嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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第四章

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◆◆◆◆◆◆


『サド殿下の側室になりたい説』を、俺がきっぱりと否定すると、アルミンは更に奇妙な事を言い出した。

「じゃあ、マテウスの、その異常なテンションはナニ?後宮とは、殿下と側室がナニをするだけの・・実につまらない場所だぞ?ん?あっ!もしや、マテウスは、殿下と側室のナニを想像して・・興奮しているのか?そうなのか、マテウス!?そして、そんなマテウスの姿に興奮してきた俺は・・庭園の隅で、ナニをしてきても良いだろうか?」

俺はアルミンの足を蹴り飛ばした。

「変態のアルミンは黙りなさい!あのね、最初に言ったと思うけど・・私は純粋に、後宮に広がる景色を楽しみたいの!『セント・メアリ・ミード村』を散策したいだけ。ずっと、散策したいと憧れていたから、少し興奮してしまいました・・反省しています」

「ふむ?俺は全く、後宮の景色なんかに興味はないがなぁ?」

「アルミンも後宮の歴史を知れば、興味が沸くはずだよ!後宮は元々は、フォーゲル王国の初代王の正妃が、子供達と過ごす為に作った架空の田舎町『セント・メアリ・ミード村』がその始まりなんだよ?初代王妃が作った、美しい架空の田舎町を、現在でも散策できるなんて・・ロマンを感じるでしょ?あれ?もしかして、アルミンは『セント・メアリ・ミード村』の存在を知らなかった?」

俺の言葉にアルミンが肩を竦める。そして、嫌味な口調で話し出した。

「知ってるつーの。初代王の正妃が、王国民から搾取した税金で、王城内に作り上げた悪名高き田舎町『セント・メアリ・ミード村』だろ?今は後宮として、再利用されているが・・王家の贅沢な散財の象徴として、度々批難の的になっているからな。フォーゲル王国民なら、知らない奴はいないだろう。なあ、『セント・メアリ・ミード村』の年間維持費がいくらか知っているか、マテウス?」

アルミンが『セント・メアリ・ミード村』に対して攻撃的だ。俺は少しムッとなった。

「アルミン・・美しいものを維持する為には、お金が掛かるものなの!芸術とは、善悪が表裏一体で存在しているからこそ美しいの!もしも、『セント・メアリ・ミード村』の取り壊しの動きがあれば、私は真っ先に反対運動に参加するからね、アルミン。その時には・・アルミンには、私の影となり裏工作に暗躍してもらうから!」

「なんでだよ!嫌すぎる!」
「反論は許しませ~ん!」

『セント・メアリ・ミード村』は、俺の前世が確かに存在した証。同時に、俺がもうひとつの人生を生きた証。大切にしたい。

「あぁ、早く『セント・メアリ・ミード村』を散策したい!あ、もちろん、ファビアン殿下が心配だから、後宮に行くわけで・・後宮見学が、目的ではないからね!か、勘違いしないでよね、アルミン!」

「ちょっと待て、マテウス!やはり、マテウスには護衛が必要だ。ファビアン殿下の迎えは、後宮の者に任せれば事は済む」

「でも、ファビアン殿下は私を待っているはずだし・・寂しい想いはさせたくは無いよ」

俺がそう言うと、アルミンは真剣な表情で口を開いた。

「俺は、マテウスのバカっ・・能天気さが気掛かりでならないんだよ!後宮は、閉鎖された空間だ。なのに、マテウスは全然警戒していない。はっきり言わせてもらうが・・マテウスは、後宮に出入りすべきじゃない」

アルミンにはっきりと言われて、一瞬口ごもってしまった。一つ、深呼吸した。そして、俺はアルミンを見つめながら、正直な気持ちを伝えた。

「王太子殿下は・・相変わらず、嫌なところばかり目立つ人だと思う。だけど、ファビアン殿下の事を心配した殿下は、私に後宮の出入り許可札をくれた。そうであって欲しいという、私の願望も含まれているけど。殿下にも、普通に親子間の愛情があるのだと思いたい。そうでなければ・・ファビアン殿下が、父親に向ける愛情の行き先が・・失くなってしまうよ。そんなのは、寂しすぎるから・・私が二人の架け橋になりたい。傲慢な考え方でも、私はそうしたいと思ってる」

「マテウス・・」

「アルミン、心配かけてごめんね。そうだね・・今回は、ファビアン殿下と合流して用事を済ませたら、すぐに後宮を後にするね?『セント・メアリ・ミード村』の散策は、次の機会にするよ。門限は必ず守るから安心して、アルミン?」

「あー、くそ、安心できない!やはり、俺が孕み子に変装するしかない!」

「無理だからやめて、アルミン」

アルミンの提案を俺は即座に却下した。


◇◇◇


「あれ、後宮の門扉が閉じられているね?」
「・・そうだな」

後宮への出入りが可能な時間にも関わらず、後宮の門扉は閉ざされていた。二人の衛兵が後宮の門扉の前に立ち塞がっている。

「えーと?」

「門番所に待機している孕み子が、後宮への出入りを管理しているんじゃないか、マテウス」

「あ、そうだね!」

後宮の門扉の脇には門番所があり、一人の孕み子が待機していた。アルミンの指摘に従い、俺は門番所に駆け寄り声を掛けた。



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