嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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第四章

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◆◆◆◆◆◆



俺はアルミンから声を掛けられ、はっとした。俺は、幼馴染みの姿を見ないまま、深呼吸を繰り返した。

少しでも落ち着かないと・・判断を誤る。

「マテウスは孕み子らしく、すぐに混乱するな?だが、その後に、落ち着こうと努力する姿勢は悪くない・・評価してやる」

「ありがとうございます、殿下」

殿下は俺を見つめたまま、ファビアン殿下に指示を出した。

「ファビアン、廊下に出ろ。案内係が後宮の入り口までは連れていってくれる。後宮の住居で、マテウスが迎えに来るまで待て。そうだ・・俺が渡して指示書でも読んで、時間を潰していろ、ファビアン」

「ち、ちちうえ、わ、わかり、わかり・・」
「もういい。さっさと、いけ」
「は、は、い」

ファビアン殿下が俯いたまま、執務室の扉に向かう。殿下の手を振り払ったのに、俺は殿下に嫌われたくなかった。楽しかった日々を、ゼロにはしたくなかった。

「ファビアン殿下、マテウスが・・後で必ず、後宮に迎いに行きます」

「マテウス、マテウス、いっしょ」
「必ず行きますから、一緒に過ごせましょ」
「うん!」

ファビアン殿下は大きく頷くと、執務室を出ていった。愛らしいファビアン殿下の後ろ姿を見送り振り返ると、王太子殿下が目の前に立っていた。

「うぉわっ!」

俺は驚いて妙な声を出てしまった。後退りそうになったが、俺はなんとか堪えた。

「なんだ、その色気のない声は?」
「申し訳ございません、殿下」

愛らしいファビアン殿下の後ろ姿の後の、ヴェルンハルト殿下の顔面アップ。びびっても仕方ないと思う。良い顔してるのに、殿下は性格が残念だからなぁ。

「マテウス・・香水をつけているのか?」

「殿下、香水はつけておりません。ですから、私をクンクンしないで下さい」

ヴェルンハルト殿下は、俺の首筋から身を離すと皮肉を口にした。

「ふん、そうか。色気付いて香水をつけているなら、無駄な努力だと笑ってやるつもりだったが・・残念だ。まあ、いい。マテウスは、枢機卿とは面識があるそうだな?」

「はい。クリスティアン様とは、少し会話をさせて頂きました。とても楽しい時間でした。クリスティアン様、お久しぶりです」

枢機卿のクリスティアンが、ソファーから立ち上がり、こちらに近付いてきたので挨拶した。クリスティアンは、にこりと微笑み口を開いた。

「お久しぶりです、マテウス卿。フリートヘルム卿に、マテウス卿が口添えしてくださったそうですね?お陰で、王城の教会に赴く事が叶いました。ありがとうございます、マテウス卿」

クリスティアンの言葉に、殿下は皮肉な笑みを浮かべた。殿下が、嫌味な発言をしそうな予感がする。

「陛下の許可を得てまで、枢機卿は王城の教会に赴いたというのに・・産みの親のルーツに繋がる墓標は見付からなかった。どうやら、枢機卿は気の毒なことに、産みの親から嘘を付かれていたらしい。まさに悲劇だと思わないか、マテウス?まあ、他人の俺にとっては・・喜劇だったがな!とりあえず、嗤えた!」

「ヴェルンハルト殿下、なんて無神経な事を仰るのですか!」

「マテウス、お前が怒ることはないだろ?枢機卿、反論があるなら聞くぞ?」

クリスティアンは、冷ややかな眼差しで王太子殿下を見つめながら殿下に応じる。

「・・いえ、ありません。墓標が無かったことは事実ですから。それよりも、打ち合わせを進めましょう、殿下」

「ふん、反論もできないのか。つまらないやつだ。そうだな・・さっさと打ち合わせを進めるか。枢機卿のすました顔を見ていると、苛立つからな」

二人の関係が険悪過ぎる。しかも、萌える要素が全く無い。くそ、小説内の二人は、友情を深めた後に、徐々に関係を拗らせていくのに。そこに、俺は萌えを見いだしていたのに!

「マテウス、選べ!」
「はい?」

「聞いていなかったのか、マテウス?使えないやつだな。よく聞け。俺と枢機卿は各々、陛下の寝所に侍らせても見劣りしない、美しい植民地の孕み子を選んだ」

「はぁ・・」

「陛下は奇数を好まれる為、寝所に招かれる孕み子は常に七人だ。その中から、気に入った三人の孕み子をベッドに上げて、セックスを楽しまれる」

「はあ、そうですか・・」

「この執務室には、十人以上の孕み子がいる。枢機卿と俺で話し合い、七人に絞ろうとしたが、意見が食い違い・・非常に困っている」

「なるほどぉ~」

不意に王太子殿下に腕を掴まれた。そして、植民地の孕み子の前に押し出された。俺が突然の事に驚いていると、殿下が俺の顔を覗き込み口を開いた。

「マテウスに命じる。陛下の寝所にいても見劣りしない、七人の植民地の孕み子を選べ」

俺は驚いて殿下を見た。そして、慌てて俺は拒絶の言葉を発していた。

「む、無理です!」

陛下の死因は腹上死だ。陰謀渦巻く陛下の死因に繋がる植民地の孕み子達に、俺は関わりたくない・・絶対に。

「この美しい孕み子の皆さんは、殿下と枢機卿がご苦労されて選ばれたのでしょ?私は陛下の孕み子の好みも分かりません。やはり、お二人で話し合われて・・七人の植民地の孕み子を、選ばれてはいかがですか?」

殿下からの命令を逃れようと、俺は必死に言い訳をした。



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