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第四章
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◆◆◆◆◆
ダイニングルームに移動した俺たちは、共に席につき朝食をとることになった。ファビアン殿下もアルミンも、朝食はまだ食べてはいなかったようだ。
それにしても・・ファビアン殿下と同じテーブルで、臣下の俺やアルミンも共に食事をとらせるとは。さすがは、シュナーベル家。不敬だ。
「ファビアン殿下。シュナーベル家の邸で過ごすこの一週間は、マナーを忘れましょう」
「おい、マテウス。それが大人の発言か?」
「マテウス、おと、な?」
俺はにっこり笑って、ファビアン殿下に話しかけた。アルミンは無視だ。
「もちろん、マテウスは大人です。ですが、殿下!目の前には、大好物のベイクドレーズンチーズケーキがあるのです!大好物の前では、大人も子供もございません!」
ベイクドレーズンチーズケーキが、俺に食べてくれと囁いている。これは、食べるしかない。ただし、ファビアン殿下の手前・・何時もよりは少量をフォークで崩しとり、ケーキを口に運んだ。くー、しっとり感がたまらない。
「んー~、幸せ~~!」
「ベイ、ズ、ケーキ、んん??」
俺はにこやかに、ファビアン殿下に話しかけていた。この幸せを、殿下に伝えたい。
「ベイクドレーズンチーズケーキです、殿下。呼び名が長いですが、それに相応しいどっしりとした美味しさがあります!ああ、ファビアン殿下が大人になった際には、ぜひ食べて頂きたいです。ラム酒をたっぷりと使用したケーキですから、今の殿下では召し上がる事ができないのです。ふう~、では私は、もう一口・・」
今度は大胆に、大きなケーキの塊を口にする。たまらなく美味しい。そして、このケーキには、渋目に淹れた紅茶が最高に合う。
「幸せです、ファビアン殿下・・」
「マテウス、たべ、たべる、たべ、たい」
「残念ですが、殿下はパンを食べて下さい。このケーキは、大人のみが味わえるのです」
殿下はがっかりした表情を浮かべて、かごに入ったパンを一つ取る。そして、上品に小さくちぎって口に運んだ。可愛らしく口をモグモグしていた殿下が、目を大きく見開いた。
「おい、し!」
「美味しいでしょう、ファビアン殿下!」
「ふわ、ふあ、あた、かい!」
俺はファビアン殿下の言葉に頷いた。美味しいパンには秘密がある。だが、俺はレーズンチーズケーキを食べるのに忙しい。
「ファビアン殿下。アルミンが、シュナーベル家の邸のパンの美味しさの秘密を説明いたします。アルミン、説明よろしく」
「おい、マテウス!俺はまだ、パンのひと欠片も食べていない。故に、腹が減ってるの!お前が説明しろよ。第一、大した秘密でもないのに仰々しく言うな」
「美味しい~。レーズンチーズケーキ・・どうして、貴方だけは前世と同じ味がするの?他の食べ物は、微妙に味が違うのにぃ、んー、美味しい~。懐かしい~、故郷の味~」
「あー、マテウスが、ラムレーズンで酔い始めたよ。変なこと言い始めた・・」
俺の大きな独り言を聞き、アルミンは諦めたようだ。パンを美味しそうに頬張るファビアン殿下にたいして、簡単な説明を始めた。
「ファビアン殿下。シュナーベル家の邸のダイニングルールは、厨房との距離が近いのです。ですから、焼きたてのパンや適温のスープが配膳されます」
「おいし、ぱん!おかわり!」
ファビアン殿下はニコニコしながら、かごからパンを取った。そして、今度はちぎることなく丸かじりした。
「王城では厨房が遠いため、冷めた食事を口にされる事が多いのではありませんか、殿下?王城にお住まいの方は、熱いものを苦手とされる方もいらっしゃいます。スープを口にされる時は、用心なさってください、ファビアン殿下」
ファビアン殿下は、用心深くはなかったようだ。アルミンの説明の途中で、スープを口にしてしまった。そして、動きを止めた。
「あつ、あちゅ、あちぃ、、みずーー!」
「ファビアン殿下!」
「殿下!」
俺とアルミンは慌てて殿下に水を差し出した。ファビアン殿下は、俺のカップを受け取り水を飲み干した。そして、殿下はふぅーと長い息を吐きだす。
「ぱん、すき。すーぷ、きらい!」
ファビアン殿下がはっきりと宣言したので、俺とアルミンは顔を見合わせて笑ってしまった。
「ファビアン殿下、大丈夫ですか?次からは、冷ましたスープをお出ししますね。パンを焼きたてにしましょう。ふふ、殿下。シュナーベル家の邸で過ごされる一週間が、快適に過ごせますように、ご自分の好みをどんどん言葉にして教えて下さいね」
俺がそう言うと、ファビアン殿下は少し口をモゴモゴしはじめた。俺が殿下の言葉を待っていると、殿下が詰まりながらも言葉を発した。
「あと、あとで、にわ、いく。さんぽ。んー、マテウス、て、てつなぐ。さんぽ」
「庭へ散歩に行きたいのですね?もちろん、喜んでご一緒します。手を繋ぎましょうね、ファビアン殿下!」
俺は嬉しくなって、殿下の手に触れた。不意に、ファビアン殿下が怯えた表情を見せた。俺は驚き、殿下の手から自らの手を離そうとして・・やめた。
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ダイニングルームに移動した俺たちは、共に席につき朝食をとることになった。ファビアン殿下もアルミンも、朝食はまだ食べてはいなかったようだ。
それにしても・・ファビアン殿下と同じテーブルで、臣下の俺やアルミンも共に食事をとらせるとは。さすがは、シュナーベル家。不敬だ。
「ファビアン殿下。シュナーベル家の邸で過ごすこの一週間は、マナーを忘れましょう」
「おい、マテウス。それが大人の発言か?」
「マテウス、おと、な?」
俺はにっこり笑って、ファビアン殿下に話しかけた。アルミンは無視だ。
「もちろん、マテウスは大人です。ですが、殿下!目の前には、大好物のベイクドレーズンチーズケーキがあるのです!大好物の前では、大人も子供もございません!」
ベイクドレーズンチーズケーキが、俺に食べてくれと囁いている。これは、食べるしかない。ただし、ファビアン殿下の手前・・何時もよりは少量をフォークで崩しとり、ケーキを口に運んだ。くー、しっとり感がたまらない。
「んー~、幸せ~~!」
「ベイ、ズ、ケーキ、んん??」
俺はにこやかに、ファビアン殿下に話しかけていた。この幸せを、殿下に伝えたい。
「ベイクドレーズンチーズケーキです、殿下。呼び名が長いですが、それに相応しいどっしりとした美味しさがあります!ああ、ファビアン殿下が大人になった際には、ぜひ食べて頂きたいです。ラム酒をたっぷりと使用したケーキですから、今の殿下では召し上がる事ができないのです。ふう~、では私は、もう一口・・」
今度は大胆に、大きなケーキの塊を口にする。たまらなく美味しい。そして、このケーキには、渋目に淹れた紅茶が最高に合う。
「幸せです、ファビアン殿下・・」
「マテウス、たべ、たべる、たべ、たい」
「残念ですが、殿下はパンを食べて下さい。このケーキは、大人のみが味わえるのです」
殿下はがっかりした表情を浮かべて、かごに入ったパンを一つ取る。そして、上品に小さくちぎって口に運んだ。可愛らしく口をモグモグしていた殿下が、目を大きく見開いた。
「おい、し!」
「美味しいでしょう、ファビアン殿下!」
「ふわ、ふあ、あた、かい!」
俺はファビアン殿下の言葉に頷いた。美味しいパンには秘密がある。だが、俺はレーズンチーズケーキを食べるのに忙しい。
「ファビアン殿下。アルミンが、シュナーベル家の邸のパンの美味しさの秘密を説明いたします。アルミン、説明よろしく」
「おい、マテウス!俺はまだ、パンのひと欠片も食べていない。故に、腹が減ってるの!お前が説明しろよ。第一、大した秘密でもないのに仰々しく言うな」
「美味しい~。レーズンチーズケーキ・・どうして、貴方だけは前世と同じ味がするの?他の食べ物は、微妙に味が違うのにぃ、んー、美味しい~。懐かしい~、故郷の味~」
「あー、マテウスが、ラムレーズンで酔い始めたよ。変なこと言い始めた・・」
俺の大きな独り言を聞き、アルミンは諦めたようだ。パンを美味しそうに頬張るファビアン殿下にたいして、簡単な説明を始めた。
「ファビアン殿下。シュナーベル家の邸のダイニングルールは、厨房との距離が近いのです。ですから、焼きたてのパンや適温のスープが配膳されます」
「おいし、ぱん!おかわり!」
ファビアン殿下はニコニコしながら、かごからパンを取った。そして、今度はちぎることなく丸かじりした。
「王城では厨房が遠いため、冷めた食事を口にされる事が多いのではありませんか、殿下?王城にお住まいの方は、熱いものを苦手とされる方もいらっしゃいます。スープを口にされる時は、用心なさってください、ファビアン殿下」
ファビアン殿下は、用心深くはなかったようだ。アルミンの説明の途中で、スープを口にしてしまった。そして、動きを止めた。
「あつ、あちゅ、あちぃ、、みずーー!」
「ファビアン殿下!」
「殿下!」
俺とアルミンは慌てて殿下に水を差し出した。ファビアン殿下は、俺のカップを受け取り水を飲み干した。そして、殿下はふぅーと長い息を吐きだす。
「ぱん、すき。すーぷ、きらい!」
ファビアン殿下がはっきりと宣言したので、俺とアルミンは顔を見合わせて笑ってしまった。
「ファビアン殿下、大丈夫ですか?次からは、冷ましたスープをお出ししますね。パンを焼きたてにしましょう。ふふ、殿下。シュナーベル家の邸で過ごされる一週間が、快適に過ごせますように、ご自分の好みをどんどん言葉にして教えて下さいね」
俺がそう言うと、ファビアン殿下は少し口をモゴモゴしはじめた。俺が殿下の言葉を待っていると、殿下が詰まりながらも言葉を発した。
「あと、あとで、にわ、いく。さんぽ。んー、マテウス、て、てつなぐ。さんぽ」
「庭へ散歩に行きたいのですね?もちろん、喜んでご一緒します。手を繋ぎましょうね、ファビアン殿下!」
俺は嬉しくなって、殿下の手に触れた。不意に、ファビアン殿下が怯えた表情を見せた。俺は驚き、殿下の手から自らの手を離そうとして・・やめた。
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