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第四章
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◆◆◆◆◆◆
俺は首をふり否定した。実際のところはわからないが、王国民には病死と発表された。だから、暗殺とは言えない。でも、疑惑を生む死に方には違いない。
「陛下は、植民地の孕み子たちとのセックスに、夢中になります。そして、孕み子とのセックス中に突然亡くなります。つまり、その、あれです・・」
「・・腹上死?」
「それです、兄上。ただし、様々な憶測や陰謀の噂が流れて・・王城は、不穏な空気に包まれます。この中で、王太子殿下の戴冠式が執り行われるのです」
ヘクトール兄上は、難しい表情を浮かべている。俺はさらに言葉を続けた。
「ヘクトール兄上・・今のヴォルフラム様は、王家に対して不信感を抱いておられます。兄上は、今のヴォルフラム様なら・・処刑の刃として、操れると考えているのでしょ?」
「まあ、そうなるな」
「ですが、兄上・・ヴォルフラム様は、これより半年間は、ディートリッヒ家の領地で過ごされます。ディートリッヒ家の家風は、王家への忠誠です。半年間もその家風に触れれば・・ヴォルフラム様でも、王族に刃を向ける事に、抵抗を感じる筈です」
「陛下の死がまだ先ならば・・ヴォルフラムを、処刑の刃とすることも可能だっただろう。だが・・」
俺はヘクトール兄上に、はっきりと計画の中止を提案することにした。
「ヴォルフラム様を、処刑計画の刃にするには・・時間が足りません。この処刑計画は白紙にしてください、ヘクトール兄上」
「っ!」
「ヘクトール兄上・・」
ヘクトール兄上は、自身の髪をくしゃりと掴み俯いた。俺はそんな兄上を見つめていた。やがて、ヘクトール兄上が呟く。
「ヴォルフラムが、処刑計画の刃になれないなら・・この計画は白紙にするしかないな」
「兄上、この先・・どうなされますか?」
「・・マテウス、しばらく時間をくれないか?シュナーベル家の次期当主として、最善策を考える。あまり、時間は無いようだが・・」
ヘクトール兄上が不意に立ち上がった。そして、俺に背を向けると、兄上は窓辺に近づいた。窓からは、柔らかい朝日が射し込んでいた。
「そろそろ、俺は王城に出仕する。マテウスは、ゆっくり休みなさい」
「兄上・・」
「マテウス、心配はいらない。シュナーベル家が滅びる事はない。『死と再生を司る神』の末裔であるシュナーベル家が、一人の王の気まぐれで・・滅びる筈がない」
「あにうえ!!」
俺は大きな声で、兄上の背中に呼び掛けていた。兄上がゆっくりと振り返る。ヘクトール兄上は朝日を背に浴びながら、虚ろな表情を浮かべていた。
「ヘクトール兄上!」
俺はベッドから飛び出し、窓辺に立つ兄上に抱きついた。ヘクトール兄上が、びくりと体を震わせた。それでも、俺の背に腕を回し、抱き寄せてくれた。
「兄上、不安なのですか?」
「マテウス・・俺は、近親婚の弊害を身をもって知っている。父上は、カールを手中にする迄は・・俺を抱いていた」
「そんな・・あにうえ・・」
「俺が、人に触れられるのが苦手なのは・・父上との行為を思い出すからだ。俺には耐え難い記憶だ。それなのに・・俺は父上にカールを差し出した。自らが救われる為に・・カールを犠牲にしたんだ。その罪をあがなう為に、俺は己に誓った。シュナーベル家の次期当主として、領地を領民を・・そして、シュナーベル家に関わる全ての一族を守ると誓ったんだ」
俺は泣き出していた。
以前から疑問には思っていた。人に触れられる事を嫌う、兄上。娼館に通っても男を抱けなかった、兄上。嘔吐するほどの悪夢に苦しむ、兄上。父上が全ての元凶だった。
父上は、今もヘクトール兄上を苦しめている。涙の向かうの兄上は、虚ろな表情を浮かべるだけで・・涙を一滴も溢さない。それでも、兄上が話続けてくれている。
まだ、俺とヘクトール兄上は繋がっている。
「弟を犠牲にした結果がこれだ。シュナーベル家は終わりだよ、マテウス・・」
「ヘクトール兄上は、罪など犯していません。それに、兄上はこれまでも、必死にシュナーベル家の領地の為に尽くしてきました!こんな理不尽な事で、シュナーベル家は滅びたりしません!兄上が必死に守ってきたシュナーベル家を滅ぼして堪るものですか!」
「マテウス・・」
俺は兄上に抱きついたまま呟いていた。
「兄上・・元凶を処分しましょう」
「マテウス?」
「父上を殺しましょう、兄上。そして、兄上がシュナーベル家の現当主となってください。陛下が亡くなる前に、シュナーベル家の当主となって下さい。そして、一族が生き残る術を共に探しましょう、兄上」
「俺が、シュナーベル家の当主に・・」
「そうです、兄上。そして、私は・・シュナーベル家の当主の伴侶となります。共に、シュナーベル家の為に生きていきましょう、にいさま」
不意に兄上が俺の唇を奪った。深い繋がりに、舌を絡め合う。腰が痺れるほどのキスに、俺は夢中になった。
くちゅりと水音をたてながら、ヘクトール兄上の唇が離れる。唾液が口の端から零れ出て、俺は慌てて口を袖で拭った。
「マテウス、父上を殺す」
「はい、兄上」
「俺はシュナーベル家の当主になる。その時には、マテウスは・・俺の伴侶になってくれるんだね?」
俺は頬を赤らめながら頷いた。そして、はっきりと、ヘクトール兄上に伝えた。
「はい、ヘクトール兄上。私を兄上の伴侶にしてください」
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俺は首をふり否定した。実際のところはわからないが、王国民には病死と発表された。だから、暗殺とは言えない。でも、疑惑を生む死に方には違いない。
「陛下は、植民地の孕み子たちとのセックスに、夢中になります。そして、孕み子とのセックス中に突然亡くなります。つまり、その、あれです・・」
「・・腹上死?」
「それです、兄上。ただし、様々な憶測や陰謀の噂が流れて・・王城は、不穏な空気に包まれます。この中で、王太子殿下の戴冠式が執り行われるのです」
ヘクトール兄上は、難しい表情を浮かべている。俺はさらに言葉を続けた。
「ヘクトール兄上・・今のヴォルフラム様は、王家に対して不信感を抱いておられます。兄上は、今のヴォルフラム様なら・・処刑の刃として、操れると考えているのでしょ?」
「まあ、そうなるな」
「ですが、兄上・・ヴォルフラム様は、これより半年間は、ディートリッヒ家の領地で過ごされます。ディートリッヒ家の家風は、王家への忠誠です。半年間もその家風に触れれば・・ヴォルフラム様でも、王族に刃を向ける事に、抵抗を感じる筈です」
「陛下の死がまだ先ならば・・ヴォルフラムを、処刑の刃とすることも可能だっただろう。だが・・」
俺はヘクトール兄上に、はっきりと計画の中止を提案することにした。
「ヴォルフラム様を、処刑計画の刃にするには・・時間が足りません。この処刑計画は白紙にしてください、ヘクトール兄上」
「っ!」
「ヘクトール兄上・・」
ヘクトール兄上は、自身の髪をくしゃりと掴み俯いた。俺はそんな兄上を見つめていた。やがて、ヘクトール兄上が呟く。
「ヴォルフラムが、処刑計画の刃になれないなら・・この計画は白紙にするしかないな」
「兄上、この先・・どうなされますか?」
「・・マテウス、しばらく時間をくれないか?シュナーベル家の次期当主として、最善策を考える。あまり、時間は無いようだが・・」
ヘクトール兄上が不意に立ち上がった。そして、俺に背を向けると、兄上は窓辺に近づいた。窓からは、柔らかい朝日が射し込んでいた。
「そろそろ、俺は王城に出仕する。マテウスは、ゆっくり休みなさい」
「兄上・・」
「マテウス、心配はいらない。シュナーベル家が滅びる事はない。『死と再生を司る神』の末裔であるシュナーベル家が、一人の王の気まぐれで・・滅びる筈がない」
「あにうえ!!」
俺は大きな声で、兄上の背中に呼び掛けていた。兄上がゆっくりと振り返る。ヘクトール兄上は朝日を背に浴びながら、虚ろな表情を浮かべていた。
「ヘクトール兄上!」
俺はベッドから飛び出し、窓辺に立つ兄上に抱きついた。ヘクトール兄上が、びくりと体を震わせた。それでも、俺の背に腕を回し、抱き寄せてくれた。
「兄上、不安なのですか?」
「マテウス・・俺は、近親婚の弊害を身をもって知っている。父上は、カールを手中にする迄は・・俺を抱いていた」
「そんな・・あにうえ・・」
「俺が、人に触れられるのが苦手なのは・・父上との行為を思い出すからだ。俺には耐え難い記憶だ。それなのに・・俺は父上にカールを差し出した。自らが救われる為に・・カールを犠牲にしたんだ。その罪をあがなう為に、俺は己に誓った。シュナーベル家の次期当主として、領地を領民を・・そして、シュナーベル家に関わる全ての一族を守ると誓ったんだ」
俺は泣き出していた。
以前から疑問には思っていた。人に触れられる事を嫌う、兄上。娼館に通っても男を抱けなかった、兄上。嘔吐するほどの悪夢に苦しむ、兄上。父上が全ての元凶だった。
父上は、今もヘクトール兄上を苦しめている。涙の向かうの兄上は、虚ろな表情を浮かべるだけで・・涙を一滴も溢さない。それでも、兄上が話続けてくれている。
まだ、俺とヘクトール兄上は繋がっている。
「弟を犠牲にした結果がこれだ。シュナーベル家は終わりだよ、マテウス・・」
「ヘクトール兄上は、罪など犯していません。それに、兄上はこれまでも、必死にシュナーベル家の領地の為に尽くしてきました!こんな理不尽な事で、シュナーベル家は滅びたりしません!兄上が必死に守ってきたシュナーベル家を滅ぼして堪るものですか!」
「マテウス・・」
俺は兄上に抱きついたまま呟いていた。
「兄上・・元凶を処分しましょう」
「マテウス?」
「父上を殺しましょう、兄上。そして、兄上がシュナーベル家の現当主となってください。陛下が亡くなる前に、シュナーベル家の当主となって下さい。そして、一族が生き残る術を共に探しましょう、兄上」
「俺が、シュナーベル家の当主に・・」
「そうです、兄上。そして、私は・・シュナーベル家の当主の伴侶となります。共に、シュナーベル家の為に生きていきましょう、にいさま」
不意に兄上が俺の唇を奪った。深い繋がりに、舌を絡め合う。腰が痺れるほどのキスに、俺は夢中になった。
くちゅりと水音をたてながら、ヘクトール兄上の唇が離れる。唾液が口の端から零れ出て、俺は慌てて口を袖で拭った。
「マテウス、父上を殺す」
「はい、兄上」
「俺はシュナーベル家の当主になる。その時には、マテウスは・・俺の伴侶になってくれるんだね?」
俺は頬を赤らめながら頷いた。そして、はっきりと、ヘクトール兄上に伝えた。
「はい、ヘクトール兄上。私を兄上の伴侶にしてください」
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