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第四章
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◆◆◆◆◆
夢が迫ってくる。
『カール』に逢わないといけないのに。日記をありがとうって、お礼を言いたい。灰色の世界はどこにあるの?『カール』を探さないと。
『カール、どこにいるの?』
『ねえ、会って話そう?』
『カール、消えてないよね?』
夢に飲み込まれる。
悪夢だったらどうしよう。ヘクトール兄上は、この後宮にはいないのに。 悪夢だったら、どうしてらいいの?
◇◇◇◇
「カールがいる」
「カールが教会に通っている」
「会わないと、会わないと、会わないと」
「カールと話したい」
屋敷の使用人達が、『カールが頻繁にフォルカー教の教会に通っている』と噂していた。それを偶然耳にしたマテウスは、屋敷をこっそりと抜けだし、シュナーベルの領地にある教会に向かって走り出していた。
「教会が見えた!」
教会の屋根が見えた途端に、マテウスは急に不安に襲われた。そして、マテウスは走るのを止めると、その場に立ち尽くしてしまった。
「・・カールに逢えるかな?会ってちゃんと話せるかな?私が黙っちゃうと、カールはすぐにどっかに行っちゃうし。兄弟なのに、どうしてこんなに心が離れちゃったのかな」
マテウスは、目を瞑り深呼吸をした。そして、マテウスは再び目を開くと、今度はゆっくりと歩きだした。やがて、教会の側まで行くと、マテウスは教会の敷地内に人影を見つけた。
「あれ、アルミンがいる。んん?」
教会の敷地内にいたのは、カールではなくアルミンだった。
ぼんやりと空を見上げるアルミンの姿を、マテウスは離れた場所から見つめていた。すると、アルミンが視線を感じたのか、マテウスの方に顔を向けた。
アルミンの額に包帯が巻かれているのを見て、マテウスは慌てて幼馴染みに駆け寄った。
「アルミン、その額どうしたの!?包帯から血が滲んでるよ?大丈夫なの?」
「マテウス?お前はまた護衛も付けずに、独り歩きしているのか?ヘクトール様に叱られても知らないぞ。叱られて泣いても、俺はもう慰めてやらないぞ!」
「慰めてくれなくても大丈夫!アルミンに抱きつけば、涙は自然に止まるから平気!」
「俺はそれが嫌なの。俺は抱き枕かよ?」
アルミンはマテウスと言い合いをしながら、そっと額に手をやり、マテウスから血の滲んだ包帯を隠した。その行動に、マテウスはぷうっと頬を膨らませた。
「あのね、アルミン。私は、アルミンの幼馴染みだよ?何があったのかを話してくれても良くない?私が落ち込んでる時は、色々と探りをいれてくる癖に・・秘密はずるい」
「あー、マテウスがうるさい。お前を屋敷に送って行く道中で、何があったか話す。行くぞ、マテウス!」
アルミンは、マテウスの腕を掴もうとした。だが、その手にはしっかりと石が握られていた。
「ん、石?」
「・・あー、この石は不要になった」
「??」
アルミンは石を地面に落とすと、マテウスの手を取り歩きだした。向かう方面は、元来た道。マテウスは大人しくついていく事にした。でも、カールの事も気になり、マテウスはちらりと背後を振り返った。そんなマテウスに対して、アルミンは少し俯きがちに呟いた。
「マテウスは・・何が目的でここに来た?」
「ん、秘密」
「マテウス、酷くねぇ?自分の事は秘密で、俺の包帯の秘密は暴くのかよ?」
「アルミンは、何があったか話すって自ら言ったよね?でも、私は何も約束してないから問題ないでしょ?」
「性悪だ」
「性悪です」
アルミンは、マテウスの手を繋いだまま歩きだした。そして、額に負った怪我の理由について語り出す。
「友達が今日、家族と共にシュナーベル家の領地を去っていった。シュナーベル家の血縁者だけど、フォルカー教に改宗したから・・シュナーベル家の領地では暮らしたくないって事らしい。だけど、領地を去る前に、俺はちゃんと友達と別れの挨拶をしたかった。だから、俺はそいつの家に行ったわけ。まあ、約束無しに行ったから、家に押し掛けた感じになったけどな」
「そっか。それで、友達には会えた?」
「家を尋ねたら、いきなり家族に帰れと言われた。それで、俺は少し腹が立って、気がついたら、何でか殺気を放ってた」
「うーん、それは不味いね」
「まずかった。俺の殺気にビビったのか、友達の親に石を投げられた。だから、俺は友達と別れの挨拶をするのを諦めた」
「ええっ!?」
「俺は処刑人だから、フォルカー教信者にとっては、穢れた存在なんだろうな。親が石を投げる後ろに、表情もなく友達が立っていた。その姿を見たら・・俺は逃げ出していた。額の怪我は、投げられた石に当たったからだ、マテウス」
「アルミン・・」
「多分、俺なら石は避けられたと思う。だけど、俺は避けなかった。額から血を流す俺を見て、奴等は青ざめた顔をしていたよ。その表情をみたら、その時は少しスッキリしたんだ」
「・・・」
「でも、その後、だんだん腹が立ってきてさぁ。マテウスが声を掛けてくれなかったら、俺は教会の窓に石を投げて割るところだった。俺・・教会で石を握ってただろ?マジやばかった。教会と揉めたら、親父やヘクトール様に迷惑をかけるところだった。まじ、ヤバかった。なんか、俺、情けないな。ん?おい、お前が泣くなよ、マテウス」
「ごめん。勝手に泣いてごめん・・」
◆◆◆◆◆◆
夢が迫ってくる。
『カール』に逢わないといけないのに。日記をありがとうって、お礼を言いたい。灰色の世界はどこにあるの?『カール』を探さないと。
『カール、どこにいるの?』
『ねえ、会って話そう?』
『カール、消えてないよね?』
夢に飲み込まれる。
悪夢だったらどうしよう。ヘクトール兄上は、この後宮にはいないのに。 悪夢だったら、どうしてらいいの?
◇◇◇◇
「カールがいる」
「カールが教会に通っている」
「会わないと、会わないと、会わないと」
「カールと話したい」
屋敷の使用人達が、『カールが頻繁にフォルカー教の教会に通っている』と噂していた。それを偶然耳にしたマテウスは、屋敷をこっそりと抜けだし、シュナーベルの領地にある教会に向かって走り出していた。
「教会が見えた!」
教会の屋根が見えた途端に、マテウスは急に不安に襲われた。そして、マテウスは走るのを止めると、その場に立ち尽くしてしまった。
「・・カールに逢えるかな?会ってちゃんと話せるかな?私が黙っちゃうと、カールはすぐにどっかに行っちゃうし。兄弟なのに、どうしてこんなに心が離れちゃったのかな」
マテウスは、目を瞑り深呼吸をした。そして、マテウスは再び目を開くと、今度はゆっくりと歩きだした。やがて、教会の側まで行くと、マテウスは教会の敷地内に人影を見つけた。
「あれ、アルミンがいる。んん?」
教会の敷地内にいたのは、カールではなくアルミンだった。
ぼんやりと空を見上げるアルミンの姿を、マテウスは離れた場所から見つめていた。すると、アルミンが視線を感じたのか、マテウスの方に顔を向けた。
アルミンの額に包帯が巻かれているのを見て、マテウスは慌てて幼馴染みに駆け寄った。
「アルミン、その額どうしたの!?包帯から血が滲んでるよ?大丈夫なの?」
「マテウス?お前はまた護衛も付けずに、独り歩きしているのか?ヘクトール様に叱られても知らないぞ。叱られて泣いても、俺はもう慰めてやらないぞ!」
「慰めてくれなくても大丈夫!アルミンに抱きつけば、涙は自然に止まるから平気!」
「俺はそれが嫌なの。俺は抱き枕かよ?」
アルミンはマテウスと言い合いをしながら、そっと額に手をやり、マテウスから血の滲んだ包帯を隠した。その行動に、マテウスはぷうっと頬を膨らませた。
「あのね、アルミン。私は、アルミンの幼馴染みだよ?何があったのかを話してくれても良くない?私が落ち込んでる時は、色々と探りをいれてくる癖に・・秘密はずるい」
「あー、マテウスがうるさい。お前を屋敷に送って行く道中で、何があったか話す。行くぞ、マテウス!」
アルミンは、マテウスの腕を掴もうとした。だが、その手にはしっかりと石が握られていた。
「ん、石?」
「・・あー、この石は不要になった」
「??」
アルミンは石を地面に落とすと、マテウスの手を取り歩きだした。向かう方面は、元来た道。マテウスは大人しくついていく事にした。でも、カールの事も気になり、マテウスはちらりと背後を振り返った。そんなマテウスに対して、アルミンは少し俯きがちに呟いた。
「マテウスは・・何が目的でここに来た?」
「ん、秘密」
「マテウス、酷くねぇ?自分の事は秘密で、俺の包帯の秘密は暴くのかよ?」
「アルミンは、何があったか話すって自ら言ったよね?でも、私は何も約束してないから問題ないでしょ?」
「性悪だ」
「性悪です」
アルミンは、マテウスの手を繋いだまま歩きだした。そして、額に負った怪我の理由について語り出す。
「友達が今日、家族と共にシュナーベル家の領地を去っていった。シュナーベル家の血縁者だけど、フォルカー教に改宗したから・・シュナーベル家の領地では暮らしたくないって事らしい。だけど、領地を去る前に、俺はちゃんと友達と別れの挨拶をしたかった。だから、俺はそいつの家に行ったわけ。まあ、約束無しに行ったから、家に押し掛けた感じになったけどな」
「そっか。それで、友達には会えた?」
「家を尋ねたら、いきなり家族に帰れと言われた。それで、俺は少し腹が立って、気がついたら、何でか殺気を放ってた」
「うーん、それは不味いね」
「まずかった。俺の殺気にビビったのか、友達の親に石を投げられた。だから、俺は友達と別れの挨拶をするのを諦めた」
「ええっ!?」
「俺は処刑人だから、フォルカー教信者にとっては、穢れた存在なんだろうな。親が石を投げる後ろに、表情もなく友達が立っていた。その姿を見たら・・俺は逃げ出していた。額の怪我は、投げられた石に当たったからだ、マテウス」
「アルミン・・」
「多分、俺なら石は避けられたと思う。だけど、俺は避けなかった。額から血を流す俺を見て、奴等は青ざめた顔をしていたよ。その表情をみたら、その時は少しスッキリしたんだ」
「・・・」
「でも、その後、だんだん腹が立ってきてさぁ。マテウスが声を掛けてくれなかったら、俺は教会の窓に石を投げて割るところだった。俺・・教会で石を握ってただろ?マジやばかった。教会と揉めたら、親父やヘクトール様に迷惑をかけるところだった。まじ、ヤバかった。なんか、俺、情けないな。ん?おい、お前が泣くなよ、マテウス」
「ごめん。勝手に泣いてごめん・・」
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