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第四章
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◆◆◆◆◆◆
ヴェルンハルト殿下は、殺気を纏ったルドルフを鋭く睨み付けた。そして、低い声でルドルフに命令する。
「ルドルフ・・部屋から出ていけ」
「まだ診察中です、殿下」
うお、ルドルフおじさまが殺気を放ってる。宦官の医者になって、より凄みが増した。
そして、殿下の機嫌が急降下だ~!
「・・ルドルフ様、 ファビアン殿下の件で相談があるのですがよろしいですか?」
ルドルフが殺気を纏ったまま、俺に視線を移す。おじさま、殺気が垂れ流しです!
「どのような相談事でしょうか?」
「あの・・ファビアン殿下は、一階でおやつを食べている頃かと思います。最近は、殿下は邸に籠りがちで、言葉数も減りました。ルドルフ様には、ファビアン殿下の『言葉の先生』も兼任してもらいたいのです。お願いできますでしょうか?」
「それは命令でしょうか、マテウス様?」
「命令です、ルドルフ = シュナーベル」
「・・承知いたしました、マテウス様」
ルドルフは俺だけに頭を下げて、部屋を出ていった。俺たちのやり取りを見ていたヴェルンハルト殿下は、肩を竦めながら口を開いた。
「シュナーベル家の一族は、頭がおかしいらしいな。大して美しくもない孕み子の為に、右往左往して・・挙げ句に、ペニスを切って宦官の医者となり、マテウスに仕える奴まで出てくる始末。全く、シュナーベルの血脈は・・気味が悪い」
「殿下にも、その気味の悪いシュナーベルの血脈が、僅かですが流れておいでですよ?自分に対して、悪口を仰って楽しいですか?」
ヴェルンハルト殿下は、俺の言葉を鼻で笑うだけだった。だが、不意に真顔になり、ベッドに近づいてきた。
「おい、マテウス」
「はい、殿下」
「ルドルフと寝てないだろうな?」
「はい?まさか殿下・・私がルドルフおじさまに添い寝をせがむ、幼稚な精神の持ち主とお考えなのでは?ならば、その疑いはきっぱりと否定します!ふふ、残念でしたね、殿下。私は、立派に一人で眠れております。ぬいぐるみも、必要としません!」
「マテウスは馬鹿か!俺は添い寝の話などしていない。ルドルフと、閨を共にしてはいないだろうなと聞いている。理解したか、お馬鹿なマテウス?」
俺はポカンと口を開けて殿下を見た。だが、すぐに間抜け顔を引き締めて、俺ははっきりと返事した。
「ルドルフ様には、ペニスがありません。どうやって、閨を共にするのですか?意味不明な質問は、止めてもらえますか?それから、馬鹿呼ばわりは止めて下さい、殿下!」
ヴェルンハルト殿下は、じろじろと俺の顔を見た。そして、無言でベッドに座ると、殿下は唐突に、王弟殿下の話題を口にした。
「王弟殿下の、シュテフェン = フォーゲルとは面識はあるか、マテウス?」
俺は王弟殿下の子である、ヴォルフラムの姿を思い浮かべながら、殿下の問いに応じた。
「一度だけですが、シュテフェン殿下にお会いする機会を得ました。王城の薔薇の庭園をヴォルフラム様と共に、散策していた時の事です」
「仕事もせずに、ヴォルフラムと薔薇の庭園で楽しく散策か?給金を返納すべき事案だは」
「嫌味は止めて下さい、殿下。同僚のヴォルフラム様と、休息のために共に庭園の散策くらいは許されるの筈です。尤も、シュテフェン殿下は・・不細工な孕み子が、ヴォルフラム様を強引に誘惑していると勘違いされた様ですが」
「不細工な孕み子・・笑えるな」
「傷口に塩を塗らないで下さい」
ヴェルンハルト殿下は、自身の瞳を指差しながら意地悪な笑みを浮かべる。
「シュテフェンは、気味の悪い瞳をしていただろ、マテウス?」
「気味の悪い?いえ、シュテフェン殿下は、とても美しい瞳をされていましたよ?」
「美しい?」
「はい、美しかったです。ですが、挨拶の際に、殿下の瞳の色に触れた為に叱られました。挨拶のしきたりを知らぬと、王弟殿下に笑われました。ですが、挨拶のしきたりを知っていても、あの美しい瞳の前では・・瞳の色を、褒め称えずにはいられませんでした」
殿下は呆れた表情で俺を見てため息を付く。
「左右の瞳の色が違うのだぞ?」
「だから何です?」
「普通ではないものは、気持ち悪くて当然だろう?それに、まともに王弟殿下の瞳を見たものは、呪われるとの噂も耳にしたぞ?」
俺は意外な思いで殿下を見た。ヴェルンハルト殿下の性格ならば、世間の噂など鼻で笑って相手にしないと思っていたが・・違ったらしい。
「シュテフェン殿下は、虹彩異色症なのです。右虹彩がブルー、左虹彩がブラウン。さほど珍しい色合いでもありません。世界を探せば、さらに珍しく美しい瞳に出逢う筈です。ですが、シュテフェン殿下が、己の瞳の事で悩んでおいでなのに・・赤の他人の私が、瞳の色に触れて挨拶をすべきではありませんでした。マナー違反でした・・反省しています」
ヴェルンハルト殿下が、俺の話を聞きながらごろりとベッドに横になった。それを黙って許してしまう自分がいる。
この距離感はなに?いつの間に、私はこれ程に殿下に心を許したのだろう?
心が警鐘を鳴らす。
「マテウスは無知にも関わらず、奇妙なほど知識を有している。お前の存在も普通ではない。マテウスも・・かなり不気味だ」
ベッドに寝転がったまま、俺を不気味呼ばわりする殿下に、俺はうんざりしながらも会話の先を促した。殿下が唐突に、王弟殿下の話を切り出した理由が気になっていた。
「殿下、話が逸れています。王弟殿下が、どうかなさったのですか?」
◆◆◆◆◆◆
ヴェルンハルト殿下は、殺気を纏ったルドルフを鋭く睨み付けた。そして、低い声でルドルフに命令する。
「ルドルフ・・部屋から出ていけ」
「まだ診察中です、殿下」
うお、ルドルフおじさまが殺気を放ってる。宦官の医者になって、より凄みが増した。
そして、殿下の機嫌が急降下だ~!
「・・ルドルフ様、 ファビアン殿下の件で相談があるのですがよろしいですか?」
ルドルフが殺気を纏ったまま、俺に視線を移す。おじさま、殺気が垂れ流しです!
「どのような相談事でしょうか?」
「あの・・ファビアン殿下は、一階でおやつを食べている頃かと思います。最近は、殿下は邸に籠りがちで、言葉数も減りました。ルドルフ様には、ファビアン殿下の『言葉の先生』も兼任してもらいたいのです。お願いできますでしょうか?」
「それは命令でしょうか、マテウス様?」
「命令です、ルドルフ = シュナーベル」
「・・承知いたしました、マテウス様」
ルドルフは俺だけに頭を下げて、部屋を出ていった。俺たちのやり取りを見ていたヴェルンハルト殿下は、肩を竦めながら口を開いた。
「シュナーベル家の一族は、頭がおかしいらしいな。大して美しくもない孕み子の為に、右往左往して・・挙げ句に、ペニスを切って宦官の医者となり、マテウスに仕える奴まで出てくる始末。全く、シュナーベルの血脈は・・気味が悪い」
「殿下にも、その気味の悪いシュナーベルの血脈が、僅かですが流れておいでですよ?自分に対して、悪口を仰って楽しいですか?」
ヴェルンハルト殿下は、俺の言葉を鼻で笑うだけだった。だが、不意に真顔になり、ベッドに近づいてきた。
「おい、マテウス」
「はい、殿下」
「ルドルフと寝てないだろうな?」
「はい?まさか殿下・・私がルドルフおじさまに添い寝をせがむ、幼稚な精神の持ち主とお考えなのでは?ならば、その疑いはきっぱりと否定します!ふふ、残念でしたね、殿下。私は、立派に一人で眠れております。ぬいぐるみも、必要としません!」
「マテウスは馬鹿か!俺は添い寝の話などしていない。ルドルフと、閨を共にしてはいないだろうなと聞いている。理解したか、お馬鹿なマテウス?」
俺はポカンと口を開けて殿下を見た。だが、すぐに間抜け顔を引き締めて、俺ははっきりと返事した。
「ルドルフ様には、ペニスがありません。どうやって、閨を共にするのですか?意味不明な質問は、止めてもらえますか?それから、馬鹿呼ばわりは止めて下さい、殿下!」
ヴェルンハルト殿下は、じろじろと俺の顔を見た。そして、無言でベッドに座ると、殿下は唐突に、王弟殿下の話題を口にした。
「王弟殿下の、シュテフェン = フォーゲルとは面識はあるか、マテウス?」
俺は王弟殿下の子である、ヴォルフラムの姿を思い浮かべながら、殿下の問いに応じた。
「一度だけですが、シュテフェン殿下にお会いする機会を得ました。王城の薔薇の庭園をヴォルフラム様と共に、散策していた時の事です」
「仕事もせずに、ヴォルフラムと薔薇の庭園で楽しく散策か?給金を返納すべき事案だは」
「嫌味は止めて下さい、殿下。同僚のヴォルフラム様と、休息のために共に庭園の散策くらいは許されるの筈です。尤も、シュテフェン殿下は・・不細工な孕み子が、ヴォルフラム様を強引に誘惑していると勘違いされた様ですが」
「不細工な孕み子・・笑えるな」
「傷口に塩を塗らないで下さい」
ヴェルンハルト殿下は、自身の瞳を指差しながら意地悪な笑みを浮かべる。
「シュテフェンは、気味の悪い瞳をしていただろ、マテウス?」
「気味の悪い?いえ、シュテフェン殿下は、とても美しい瞳をされていましたよ?」
「美しい?」
「はい、美しかったです。ですが、挨拶の際に、殿下の瞳の色に触れた為に叱られました。挨拶のしきたりを知らぬと、王弟殿下に笑われました。ですが、挨拶のしきたりを知っていても、あの美しい瞳の前では・・瞳の色を、褒め称えずにはいられませんでした」
殿下は呆れた表情で俺を見てため息を付く。
「左右の瞳の色が違うのだぞ?」
「だから何です?」
「普通ではないものは、気持ち悪くて当然だろう?それに、まともに王弟殿下の瞳を見たものは、呪われるとの噂も耳にしたぞ?」
俺は意外な思いで殿下を見た。ヴェルンハルト殿下の性格ならば、世間の噂など鼻で笑って相手にしないと思っていたが・・違ったらしい。
「シュテフェン殿下は、虹彩異色症なのです。右虹彩がブルー、左虹彩がブラウン。さほど珍しい色合いでもありません。世界を探せば、さらに珍しく美しい瞳に出逢う筈です。ですが、シュテフェン殿下が、己の瞳の事で悩んでおいでなのに・・赤の他人の私が、瞳の色に触れて挨拶をすべきではありませんでした。マナー違反でした・・反省しています」
ヴェルンハルト殿下が、俺の話を聞きながらごろりとベッドに横になった。それを黙って許してしまう自分がいる。
この距離感はなに?いつの間に、私はこれ程に殿下に心を許したのだろう?
心が警鐘を鳴らす。
「マテウスは無知にも関わらず、奇妙なほど知識を有している。お前の存在も普通ではない。マテウスも・・かなり不気味だ」
ベッドに寝転がったまま、俺を不気味呼ばわりする殿下に、俺はうんざりしながらも会話の先を促した。殿下が唐突に、王弟殿下の話を切り出した理由が気になっていた。
「殿下、話が逸れています。王弟殿下が、どうかなさったのですか?」
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