嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

第四章

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俺は後宮からの脱出方法を考えながら、殿下への質問を繰り返した。

「殿下は親友は不要とお考えですか？」

「そうでもないぞ？国王ともなれば、付き合いたくも無い奴等に囲まれて・・一生を過ごす事になる。ならば、俺の傍に友と呼べる者を、一人は置きたいと思うのは普通のことだろ？」

殿下がマトモな発言をしている！殿下がマトモなのか、イカれているのか・・判断に困る。

「殿下は国王に・・なれますか？」

「なんだ、その質問は？俺には、国王になる資質は無いとでも言いたいのか、マテウス？」

「申し訳ありません、殿下。言い換えますね。殿下は、国王になりたいですか？」

「マテウス、決まりきった質問をするな。俺は、国王になりたい。陛下の唯一の子が俺だ。陛下に疎まれ、何度も危機はあった。だが、俺は生き延びた。これは、唯一神が俺を国王にと、望んでいらっしゃるからではないのか？ならば、俺は国王になるしかないだろ？」

原作通りならば、殿下は国王にはなれない。だが、どうなのかな？既に筋書きからは、かなりズレが生じている。未来はもはや読めない。

「国王になられた暁には、殿下は先ずは何に着手されますか？」

殿下は天井を見たまま、ニヤリと嗤った。

「先ずは復讐。そして、産みの親の名誉回復」
「誰に復讐するのですか？」

「決まっているだろ？俺を今まで、蔑ろにしてきた者達全てに復讐する。陛下に媚びへつらっていた奴等は、財産を没収して全員王城から追い出してやる。路頭に迷い死ぬといい。後は、産みの親の処刑に関わったもの達を粛清する」

俺はその言葉にびくりと震えた。それを感じ取ったヴェルンハルトが、軽く笑う。

「安心しろ、マテウス。シュナーベル家は、王家の命に従い、俺の産みの親を火刑にしただけだろ？それが、お前たちの仕事なのだから、罪には問えない・・たとえ、憎かろうとな。俺の狙いは、産みの親を魔女扱いした連中だ。魔物との通姦罪など馬鹿げている。俺は産みの親の名誉を回復する・・己の為にな」

「ヴェルンハルト殿下・・」

「俺の産みの親は、熱心なフォルカー教信者だった。だが、火刑に処され墓もない。息子を国王とするために、産みの親は魔物と契った魔女とされた為だ。処刑され随分経つが、俺が国王となれば、亡くなった産みの親の件は、再び注目される筈だ。新王の産みの親が、魔女扱いで処刑されたとあっては、俺の地位がぐらつく。その前に、産みの親の名誉を回復させる」

俺は殿下の中に存在する、矛盾を指摘する事にした。しかし、後宮からの脱出方法ところか、ベッドから抜け出す方法も思い付かない。どうしよう・・

「殿下は国王となる事を、真から望んでいらっしゃるのですね？その一方で、殿下はこのようなゲームを私に仕掛けています。この行為が、シュナーベル家の反感を招く事は、分かっているはずです。殿下の行動は矛盾だらけです。国王になりたいと願いながら、国王になる道を困難にされています。まるで子供ですね、殿下は？」

「子供ねえ？なるほど。俺にはマトモな子供時代が無かったから、その反動かもな？」

「真面目に答えて下さい、殿下！自らの足元を危うくしてまで、シュナーベル家に悪意の種を撒き散らすのは、何故ですか？いえ、我が家だけではありませんね？殿下はあらゆる場所に、悪意の種を撒き散らし・・大輪の花が咲くのを待っていらっしゃいます。明らかに、殿下の行動には矛盾が生じていますよ、ヴェルンハルト殿下」

殿下が不意に横を向いて、俺の顔を覗き込んできた。そして、質問は終了だと告げてきた。

「マテウス。質問の内容が、ゲームから外れすぎだ。時間稼ぎは止めて結論を出せ。まあ、お前が拒絶しても・・ゲームは実行するがな」

俺は息を思いっきり吐き出した。そして、互いに視線を絡ませたまま、俺は口を開いた。

「このゲームは、公平ではありません。何故なら、ゲーム開始前から・・私の勝利が、既に確定しているからです。結論の明らかなゲームなど、殿下にとっては不服でしょ？殿下、ゲームを取り止めになさって下さい。確かに、ゲームの褒美は・・魅力的です。ですが、私は殿下を騙してまで、ゲームに勝利するつもりはありません」

ヴェルンハルト殿下の表情が険しくなる。鋭い瞳が俺の視線を絡みとる。

「説明不足だ、マテウス」

殿下は言葉少なく、更なる説明を求めてきた。明らかに苛立ちが現れている。それでも、俺は勇気を出して詳しい説明を始めた。

「申し訳ございません、殿下。詳しく説明しますね。殿下の仕掛けたゲームでは、私が子を孕むかどうかで、勝敗が決まります。そうですよね、ヴェルンハルト殿下？」

「ああ、そうだ」

「ですが、私はすでに、兄上の子を孕んでおります。殿下とのセックスの有無に関係なく、私は孕むのです。そして、私やシュナーベル家は利益を得ます。殿下は不利益だけを得ます。ですので、このゲームは公平ではありません。ですから、このゲームは取りやめとしましょう、ヴェルンハルト殿下」

「『カール』は孕んでいるとは、一言も言っていなかったぞ？」

「おそらく『カール』は、わざと黙っていたのだと思います。殿下に無理矢理セックスを強要されるのなら、利益だけでも確保したいと思うのは当然の事でしょ？」

ヴェルンハルト殿下が、俺の心を探るように見つめてくる。俺は真面目な顔で見つめ返した。体が震えそうになるのを、必死に押さえ込む。

「何ヵ月だ？」
「はい？」

「孕んで何ヵ月になる？当然、医師の診断は受けたのだろ？何ヵ月だ、マテウス？」




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