殿下は俺をおとりに使って、カール殺害犯をあぶり出すつもりだ。
 小説『愛の為に』の記述通り、俺はヴェルンハルト殿下の『親友』として王城に出仕することになるのか? だけど、この関係を親友とは呼ばないだろう。それに、報告を寝所で聞くとかあり得ない!
 殿下が知らないはずないよな? 妃候補を外された後も王城に残る『はら』が、殿下とねやを共にする際には子をはらまない処置が必要になる。殿下の寝所に召される度に、避妊薬代わりの毒薬を飲まされては俺の身が持たない。ヴェルンハルト殿下は……俺に、早死にしろと命じているのか?

「承知してくれ、マテウス」
「分かりました……王太子殿下の命に従います」

 うう、ヴェルンハルト殿下の圧力に負けて承知してしまった。
 確かにカール殺害に際して、俺はディートリッヒ家に疑いが向くように計画を立てている。
 でも、王太子殿下がディートリッヒ家に対して疑いを持っているとの情報を、俺は得ていなかった。まさかとは思うが、殿下はすでにカール殺害の主犯格が俺だと目星を付けていて、寝所で抱き殺すつもりじゃないだろうな? これも『月歌』先生が仕掛けた裏設定なのか? 駄目だ……もう、よく分からなくなってきた。
 とにかく、ヴェルンハルト殿下は俺に対して少しも好意など抱いていない。激しく抱いたのも、俺の思考を削ぎたかったからだろう。
 そして、俺は呆気あっけなくその罠にはまり、殿下の『駒』となった。
 結局、王族であるヴェルンハルト殿下は支配する側で、臣下の俺は支配される側ってことだな……それは歴史が証明していた。


   ◇◇◇◇◇


 ローランド帝国が崩壊する以前は、ディートリッヒ家とシュナーベル家は共に伯爵位にあった。しかしローランド帝国が倒れると、王座をめぐって国中を巻き込む内乱が起こる。その末に王座を掴んだのが、フォーゲル家であった。そして、彼らによりフォーゲル王国が樹立される。そのフォーゲル家に忠誠を誓い、内乱時に大いに活躍したのが、ディートリッヒ家とシュナーベル家だ。
 ディートリッヒ家は軍事を重んじる家柄で、勇敢な歩兵や騎兵を多数輩出していた。フォーゲル家に敵対する勢力を正攻法でことごとく打ち破り、華々しい活躍を見せたのだ。多くの英雄を輩出したディートリッヒ家は、最大の敵対勢力を殲滅せんめつし内乱に終止符を打つ。
 一方、シュナーベル家は『死と再生をつかさどる神の末裔まつえい』として、代々、医療と処刑術に精通した家柄であった。その特性を活かし、内乱中は多くの医療従事者を派遣して多数の兵士の命を救う。同時に、密偵を国中に放ち、敵と通じた味方勢力の貴族を内偵により次々に暴き出すと公開処刑を行い、多くの人の命を奪った。どれほど高い身分の者であっても裏切り者を容赦なく処刑するシュナーベル家は、敵からも味方からも恐れられる存在になる。
 内乱を制して新王国の玉座を得たフォーゲル家は、内乱中に最も活躍したディートリッヒ家とシュナーベル家に、褒賞として侯爵位を与えた。もとより広大な領地を有していた両家は、フォーゲル家が建国した王国で更なる栄誉と繁栄を手にできるものと信じていた。だが、華々しく活躍した両家を警戒したフォーゲル王家は、時を掛けて両家の力を巧みにいでいく。
 ディートリッヒ家には内乱後も度重なる軍役を課された。王家への忠義を重んじるディートリッヒ家の家風は、領地と領民を疲弊させても軍費を捻出する。そして、王家に命じられるままに外敵と闘った。その結果、領地は荒れ果て財政は破綻寸前にまで追い込まれている。だが、忠義に厚いディートリッヒ家の家名は、『誉れ高き一族』として国中に広まった。王公貴族はこぞって、ディートリッヒ家の血脈を気高きものとして扱う。ディートリッヒ家がフォーゲル王国樹立で手に入れたものは、『栄誉ある好ましい血脈』と『侯爵位』と『荒れ果てた領地』だった。
 シュナーベル家は、多神教国家であったローランド帝国時代には『死と再生をつかさどる神の末裔まつえい』としておそれとうやまいの対象となっていた。だが、フォーゲル王国がフォルカー教を国教と定めたことで状況が一変する。フォルカー教においては、『死と再生をつかさどる神』の存在は否定された。また、フォルカー教の教義では、処刑人は不浄な者として扱われ、あらゆる階級の貴族にさげすまれる。シュナーベル家は内乱後も王家により処刑人の任務を命じられ、差別的な扱いを受けるようになった。シュナーベル家がフォーゲル王国樹立で手に入れたものは、『不名誉なけがれた血脈』と『侯爵位』と『ローランド帝国時代から治める豊かな領地』だ。
 そして時を経て『栄誉ある好ましい血脈』のディートリッヒ家は、『不名誉なけがれた血脈』のシュナーベル家と同じ侯爵位にあるのを嫌うようになる。同時に、『けがれた血脈』のシュナーベル家が、ディートリッヒ家よりも豊かな領地を治めていることに不満を抱く。
 こうして、両家の確執は深まっていった。



   第二章


 ディートリッヒ家の『栄誉ある好ましい血脈』を受け継ぐ妃候補を王家が迎えるとあって、王都中が華やいでいた。
 王城に務めるヘクトール兄上の執務室の窓からは、王都の街並みがよく見える。
 俺は窓辺に立って、ディートリッヒ家の馬車が徐々に王城の門に近づくのを眺めていた。王都の人々が集まり、馬車が時折立ち往生している。警備上どうなのかと、余計な心配をしてしまうほどだ。

「マテウス、窓辺は体が冷える。こちらに座って温かい紅茶を飲みなさい。この騒ぎが収まってから、王都のシュナーベルのやしきに向かうと言ったはずだよ? 子供のように部屋をウロウロしないで、ソファーに座って待ちなさい」

 そう声を掛けられて視線を向けると、兄上が黙ってこちらを見つめていた。なんとなくその視線から逃れたくて、俺は返事もせず再び視線を窓の外に向ける。それとほぼ同時に、王城から歓声が上がった。どうやら、ディートリッヒ家の妃候補が乗った馬車が王城の門を無事通り抜けたようだ。
 不意に、俺は皮肉を口にしたくなった。悪い癖だと分かってはいるのだが、中々められない。芝居がかった口調で言葉にする。

「『栄誉ある好ましい血脈』の妃候補は華やかに王家に迎えられ、同日、『不名誉なけがれた血脈』の元妃候補はひっそりと王城を去る。兄上、ディートリッヒ家は意地悪です。私は悲しみに暮れて王城を去るというのに、まさかその日に妃候補を入城させるとは思いもしませんでした」

 ヘクトール兄上はティーカップをテーブルに置くと、呆れた表情で俺を見つめた。

「皮肉を口にするな、マテウス。お前の悪い癖だぞ? 直したほうが良い」
「ヘクトール兄上は悲しみに暮れる私をなぐさめてはくださらないのですか?」
「少しも悲しんでいないのを、どうなぐさめろと? それよりもこれからのことを話し合いたい」
「……承知しました」

 つい甘えが出て、ヘクトール兄上と言葉遊びをしてしまった。
 俺が王都に残る以上は、兄上にこの先も色々と迷惑をかける。これからのことを話し合うのは重要なことだ。
 俺は指示に従い、兄上の向かい側のソファーに座った。ヘクトール兄上が俺を見つめながらゆっくりと話し始める。

「マテウス、よく聞いてほしい。俺はお前が妃候補を外された翌日に、王太子殿下より直接手紙をいただいた。その手紙には、お前を王城に出仕させる理由が詳しく書き記されていた。俺はその内容に驚きつつも、お前からの説明を待っていたんだ。だが、お前は一向に俺に説明しに来ず、王城を去る日になった。俺はマテウスの兄として、非常に悲しかったことを伝えておく」

 俺が王都に残る本当の事情をヘクトール兄上には話して良いと、ヴェルンハルト殿下から許可を得ていた。加えて、殿下からも兄上に事情を伝えてくださることになっていた。それで俺は殿下に全てを任せて、ヘクトール兄上には何も話さずにいたのだ。ヘクトール兄上に殿下とのねやでの会話を話すことに躊躇ためらいを感じたからである。
 でも、俺が直接説明することでヘクトール兄上が安心するのなら話すべきだよな。

「分かりました。ではまず、ヘクトール兄上への説明が遅れた件についてご説明いたします」

 俺は真面目な表情で説明を始めた。

「殿下の『親友』として私が王城に出仕する本当の理由を王太子殿下からヘクトール兄上に説明していただきたいと私がお願いいたしました。王太子殿下から説明があれば、兄上が安心してくださると考えたからです。私は寝所にて……殿下より『親友』として王城に出仕するように伝えられました。そして、殿下の命に従うことにいたしました。ですが、殿下と寝所で交わした会話を兄上に伝えるのは恥ずかしく、話すのを躊躇ためらってしまいました。……どうか、お許しください」

 不意にヘクトール兄上がソファーに深く座り込み、天井を見上げる。だが、すぐに視線を俺に戻すと、ゆっくりと言葉をつむいだ。

「寝所で王太子殿下よりひどい扱いを受けたお前が、約束事を強要されて引き受けたに違いないと俺は考えていた。だが、違ったのだね? マテウスは何か考えがあって、この件を引き受けた。もしそうなら、危険な橋を渡っていることを自覚してほしい。ヴェルンハルト殿下とねやで交わした会話を兄に話したくない気持ちは分かる。だが、俺が欲しているものは殿下との甘い会話ではない。ヴェルンハルト殿下からいただいた手紙と、お前が寝所で殿下と交わした約束事が、完全に一致しているのかを把握したいだけだ。不敬に当たるが、俺には軽々に王太子殿下を信じることができない。俺の気持ちを分かってほしい、マテウス」

 ヘクトール兄上が真剣な表情で話す。だが、どうも兄上は勘違いしているようだ。『マテウスは何か考えがあって、この件を殿下より引き受けた』と兄上は言ったが、俺は全くもって考えなしに今回の件を引き受けてしまった。
 そう伝えたら、ヘクトール兄上は怒るかな? 怒るよな? 話したくはない。だが、話すしかない。俺には全く非がないことをアピールしながら、話すしかない!
 息を吐き出して気持ちを落ち着かせると、俺は一気に言葉をつむす。

「ヘクトール兄上、私は王太子殿下に問題があったと思います! あの日、ヴェルンハルト殿下は何時いつもより激しく私を抱き、疲れさせて思考能力を奪ったのです。疲れ切った私の脳は……殿下の前で裸体であるのが恥ずかしく、『薄衣うすぎぬを身にまといたい』などと平和なことを考えておりました。その瞬間を狙われたのです。例の『親友』の件を殿下は突然切り出すと、私に引き受けるように要請しました。そして、殿下に主導権を握られた私には、その要請を断るすべがなかったのです。優しいヘクトール兄上なら、分かってくださいますよね? 男に抱かれるのが数えるほどの私には、ねやの対応だけで必死だったのです! 王太子殿下は予想以上に腹黒い人物でした‼ ですから、私に何か考えがあってこの件を引き受けたのではございません。私は完全なる無策です。ヘクトール兄上、助けてください‼」
「マテウスが愚かすぎて……愛しい」
「兄上、なんですかその反応は⁉」
「マテウス……王太子殿下と寝所で交わした会話を、一言一句いっくたがわず今から俺に話しなさい。人払いはしてあるが、会話が漏れるのはまずい。隣に座り俺の肩にもたれかかりながら、耳元でささやくように話しなさい。早くこちらにおいで、マテウス」

 ヘクトール兄上は俺を複雑な表情で見つめたまま、自身のソファーの隣をポンポンと叩く。
 こっちに来いとの意味だよな?
 兄上の表情が少し怖いが、俺は素直に従う。隣に座り直すと、肩を優しく引き寄せられた。指示されるままに、兄上の肩に身を預ける。ヘクトール兄上は更に俺を抱き寄せ体を密着させた。不意に、ヘクトール兄上に、初恋相手の『ヘクトール様』の存在を強く感じて……俺は緊張する。

「ヘクトール兄上、これは密着しすぎではありませんか?」
「まだ足りないよ、マテウス。もっと体を密着させなさい。今から王太子殿下よりいただいた手紙の内容を話す。もしも、手紙の内容と殿下と寝所で交わした約束事の内容が違っていれば、その時点で指摘しなさい」

 ヘクトール兄上にもたれかかり体を密着させると、衣装越しにその温かい体温を感じた。それが妙に生々しく感じて、俺はヘクトール兄上の腕の中でもぞもぞと体を動かす。気持ちが落ち着かず、別のアイデアを口にしてみた。

「ヘクトール兄上、殿下からいただいた手紙を私が読んで差異を指摘する方法もありますよ?」
「手紙はすでに燃やした。内容は全て俺が記憶している。そうだ、マテウス……手紙の中に『調査報告はねやの中で』とあったが、それについては王太子殿下に後日抗議するつもりだ。お前は俺の婚約者だから、王太子殿下からねやの誘いがあっても遠慮なく断りなさい」
「承知しました……は、ええ⁉」

 ヘクトール兄上は「お前は俺の婚約者だから」と言ったよな? 俺は何も聞いていないのだけれど? それに、ヘクトール兄上と俺が従兄弟だと知っているのは、シュナーベル本家に近い血縁者だけだ。容姿の違いから、世間では腹違いの兄弟として認識されている。

「私がヘクトール兄上の婚約者?」
「ああ、そうだ。俺が相手では不満かい、マテウス?」

 フォーゲル王国には、腹違いの兄弟での婚姻を禁じる法はない。だが、国教であるフォルカー教の教義では、近親婚は望ましくないものとされている。近親婚の多いシュナーベル家でも、血脈の弊害を避けるため、腹違いの兄弟での婚姻は今は行われていない。現当主のアルノーに血脈の弊害が現れたと判断されのも、父が腹違いの弟のグンナーに異常に執着し伴侶として扱ったせいである。

「不満だとか……そういう問題ではありません、兄上」
「そうかい?」
「そうです。腹違いの兄弟だと思われている私達が婚約すれば、世間は冷たい眼差まなざしを向けるに違いありません。ですが、ヘクトール兄上と私が従兄弟だと世間に明かすなら、兄上が何故なぜシュナーベル本家の次期当主に選ばれたのかと探りを入れられます。その結果、『シュナーベル家の現当主のアルノーは、血脈の弊害により正気を失っているらしい』、『シュナーベル本家は血脈の弊害の発生を抑える目的で、現当主の弟ループレヒトの息子を次期当主にえたらしい』等々、好奇を含んだ噂が世間に流されるでしょう。そうは思いませんか、ヘクトール兄上?」
「マテウスは知らないようだが……現当主のアルノー様が正気を失い軟禁状態にあることは、すでに世間も気付いている。だが、血脈の弊害でアルノー様が正気を失ったとは思われていない。俺はお前と従兄弟の関係にあることを世間に大々的に公表するつもりはない。血脈の弊害を世間に知られたなら、差別を助長しかねないからだ。幸い、俺の容姿が実父のループレヒトよりアルノー様に似ているせいで『次期当主のヘクトールは現当主のアルノーの実子に違いない』と思われている。腹立たしいことだが、いちいち気にしていては身がたないよ、マテウス? 無責任に広まる世間の噂も、世間の冷たい眼差まなざしも無視するに限る。とにかく、お前が王城に出仕する以上は……俺の婚約者となってもらう。いいね、マテウス?」
「ですが、ヘクトール兄上には婚約者がいらっしゃいます。二重婚約は詐欺師のやることです。兄上は詐欺師になるおつもりですか?」
「詐欺師のような真似はしないよ、マテウス。お前が王城に出仕すると知った日に、俺は婚約者に婚約解消の旨を申し出た。そして、相手側に受け入れられている」
「ヘクトール兄上!」
「マテウスは正式にシュナーベル家次期当主の婚約者となった。王太子殿下がまともな人物なら、婚約者のある者を軽々にねやに誘いはしないはずだ。まあ、殿下がまともな場合に限るがな」
「ヘクトール兄上……婚約者に対して、あまりにもひどい仕打ちです」
「そうとも限らないよ、マテウス。俺の婚約者は婚約解消の申し出に喜んで応じた。『けがれた血脈』の子を産まずに済むと、安堵あんどしている様子だ。俺の元婚約者は、シュナーベルの血族では珍しく、フォルカー教の熱心な信者だからね。もっと早くに解放すべきだったと今は反省している。己の身に流れる『死と再生をつかさどる神の末裔まつえい』の血脈を『けがれた血脈』だと信じる彼にとって、シュナーベル家次期当主の伴侶となることは……不幸な人生の始まりを意味していただろうからね」

 兄上は静かに笑ってそう答えた。俺は思わず、ヘクトール兄上の表情に見入る。そんな俺を、彼は真剣な表情で見つめ返してきた。そして、ゆっくりと口を開く。

「俺の婚約者になりなさい、マテウス」
「ヘクトール兄上、ですが……」
「『案内係』は例外として、『はら』が王城に出仕する場合は婚約者がいないと危険だ。婚約者を持たず出仕すれば、王立学園の時のように『マテウスは淫乱な男』だと噂を流される。その結果、王立学園で起こった出来事と同じことが起こるかも知れない。王立学園の生徒が噂を信じて襲い掛かり、お前はあやうく貞操を失いかけた。ディートリッヒ家の次男に救われていなければ、心が壊されていたかもしれない。俺はそれが心配なんだよ、マテウス」
「やめて、兄上!」

 俺はヘクトール兄上にしがみ付き叫んでいた。体が震え出し、止まらなくなる。恐ろしい記憶がよみがえりそうになって目をつむり、ヘクトール兄上の胸に顔を押し付けた。

「兄上、その話はやめてください」
「……マテウス」

はら』が、ただ子を産むだけの存在ではないと示したかった。子をはらまぬ者と同等の能力を持つことを皆に知らしめたかった。
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 王立学園への入学が決まった後に、ヘクトール兄上は俺の身を案じて婚約の申し込みすらしてくれる。でも、俺はその申し出を断り、無防備な状態で王立学園に入学したのだ。
 その結果、俺は何事も成せぬままに王立学園の退学を余儀なくされた。

「すまなかった、マテウス。嫌なことを思い出させたね……大丈夫かい?」

 ヘクトール兄上の優しい声に、俺はハッとしてその顔を見る。兄上の体に抱き付いたまま、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。声が震えないように注意しながら言葉をつむぐ。

「いえ、ヘクトール兄上。自分の愚かさを恥じていただけです。ご心配をおかけしました。全て、自業自得です。王立学園で下位貴族に対して傲慢ごうまんに振る舞い、その結果として彼らの恨みを買って男達に襲われました。皮肉なことに私の貞操を守ってくれたのは、ディートリッヒ家次男のヴォルフラム・ディートリッヒでした。私は自身の不徳により、シュナーベル家を敵視するディートリッヒ家の者に借りを作ってしまったのです」
「マテウス」
「ですが、私は二度も同じあやまちを繰り返すほど、愚かではないつもりです。王城に出仕するには兄上の協力が必要です。愚弟ではありますが、マテウスをヘクトール兄上の婚約者にしてください」

 俺はヘクトール兄上の目を真っ直ぐに見つめてそう願い出た。不意に兄上に頬をでられ、頬が火照ほてる。ヘクトール兄上は少し笑って、俺の頬から手を離す。

「できれば……もう少し愛に溢れた言葉が欲しかったかな、マテウス? まあ、仕方がないね。俺の婚約者であることが、お前を守る盾であってほしいと願っている。だが、この婚約はマテウスを縛るものではないからね? お前に想い人が現れた時は、兄として身を引くつもりだ。従兄弟の『ヘクトール』は消えて、俺はお前の兄となったのだから。俺はマテウスの兄として、お前に相応ふさわしい相手を喜んで祝福するよ。ただし、アルミンだけは選んでほしくないかな? マテウスとアルミンが伴侶として並び立つ姿を想像するだけで……祝福する気持ちがえてしまう」
「ヘクトール兄上ったら!」

 俺は思わずヘクトール兄上に笑いかけていた。
 おさな馴染なじみのアルミンは美丈夫で良い男だが、少々不真面目なところがある。そんな彼のだらしない表情を同時に思い出したようで、俺と兄上は共に笑い合う。
 しばらくして、ヘクトール兄上が咳ばらいをして会話の軌道修正を図った。

「随分と話がれてしまったね、マテウス。王太子殿下の手紙の内容をゆっくりと話すから、落ち着いて聞きなさい。先にも言ったように、食い違いがあればその時に指摘してほしい」
「はい、ヘクトール兄上」

 俺はヘクトール兄上にもたれかかったまま、彼が語る王太子殿下からの手紙の内容に耳を傾ける。最後まで聞き終わった時、俺は深いため息をついていた。

「兄上、王太子殿下は嘘をついてはいらっしゃいません。寝所で語り合った内容と同じです」

 王太子殿下が嘘をついていなかったことに、ほっとする。
 寝所での扱いから、ヴェルンハルト殿下に愛されていないことは分かっていた。カールを殺した犯人を見つけ出す『駒』にすぎないのも分かっている。あるいは、カール殺害の主犯格と目されている可能性すらあった。
 それでも、初めてをささげたヴェルンハルト殿下に嘘をつかれるのはつらい。

「マテウス……短期間ではあったが、お前は妃候補として王太子殿下に仕えた。ヴェルンハルト殿下がお前にとって初めての相手であり、特別な感情を抱く気持ちも分からなくもない。だが王太子殿下は、お前に対して好意的ではなかったと聞いている。その殿下を全面的に信じてはいけない。手紙の内容について兄弟間で吟味ぎんみすることは、殿下も分かっておられたはずだからね」

 ヘクトール兄上は俺の先の発言にわずかに喜びがにじんでいたのに気が付いたに違いない。そのため、少し表情を引きしめて、俺に言い聞かせるように語りかけてきた。
 俺はその言葉に応じて口を開く。

「つまり、手紙に真実が書かれていたとしても……当然ということですね? それだけでヴェルンハルト殿下を信用するべきではないということでしょうか、ヘクトール兄上?」
「ああそうだ、マテウス。俺達は王家に仕える臣下だ。だが、過去の経緯を忘れてはいけない。シュナーベル家は忠誠を誓ったフォーゲル王国によって『不名誉なけがれた血脈』の烙印を押された。王族は常に奪う側なのだと、心に留めておいてほしい……マテウス」
「私は王太子殿下の親友として、これから王城にて殿下に仕えます。勿論もちろん、警戒はおこたらないつもりです。それでも、カール殺害の主犯格が私であると殿下に知られた場合は、私の単独犯であると主張し続けます。『美しい弟のカールに嫉妬しっとするあまり、私が弟を殺害してしまった』と、もっともらしい動機を語るつもりです。ですが、ヘクトール兄上が私の婚約者となった以上……兄上にもシュナーベル家にも罪が及ぶはずです」
「……マテウス」

 俺はヘクトール兄上の瞳を覗き込んだ。
 人の心を読めれば、悩まずに人生を歩めるのだろうか? それとも、悩みは尽きないのかな?
 でも、明らかなことが一つある。実弟であるカールの心さえ読めなかったのだから……ヘクトール兄上の心が俺に読めるはずもない。

「ヘクトール兄上、私が王城に出仕する前に……処刑することをおすすめします」

 俺の言葉に兄上が真顔になる。俺の瞳を覗き込んできた。
 もしかすると、彼もまた、俺の心を読もうとしているのかもしれない。
 互いの心の探り合いは、ヘクトール兄上の言葉で断ち切られる。

「困ったことを言うね、マテウス。では、処刑の代わりに……沈黙してもらおうかな?」

 ヘクトール兄上は不意に悪戯いたずらっぽく笑うと、俺の唇を軽く奪った。そして、唇が離れていく。
 自身の唇に、ヘクトール兄上の唇が触れた。だが、あまりにも軽い触れ合いに、満足できない。
 ヴェルンハルト殿下に抱かれたことで、俺の中の『はら』の部分が目覚めたのかもしれなかった。恥ずかしいけれど、ヘクトール兄上にもっと触れてほしい。俺は顔を火照ほてらせて兄上の衣装を握りしめ、そっとささやいた。

「ヘクトール兄上、もう一度……キスをください。もっと深いキスを……私にください」

 ヘクトール兄上は俺の言葉に驚いたようで、目を見開く。だが、戸惑とまどいを微笑ほほえみで隠すと、今度は深く俺の唇を奪ってくれる。

「んっ……」
「……っ」
「んっ……んっ……はぁ、ヘクトール様……」
「……マテウス」

 ヘクトール兄上の舌が歯列を割りこうないに侵入する。共に舌を絡め合うと、くちゅりと水音が部屋に響いた。
 ヘクトール兄上が優しく俺をソファーに押し倒す。その手が頬に触れた時、俺は自然と兄上の衣装のボタンを外そうとしていた。その行為に気が付いたヘクトール兄上が俺の指に触れてその動きをはばむ。俺はハッとした。

「ソファーに押し倒すのは紳士的ではなかったね。申し訳ない、マテウス」
「少し驚いただけです、兄上。それにキスをおねだりしたのは……私ですから」
「硬い花のつぼみだったマテウスが、王太子殿下の妃候補となり『はら』として開花した。それを肌で感じていた俺は、あせりを感じて押し倒してしまった。俺自身がお前を王城に送り込んだにもかかわらず……俺は殿下に対して、嫉妬しっとと怒りを感じているようだ。お前に優しく接しない王太子殿下が、お前を親友として手元に置こうとしている。それが腹立たしくてならない」

『初めて』を殿下にあげた時……とても怖くて、痛くて、苦しかった。だけど、殿下からは一言もいたわりの言葉がなかった。
 それを思い出すと、心にいばらが刺さる。今更、気にしても仕方のないことだけれど。


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【書籍化します◆アンダルシュノベルズ様より刊行】 公爵令息エミール・ダイヤモンドは婚約相手の第二王子から婚約破棄を言い渡される。同時に学内で起きた一連の事件の責任を取らされ、牢獄へと収容された。 一ヶ月も経たずに相手を挿げ替えて行われた第二王子の結婚式。他国からの参列者は首をかしげる。その中でも帝国の皇太子シグヴァルトはエミールの姿が見えないことに不信感を抱いた。そして皇太子は祝いの席でこう問うた。 「殿下の横においでになるのはどなたですか?」と。 帝国皇太子のシグヴァルトと、悪役令息に仕立て上げられたエミールのこれからについて。 【タンザナイト王国編】完結 【アレクサンドライト帝国編】完結 【精霊使い編】連載中 ※web連載時と書籍では多少設定が変わっている点があります。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。 他サイトでも公開中

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

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