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第四章
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◆◆◆◆◆◆
「アルミンだったな。何しに来た?」
「ヘクトール様の代理として、マテウス様を後宮まで迎えに行きました」
「俺の側近がマテウスを迎えに行ったはずだが?奴らはどうした?」
「お二人とも体調が良くないとの事でしたので、マテウス様は俺が抱き上げてお産部屋に向かう事にしました。なんと申しましても、側近たちは殿下の愛する筋肉たちですから・・無理をさせるわけにはいかないでしょ?」
「相変わらず、ムカつく奴だ。それでマテウスは何故眠っている?」
ルドルフが一歩前に出て、王太子殿下に説明を始める。ルドルフの後ろに隠れるように、ファビアン殿下は立っていた。ヴェルンハルト殿下は息子を一瞥した後、ルドルフの言葉に耳を傾けた。
「マテウス様は出産を前に、興奮状態に陥りやむなく薬を盛って眠らせました。朝方の出産時まで、マテウス様には眠っていただきます。これは、マテウス様の主治医としての判断です。王太子殿下、どうかマテウス様をお産までゆっくりと眠らせてあげてください」
「ふん、詰まらないな。せっかくこの部屋の事を説明して、マテウスを楽しませてやろうと思っていたのに間の悪い事だ。まあいい、部屋に入れ。但し、アルミンは部屋に入るな。俺にマテウスを寄越せ」
「お断りいたします。マテウス様をお産部屋のベッドまで運ぶように、ヘクトール様より指示を受けております。命を破れが、ヘクトール様よりお叱りを受けます」
「そのヘクトールは、どうした?」
「処刑業務に従事しております」
「はっ、なるほど。マテウスはヘクトールにとっては、その程度の価値しかないという事だな。ならば、俺が貰っても、文句は言わないだろう。マテウスは、俺がペットとして一生飼うつもりだ・・この赤茶色の髪は、俺のお気に入りだ。後宮に入り随分と髪が伸びた。まるで、カールの様な髪型になったな、マテウス」
ヴェルンハルト殿下が、マテウスの髪に触れようとした。だが、アルミンが後ろに下がり殿下の手を避けた。その行為に、王太子殿下は苛立ちを露にしたが、不意に笑みを浮かべた。
「アルミン、ルドルフにマテウスを預けろ。朝方まで、お前を抱く事にした」
「・・冗談はやめてください、王太子殿下。俺の事はお嫌いでしょ?」
「筋肉は好みだ」
「いや・・えーー」
「アルミン・・マテウス様の事は私に任せて、王太子殿下の相手をしてきなさい。朝方まで絶対に帰ってこない様に。いや、二日間は帰ってこなくていい。ヴェルンハルト殿下と楽しんでくるといい」
「ルドルフ、貴様っ!」
「決まりだな。行くぞ、アルミン」
「えーーーーー」
ルドルフが無理矢理、アルミンからマテウスを奪った。アルミンは絶望的な表情を浮かべながら、ヴェルンハルト殿下に引きずられていく。ルドルフはマテウスを抱いたまま、ファビアン殿下ににこりと笑いかけ言葉を掛けた。
「ファビアン殿下、部屋の扉を開けて頂けますか?」
「わかった、ルドルフ。ねえ、アルミンは大丈夫かな?」
「問題ありません」
「わかった」
ファビアン殿下は背伸びをしながら、部屋の扉を開いた。部屋には、豪華なベッドが置かれていた。ルドルフは周囲を見回しながらベッドに向かう。部屋の隅には、宮廷医師が控えていた。だが、彼らはマテウスとルドルフから一斉に視線を逸らせた。まるで、見ると目が穢れるとでも言うように。
ルドルフは、ため息を付いた。おそらく、彼らの協力は得られないだろう。そうなると、一人で子をとりあげる事になる。ルドルフは僅かに緊張を覚えながら、ベッドにマテウスを寝かせた。よく眠っている。ルドルフは、マテウスの髪を撫でた後そばを離れた。そして、ファビアン殿下に声を掛ける。
「ファビアン殿下、マテウス様の傍で手を握っていてくださいますか?マテウス様は、時々悪夢を見ますが・・きっと、ファビアン殿下が手を繋いでくださったなら悪夢を見る事なく過ごせると思いますので」
「わかった、ルドルフ!」
ファビアン殿下はすぐにマテウスに近づき手を繋いだが、それを阻む声が宮廷医師の間から上がった。
「ファビアン殿下、いけません。シュナーベル家の『孕み子』に触れては殿下が穢れます。穢れた血脈に触れる事は不吉です。私どもも、ヴェルンハルト殿下の命令でなければ、この様な出産に立ち会いはしません。殿下、どうぞ『孕み子』から離れてください」
「無礼だぞ、僕に命令するな!僕はマテウスを穢れていると思ったことは一度もない。お前たちも意識を改めよ。この出産に協力せぬ者は、部屋を出ていって構わない。だが、宮廷医師の資格を失うものと思え」
ファビアン殿下の言葉に、宮廷医師たちは黙り込んだ。そして、誰も部屋から出ていく者はいなかった。ルドルフはファビアン殿下の成長に驚きながらも、その心を隠しながら殿下に優しく微笑みかけた。殿下は力を得た様に頷くと、マテウスの手にそっと触れた。ベッドも部屋も清潔に保たれていたが、ルドルフは更に清潔にすべく部屋に控える医療知識のある小姓を呼んだ。彼らは素直にルドルフの言葉に従った。ルドルフはマテウスの出産に向けてせわしなく動き始めた。
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「アルミンだったな。何しに来た?」
「ヘクトール様の代理として、マテウス様を後宮まで迎えに行きました」
「俺の側近がマテウスを迎えに行ったはずだが?奴らはどうした?」
「お二人とも体調が良くないとの事でしたので、マテウス様は俺が抱き上げてお産部屋に向かう事にしました。なんと申しましても、側近たちは殿下の愛する筋肉たちですから・・無理をさせるわけにはいかないでしょ?」
「相変わらず、ムカつく奴だ。それでマテウスは何故眠っている?」
ルドルフが一歩前に出て、王太子殿下に説明を始める。ルドルフの後ろに隠れるように、ファビアン殿下は立っていた。ヴェルンハルト殿下は息子を一瞥した後、ルドルフの言葉に耳を傾けた。
「マテウス様は出産を前に、興奮状態に陥りやむなく薬を盛って眠らせました。朝方の出産時まで、マテウス様には眠っていただきます。これは、マテウス様の主治医としての判断です。王太子殿下、どうかマテウス様をお産までゆっくりと眠らせてあげてください」
「ふん、詰まらないな。せっかくこの部屋の事を説明して、マテウスを楽しませてやろうと思っていたのに間の悪い事だ。まあいい、部屋に入れ。但し、アルミンは部屋に入るな。俺にマテウスを寄越せ」
「お断りいたします。マテウス様をお産部屋のベッドまで運ぶように、ヘクトール様より指示を受けております。命を破れが、ヘクトール様よりお叱りを受けます」
「そのヘクトールは、どうした?」
「処刑業務に従事しております」
「はっ、なるほど。マテウスはヘクトールにとっては、その程度の価値しかないという事だな。ならば、俺が貰っても、文句は言わないだろう。マテウスは、俺がペットとして一生飼うつもりだ・・この赤茶色の髪は、俺のお気に入りだ。後宮に入り随分と髪が伸びた。まるで、カールの様な髪型になったな、マテウス」
ヴェルンハルト殿下が、マテウスの髪に触れようとした。だが、アルミンが後ろに下がり殿下の手を避けた。その行為に、王太子殿下は苛立ちを露にしたが、不意に笑みを浮かべた。
「アルミン、ルドルフにマテウスを預けろ。朝方まで、お前を抱く事にした」
「・・冗談はやめてください、王太子殿下。俺の事はお嫌いでしょ?」
「筋肉は好みだ」
「いや・・えーー」
「アルミン・・マテウス様の事は私に任せて、王太子殿下の相手をしてきなさい。朝方まで絶対に帰ってこない様に。いや、二日間は帰ってこなくていい。ヴェルンハルト殿下と楽しんでくるといい」
「ルドルフ、貴様っ!」
「決まりだな。行くぞ、アルミン」
「えーーーーー」
ルドルフが無理矢理、アルミンからマテウスを奪った。アルミンは絶望的な表情を浮かべながら、ヴェルンハルト殿下に引きずられていく。ルドルフはマテウスを抱いたまま、ファビアン殿下ににこりと笑いかけ言葉を掛けた。
「ファビアン殿下、部屋の扉を開けて頂けますか?」
「わかった、ルドルフ。ねえ、アルミンは大丈夫かな?」
「問題ありません」
「わかった」
ファビアン殿下は背伸びをしながら、部屋の扉を開いた。部屋には、豪華なベッドが置かれていた。ルドルフは周囲を見回しながらベッドに向かう。部屋の隅には、宮廷医師が控えていた。だが、彼らはマテウスとルドルフから一斉に視線を逸らせた。まるで、見ると目が穢れるとでも言うように。
ルドルフは、ため息を付いた。おそらく、彼らの協力は得られないだろう。そうなると、一人で子をとりあげる事になる。ルドルフは僅かに緊張を覚えながら、ベッドにマテウスを寝かせた。よく眠っている。ルドルフは、マテウスの髪を撫でた後そばを離れた。そして、ファビアン殿下に声を掛ける。
「ファビアン殿下、マテウス様の傍で手を握っていてくださいますか?マテウス様は、時々悪夢を見ますが・・きっと、ファビアン殿下が手を繋いでくださったなら悪夢を見る事なく過ごせると思いますので」
「わかった、ルドルフ!」
ファビアン殿下はすぐにマテウスに近づき手を繋いだが、それを阻む声が宮廷医師の間から上がった。
「ファビアン殿下、いけません。シュナーベル家の『孕み子』に触れては殿下が穢れます。穢れた血脈に触れる事は不吉です。私どもも、ヴェルンハルト殿下の命令でなければ、この様な出産に立ち会いはしません。殿下、どうぞ『孕み子』から離れてください」
「無礼だぞ、僕に命令するな!僕はマテウスを穢れていると思ったことは一度もない。お前たちも意識を改めよ。この出産に協力せぬ者は、部屋を出ていって構わない。だが、宮廷医師の資格を失うものと思え」
ファビアン殿下の言葉に、宮廷医師たちは黙り込んだ。そして、誰も部屋から出ていく者はいなかった。ルドルフはファビアン殿下の成長に驚きながらも、その心を隠しながら殿下に優しく微笑みかけた。殿下は力を得た様に頷くと、マテウスの手にそっと触れた。ベッドも部屋も清潔に保たれていたが、ルドルフは更に清潔にすべく部屋に控える医療知識のある小姓を呼んだ。彼らは素直にルドルフの言葉に従った。ルドルフはマテウスの出産に向けてせわしなく動き始めた。
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