嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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第四章

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◆◆◆◆◆◆



ルドルフは、少し困り顔になりながらも答えてくれた。

「そうかもしれないね。グンナー様には相手にもされなかったが・・想いを絶ちきる事はできなかった。良い人が現れたと思っても、ついグンナー様と比べてしまう。その事を後ろめたく思っている内に、新しい恋は終わりを迎える。それの繰り返しだよ。情けないけれどね」

「ルドルフおじさま・・」

「マテウス様。私は今回の件で、自身の葛藤に終止符を打つことが出来ました。私は、宦官の医者になったことに何の後悔もありません。グンナー様のお子であるマテウス様に、堂々と関われてその成長を見守れるのですから」

「おじさま~」

俺の目にはいつの間にか涙が滲んでいた。そして、俺は自身の想いを吐き出していた。

「ルドルフ様。孕んだ子は、ヘクトール兄上のお子です。でも、信じて貰えない事も覚悟しています。それでも・・私は、この子は産みます。産みたいのです、ルドルフ様」

「マテウス様の心配は、不要だと思いますよ?ヘクトール様は、王都の邸にも、シュナーベル家の領地の屋敷にも、既に子供部屋を作られたそうですよ?しかも、壁紙のデザインに迷い、既に五回も張り替えておられるとか」

「壁紙を五回も!愛情を感じて嬉しいのですが、王城のお仕事に支障は出ていないでしょうか・・心配です」

「心配はありませんよ、マテウス様。お父上が亡くなられて、そう時は経過してはいませんが、立派にシュナーベル家の現当主として、領地を治めておいでですよ」

「そうでした・・兄上は、シュナーベル家の現当主でしたね。父上が亡くなり・・」

俺は目をゆっくりと瞑った。兄上は着実に、処刑実行の為に動いてる。計画内容は分からないけれど・・確実に時は進んでいる。


◇◇◇


不意に、自室の扉近くに控えていた、邸の使用人が俺に声を掛けてきた。

「マテウス様、お話し中失礼いたします。王太子殿下が、邸にお越しになられました」

俺はゆっくりと目を開き、自室の扉に目をやった。扉が無造作に開かれて、ヴェルンハルト殿下が現れた。

診察中に殿下が来た場合には、お茶菓子でもてなして待って貰うよう、使用人に指示をだしている。だが、無理みたい。毎回、殿下は遠慮なく扉を開き入ってくる。

「ヴェルンハルト殿下、こんにちは」

「おう、マテウス。腹を見せろ。少しはでかくなったか?俺の子の様子を見てやる。俺に腹を揉ませろ」

いきなりのセクハラ発言に、俺は思わず顔をひきつらせた。いい加減に、嫌がらせは止めて欲しい。

「何度も申し上げていますが、私が孕んでいる子は殿下の子ではありません。ヘクトール兄上のお子です。妙な噂が広まると困るので、訂正してください」

「マテウスは相変わらず馬鹿だな。後宮の孕み子が孕めば、当然俺の子とみなされる。まあ、お前の場合は、誰の子を孕んでいるのかを巡り、王城では賭けの対象になっているがな」

「賭けの対象!?殿下、今すぐに賭けを取り締まって下さい。ヘクトール兄上が、晒し者ではないですか!」

俺が語気を強めると、殿下はにやつきながら返事をした。

「娯楽の少ない王城に、卑猥な楽しみを提供したものだな、マテウス?とりあえず、取り締まりはなしだ。俺も大金を賭けたから、取り締まれる立場にはない」

「何をやっているのですか、殿下・・」

「単なる暇潰しだ。だが、賭けには勝ちたい。俺の子に大金を投じたからには、マテウスには意地でも俺に似た子を産んでもらう!」

「そんな無茶な!?」

「安心しろ、マテウス。秘策がある!側近の故郷では、我が子によく似た子が生まれる様にと、腹を揉み祈る習わしがあるそうだ。実際、その習わしを行った側近親子は、筋肉のつき方がそっくりだった!顔は似ていないが、尻の形など、まさに瓜二つ。筋肉の質感もそっくりだった!故に、この習わしには、一定の効果が認められると判断した。腹を揉ませろ、マテウス!」

いや、待って!殿下は、ムキムキ側近の父親とも寝たのか?親子丼なんて、殿下はなんて節操のない人なんだ。しかも、殿下は顔付きより、筋肉のムキムキ具合と質感で、抱く相手を決めている疑惑が出てきたぞ。

「で、殿下。その習わしの効果は、不完全かとおもわれます。顔付きが似ず、臀部が似ているだけでは賭けには負けます。とにかく、私のお腹をモミモミするのはお止めください。ルドルフ様、医者の立場からも・・援護射撃お願いします」

俺は、主治医のルドルフに助けを求めた。

「王太子殿下。マテウス様は、今とても大切な時期なのです。ほんの少しの刺激でも、子宮を刺激して・・収縮を起こしかねません。赤子を危険に晒すような真似は、絶対にお止めください。マテウス様の体に、むやみに触れることも止めて下さい。これは、主治医としての警告です・・ヴェルンハルト殿下」

「ひぃ、おじさま!」

ルドルフが、完全に処刑人の顔付きになっていた。宦官の医者だよね、おじさま?


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