嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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第四章

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 こんど伶莉れいりさまに寝かされたところは、からだが沈みこむくらいふかふかしていた。
 背中がやわらかくてあたたかくって、触れてるところから幸せになる。
 ただ寝ているだけで心地いい。ごろごろところがって幸せをあじわう。

「そんなに綿布団が気に入ったか」

「うん! だってこんなふかふかなところで寝たことないよ」

「ノノが気に入ったのなら良かった。だが、少々妬けるな」

「うん?」

 伶莉さまの顔がだんだんと近づいてきて大きくなる。
 はずかしくなって目を閉じた。
 またくちびるを、吸われる。

「ん……!」

 くちびるだけじゃなくって伶莉さまの体も、かぶさってくる。
 背中はふかふか、上は伶莉さまにはさまれて、しあわせすぎるよ……!
 ふかふかの上にねころがって落ちついてきてたのに、また体がきゅんときてふるふるっとそれを流した。

「調子はどうだ?」

「ふかふか……」

 だって背中がすっごい気持ちよくってそれしか考えらんない。

 それしか、でもない。
 伶莉さまと重なると、まだ兄から飲まされたものが効いてるのが、うずうずとして分かる。
 まだ、あつい──

「調子はいいと受け取っておく」

 伶莉さまがゆっくりとわたしの髪をく。
 まだ濡れてておもたい髪の間に指を通されるのがくすぐったい。
 とんとんと肩をたたいてくれるのも、おちつくようでおちつかなかったりもする。

 そしたら、襦袢じゅばんの足のあいだを割られてびっくりする。
 薄目をあけてみる。伶莉さまのお顔立ちに美しいだけじゃなく熱がこもっているのにどきどきとして、また閉じた。

「はっ」

 さっきも触れられた敏感なところを伶莉さまにまた指でなぞられ、思わず腰をひく。
 ふかふかな綿布団にすこしおしりが沈むけど、それでもぜんぜん伶莉さまからは逃げられない。
 いちど伶莉さまにほぐされたところは、すぐにずぶずぶとその指を受け入れてしまう。

「伶莉さま……っ」

「そのままでいい」

 そのままじゃなくて、胸のあいだも広げられてその先も吸いだされる。
 伶莉さまに愛でられたところはすぐにさっきのことを思いだしたように敏感に感じてしまう。

「ん……はぁ、伶莉さまぁ、からだ、変、です、っ」

「慣れないかもしれないが、大丈夫だ。ノノにおかしいところはない」

「わたし、わたし……、おかしくないです、か?」

「ああ」

 さすさすと肩から二の腕までをなでられるとちょっと安心する。
 でも熱いのはどうしようもなくて、ほぐされたわたしのなかはぐしょぐしょに溶けていた。
 
「少し痛いかもしれないが、少しだけだからこらえて欲しい。我の愛するノノと一つになりたい」

「……はい」

 ちょっと不安を感じたけど、いやとは言えなかった。
 伶莉さまの体に腕まわしてると、すこしだけ落ち着いた。

 すると足のあいだに、指よりもっと熱くて大きいものが添えられる。
 ずぶずぶと、入ってくる──

 伶莉さまと一つになってく感覚が持てて、入ってくるぶんまでは我慢できた。
 だけど全部入りきってもそこで止まって、痛みが抜けない。

 こらえるけどこらえきれなくって、伶莉さまにうったえてしまう。
 まだ我慢できたけど、伶莉さまには聞きたくって、うったえてしまう。

「ぃたい、いたいです、伶莉さま……!」

「すまない。少し痛みが安らぐから、ゆっくり体の力を抜いて欲しい」

 体の痛みだけだったらまだもうすこし、我慢できた。
 けど、痛いのはそれだけのせいじゃない──

「伶莉さまもわたしのこと痛くしたい? とろいから? 頭悪いから? ううん、痛くしたいならいいんです。けど」

(痛いのは慣れてるもんね)

 お兄ちゃんたちと一緒だし、それよりはいいかもしれない。
 あきらめがつくと気が抜けて、すこし痛いのが楽になる。

「大事なノノにはできるだけ痛くないようにしたかった。我の手違いだ。すまない、すぐ痛みが和らぐようにする」

「ううん、いいんで」

 答えきる間もなく口をふさがれた。
 舌をいれられることにだってびくっとしてしまう。
 けど、舌どうしを絡ませられると胸がぽうっとしてくる。
 伶莉さまとわたしの口のなかが混ざりあうと、舌の気持ちいいので繋がってるところもすこし気持ちよく感じてくる、ような気がした。

 口づけられながら、小さい子がしてもらうみたいに頭なでられる。
 ゆっくりゆっくりなでられると気持ちよくって、痛いのがすこしずつ気にならなくなる。

(伶莉さまは、兄たちとはちがう……)

 口のまわりべたべたするくらいいっぱいすると、痛いのはこらえきれるくらいになった。
 それより、かすかに伶莉さまが動くときに感じるつんとした気持ちよさに甘い期待がこみあげてくる──

 けど唇がはなれて、すこしさびしくなってそのあとにつたう銀色の線を見上げてしまう。

「大丈夫か? ノノ」

 大丈夫じゃない気もするし、もう少し感じてみたい気もしてしまう。
 でもどっちの返事も、していいものなのかなって迷う。

「伶莉さま、どうすればいい?」

「ノノはそのままでいい。また痛みが酷かったら教えてくれ」

(また口くっつけて欲しいな……)

 そんなふうにぽーっと見あげてたら、また伶莉さまの唇が降ってきて重なる。
 唇だけじゃなくって、わたしのなかの伶莉さま自身もゆっくり小さく動きだす。

「あ……う……んふっ……ん、ん……!」

 伶莉さまに広げられてると、まだ少し痛む。
 でも違和感より、つながってるしあわせのほうがずっと大きい。

「善くなったようだな。誠に可愛らしい」

 口つなぎ頭なでられる。
 おちつくのに、でもなかの伶莉さまを感じさせられてどうしようもない気持ちがあふれてくる。
 お湯の池とちがって部屋中静かで、伶莉さまのうごきが速くなるにつれてはずかしい音も耳に流れてくる……!

「ん……! は……っ、あ、あぁ……ん……そこ、へん……!」

「おかしくしている。もっと乱れたノノを見せてくれ」

 どうすればよいのかわかんなくって、それはわかんない。
 でも伶莉さまは今のままでいいんだってことだけ分かって、それでほっとする。
 確かめるように、腕まわしなおした。
 伶莉さまの背中広くて、なかなか手は合わさらない。

「ん、ぁ、あぁ、はい……!」

 伶莉さまがわたしのなかにいるのが、こすれる感覚でも耳にながれこんでくる水音でもわかってしまう。
 おかしいのがわたしだけじゃなくって、伶莉さまの息も乱れてるのがきこえてくる。
 それも一緒なのが、きもちいい──

「ノノ……ッ! 夢中になってしまっているが、平気か」

「ううん、もうへいき。……や、ん……ぁっ……ね、伶莉さまぁ」

「なんだ?」

「名前、呼んでくれるのうれしくて……ん、ぁ……ん……ん、んぅ……」

 お前とかそれとかじゃなくて、ノノって呼んでもらえるのがうれしい。
 それも伶莉さまの雄々しい声で呼ばれると、耳からだってきゅんきゅんしてくるしくなっちゃう。

「ノノ……ぐ……! ノノ、ノノ」

「あぅ……ん、んん……! ん、伶莉さま、んん、んんぅ……!」

 引き抜かれたり奥まで満たされたりって、怜悧さまとの繋がりはめまぐるしく変わる。
 一つじゃないから触れ合う感覚があるのに、でもこすれあうともっと一つになってるように感じる。

 しあわせで目からなみだがこぼれてきた。
 唇がはなれてさびしくなって見あげる。
 そしたら急に目尻のなみだをなめとられてびっくりする。

「やぁ……ん……やんっ!」

 怜悧さまの動きがしだいに速くなって体がくがくってなる。
 けど背中がふかふかにはねかえされて、体じゅう怜悧さまと一つになってしあわせがあふれてくる。
 しあわせすぎて、おかしくなる──

「や、あ、あ、伶莉さま、おかしくなる、おかしくなっちゃうよ、あっ、あっ!」

「そのまま身を任せろ。ノノ、く……いけ」

「あ、う……あ、ああ、や」

 体じゅうにしあわせがどっとあふれる──
 伶莉さまにつながりをほどかれる。
 ちいさなうめき声。おへその下にお湯より熱いものがかけられるのを、感じた。

 熱が抜けると、兄に飲まされてから体おかしかったのも治ってた。


  * * *


 お嫁さんになったわたしは、なにもない日に伶莉さまとごろごろしてた!
 人の姿をとると疲れるのか、伶莉さまはよく前みたいなキツネ姿で寝ている。今もね。

「もふもふ気持ちいいー!」

 ぎゅうーと抱きしめると、ふさふさの毛が肌をなでる。
 手入れのゆきとどいたキツネっ毛は、服の上からだって肌に直接あたるところだってきもちいい。
 すりすりってしあわせを味わう。

「襲うぞ」

 伶莉さまが不機嫌そうにふりむく。
 ほんとはキツネ姿だって人の言葉もしゃべれるんだよ伶莉さま。

「いいよ」

「ん?」

 顔近づけてくるからもう一回言う。

「おそってもいいよ。怜悧さまにおそわれるのはしあわせだから」

 そう言って目とじて、自分のくちびるをつんと人差し指でついた。

「ここ。おそって?」

 怜悧さまはぎゅうって抱きしめてても器用にくるんと体をわたし側に返す。
 怜悧さまがひっくり返るときにもふもふの毛がこすれるのだって、とっても気持ちいい……!
 向かい合うとくちびるをつん、と怜悧さまのくちびるで突かれた。

 うん。しあわせだねっ!

「今日は霧も出てないし呼吸法の修練には丁度い。起きるぞ」

「ねむいよ……」

「愛するノノが山を飛び降りても気圧差に耐えられる程度の呼吸法を覚えてくれないと、我も下界に降りられん。ノノは離せないからな」

 そういってやり返すみたいに体抱かれるから、どきりとしてしまう。すこし目が覚めた。
 怜悧さまはすかさずわたしの体を起こしてくる。

「もう! ばか! 大好き!」

 そしたらまた、うるさくした口をふさがれた。
 静かにゆっくりと、重ねられていた。

 (終)
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