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第四章
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◆◆◆◆◆◆
「壷の中に・・あぁ、シュテフェン殿下」
俺は両手で口を塞ぎショックを受けた振りをして、クッションに深くもたれ掛かる。そして、殿下に聞こえないように、小さく呟いていた。
『シュテフェン殿下のアソコが、壺に納められているなんて・・中身を見てみたい・・』
ヴェルンハルト殿下が、もしもこの呟きを耳にしたなら、必ず俺の事を変態扱いするに違いない。だが、俺は決して変態ではない!
『保存方法を知りたい』
アソコの保存方法が気になって、仕方ないのだ。学術的探求心というやつだ。前世の時に、宦官に興味を持ち、アソコの切断方法については一通り調べていた。
だが、片手落ちとはまさにこの事!保存方法については、調べていなかったのだ。正に一生の不覚。
『はぁ、ルドルフおじさまも、見せてくれなかったしな。だけど、変わり者の王弟殿下なら、面白がって見せてくれる可能性もある!』
ルドルフおじさまにアレを見せてと、精一杯可愛らしく頼んだが・・ひきつった顔をして、主治医は逃げ出してしまった。
『だけど、シュテフェン殿下が後宮にお越しになるはずもないか。やはり、不便だな』
しかし、シュナーベル家の皆は・・どうして、王弟殿下の騒動を俺には伏せていたのだろう?
『シュテフェン殿下が処刑の刃?』
ヴェルンハルト殿下の処刑計画については、俺には一切知らせないで欲しいと兄上に頼んだ。けれど、早まったかもしれない。
俺に伏せられる事柄全てが、殿下の処刑計画に関わりがあるのではないかと疑ってしまう。
「マテウス、気味の悪い独り言は止めろ。不細工な上に・・不気味だ。こんな孕み子を、俺が孕ませたとあっては評判に関わるだろ!」
俺は殿下を睨んで、はっきりと聞こえるように口を開いた。
「王弟殿下の気持ちを考えると、あまりに悲劇的で嘆きの言葉しか出てこなかったのです。嘆きの声をお聞きになったなら・・殿下は、私をからかうでしょ?ですから、口を両手で塞ぎ、嘆きを聞かれないようにして、呟いていたのです。不細工な上に不気味とは、失礼です!」
「嘆きの言葉ねえ?顔がにやついていたが?」
ぎくっ!
「そのような事はありません。それと、ヴェルンハルト殿下!腹の子は、ヘクトール兄上の子です。どさくさに紛れて、紛らわしい事は言わないでください。掛けの金額が幾らなのかは知りませんが、潔く諦めましょう!」
殿下は俺の言葉を鼻で笑い、衝撃の事実を告げてきた。
「俺が賭けを始めると、ヘクトールも大金をつぎ込んで来たぞ?マテウスの子は、自身の子に間違いないと言い張って譲らない。まあ、俺も更に大金を突っ込んだ。お掛けで、賭けのレートが上下して・・予断を許さない状況だ」
「あ、兄上~」
「賭けに乗るとは、ヘクトールもバカだな」
「もう、賭けのお話は止めにしましょう。シュテフェン殿下のお話を、聞かせて下さい」
殿下はにやつきながら、シュテフェン殿下の話の続きを語り始めた。
「・・去勢したシュテフェンは、神妙な面持ちで膝をつき陛下に謝罪した。それを受けて、陛下はどう対処されたと思う?」
俺は少し考えてから返事をした。
「陛下は、シュテフェン殿下をお許しになるしかないのでは?去勢して許しを乞う王弟殿下に、厳しい処分をすれば・・狭量な人物と思われてしまいます。実際、陛下はお許しになられたのでしょ?」
俺の言葉を、ヴェルンハルト殿下は嘲笑った。そして、俺を見つめながら口を開く。
「マテウス・・お前は陛下を全く理解していない。父上はシュテフェンの行為を、自身への当てこすりだと感じたようだ」
「当てこすり?」
「ああ。陛下は、毎夜、毎夜、植民地の孕み子を寝所に呼んでは、閨を共にしている。そして、どういうわけか・・陛下と植民地の孕み子との相性が良いらしく、何度も孕ませている。孕んだ子はそのつど、堕胎させている様だが・・陛下は男としての誇りを、取り戻したようだな。お陰で、益々植民地の孕み子にのめり込む始末だ」
「そんな!」
俺が執務室で選び、陛下の閨に送り込んだ植民地の孕み子が・・そんな酷い扱いを受けているなんて知らなかった。心にトゲが刺さる。
「それでも、閨での関係でとどまっていた時はまだ良かった。しかし、陛下はお気に入りの植 民地の孕み子を、公務の場にも連れ出すようになった。植民地の者を、毛嫌いする貴族は多い。にもかかわらず、陛下は植民地の孕み子に媚さえ売っている。これで、臣下の信頼を、陛下は完全に失った」
「そこまで、陛下は植民地の孕み子に溺れているのですか?まるで・・」
「まるで、依存性の高い薬物を、陛下は盛られているのではないかと疑いたくなるな。そういえば、陛下の寝所に送り込む孕み子を選んだのは・・マテウスだったな?」
「後宮で動けない私に、どうして疑いを向けるのですか・・殿下?」
「マテウスは毒物に詳しいだろ?疑いを深める発言は、常から慎むことだな」
「これからは、そういたします。それで、陛下のお加減は、どうなのですか?」
「父上は、ギリギリのところで踏みとどまっている様子だな。陛下は臣下の様子に、心の内では不味いと思っていた筈だ。だが、植民地の孕み子を手放せない。陛下は葛藤の最中にあった。そこに、不出来な弟が・・子孫を残す願望を捨て、去勢して現れたのだ。陛下の気持ちを推し量れ。分かるだろ、マテウス?」
「王弟殿下の去勢行為が、陛下の心を逆撫でするものだったと・・仰りたいのですね?」
ヴェルンハルト殿下は、随分と上機嫌に笑う。俺は少しずつ、心が重くなってきて息苦しくなってきた。
◆◆◆◆◆◆
「壷の中に・・あぁ、シュテフェン殿下」
俺は両手で口を塞ぎショックを受けた振りをして、クッションに深くもたれ掛かる。そして、殿下に聞こえないように、小さく呟いていた。
『シュテフェン殿下のアソコが、壺に納められているなんて・・中身を見てみたい・・』
ヴェルンハルト殿下が、もしもこの呟きを耳にしたなら、必ず俺の事を変態扱いするに違いない。だが、俺は決して変態ではない!
『保存方法を知りたい』
アソコの保存方法が気になって、仕方ないのだ。学術的探求心というやつだ。前世の時に、宦官に興味を持ち、アソコの切断方法については一通り調べていた。
だが、片手落ちとはまさにこの事!保存方法については、調べていなかったのだ。正に一生の不覚。
『はぁ、ルドルフおじさまも、見せてくれなかったしな。だけど、変わり者の王弟殿下なら、面白がって見せてくれる可能性もある!』
ルドルフおじさまにアレを見せてと、精一杯可愛らしく頼んだが・・ひきつった顔をして、主治医は逃げ出してしまった。
『だけど、シュテフェン殿下が後宮にお越しになるはずもないか。やはり、不便だな』
しかし、シュナーベル家の皆は・・どうして、王弟殿下の騒動を俺には伏せていたのだろう?
『シュテフェン殿下が処刑の刃?』
ヴェルンハルト殿下の処刑計画については、俺には一切知らせないで欲しいと兄上に頼んだ。けれど、早まったかもしれない。
俺に伏せられる事柄全てが、殿下の処刑計画に関わりがあるのではないかと疑ってしまう。
「マテウス、気味の悪い独り言は止めろ。不細工な上に・・不気味だ。こんな孕み子を、俺が孕ませたとあっては評判に関わるだろ!」
俺は殿下を睨んで、はっきりと聞こえるように口を開いた。
「王弟殿下の気持ちを考えると、あまりに悲劇的で嘆きの言葉しか出てこなかったのです。嘆きの声をお聞きになったなら・・殿下は、私をからかうでしょ?ですから、口を両手で塞ぎ、嘆きを聞かれないようにして、呟いていたのです。不細工な上に不気味とは、失礼です!」
「嘆きの言葉ねえ?顔がにやついていたが?」
ぎくっ!
「そのような事はありません。それと、ヴェルンハルト殿下!腹の子は、ヘクトール兄上の子です。どさくさに紛れて、紛らわしい事は言わないでください。掛けの金額が幾らなのかは知りませんが、潔く諦めましょう!」
殿下は俺の言葉を鼻で笑い、衝撃の事実を告げてきた。
「俺が賭けを始めると、ヘクトールも大金をつぎ込んで来たぞ?マテウスの子は、自身の子に間違いないと言い張って譲らない。まあ、俺も更に大金を突っ込んだ。お掛けで、賭けのレートが上下して・・予断を許さない状況だ」
「あ、兄上~」
「賭けに乗るとは、ヘクトールもバカだな」
「もう、賭けのお話は止めにしましょう。シュテフェン殿下のお話を、聞かせて下さい」
殿下はにやつきながら、シュテフェン殿下の話の続きを語り始めた。
「・・去勢したシュテフェンは、神妙な面持ちで膝をつき陛下に謝罪した。それを受けて、陛下はどう対処されたと思う?」
俺は少し考えてから返事をした。
「陛下は、シュテフェン殿下をお許しになるしかないのでは?去勢して許しを乞う王弟殿下に、厳しい処分をすれば・・狭量な人物と思われてしまいます。実際、陛下はお許しになられたのでしょ?」
俺の言葉を、ヴェルンハルト殿下は嘲笑った。そして、俺を見つめながら口を開く。
「マテウス・・お前は陛下を全く理解していない。父上はシュテフェンの行為を、自身への当てこすりだと感じたようだ」
「当てこすり?」
「ああ。陛下は、毎夜、毎夜、植民地の孕み子を寝所に呼んでは、閨を共にしている。そして、どういうわけか・・陛下と植民地の孕み子との相性が良いらしく、何度も孕ませている。孕んだ子はそのつど、堕胎させている様だが・・陛下は男としての誇りを、取り戻したようだな。お陰で、益々植民地の孕み子にのめり込む始末だ」
「そんな!」
俺が執務室で選び、陛下の閨に送り込んだ植民地の孕み子が・・そんな酷い扱いを受けているなんて知らなかった。心にトゲが刺さる。
「それでも、閨での関係でとどまっていた時はまだ良かった。しかし、陛下はお気に入りの植 民地の孕み子を、公務の場にも連れ出すようになった。植民地の者を、毛嫌いする貴族は多い。にもかかわらず、陛下は植民地の孕み子に媚さえ売っている。これで、臣下の信頼を、陛下は完全に失った」
「そこまで、陛下は植民地の孕み子に溺れているのですか?まるで・・」
「まるで、依存性の高い薬物を、陛下は盛られているのではないかと疑いたくなるな。そういえば、陛下の寝所に送り込む孕み子を選んだのは・・マテウスだったな?」
「後宮で動けない私に、どうして疑いを向けるのですか・・殿下?」
「マテウスは毒物に詳しいだろ?疑いを深める発言は、常から慎むことだな」
「これからは、そういたします。それで、陛下のお加減は、どうなのですか?」
「父上は、ギリギリのところで踏みとどまっている様子だな。陛下は臣下の様子に、心の内では不味いと思っていた筈だ。だが、植民地の孕み子を手放せない。陛下は葛藤の最中にあった。そこに、不出来な弟が・・子孫を残す願望を捨て、去勢して現れたのだ。陛下の気持ちを推し量れ。分かるだろ、マテウス?」
「王弟殿下の去勢行為が、陛下の心を逆撫でするものだったと・・仰りたいのですね?」
ヴェルンハルト殿下は、随分と上機嫌に笑う。俺は少しずつ、心が重くなってきて息苦しくなってきた。
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