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第四章
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◆◆◆◆◆◆
アルミンとヴォルフラム様の、アソコの事情について思いを巡らせていると、ルドルフ様に声を掛けられた。
「・・マテウス様。ヘクトール様の事は、お聞きにならないのですか?」
俺はドキリとして、ルドルフを見た。ヘクトール兄上の事なら何だって知りたい。どんな小さな事だって知りたい。
「私は・・」
だけど、子を孕んでから・・兄上の話題に触れることが、何故か怖くなってしまった。俺はさほど大きくもないお腹を撫でながら、ヘクトール兄上の話題を探した。そして、思い付いた。
「そうでした、ルドルフ様!ヘクトール兄上に、伝言をお願いできますか?」
「もちろん構いませんよ、マテウス様。それで、伝言の内容はどの様なものですか?」
「えーと、それでは・・次のようにお伝えいただけますか?『ヘクトール兄上の最近のお手紙は、謝罪の言葉ばかりなので・・少し気になっておりました。アルミンが例の件を『レーズンチーズケーキ事件』と名付けて、今でも大騒ぎしていると聞きました。兄上は、アルミンの性格をご存知でしょ?アルミンは大袈裟に言っているだけなので、無視なさって下さい。マテウスは、とても元気に過ごしています。兄上、次からは謝罪の言葉よりも、可愛い押し花をマテウスに下さい、あにうえ』・・以上です、ルドルフ様」
とっても甘い伝言になってしまった。俺は恥ずかしくなり、顔を赤らめながらルドルフを見た。だが、ルドルフは苦い顔をしたまま、俺に頭を下げた。
「承知しました、マテウス様。ヘクトール様に必ずお伝えします。しかし、あの時は本当に申し訳なかったね。つわりの症状だと気がつくのに、しばらく掛かってしまった。医師として情けなく、恥ずかしい限りだよ、マテウス様」
「ルドルフ様は、正しく処置して下さいましたよ?ルドルフ様に謝られると、マテウスは困ってしまいます」
俺が頭を下げたルドルフに、あわてて声を掛けた。ルドルフ様を責める為に、この話題を出した訳ではないので焦ってしまった。
そんな俺の気持ちを察したのか、ルドルフは優しく微笑んで顔を上げた。
「・・『レーズンチーズケーキ事件』か。ヘクトール様には悪いけれど、あれは確かに事件レベルの出来事だったね、マテウス様。ヘクトール様からの差し入れの、レーズンチーズケーキを食べたマテウス様が、激しく嘔吐して胃液まで吐いた時には・・ヘクトール様が、遂にマテウス様に毒を盛ったのかと、本気で疑ってしまったぐらいだからね」
俺も思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「私も同様です、ルドルフ様。大好物のレーズンチーズケーキを一口含んだ時に、兄上に毒を盛られたと思いましたから!すぐに吐き出したのに、口内に広がるチーズケーキの臭気にやられました。しかも、嘔吐は止まらないし、死ぬかも知れないと思いましたもの!あれで、二週間も寝込む事になるなんて、本当に信じられません。レーズンチーズケーキの味を、あれほど不味くできるなんて!つわり、恐るべしです」
ルドルフは俺の言葉に、笑みを浮かべた。
「つわりの時期が終われば、また食べられる様になりますよ、マテウス様」
「それを聞き安心しました」
「伝言はお伝えします。ところで、これは提案なのですが・・ヘクトール様には、『レーズンチーズケーキ事件』の顛末を、正直に手紙にお書きになってはいかがでしょうか?その後、マテウス様が、健やかに過ごしておられる様子も手紙で伝えたならば・・ヘクトール様は、安堵される筈ですよ?」
「兄上とは、頻繁に手紙のやり取りをしております。でも、つわりの話題は・・あえて避けていました。当然、『レーズンチーズケーキ事件』の事も。兄上に、心配を掛けたくなかったのです」
「気にしている話題を、故意に避けられる事は辛いものですよ、マテウス様?差し入れのレーズンチーズケーキを食べて、マテウス様が二週間も寝込んだと聞き・・ヘクトール様は、絶望的表情を浮かべて、床に崩れ落ちたそうです。まあ、アルミン経由の話ですから、大袈裟に表現している可能性もありますが・・」
「うあぁ、兄上~。わかりました。ヘクトール兄上に、つわりの件も手紙で書きます。つわりが一時的な事も。つわりが終わったら、またケーキの差し入れが欲しいとも書いておきます」
「そうされると良いと思います」
「ところで、ルドルフ様。私は、かなりの頻繁で兄上に手紙を書いています。ですが、それが原因で・・兄上に鬱陶しいと思われていないか心配なのです」
俺の悩み相談に、ルドルフは苦笑いを浮かべた。
「独身のまま宦官の医師となった者に、恋の相談は不向きだと思いますよ、マテウス様。ですが、そうですね。ずいぶんと昔ですが、一度だけ・・グンナー様から手紙を頂きました。その事が、とても嬉しかった記憶があります」
俺はその言葉を聞き、少しうつむいた。
「マテウス様?」
「ルドルフ様が、独身のまま宦官の医者となったのは・・私とカールの産みの親のグンナーを、今でも愛していらっしゃるからですか?」
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アルミンとヴォルフラム様の、アソコの事情について思いを巡らせていると、ルドルフ様に声を掛けられた。
「・・マテウス様。ヘクトール様の事は、お聞きにならないのですか?」
俺はドキリとして、ルドルフを見た。ヘクトール兄上の事なら何だって知りたい。どんな小さな事だって知りたい。
「私は・・」
だけど、子を孕んでから・・兄上の話題に触れることが、何故か怖くなってしまった。俺はさほど大きくもないお腹を撫でながら、ヘクトール兄上の話題を探した。そして、思い付いた。
「そうでした、ルドルフ様!ヘクトール兄上に、伝言をお願いできますか?」
「もちろん構いませんよ、マテウス様。それで、伝言の内容はどの様なものですか?」
「えーと、それでは・・次のようにお伝えいただけますか?『ヘクトール兄上の最近のお手紙は、謝罪の言葉ばかりなので・・少し気になっておりました。アルミンが例の件を『レーズンチーズケーキ事件』と名付けて、今でも大騒ぎしていると聞きました。兄上は、アルミンの性格をご存知でしょ?アルミンは大袈裟に言っているだけなので、無視なさって下さい。マテウスは、とても元気に過ごしています。兄上、次からは謝罪の言葉よりも、可愛い押し花をマテウスに下さい、あにうえ』・・以上です、ルドルフ様」
とっても甘い伝言になってしまった。俺は恥ずかしくなり、顔を赤らめながらルドルフを見た。だが、ルドルフは苦い顔をしたまま、俺に頭を下げた。
「承知しました、マテウス様。ヘクトール様に必ずお伝えします。しかし、あの時は本当に申し訳なかったね。つわりの症状だと気がつくのに、しばらく掛かってしまった。医師として情けなく、恥ずかしい限りだよ、マテウス様」
「ルドルフ様は、正しく処置して下さいましたよ?ルドルフ様に謝られると、マテウスは困ってしまいます」
俺が頭を下げたルドルフに、あわてて声を掛けた。ルドルフ様を責める為に、この話題を出した訳ではないので焦ってしまった。
そんな俺の気持ちを察したのか、ルドルフは優しく微笑んで顔を上げた。
「・・『レーズンチーズケーキ事件』か。ヘクトール様には悪いけれど、あれは確かに事件レベルの出来事だったね、マテウス様。ヘクトール様からの差し入れの、レーズンチーズケーキを食べたマテウス様が、激しく嘔吐して胃液まで吐いた時には・・ヘクトール様が、遂にマテウス様に毒を盛ったのかと、本気で疑ってしまったぐらいだからね」
俺も思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「私も同様です、ルドルフ様。大好物のレーズンチーズケーキを一口含んだ時に、兄上に毒を盛られたと思いましたから!すぐに吐き出したのに、口内に広がるチーズケーキの臭気にやられました。しかも、嘔吐は止まらないし、死ぬかも知れないと思いましたもの!あれで、二週間も寝込む事になるなんて、本当に信じられません。レーズンチーズケーキの味を、あれほど不味くできるなんて!つわり、恐るべしです」
ルドルフは俺の言葉に、笑みを浮かべた。
「つわりの時期が終われば、また食べられる様になりますよ、マテウス様」
「それを聞き安心しました」
「伝言はお伝えします。ところで、これは提案なのですが・・ヘクトール様には、『レーズンチーズケーキ事件』の顛末を、正直に手紙にお書きになってはいかがでしょうか?その後、マテウス様が、健やかに過ごしておられる様子も手紙で伝えたならば・・ヘクトール様は、安堵される筈ですよ?」
「兄上とは、頻繁に手紙のやり取りをしております。でも、つわりの話題は・・あえて避けていました。当然、『レーズンチーズケーキ事件』の事も。兄上に、心配を掛けたくなかったのです」
「気にしている話題を、故意に避けられる事は辛いものですよ、マテウス様?差し入れのレーズンチーズケーキを食べて、マテウス様が二週間も寝込んだと聞き・・ヘクトール様は、絶望的表情を浮かべて、床に崩れ落ちたそうです。まあ、アルミン経由の話ですから、大袈裟に表現している可能性もありますが・・」
「うあぁ、兄上~。わかりました。ヘクトール兄上に、つわりの件も手紙で書きます。つわりが一時的な事も。つわりが終わったら、またケーキの差し入れが欲しいとも書いておきます」
「そうされると良いと思います」
「ところで、ルドルフ様。私は、かなりの頻繁で兄上に手紙を書いています。ですが、それが原因で・・兄上に鬱陶しいと思われていないか心配なのです」
俺の悩み相談に、ルドルフは苦笑いを浮かべた。
「独身のまま宦官の医師となった者に、恋の相談は不向きだと思いますよ、マテウス様。ですが、そうですね。ずいぶんと昔ですが、一度だけ・・グンナー様から手紙を頂きました。その事が、とても嬉しかった記憶があります」
俺はその言葉を聞き、少しうつむいた。
「マテウス様?」
「ルドルフ様が、独身のまま宦官の医者となったのは・・私とカールの産みの親のグンナーを、今でも愛していらっしゃるからですか?」
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