嫌われ悪役令息は王子のベッドで前世を思い出す

月歌(ツキウタ)

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第四章

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◆◆◆◆◆


「マテウス・・マテウス、」
「んっ・・?」

名を呼ばれ目が覚めた。

「・・あにうえ?」

部屋に射し込む朝日が、ベッドの中の俺たちを、照らし出しだしていた。窓の外は明るい。

「目が覚めたかい、マテウス?」
「・・まだ眠いです、あにうえ」

肌を合わせた後、ヘクトール兄上に抱き付き眠ってしまったみたいだ。共に薄衣を身に付けていたが、朝日を受けて透けてしまっている。

「薄衣が透けています。恥ずかしいです」

「少し前まで、裸で抱き合っていたのに、マテウスは恥ずかしいのかい?」

「兄上は、意地悪です」
「そうだね、少し意地悪な言い方だった」

兄上が優しく笑って、俺の髪を撫でた。兄上の笑みにつられて、俺も微笑み返した。ヘクトール兄上は、髪を撫でたまま優しく話しかけてきた。

「湯浴みの準備ができているが・・マテウスも共にどうだい?気持ちいいと思うのだが?」

「うっ、んー、恥ずかしいから・・駄目です」

「え、駄目なのかい!?」

どうやら、兄上は俺に断られるとは思ってはいなかったようだ。急に落ち着きのなくなったヘクトール兄上が、真剣な表情で聞いてきた。

「もしかして・・俺のセックスに成長がみられなくて、マテウスはガッカリしたのではないのかい?まだ、俺のテクニックは・・童貞並だっただろうか?」

「はい?」

ヘクトール兄上が、不安げな表情で変な事を言い始めた。しかも、妙な提案までしてきた。

「やはり、娼館に通い・・セックスの練習をすべきだろうか?夜の営みに満足できない伴侶が、別の男に走るとの噂はよく耳にする」

「あ、兄上。私以外の男性と、交わることが出来るようになったのですか?」

「いや、たぶん無理だ。セックス中に吐くかもしれないが、夜の営みの向上の為にはやむを得ない。相手は商売男だから・・後で金を握らせれば大丈夫だっ、・・んっ!」

俺は兄上に抱きついて、唇を奪っていた。強引に兄上を黙らせた後、俺はヘクトール兄上の顔を睨み付けながら口を開いた。

「ヘクトール兄上が側室を迎えるために、娼館に通い、男との交わりに慣れたいとの事でしたら・・許します。ですが、それ以外の理由で娼館通いは止めてください。私が、嫌です!」

「ん、そうか・・」

ヘクトール兄上が、なんとも気の抜けた返事をした。殿下処刑を目論む兄上とは、まるで別人のようだ。何だが、兄上が気の毒になってきたので、恥ずかしいが湯浴みを断った理由を口にすることにした。

「兄上、湯浴みを断った理由をお話しますが・・大袈裟には捉えないで下さいね?」

「・・理由によるな」

「今のマテウスの体は、孕み子として良いめぐりの時なのです。湯浴みで、兄上の精子を流すのが勿体ないので、もう少しベッドに横になっています。本当は・・私も一緒に湯浴みしたいのです、ヘクトール兄上」

ヘクトール兄上が俺の顔をまじまじと見つめた。そして、少し顔を赤らめると俺をきゅっと抱きしめすぐに身を離した。

「そ、そうか。あー、俺は湯浴みをしてから、王城に出仕する。時間があまり無いので、共に朝食は取れないが許して欲しい」

「ヘクトール兄上、お気遣いありがとうございます」

俺が身を起こそうとすると、兄上によりベッドに押し戻された。

「マテウスは、しばらく横になっていなさい」

「はい、兄上。ですが、私も王城に出仕して、現状の把握に務めたいのですが?」

「一週間は休みなさい」
「兄上!」

「一週間後に、主治医の許可が出たなら、マテウスの王城出仕を認める。それと、マテウスにはファビアン殿下の件で、頼みたいことがある。早朝、邸に王太子殿下の使いがきた」

「王太子殿下の使いですか?」

「まず、王太子殿下は、許可なくファビアン殿下をシュナーベルの邸に連れ去った事を、重大事案だと指弾された。その上で、日頃のシュナーベル家の忠義に免じ、この件は不問に処すとのことだ」

俺は思わず頬を膨らませて、兄上に反論した。

「私達は、ファビアン殿下を、王太子殿下の暴力から保護しただけです。なのに、殿下は偉そうで、反省の色がみえません」

「マテウス、不敬にあたるよ」

「処刑計画を立案している時点で、不敬に当たるのではないですか、兄上?」


ヘクトール兄上は苦笑いを浮かべた。だが、次の瞬間には、兄上は表情を引き締めて話を進めた。

「次に、王太子殿下は・・ファビアン殿下のお住まいを、王城から後宮に移される決定をなされた。後宮の住まいが整うまで、シュナーベル家の邸にて、ファビアン殿下を一週間預かるようにと殿下より命じられた。シュナーベル家はその命に従い、邸は今より一週間は厳戒態勢に入る。マテウスには邸にて、ファビアン殿下の相手を務めてもらいたい」

俺は思わず、不審げな表情を浮かべてしまった。殿下が考えることは、ろくな結果に繋がらないから、ついつい不信感がつのる。



◆◆◆◆◆◆

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