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第四章
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◆◆◆◆◆◆
ヴェルンハルト殿下が目を細めて、俺の表情を伺う。俺は何も言わずに時を待つ。
「どうも・・様子がおかしいな?『カール』と叫びながら目を覚ましながら、お前は全く『カール』の事について触れない。まるで、『カール』の事を、忘れてしまったかのようにさえ思える。お前にとって、別人格の『カール』は、その程度の存在なのか?」
俺は殿下から『カール』の名を聞かされて、頭をガツリと殴られた気がした。そうだった。俺はカールの悲鳴を聞いて、『カール』と人格を無理やり交代した。
なのに、『カール』の存在を殿下に指摘されるまで、思い出せなかった。手が汗でじっとりと濡れる。俺は胸に手を当てて、思わず声に出してカールの存在を確認していた。
「『カール』、私の声が聞こえる?」
でも、『カール』からの返事はなかった。
まさか、別人格の『カール』を抑え込んで、私が無理やり表に出た為に・・『カール』が消えたなんて事はないよね?
「ふん、随分と動揺しているじゃないか、マテウス。『カール』からの返事がないのか?」
「・・殿下には関係の無いことです」
『カール』は幼い頃から、ずっと私の中に存在していた。だから、そう簡単に消える筈がない。そう信じるしかない。
「親友のカールの名が付く別人格だ。その存在の有無が気にかかっても不思議は無いだろ?」
「私の別人格の『カール』と、弟のカールを混同しないで下さい。それに、カールの殺害を臣下に命じた殿下が・・いまだに、カールの親友を名乗るのですか?今の殿下の親友は、建前上は・・この私、マテウスです」
ごめんね、『カール』。今は時間がないから、会いに行く事は出来ない。でも待っていて、カール。必ずあの灰色の世界に逢いに行くから。
「声が震えているぞ、マテウス?」
「気のせいです、殿下」
俺の声は僅かに震えていたようだ。それを感じ取った殿下が、不意に笑いだした。笑い終わった後も、殿下は笑みを浮かべながら口を開いた。
「なるほど・・『カール』が言っていた通りのようだな。俺はマテウスに、再度ゲームの内容を詳しく説明しなくてはならないようだ。しかし、本当にマテウスには、別人格が存在していたわけか。しかも、その別人格に『カール』と名付ける辺りが・・本当に、たちが悪い。お前は明らかに性格が歪んでいるな、マテウス」
俺は自然と殿下を睨み付けていた。
だけど、今は殿下と言い合いをしている場合ではない。まだ、後宮の門限の鐘は、鳴っていない筈だ。とにかく、門限の前にファビアン殿下を探し出さないと。そして、一緒に後宮を出よう。
二人を探し出した後で・・ファビアン殿下と、『カール』に謝ろう。
「私は殿下と・・ゲームなど、するつもりはございません。どうせ、厄介なゲームなのでしょ?私の性格が歪んでいるならば、殿下の性格は捻れて歪んでいますから。ところで、私を収納家具から出して下さったのは・・殿下でしょうか?」
「ああ、そうだ」
「そうでしたか!殿下には、心より感謝いたします。しかし、その後に、ベッドに寝かせて覆い被さる事は、誤解を招きますので・・止めた方がよいですよ、殿下?無駄に顔が良い殿下がそれをしては、孕み子は皆勘違いしますから。さて、殿下。私をそろそろ解放してください。今は、ファビアン殿下の事が、とても心配なのです。私は今すぐに、殿下を探しに行きたいです、ヴェルンハルト殿下」
くっ・・殿下に媚びるつもりが、できなかった。どうして、俺の性格はこうも頑固なんだ!
「お前を収納家具に閉じ込めたのは、ファビアンだぞ?何故、奴を心配する必要がある?」
俺は唇を噛み締めて、殿下の問いに応じた。
「私は・・ファビアン殿下を、ひどく傷付けました。殿下に収納家具に閉じ込められても、当然の行為をしてしまったのです。今は、ヴェルンハルト殿下が、私の『カール』を虐めた件に関しては、触れずにおきます。ですから、どうか私を今すぐに、解放してください」
王太子殿下が柔らかく微笑んだ。
殿下のこの笑顔は、要注意の笑顔だ。俺はようやく、危機感を抱き始めていた。灰色の世界に、長く居すぎたせいかもしれない。
警戒心が、あまりにも鈍っていた。
「ファビアンの事は放っておけ。心配はない。それよりも、マテウスは己の心配をするべきだな。今から、ゲームの内容を話す。マテウスは口を挟まず最後まで聞け。質問は、その後に聞く。いいな、マテウス?」
「殿下!」
ヴェルンハルト殿下が、俺の体を更に拘束した。俺はベッドから逃れようもなく、ただ黙って殿下の話を聞くしか術はなかった。
◇◇◇
ベッドに横たわったまま、黙ってヴェルンハルト殿下の話を聞いていた。殿下を刺激しないように、大人しく耳を傾けていたが、かなり忍耐が必要だった。
殿下が俺に仕掛けたゲームの内容は、実に殿下の発想らしく、迷惑極まりないものだった。とにかく、こんなゲームには乗れない。早々に断ろう。
「マテウス!」
「はい?」
「やはり、ぼんやりとしていたな。さて、説明は終えた。ゲームを始めるぞ、マテウス?」
「えっ!?」
「服を自分で脱ぐ気がないのか?俺に脱がされたいのか?余計な手間を掛けさせる奴だな」
俺の服を脱がしに掛かる殿下に、俺は抵抗をした。殿下が不服そうな顔をしたが、簡単にヤられてたまるか!
◆◆◆◆◆◆
ヴェルンハルト殿下が目を細めて、俺の表情を伺う。俺は何も言わずに時を待つ。
「どうも・・様子がおかしいな?『カール』と叫びながら目を覚ましながら、お前は全く『カール』の事について触れない。まるで、『カール』の事を、忘れてしまったかのようにさえ思える。お前にとって、別人格の『カール』は、その程度の存在なのか?」
俺は殿下から『カール』の名を聞かされて、頭をガツリと殴られた気がした。そうだった。俺はカールの悲鳴を聞いて、『カール』と人格を無理やり交代した。
なのに、『カール』の存在を殿下に指摘されるまで、思い出せなかった。手が汗でじっとりと濡れる。俺は胸に手を当てて、思わず声に出してカールの存在を確認していた。
「『カール』、私の声が聞こえる?」
でも、『カール』からの返事はなかった。
まさか、別人格の『カール』を抑え込んで、私が無理やり表に出た為に・・『カール』が消えたなんて事はないよね?
「ふん、随分と動揺しているじゃないか、マテウス。『カール』からの返事がないのか?」
「・・殿下には関係の無いことです」
『カール』は幼い頃から、ずっと私の中に存在していた。だから、そう簡単に消える筈がない。そう信じるしかない。
「親友のカールの名が付く別人格だ。その存在の有無が気にかかっても不思議は無いだろ?」
「私の別人格の『カール』と、弟のカールを混同しないで下さい。それに、カールの殺害を臣下に命じた殿下が・・いまだに、カールの親友を名乗るのですか?今の殿下の親友は、建前上は・・この私、マテウスです」
ごめんね、『カール』。今は時間がないから、会いに行く事は出来ない。でも待っていて、カール。必ずあの灰色の世界に逢いに行くから。
「声が震えているぞ、マテウス?」
「気のせいです、殿下」
俺の声は僅かに震えていたようだ。それを感じ取った殿下が、不意に笑いだした。笑い終わった後も、殿下は笑みを浮かべながら口を開いた。
「なるほど・・『カール』が言っていた通りのようだな。俺はマテウスに、再度ゲームの内容を詳しく説明しなくてはならないようだ。しかし、本当にマテウスには、別人格が存在していたわけか。しかも、その別人格に『カール』と名付ける辺りが・・本当に、たちが悪い。お前は明らかに性格が歪んでいるな、マテウス」
俺は自然と殿下を睨み付けていた。
だけど、今は殿下と言い合いをしている場合ではない。まだ、後宮の門限の鐘は、鳴っていない筈だ。とにかく、門限の前にファビアン殿下を探し出さないと。そして、一緒に後宮を出よう。
二人を探し出した後で・・ファビアン殿下と、『カール』に謝ろう。
「私は殿下と・・ゲームなど、するつもりはございません。どうせ、厄介なゲームなのでしょ?私の性格が歪んでいるならば、殿下の性格は捻れて歪んでいますから。ところで、私を収納家具から出して下さったのは・・殿下でしょうか?」
「ああ、そうだ」
「そうでしたか!殿下には、心より感謝いたします。しかし、その後に、ベッドに寝かせて覆い被さる事は、誤解を招きますので・・止めた方がよいですよ、殿下?無駄に顔が良い殿下がそれをしては、孕み子は皆勘違いしますから。さて、殿下。私をそろそろ解放してください。今は、ファビアン殿下の事が、とても心配なのです。私は今すぐに、殿下を探しに行きたいです、ヴェルンハルト殿下」
くっ・・殿下に媚びるつもりが、できなかった。どうして、俺の性格はこうも頑固なんだ!
「お前を収納家具に閉じ込めたのは、ファビアンだぞ?何故、奴を心配する必要がある?」
俺は唇を噛み締めて、殿下の問いに応じた。
「私は・・ファビアン殿下を、ひどく傷付けました。殿下に収納家具に閉じ込められても、当然の行為をしてしまったのです。今は、ヴェルンハルト殿下が、私の『カール』を虐めた件に関しては、触れずにおきます。ですから、どうか私を今すぐに、解放してください」
王太子殿下が柔らかく微笑んだ。
殿下のこの笑顔は、要注意の笑顔だ。俺はようやく、危機感を抱き始めていた。灰色の世界に、長く居すぎたせいかもしれない。
警戒心が、あまりにも鈍っていた。
「ファビアンの事は放っておけ。心配はない。それよりも、マテウスは己の心配をするべきだな。今から、ゲームの内容を話す。マテウスは口を挟まず最後まで聞け。質問は、その後に聞く。いいな、マテウス?」
「殿下!」
ヴェルンハルト殿下が、俺の体を更に拘束した。俺はベッドから逃れようもなく、ただ黙って殿下の話を聞くしか術はなかった。
◇◇◇
ベッドに横たわったまま、黙ってヴェルンハルト殿下の話を聞いていた。殿下を刺激しないように、大人しく耳を傾けていたが、かなり忍耐が必要だった。
殿下が俺に仕掛けたゲームの内容は、実に殿下の発想らしく、迷惑極まりないものだった。とにかく、こんなゲームには乗れない。早々に断ろう。
「マテウス!」
「はい?」
「やはり、ぼんやりとしていたな。さて、説明は終えた。ゲームを始めるぞ、マテウス?」
「えっ!?」
「服を自分で脱ぐ気がないのか?俺に脱がされたいのか?余計な手間を掛けさせる奴だな」
俺の服を脱がしに掛かる殿下に、俺は抵抗をした。殿下が不服そうな顔をしたが、簡単にヤられてたまるか!
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