嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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第四章

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◆◆◆◆◆◆


ファビアン殿下を、シュナーベル家の邸に迎えしてから、一週間が経過した。楽しい日々は、あっという間に過ぎ去っていく。

「はぁー、どうしたらいいの?」

ファビアン殿下が、後宮で無事に過ごせる様に、知恵を巡らせる必要がある。なのに、俺の思考は自然と、ヘクトール兄上の事でいっぱいになってしまう。

「セックスレスの定義について、全く載っていないじゃないか!何が『☆孕み子の☆充実☆婚姻生活指南書☆』だ!秘密裏に取り寄せた書物なのに・・この、役立たずめ!」

俺は書物に悪態をついてページを閉じると、鍵付きの引出しに書物を納めて鍵を占めた。

ヘクトール兄上と、最後にセックスをしたのは一週間前の事。その後、濃厚なキスを一回。後は、軽いキスとバグのみだ。性交渉が一週間ないからといって、セックスレスの定義には当てはまらないだろう・・たぶん。

「兄上~、もうすぐ、マテウスの孕み子期間が終了しちゃいますよぉ?前回のセックスで孕んでいる可能性もあるけど、可能性を高めませんか~、ヘクトール兄上~」

だけど、父上との過去の関係を告白して以来、ヘクトール兄上は、俺から微妙に距離をとり接するようになってしまった。

「兄上~、そんな接し方をされると・・マテウスは寂しいです。私を伴侶にしてくださるのでしょう、あにうえ?」

ヘクトール兄上は・・父上との過去の関係を、生涯秘密にするつもりだったのだろう。

だけど、あの時のヘクトール兄上は、精神的にかなり追い詰められていた。虚ろな表情をしたヘクトール兄上は、まるで独り言のように・・父上との過去の関係を口にしていた。

「秘密にしたい過去を話してしまって、兄上は戸惑っているんですよね?」

冷静になった兄上は、俺に過去の事を話した事を後悔して・・それが、態度に出てしまっているのだろう。

「うー、兄上~~」

ドンドンドンドンドンドン

「うぉ!」

自室の扉が激しく叩かれ、俺はびっくりして机の椅子から立ち上がった。立ち上がった拍子に、机の角に太ももをぶつけてしまった。

ドンドンドンドンドンドン

「くそ、こんなに乱暴に扉を叩くのは、アルミン以外にはあり得ない。太ももの恨み!あそこを蹴り飛ばす!」

俺は憤慨しながら、自室の扉を開けた。扉を開けた途端に、ファビアン殿下に抱きつかれた。

「ファビアン殿下!?」

うぉ、危なかった!ファビアン殿下の大切な場所を、蹴りあげなくて良かった。

「どうされましたか、ファビアン殿下?」
「マテウス、ちちうえ、てが、てがみ!」

ファビアン殿下がニコニコした表情で、二通の手紙を手に握りしめていた。

「ヴェルンハルト殿下からのお手紙ですか?」

「ちちうえ、ぼくの、これ。マテウスの、これ!よむ、ぼくのよむ!いい?」

ファビアン殿下は、俺に一通の手紙を渡してくれた。封印を見れば、確かに王太子殿下の印が押されていた。ファビアン殿下に視線を向けると、王太子殿下からの手紙を読み上げるところだった。

「ファビアン、おうじょう、に、こい」

ファビアン殿下の手元を覗き込めば、『ファビアン、王城に来い』と、確かにそう書かれていた。単純な文言は、ファビアン殿下が読みやすいように、殿下が配慮してくれたに違いない。

殿下の成長に少し感動してしまった。俺は少しにやにやしながら、俺宛の手紙を開き読んだ。

「『マテウス、王城に来い』くっ、・・同じ内容って、殿下。いや、諦めるな!ファビアン殿下に、手紙を送って下さった事自体に、ヴェルンハルト殿下の成長を感じるじゃないか!そう思うしかない!」

「おい、マテウス。気休めの独り言はやめて、これからどう動くのか、俺に指示をくれ」

アルミンが、呆れ顔で俺を見つめていた。ファビアン殿下と一緒にいたようだ。俺は慌てて、表情を引き締めようとした。だが、手紙の内容に殿下の成長を感じられず、残念顔しか浮かべられ無かった。

溜め息を付いたアルミンが、俺を見つめて指示を待っている。俺はファビアン殿下と視線を合わせると、彼に訪ねてみた。

「ファビアン殿下、王城に今すぐに行きたいですか?午前中ですから、王城に向かうことは可能です。ですが、ヴェルンハルト殿下が公務中の場合には、会えないかもしれません。明日の早朝に、王城に向かうこともできますよ・・どうされますか、ファビアン殿下?」

「いますぐ、いく!てがみ、はじめて、ちちうえ、ぼく、あう。だいじ、てがみ!」

「分かりました。では、今から王城に向かいましょうね、ファビアン殿下」

「マテウス!いく!あいにいく!」
「はい、殿下」

俺が、ファビアン殿下を抱き上げ様とすると、アルミンに殿下を奪われてしまった。俺の抗議を制して、アルミンが先に口を開く。

「マテウス・・着用している怠惰の衣装は、目覚めてから着替えたものか?」

「あ、寝着のままです」

「・・マテウス。怠惰の衣装から、怠惰の衣装に着替えてこい」

アルミンはファビアン殿下を抱いたまま、扉を閉めた。俺は慌てて、怠惰の衣装から怠惰の衣装に着替えた。そして、鏡を覗き込む。

「魔法か!?」

怠惰の衣装から、怠惰の衣装に着替えただけなのに、俺の魅力がアップしている。このまま魅力がアップし続けると、中の下には食い込めるかもしれない。俺はスキップしながら、扉に向かった。



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