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第四章
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◆◆◆◆◆◆
◇◇◇◇
マテウスが本格的に泣き出すと、アルミンは対処に困って最後には自らマテウスを抱き締めていた。
「ほら、泣き止め。マテウス、な?」
「うん、うっ、」
「本当に泣き虫だなって、うおっあが!!」
アルミンが、突然悲鳴を上げて直立不動になった。そして、マテウスからじわじわと引き剥がされる。その背後には、カールの姿があった。カールは左手で、背後からアルミンの股間を握り潰しつつ、右手に握られた花束をマテウスに向かい放り投げた。
マテウスは驚きのあまり、花束を取り損ない地面に落としてしまった。カールの舌打ちが聞こえて、びくりとマテウスは震えた。
「マテウスのような不細工でも、痴漢に遭う事もあるみたいだね。放置しようとも思ったけど、泣いてたから助ける事にした。一応は、兄弟だからね。痴漢はこちらで処分するから、マテウスは屋敷に早く戻りなよ。寄り道もなしだよ。誰かに声を掛けられても、絶対について行かない。分かった、マテウス?」
「あ、あ、カールが兄弟って言った!そうだよ、私達、きょうだいだよ!でも、それ、痴漢ちがう。アルミン、それ、アルミンだから。あの、花束はもらっていいの?え?私は、どうしたらいいの?カールに会いに来たけど、アルミンが石ぶつけられて、それから石を握ってて。それで、私が泣いたら、アルミンが抱きついてきて。だけど、痴漢じゃないよ?」
「完全に混乱してるなぁ。マテウス、僕の目を見て。屋敷には、大好きなヘクトール兄上がいるだろ?そこに戻る。それで、大丈夫。分かる?アルミンはアソコがヤバイから痴漢だと思うけど、マテウスが違うと言うなら違うのだろうね。それもそうだね。不細工なマテウスが痴漢に遭う筈がないや。僕は勘違いしたみたい。アルミンと仲直りの散歩に行くから、もう行くね?マテウスは帰る。僕は、アルミンと二人で散歩したいからついてこないでね?さよなら、マテウス」
「一緒に、私も散歩したい。カールと、もっとちゃんと話したい。色々、話したい。どんな生活をしているの?父上は元気?私の事も話したい。同じ部屋で過ごした時みたいに、仲良くしたい。私は、カールのお兄ちゃんだよ!どうして、カールと仲良くしちゃダメなの!どうして、カールは私を否定するの!拒絶しないでよ。私は皆と仲良くしたいの。昔みたいに、仲良くしてよ、私を、嫌わないでよ、カール、はぁ、はぁ、、はぁ、、」
「カール、俺は痴漢じゃねーし。股間を背後から掴む奴の事を痴漢って言うんじゃねーの?」
アルミンの言葉と同時に、カールが地面に倒れ込む。カールは腹を押さえて、胃液を吐き出した。それを見て、アルミンが顔を歪める。
「何も食ってねーのかよ、カール。腹ががら空きだったから、肘を撃ち込んだが・・痩せすぎだ。もっと、食わないと、」
「うるさい、黙れ!!」
「あー、分かったよ、カール。マテウスが、過呼吸を起こしかけてる。俺が屋敷に運ぶ。カールは、一人で帰れるか・・別邸に?」
「当たり前だ」
カールは立ち上がると、胃液で汚れた唇をハンカチで綺麗に拭った。そして、カールは地面に落ちた花束を掴んだ。だが、マテウスも同時に花束を掴んでいた。
触れあった肌から温もりが伝わり、互いの視線が絡みあう。マテウスは呼吸を乱し、バランスを崩しながらカールの胸に飛び込んできた。カールもバランスを崩しかけたが、マテウスを抱き寄せ衝撃に耐える。
花束とは違う優しい薫りを、マテウスは身に纏っていた。カールは目を瞑り、自然とマテウスの首筋に唇を触れさせていた。柔らかいマテウスのすべてが懐かしく、愛しく、やがて、カールの頬に一滴の涙が零れ落ちた。
「カール?」
「・・僕は、駄目だ」
「なにが駄目なの、カール?」
「穢れている。僕も・・父上と、同じだ」
「うん?」
「僕に触れるな、マテウス。穢れるから」
カールが突然、マテウスを突き飛ばした。再びバランスを崩したマテウスは、背後からアルミンに受け止められていた。呆然とカールを見つめながら、マテウスは必死に言葉を発していた。
「カールにとって、私は穢れた存在なの?カールは、フォルカー教に改宗したの?だから、私が穢れて見えるの?会話をしなくなったのは、私が穢れているから?話したくないほど、私が嫌いなの?でも、私は、何も変わらないよ?私はカールが好きだよ。私の大切な・・弟だもの」
アルミンに抱き寄せられたマテウスを、カールは眩しそうに見つめていた。やがて、マテウスの胸に抱かれた花束に視線を移すと、カールは何かを呟いた。だが、その呟きはマテウスには届かなかった。しかし、アルミンにはその呟きは届き、カールに鋭い視線を向けた。
カールは構わず、もう一度、同じ言葉を呟いた。呟いた言葉が空気に溶けるのと同時に、カールはマテウスの存在を完全に無視した。
マテウスがどれ程声を掛けようとも、カールは振り返りもせず立ち去ってしまった。マテウスは地面に崩れ落ちると、花束で顔を隠して泣き続けた。アルミンはマテウスの横に座ると、ゆっくりと背を撫で声を掛けた。
「屋敷に帰ろう、マテウス」
「アルミン・・」
「どうした、マテウス?」
「私、穢れてる?」
「俺の額を見ろよ、マテウス。忘れたのか?俺も穢れていると言われて、友達の親から石をぶつけられた。それで、俺は穢れているとおもうか、マテウス?」
「アルミンは、穢れてないよ」
「じゃあ、マテウスも穢れてない」
「・・本当に?」
「本当に。さ、屋敷に帰ろうぜ、マテウス」
「うん、アルミン」
アルミンはマテウスを抱き上げると、屋敷に向かって歩きだした。
◇◇◇◇
『カール、どこにいるの?』
眠っているの?灰色の世界はどこにあるの?意地悪しないで、返事してよ。もう、目覚めてしまうよ。
『カール?』
◆◆◆◆◆
◇◇◇◇
マテウスが本格的に泣き出すと、アルミンは対処に困って最後には自らマテウスを抱き締めていた。
「ほら、泣き止め。マテウス、な?」
「うん、うっ、」
「本当に泣き虫だなって、うおっあが!!」
アルミンが、突然悲鳴を上げて直立不動になった。そして、マテウスからじわじわと引き剥がされる。その背後には、カールの姿があった。カールは左手で、背後からアルミンの股間を握り潰しつつ、右手に握られた花束をマテウスに向かい放り投げた。
マテウスは驚きのあまり、花束を取り損ない地面に落としてしまった。カールの舌打ちが聞こえて、びくりとマテウスは震えた。
「マテウスのような不細工でも、痴漢に遭う事もあるみたいだね。放置しようとも思ったけど、泣いてたから助ける事にした。一応は、兄弟だからね。痴漢はこちらで処分するから、マテウスは屋敷に早く戻りなよ。寄り道もなしだよ。誰かに声を掛けられても、絶対について行かない。分かった、マテウス?」
「あ、あ、カールが兄弟って言った!そうだよ、私達、きょうだいだよ!でも、それ、痴漢ちがう。アルミン、それ、アルミンだから。あの、花束はもらっていいの?え?私は、どうしたらいいの?カールに会いに来たけど、アルミンが石ぶつけられて、それから石を握ってて。それで、私が泣いたら、アルミンが抱きついてきて。だけど、痴漢じゃないよ?」
「完全に混乱してるなぁ。マテウス、僕の目を見て。屋敷には、大好きなヘクトール兄上がいるだろ?そこに戻る。それで、大丈夫。分かる?アルミンはアソコがヤバイから痴漢だと思うけど、マテウスが違うと言うなら違うのだろうね。それもそうだね。不細工なマテウスが痴漢に遭う筈がないや。僕は勘違いしたみたい。アルミンと仲直りの散歩に行くから、もう行くね?マテウスは帰る。僕は、アルミンと二人で散歩したいからついてこないでね?さよなら、マテウス」
「一緒に、私も散歩したい。カールと、もっとちゃんと話したい。色々、話したい。どんな生活をしているの?父上は元気?私の事も話したい。同じ部屋で過ごした時みたいに、仲良くしたい。私は、カールのお兄ちゃんだよ!どうして、カールと仲良くしちゃダメなの!どうして、カールは私を否定するの!拒絶しないでよ。私は皆と仲良くしたいの。昔みたいに、仲良くしてよ、私を、嫌わないでよ、カール、はぁ、はぁ、、はぁ、、」
「カール、俺は痴漢じゃねーし。股間を背後から掴む奴の事を痴漢って言うんじゃねーの?」
アルミンの言葉と同時に、カールが地面に倒れ込む。カールは腹を押さえて、胃液を吐き出した。それを見て、アルミンが顔を歪める。
「何も食ってねーのかよ、カール。腹ががら空きだったから、肘を撃ち込んだが・・痩せすぎだ。もっと、食わないと、」
「うるさい、黙れ!!」
「あー、分かったよ、カール。マテウスが、過呼吸を起こしかけてる。俺が屋敷に運ぶ。カールは、一人で帰れるか・・別邸に?」
「当たり前だ」
カールは立ち上がると、胃液で汚れた唇をハンカチで綺麗に拭った。そして、カールは地面に落ちた花束を掴んだ。だが、マテウスも同時に花束を掴んでいた。
触れあった肌から温もりが伝わり、互いの視線が絡みあう。マテウスは呼吸を乱し、バランスを崩しながらカールの胸に飛び込んできた。カールもバランスを崩しかけたが、マテウスを抱き寄せ衝撃に耐える。
花束とは違う優しい薫りを、マテウスは身に纏っていた。カールは目を瞑り、自然とマテウスの首筋に唇を触れさせていた。柔らかいマテウスのすべてが懐かしく、愛しく、やがて、カールの頬に一滴の涙が零れ落ちた。
「カール?」
「・・僕は、駄目だ」
「なにが駄目なの、カール?」
「穢れている。僕も・・父上と、同じだ」
「うん?」
「僕に触れるな、マテウス。穢れるから」
カールが突然、マテウスを突き飛ばした。再びバランスを崩したマテウスは、背後からアルミンに受け止められていた。呆然とカールを見つめながら、マテウスは必死に言葉を発していた。
「カールにとって、私は穢れた存在なの?カールは、フォルカー教に改宗したの?だから、私が穢れて見えるの?会話をしなくなったのは、私が穢れているから?話したくないほど、私が嫌いなの?でも、私は、何も変わらないよ?私はカールが好きだよ。私の大切な・・弟だもの」
アルミンに抱き寄せられたマテウスを、カールは眩しそうに見つめていた。やがて、マテウスの胸に抱かれた花束に視線を移すと、カールは何かを呟いた。だが、その呟きはマテウスには届かなかった。しかし、アルミンにはその呟きは届き、カールに鋭い視線を向けた。
カールは構わず、もう一度、同じ言葉を呟いた。呟いた言葉が空気に溶けるのと同時に、カールはマテウスの存在を完全に無視した。
マテウスがどれ程声を掛けようとも、カールは振り返りもせず立ち去ってしまった。マテウスは地面に崩れ落ちると、花束で顔を隠して泣き続けた。アルミンはマテウスの横に座ると、ゆっくりと背を撫で声を掛けた。
「屋敷に帰ろう、マテウス」
「アルミン・・」
「どうした、マテウス?」
「私、穢れてる?」
「俺の額を見ろよ、マテウス。忘れたのか?俺も穢れていると言われて、友達の親から石をぶつけられた。それで、俺は穢れているとおもうか、マテウス?」
「アルミンは、穢れてないよ」
「じゃあ、マテウスも穢れてない」
「・・本当に?」
「本当に。さ、屋敷に帰ろうぜ、マテウス」
「うん、アルミン」
アルミンはマテウスを抱き上げると、屋敷に向かって歩きだした。
◇◇◇◇
『カール、どこにいるの?』
眠っているの?灰色の世界はどこにあるの?意地悪しないで、返事してよ。もう、目覚めてしまうよ。
『カール?』
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